車両保険|全損と分損の違い|免責の扱い・支払い方法

車両保険・全損・分損・経済的全損・免責

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そもそも「全損(ぜんそん)」の事故とは、①修理できないほど車が損壊している場合、②修理費用が時価額を上回っている場合、の2つをいいます。

また車両保険からの支払いを受ける場合、車が「全損」になる場合と「分損ぶんそん」になる場合で支払い方が異なります。

このページでは事故で車が「全損」と認定された場合の車両保険からの支払い方についてくわしく解説しています。

しばらくお付き合いいただけると幸いです。

全損ぜんそん」の事故とは?

全損の事故とは・車両保険|全損と分損の違い|免責の扱い・支払い方法

車が事故にあい、保険会社がその車の損害状況を確認して「全損」と認定するのはどんなケースでしょう?

保険会社が「全損」と認定するのは次の2つのケースです。

「全損」とは?
  1. 物理的全損:事故や災害で修理不可能なほど車の損害が大きい場合、あるいは車が盗難にあい結局見つからない場合
  2. 経済的全損:修理費用が車の時価額を上回っている場合

ケース1:物理的全損

新規登録から2年目の車・車両保険金額200万円・免責金額10万ー10万で車両保険に加入。

電柱に激突して車が大破し、保険会社は修理不可能と判断し「全損」と認定した場合。

車両保険からの支払い
200万円

※単独の自損事故なので一般条件に加入している場合にのみ支払われます。

※初回事故の免責金額は10万円で設定されていますが、「全損」の場合は免責金額は適用されないので、車両保険金額が満額支払われます。

※車両保険金額の200万円とは別枠で車両全損時臨時費用(会社により名称が異なる)が車両保険金額の5%~10%の幅で支払われます(10万円~20万円限度)。※車両保険に自動付帯している

※(オプション)車両新価特約(会社により名称が異なる)をオプションで付けている場合は、新車に買い換えることができます。

自動車保険・車両新価特約・デメリット・必要・保険料

【超丁寧記事】自動車保険の車両新価特約とは?必要性とデメリットと保険料

2019年6月3日

ケース2:経済的全損

新規登録から10年目の車・車両保険金額30万円・免責金額5万ー10万で車両保険に加入。

ガードレールに激突して車が大破し、保険会社は、修理可能だが修理費用が時価額を上回る(70万円)と判断して「全損(経済的全損)」と認定した場合。

車両保険からの支払い
30万円

※単独の自損事故なので一般条件に加入している場合にのみ支払われます。

※初回事故の免責金額は5万円で設定されていますが、「全損」の場合は免責金額は適用されないので、車両保険金額が満額支払われます。

※車両保険金額の30万円とは別枠で車両全損時臨時費用(会社により名称が異なる)が車両保険金額の5%~10%の幅で支払われます(10万円~20万円限度)。※車両保険に自動付帯している

※(オプション)車両全損修理時特約(会社により名称が異なる)をオプションで付けている場合は、車両保険金額を超えて発生する修理代を50万円を限度に支払います。このケースでは車両保険金額30万円と修理代70万円との差額は40万円なので修理代の全額を支払うことができます。なお、この特約は実際に車を修理した時にのみ支払われます。※この特約は保険始期の属する月が初度登録年月から25ヶ月超の車に付けることができます


上記2つのケースは「全損」の場合でしたが、「分損」の場合は下記の支払い方になります。

上の2つのケースの続きです。

(ケース1)損害額が100万円であった場合

「分損」の場合の支払い方
損害額100万円-免責金額10万円=支払額90万円

(ケース2)損害額が20万円であった場合

「分損」の場合の支払い方
損害額20万円-免責金額5万円=支払額15万円

※「分損」の場合は「損害額-免責金額=支払額」という原則どおりの支払い方になります。

地震・噴火・津波車両全損時一時金特約

地震・噴火・津波車両全損時一時金特約・車両保険|全損と分損の違い|免責の扱い・支払い方法
「全損」か「分損」かにかかわらず、そもそも車両保険は「地震・噴火・津波」による車の損害は対象外です。

