【超丁寧解説】もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

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もらい事故で車が「全損」となった場合、通常は加害者側の対物賠償保険から保険金が支払われます。

その際、加害者側の保険会社は事故車両の「時価額」までしか保険金(対物賠償)を支払わないのが通例です。

たとえば修理代が70万円かかるけれど時価による評価額は40万円なので最終的に被害者側が受け取る額は40万円になってしまいます。

本当にこれは正しい支払い方なのでしょうか?

被害者側として、さらに上乗せを要求できないのでしょうか?

あるいは車を買い替えることになった場合の買替諸費用なども請求できないのでしょうか?

こうした問題について詳しく解説しています。

しばらくお付き合いいただけると幸いです。

もらい事故で全損:「もらい事故」とは?

もらい事故とは・もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

もらい事故とは、こちらに過失はなく100%相手側に過失が生じる事故形態のことです。※被害事故と呼ばれることもあります

たとえば、

  • 信号待ちで停止中に後ろから追突された
  • センターラインをオーバーしてきた相手車両と正面衝突した
  • 交差点内で赤信号で侵入してきた相手車両と衝突した

といった事故が典型的なもらい事故になります。

もらい事故で全損:「全損」とは?

もらい事故で全損・もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

上記でご説明したもらい事故により車が大破し保険会社が「全損」と認定したケース。

これが当ページのテーマです。

保険会社が車を「全損」とするのはつぎの3つのケースです。

  1. 修理しようがないほど車が破損している(物理的全損)
  2. 修理可能だけれど修理代がその車の時価額を上回っている(経済的全損)
  3. 盗難の被害にあい車が見つからない

もらい事故で車が全損と認定されるケースは上の①か②です。

たとえば被害にあった車が新規登録から12年経過した車であった場合を考えてみます。

事故後に運び込んだディーラーの見積もりでは、修理代が70万円と算定されました。

ところが加害者側の保険会社は、12年落ちの車なので現時点の時価額は40万円であり、加害者側が加入している自動車保険の対物賠償から40万円支払い、それでお終いという話になりました。

しかし、こうなると、被害者は困ってしまいます。

なぜなら、車を修理して乗り続けようと思ったら、修理代との差額30万円を自腹で払う必要が出てきます。

あるいは修理を諦めて同程度の車に乗り替える場合も、対物賠償の40万円では車両本体代にしかならず、取得税・整備費用その他乗替諸費用はやはり自腹で支払わなければなりません。

こういうケースでは本当に時価額相当分の40万円しか受け取れないのでしょうか?

もらい事故で全損:相手保険会社の時価額評価は交渉で変えられないのか?

相手保険会社の時価額評価は変えられないのか・もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

上の事例を続けます。

問題は2つに絞られました。

1つは、40万円とした時価額を変えることができるかできないか。

もう1つは、買替諸費用を請求できるかできないか。

この2点です。

まず、時価額について見ていきます。

相手保険会社は車の時価額を40万と算定しました。

これについてはどう考えればいいのでしょう。

まず、こうしたケースで相手保険会社が時価額までしか支払わないのは通例になっていて、すべての保険会社共通のやり方になっています。

ただし、最近は対物賠償保険に「対物超過修理費用補償特約」が自動セットされる会社が増えています。

加害者の保険にこの特約が付いていれば、修理代の70万円まで相手保険から補償してもらえます。※修理する場合はこの特約から支払われますが、車を買替する場合はこの特約からの支払いはありません

加害者の保険にこの特約が付いていない場合、時価額40万円しか支払われないのが通例ですが、そもそもこの40万円という数字は何を根拠にしているのでしょう。

保険会社は車の時価額を算定するのにレッドブック、イエローブック、カーセンサー中古車検索、グーネット中古車検索などを参考にして決定します。

レッドブックやイエローブックは中古車の取引価格(時価額)などを記載したものです。

カーセンサーやグーネットはみなさんご存知の中古車検索サイトです。

被害者側が時価額に不服をとなえて裁判に持ち込んでも、保険会社がレッドブック等を根拠に時価額を算定している場合は、この金額を覆すのは困難で、たとえ上乗せが得られたとしてもほんの僅かな額にしかならないのが過去の裁判例から言えることです。

