車対車免ゼロ特約とは|ほぼ無視していい特約である理由

車対車免ゼロ特約とは|ほぼ無視していい特約である理由を解説・自動車保険・車両保険・免責・免責金額・設定

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自動車保険の特約の1つに車両保険があります。

この車両保険を付ける際に免責金額の設定がありますが、「車対車免ゼロ特約しゃたいしゃめんぜろとくやく」とは免責金額を設定する際の1つの選択肢として用意されている特約です。

しかし、結論を言いますと、これはほぼ無視していい特約です。

100%まったく役に立たない特約とは言いませんが、付けておかなかったことを後で後悔するケースはほとんどないでしょう。

その理由を詳しく解説しています。

車対車免ゼロ特約とは?

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まず車対車免ゼロ特約の要旨を見ておきたいと思います。

ホームページで見たところ、SBI損保の説明が比較的わかりやすかったので下記に引用しました。

車対車免ゼロ特約

保険期間中に発生した最初の事故が他の自動車との衝突・接触事故であり、相手方を確認できる場合にかぎり、 この特約により自己負担額を差し引かずに保険金をお支払いする特約です。

なお、自己負担額のことを「免責金額」と表現することから、免責金額の略称である「免」が名称に用いられています。

[SBI損保では]

車両保険の自己負担額を『5万(車対車免0)-10万』に設定いただくと、この特約が付帯されます。

この特約の正式名称は「車両保険の自己負担額に関する特約」です。

【具体例】

車両保険金額200万円(自己負担額5万-10万円)

他の自動車と衝突事故が発生して、車両の修理費用が100万円かかることになった。

車対車免ゼロ特約を付帯している場合…修理費用の100万円をお支払いします。

車対車免ゼロ特約を付帯していない場合…自己負担額5万円を差し引いた95万円をお支払いします。

SBI損保:車対車免ゼロ特約

車対車免ゼロ特約のアウトラインとしては上記説明で特に問題ないと思います。

しかし、実際に車両保険を使う様々な事例に照らして見ていくと、上記説明、特に「具体例」として挙げている内容はまったく実態を反映していない机上の空論に過ぎないことがわかります。

以下その理由をご説明します。

遠回りをするように思われるかもしれませんが、一読すれば、車両保険の免責金額に関しては、ほぼ完全にご理解いただけると思います。

保険金支払い時の免責金額の扱い方

車対車免ゼロ特約とは|ほぼ無視していい特約である理由を解説・自動車保険・車両保険・免責・免責金額・設定・免責金額の扱い方

車同士の事故で自分の車に損害が発生した場合、免責金額の扱いは原則として次のようになります。

損害額ー免責金額=支払額

もしも免責金額が「5万-10万」で設定されている契約で、100万円の損害額が出た場合は、

100万円ー5万円=95万円

という計算になります。

この際、この車両保険に車対車免ゼロ特約が追加で付帯されていれば、5万円は適用されないので、支払額は100万円ということになり、この特約を付けておいてよかったということになります。

けれども、この計算はほぼ「机上の空論」と呼んでもいいくらいで、実際の事故処理ではほとんどのケースでこれとは異なる支払い方になります

なぜなら、免責金額の扱いは事故の内容によって変わってくるからです。

具体的に、免責金額が設定された契約でも免責金額が適用されない(自己負担額が発生しない)ケースが2つあります。

次の2つのケースです。

免責金額を設定している契約でも免責金額が適用されないケース
<1>全損の事故
<2>相手がある車両事故※相手がある事故で必ず免責が適用されないというわけではないが、ほとんどのケースで適用されない

つまり、上記2つのケースでは、車対車免ゼロ特約を付けていなくても自己負担なく保険金が支払われます。

付ける必要がないのです。


まず<1>の全損事故のケースですが、「全損」とは「修理費が車両価格を超えた場合」あるいは「修理できないほど損傷した場合」のことをいいます。

たとえば、車両価格200万円で車両保険に加入していて、全損の事故が発生した場合は、保険からの支払額は「200万ー免責金額」となるのではなく、免責金額がいくらに設定されていてもそれは適用されず、200万円がそっくりそのまま支払われます。