補償内容 エコノミー 一般条件
車同士の衝突 〇 〇
盗難 〇 〇
台風・竜巻・洪水・高潮 〇 〇
火災・爆発 〇 〇
イタズラ・落書き・窓ガラス破損 〇 〇
飛来中・落下中の他物との衝突 〇 〇
2輪自動車・原付バイクとの衝突 〇 〇
単独の自損事故 × 〇
当て逃げ × 〇

ご覧のように、台風・竜巻・洪水・高潮といった自然災害は補償の対象ですが、同じ自然災害でもより大規模に広範囲に被害が及ぶ可能性のある地震・噴火・津波に関しては補償の対象外になっています。

本来は対象外の地震・噴火・津波による車の損害を、「全損」の時のみ補償するのが地震・噴火・津波車両全損時一時金特約(会社により名称が異なる)です。

地震・噴火・津波により、契約の自動車のフレーム、サスペンション、原動機などに所定の損害が生じた場合や契約の自動車が流失または埋没し発見されなかった場合、運転席の座面を超えて浸水した場合などに、地震・噴火・津波車両全損時一時金として50万円(車両保険金額が50万円を下回る場合はその金額)を支払う特約です。

保険会社により、一般条件にしか付けられないところと、一般条件にもエコノミーにも付けられるところと対応が分かれています。

(例)

  • アクサダイレクト:一般条件・エコノミー共に加入可能
  • 損保ジャパン:一般条件のみ加入可能

通常、「全損」の事故で保険金が支払われる場合、車の所有権は保険会社に移転しますが、この特約から支払われた場合は移転せず元の所有者のままです。

また、地震・噴火・津波車両全損時一時金特約からのみ保険金の支払いを受けた場合は、翌年度の等級には影響しません(ノーカウント事故扱い)。

対物全損時修理差額費用補償特約

対物全損時修理差額費用補償特約・車両保険|全損と分損の違い|免責の扱い・支払い方法
これは車両保険の話ではありません。

対物賠償保険の特約の話です。

しかし車が「全損」になるような事故とは大いに関連があります。

たとえば、信号待ちで停止していたところ、脇見運転をしていた後続車に追突され、車が大破したようなケース(もらい事故)です。

相手に100%の過失が認められる事故です。

この場合、追突された側が車両保険に加入していたとしても、通常は自分の保険を使う必要はなく、あくまでも追突した側の対物賠償保険から支払われるのが普通です。

追突された車の修理見積は70万円で、修理することは可能だけれど、修理費用が時価額を上回ることになり、保険会社は「全損」と認定しました(経済的全損)。

このケースでは、追突した側の対物賠償保険により損害賠償額が支払われるのですが、法的な損害賠償額は「全損」と認定された車の時価額のみです。

追突された車が10年前に新規登録された車であった場合、時価額は新車価格の10%程度になることが一般的です。

新車時に250万円ほどの車であれば、事故時の時価額は25万円ということになります。

修理費用の70万円との差額は45万円です。

対物賠償保険は法的に認定された損害賠償額を支払うもので、このケースでは25万円しか支払われません。

追突された側が実際に修理して乗ろうと思ったら、不足分の45万円を自腹で払わないと再びこの車に乗ることはできません。

あるいは、車を乗り換える場合は、たとえ同程度の車が見つかったとしても、車両本体価格は相手から支払われた対物賠償額25万円でまかなえるものの、自動車取得税、車庫証明費用その他諸費用に関してはやはり自腹を切らなければならなくなります。

こういう状況でもしも追突した側が対物全損時修理差額費用補償特約(会社により名称が異なる)に加入していたら、この特約から修理費用との差額が支払われます。

この特約からは、修理費用のうちの時価額を超えた部分について、50万円を限度に、過失割合分だけ支払うことができます。

このケースでは過失割合は100%追突した側にあります。

したがって、70万円の修理費用は、対物賠償保険(25万円)と対物全損時修理差額費用補償特約(45万円)によって全額支払われることになります。


なお、法的な話に限定すると、追突した側は対物賠償保険から25万円を支払えば、この事故に関してやるべきことはすべて完了です。

それ以上のことをする必要は、法的には、ありません。

けれども、それで収まるものでしょうか?