しかし、上の事例では12年落ちの車なので、新規登録から7年~8年までのデータしか記載されていないレッドブックには載っていないはずです。

こうした年式の古い車の場合、保険会社はカーセンサーやグーネットで事故車両と同程度の車を検索して金額を出しているはずです。

その際、立場上、複数ある取引価格のうちの低い方の※※※※価格を根拠にしているはずです。

したがって、被害者側としては、自らもカーセンサーやグーネットで事故車両と同程度の車を検索し、複数ある取引価格のうちの高い方の※※※※価格を4例か5例ほどプリントアウトし、それを保険会社に提出して時価額評価の変更を求めるのが実際的なやり方だと思います。

このように根拠を示して金額の変更を迫ると、保険会社は簡単に要求を却下できなくなりとても有効なやり方です。

もう1つ、事故車両の車検の残存期間が長い場合は、交渉材料として有効です。

もらい事故で全損:買替諸費用の請求は可能か?

買替諸費用の請求は可能か・もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

つぎに買替諸費用の請求です。

過去の判例ではつぎの費用は複数の裁判で認定されています。

  • 自動車取得税
  • 車両整備費用
  • 廃車費用
  • 検査登録費用
  • 車庫証明取得費用

上の項目に自動車税、自賠責保険が含まれていないのは、これらは事故がなくそのまま車を乗り続けていても発生するものだから、という考え方によります。

事故で仕方なく車を買い替えることにより不本意な出費として発生するものは認定する、ということになります。

いずれにしても、買替諸費用を請求する場合は請求の根拠になるものを提出しないとあっさり却下されます。

では根拠になるものとは何か?

それは買い替えることになる車の見積書です。

見積書をコピーして相手保険会社に提示し、そこに記載してある自動車取得税、車両整備費用等を請求してください。

もらい事故で全損:代車費用について

代車費用・もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

もらい事故の被害を受けた場合、最終的に車を修理する場合も買い替える場合も、そのあいだは自分の車には乗れません。

相手保険会社が代車費用を出してくれます。

これは問題なく出します。

ただし、通常は1ヶ月が上限になります。

事情により、1ヶ月を超えて代車を必要とする場合は、保険会社と交渉することで期間を延長してもらえる場合もあります。

もらい事故で全損:交渉は冷静に

交渉は冷静に・もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

相手が一方的に悪い事故、つまりもらい事故の被害者となった場合、ある意味、何から何まで気に入らないことだらけになります。

もしもそんな事故に巻き込まれなければ自分はそれまでどおりの日常を送っていられたわけです。

だから、自分の車に乗れないことのストレスから始まって、その後、加害者あるいは加害者が加入している保険会社の担当者とのやり取りは、言ってみれば「本来やらなくてもいい余計なこと」だらけです。

さらに追い打ちをかけることがあって、もらい事故のように相手側に100%の過失が生じる事故形態の場合、自分が加入している保険会社は相手との示談交渉をする法的根拠を持ちません(弁護士法 第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)。

自分が加入している保険会社は事故の相談やアドバイスには応じてくれるものの、加害者側とのやり取りは被害者が自分でやらなければなりません。※ただし、弁護士特約を付けていれば弁護士が示談交渉をやってくれます

このように、本来やらなくてもいい余計なことをやるストレスから、被害者側はつい感情的な対応をしがちです。

ちょっとでも加害者や加害者側の保険会社の言い分が気に入らないと、高圧的な態度で接しがちです。

しかし、それは大きなマイナスです。

ぜひ冷静に対応していただきたいと思います。

ここまでこのページでご案内してきたことは、あくまでも冷静に交渉した場合に勝ち取れる可能性が出てくる事柄です。

高圧的な態度を取ると、たとえば相手保険会社の担当者などは、それこそ「木で鼻をくくった」ような態度で接するようになるでしょう。

過去にそうした判例があっても、それは今回の事故の判決ではありませんから

時価額は当社で厳正に調査した結果出した金額で、これを変えることはできません

こうしたケースでは車検の残り期間は考慮しないのが通例です

買替諸費用はどなたに対してもお出ししておりません

そして、はっきり口に出すケースと出さないケースがありますが、ご不満ならどうぞ裁判に持ち込んでいただいて結構ですよ、という態度を取ります。

と言うのも、保険会社の事故担当者の立場に立つと、面倒で厄介な相手とグダグダ交渉するくらいなら、相手が訴訟に訴えてくれれば、後は保険会社と提携している弁護士にその件を丸投げでき、むしろありがたい展開となります。