単独の事故であっても車両同士の事故であっても、自分の車が「全損」と認定された場合は、免責金額は適用されません。

こうしたケースでは車対車免ゼロ特約は付帯していても使い道はなく、無駄なだけです。


つぎに<2>の相手がある事故のケースです。

通常、車同士の事故の場合は両者に「過失割合」が発生します。

過失割合とは、事故の結果発生した損害を100とした場合、事故の当事者がそれぞれ負うべき責任の割合です。

50:50であれば、両者が半分ずつ責任を負うことになります。

責任を負うとは、責任分だけお金を払うということを意味します。

下の事例でご説明します。

車両保険に車両価格200万円で加入しているAさんの事例です。

免責金額は「5-10」です。

AさんとBさんが車同士の衝突事故を起こし、次のような過失割合・損害認定がなされました。

AさんBさん
過失割合5050
車の損害100万円80万円

ここは車両保険の話なので、Bさんの損害のことは割愛し、Aさんの損害(100万円)に対してどういう処理がなされるかをお話します。

この場合、BさんはAさんの100万円の損害額に対して50%の50万円を支払います。

すると、Aさんが加入している保険会社は、Bさんが支払った50万円を、まずAさんの免責金額の穴埋めに充当します。

これにより、Aさんの契約で設定されていた免責金額「5万-10万」の「5万」は穴埋めされ、なかったものとみなされます

Aさんの損害額100万円

穴埋めされた免責金額(5万円) Bさんの支払った50万のうち免責金額の穴埋めをした残りの45万円 不足分50万円

最終的に、Aさんが加入している保険会社は、車両保険から上の図の「不足分50万円」を支払い、これにより、Aさんの損害額100万円は全額保険でまかなわれることになります。

このように、免責金額が設定されている車両保険契約でも、相手がある事故の場合は免責金額が適用されないケースが出てきます。

上のケースのように免責金額が5万円の場合、相手からの支払額が5万円以上のケースでは、すべて免責金額はなかったものとみなされます。

実際のところ、車同士の衝突・接触事故の場合は、ほとんどのケースで免責金額はなかったものとみなされます

車対車免ゼロ特約が必要でしょうか?

なお、ここで解説した保険金の支払い方は、各保険会社の約款やっかんに記載されています。

※約款とは、不特定多数の利用者との契約を定型的に処理するためにあらかじめ作成した契約条項のこと(by Wikipedia)

※上の例でBさんから支払われるお金のことを、各社の約款では「回収金」と呼んでいます

SBI損保 「車両条項」第11条3(保険金の支払額)
三井ダイレクト損保 「車両条項」第11条3(支払い保険金の計算)
損保ジャパン日本興亜 「車両条項」第10条4(支払い保険金の計算)
ソニー損保 「車両条項」第10条4(支払い保険金の計算)
アクサダイレクト 「車両条項」第10条3(車両保険金支払額の計算)
おとなの自動車保険 「車両条項」第10条4(支払い保険金の計算)

車対車免ゼロ特約を付けておいてよかったと思える事例(レアケースですが)

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上記のように車対車免ゼロ特約が活躍する場面は、実はあまりないのが実情です。

しかしゼロではありません。

それは次のようなケースです。

赤信号で停止している車に、脇見をしていたために、後ろから追突し、自分の車が部分的に損傷した。

ここでは車両保険の話をしているので相手への賠償は省略します。

追突した側の車両保険の話に集中します。

追突した車の修理代が30万円だとします。

車両価格は200万円で、免責金額は5万ー10万です。

つまり「分損」と言うことになります。

また、追突した側に100%の過失が生じる事故なので、相手からの支払いはありません。

そして「車対車」の事故です。

この場合、車両保険からは追突した車の修理代30万円が支払われるのではなく、免責金額5万円が引かれた25万円が支払われます。

この車両保険に車対車免ゼロ特約が付いていた場合、5万円の免責は適用されずに30万円がそっくりそのまま支払われます。

それでも車対車免ゼロ特約を付けますか?

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上のケースの場合は、

車対車免ゼロ特約に入っていてよかった

と思えるでしょう。

確かにそうなのですが、しかし、5万円です。

車対車免ゼロ特約は「5万ー10万」の免責金額にしか付けられません。

初回の事故にのみ適用されるので、恩恵を受けるのは最大で5万円です。

しかも、様々な事故形態のうちの非常に限られた事故にしか適用されない特約です。

付ける意味がまったくないとはいいませんが、あまり意味のある特約とはいえないのではないでしょうか?

もっとも、上の例のような事故を起こしやすいタイプの人がいることも事実です。

そういう人には付けておいてもいい特約かもしれません。

ただその場合でも、何も車対車免ゼロ特約でなく、最初から「0万ー5万」あるいは「0万ー10万」を選択する方法もありますが。

後はみなさんのご判断です。


ご覧いただきありがとうございました。