追突された側にしてみれば、納得できる人はいないでしょう。

また追突した側にしても、対物賠償を払った後、本当に知らん顔といくでしょうか?

とりわけ、両者がご近所同士、知り合い同士だったらどうでしょう?

そういったケースでは、対物賠償からの支払い以外に、個人的に何らかの「誠意」を示すのではないでしょうか?

もしも対物全損時修理差額費用補償特約を付けていれば、その場合の「誠意」を保険から支払うことができます。

トラブルを防ぐためにも、この特約は是非加入すべきだと思います。

車両無過失事故に関する特約

車両無過失事故に関する特約・車両保険|全損と分損の違い|免責の扱い・支払い方法

前の項目では、追突した側に100%の過失があるので、対物賠償保険(と対物全損時修理差額費用補償特約)から支払うケースをご説明しました。

しかし、公道を走るすべての車が自動車保険に加入しているとは限りません。

無保険で走る車も一定数存在し、そういう車が事故を起こした場合、ドライバーに支払能力がなく大きなトラブルに発展するケースが少なからず発生しています。

そんなケースでは、追突された側が車両保険に加入していれば、車両保険から修理費用を支払ってもらうことができます。

ただし、通常、このケースで車両保険を使えば、翌年度の等級は3等級ダウンし事故有期間3年が付きます。

保険料も上がります。

理不尽な話です。

けれども、まさにこうした事態を想定した特約があります。

それが車両無過失事故に関する特約です。

この事例のように、信号待ちで停止中に一方的に追突された事故では、追突された側には一切過失が生じません(無過失)。

相手の車および運転者または所有者が確認できる場合に限りますが、こうしたケースでは、自分が加入している車両保険から支払いを受けることができ、なおかつ、ノーカウント事故として扱われます。

ノーカウント事故とは無事故であったのと同じ扱いという意味です。

翌年度の等級は、他に事故がなければ、無事故の場合と同じように1等級上がります。

車両無過失事故に関する特約はすべての保険会社が扱っている特約ではありません。

また、車両保険に自動付帯している会社とオプションとして別途追加保険料が必要になる会社とがあります。

車両無過失事故に関する特約
保険会社 自動付帯 任意加入
チューリッヒ なし なし
そんぽ24  ー
ソニー損保 なし なし
おとなの自動車保険(セゾン)  ー
アクサダイレクト なし なし
イーデザイン損保  ー
三井ダイレクト なし なし
SBI損保 なし なし
東京海上日動 ー 
損保ジャパン日本興亜 ◯ ー
三井住友海上 ◯ ー
あいおいニッセイ同和 ◯ ー

車両無過失事故に関する特約の詳細はおとなの自動車保険(セゾン)がわかりやすいので下記に引用しました。

「車両無過失事故に関する特約」の対象となる事故
 (以下の条件をすべて満たす必要があります)
相手自動車との接触または衝突事故(車対車事故)であること。
※相手自動車とは、原付・二輪自動車を含みます。相手が自転車や歩行者の場合の事故はこの特約の対象にはなりません。
※相手自動車の所有者は、ご契約のお車の所有者と異なる場合にかぎります。例えばご自身がお車を2台所有しており、そのお車同士の事故の場合、所有者が同じであるためこの特約の対象にはなりません。
ご契約のお車の運転者にその事故に関する過失がないこと。
相手自動車の情報(登録番号)と、相手自動車の運転者の情報(住所・氏名)が確認できること
※当て逃げは、相手自動車の登録番号や運転者情報が確認できないため、この特約の対象にはなりません。
車両新価特約、車両全損修理時特約、車両身の回り品補償の保険金のお支払いがないこと
※これらの保険金をお支払いする場合は、「車両無過失事故に関する特約」の対象にはなりません。

おとなの自動車保険(セゾン):「車両無過失事故に関する特約


ご覧いただきありがとうございました。