保険会社は裁判などいっさいまったく恐れていません。

どうぞご自由に、という立場です。

そして、いざ裁判に持ち込んでも、勝ち取れるものはそう多くはありません。

勝ち取れた金額と、裁判の期間中注いだ精神的エネルギーや時間的損失などと天秤にかけた場合、むしろ損失のほうが大きいかもしれません。

だからぜひ冷静に対応していただきたいと思います。

被害者側が冷静に対応する限り、相手保険会社の担当者は「自分は加害者側の人間だ」という意識がありますから、できるだけ満足してもらえるように対応しようと考えるものです。

ネットなどでどこの保険会社の対応は最悪だったなどとしばしば書き込みがありますが、しかし、こうした書き込みには書き込んだ人が保険会社にどういう態度で臨んだかは書き込んでありません。

高圧的に接したからこそ保険会社の担当者は「木で鼻をくくった」ような対応をしたのです。

べつに保険会社を擁護しているのではありません。

ご自身の「損得」で行動してください、と申し上げているだけです。

もらい事故で全損:自分の車両保険も使えます

自分の車両保険も使えます・もらい事故で全損|時価額が上限?|評価額の交渉法を解説

まず、ここまでご説明してきたことを整理します。

もらい事故で車が全損になった場合、加害者側の対物賠償保険から保険金が支払われます。

ただし対物賠償保険から支払われる保険金は全損になった車の時価額が上限になります。

その際、相手の保険に対物賠償保険の特約である「対物超過修理費用補償特約」が付いていれば、修理費用との差額がこの特約で穴埋めできます。

この特約がついていない場合はあくまでも時価額しか支払われないのが通例です。

ところで、もしも自分が加入している自動車保険に車両保険が付いていたら、修理代と時価額との差額分を車両保険から支払ってもらえる可能性があります。

たとえば、車両保険金額70万円で加入している車がもらい事故で全損となり、相手保険会社からは時価額40万円しか保険金が支払われなかったケースを考えてみます。

修理見積もりは70万円です。

すると、修理代と時価額との差額30万円は自分が加入している車両保険から支払ってもらえます。

車対車の事故なので一般条件でもエコノミーでも支払対象です。

ただし、車両保険を使うと翌年度の等級は3等級ダウンし事故有期間3年が付きます。

これでは自分に過失がないのに理不尽な思いがしますが、修理代と時価額との差額が大きい場合は大いに助かると思います。

上の説明では車両保険金額が70万円としましたが、みなさんの中には車両保険金額は時価額ベースで設定するのだから、相手保険会社の時価額評価とそんなに開きは出ないのでは、と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかしそこはちょっと違います。

まず、相手保険会社が時価額評価をする場合、保険金を支払う立場上、ある程度は発生する価格幅のうちの一番下の方を提示する傾向がありますし、あくまでも事故が発生したその時点の時価額を算定しています。

それに対して、車両保険で設定する車両保険金額は、ある程度は発生する価格幅のうちの平均値で金額を出しますし、また、事故発生時点の時価額評価ではなく保険始期日時点の時価額評価を保険期間中維持し続けます(これを協定保険価額といいます)。

その結果として、相手保険会社が提示する時価額より車両保険金額の方が高いのが普通です。

だからもらい事故で全損になったときに自分の車両保険で修理代と時価額の差額を穴埋めすることができるのです。

先ほど、こうしたケースで自分の車両保険を使うと翌年度の等級がダウンするとご説明しました。

しかし大手代理店型と一部通販型の自動車保険には「車両無過失事故しゃりょうむかしつじこに関する特約」というものが自動セットされていて、まさにこのページでご説明しているような自分に過失がない事故で車両保険を使った場合には翌年度の等級に影響を与えません(ノーカウント事故扱い)。

これを利用すれば何のデメリットもなく自分の車両保険を使えます。


ご覧いただきありがとうございました。