【第1回】【プリウスが嫌われる理由】運転マナーが悪すぎる…ドライバーたちの本音、集めました
【第2回】プリウスが嫌われる本当の理由 ― 統計・心理・構造の3方向から徹底分析
【第3回】5代目「60系」プリウスへ。デザイン、購入者層、シフトレバー、安全装備 ― すべてが変わった現行モデルは、本当に”あの頃のプリウス”とは別の車なのか?
目次
はじめに ― ここまで読んでくださった皆さんへ
前々回・前回と、プリウスの黒い噂をひたすら掘り下げてきました。
車間ツメすぎ、ノロノロ運転、ウインカー出さない車線変更、駐車場でのやりたい放題、プリウスミサイル、ヤン車仕様 ―
書きながら何度も「そうだ、そうだ」と頷いた読者も多かったはず。
でも、ここで一つ、大事な問いを投げかけさせてください。
あなたが頭の中に思い浮かべている「あのプリウス」、それは何系ですか?
ボディに丸みのある初代・2代目(10系・20系)?
街中で一番見かけた、あの個性的なフォルムの3代目(30系)?
やや精悍になった、4代目(50系)?
…たぶん、そのあたりですよね。実際、前回触れた池袋暴走事故の車両も2008年式の20系プリウスでした。世間に刷り込まれた「プリウスのイメージ」は、おおむね10系〜50系のもの。
でも、2023年1月に登場した5代目「60系」プリウスは、それまでのプリウスとは別物と言っても過言ではない車です。
デザインも、シフトレバーも、安全装備も、そして買う人の顔ぶれも、ガラッと変わった。
今回はこれまで散々ディスってきたプリウスの名誉回復編として、「60系プリウス」を主役に据えて、偏見をひっくり返す事実をお届けします。
読み終わる頃には、街で60系を見かけたときの目線が、ちょっとだけ優しくなるはず ― そう信じて書きます。
真実①「Hybrid Reborn」― これはもう、別の車
まず、60系プリウスの登場時にトヨタが掲げたコンセプトを確認しておきましょう。
「Hybrid Reborn(ハイブリッド・リボーン)」
直訳すれば「ハイブリッド、生まれ変わる」。
これ、単なる宣伝コピーじゃありません。開発手順そのものを変えた、という覚悟の表明でした。
これまでのプリウスは、まず「燃費性能」と「空気抵抗」ありきで設計されてきました。だからこそ、あの独特のモノフォルム ― ボンネットからルーフ、リアエンドまで一気に流れるあのシルエットが生まれた。機能から逆算してデザインを決める手法です。
ところが60系では、まずデザインありきで開発がスタート。
自動車評論メディアCORISMはこう書いています ―
「60系5代目新型プリウスは、まずデザインありきで開発がスタートしたという。とにかく、『一目惚れするデザイン』にこだわった。そして、もうひとつの大テーマである『虜にさせる走り』を実現するために、従来の開発手順を変更した」
評論家たちは口を揃えて「エモい」「官能的なシルエット」「エコカーからエコなスポーツカーへ進化した」と表現しています。これ、過去のプリウスには絶対に出てこなかった形容詞ですよね。
「ハンマーヘッド」と呼ばれるシャープなフロントフェイス、一文字につながったリアテールランプ、ぐっと下がったルーフライン。
車高はZ・Gグレードでわずか1,430mm(U・Xグレードは1,420mm)。先代より40mm低く、もはや「スポーツカー風」の佇まいです。
街でこの60系を初めて見たとき、こう思ったドライバー、けっこういるんじゃないでしょうか。
「え、これプリウス…? カッコよくない…?」
そう、それです。
プリウスは、ついに”カッコよくなった”のです。
真実②「買う人」が変わった ― シニア過半数時代の終焉
ここが、実はいちばん大事な話。
前回お伝えした通り、4代目プリウス(50系)の購入者は 60代以上が過半数、65歳以上だけで約36%という、極めてシニア寄りの構成でした。これが「プリウスミサイル」報道の温床にもなっていた構造的事実です。
では、60系はどうなったか。
Webモーターマガジンが公開したデータがこちらです。
| 年代 | 60系プリウス購入比率 |
|---|---|
| 20代以下 | 約10% |
| 30代 | 約10% |
| 40代 | 約20% |
| 50代 | 約20% |
| 60代以上 | 約40% |
確かに、60代以上の比率は依然として高いものの、過半数から約40%に下がっています。そして、20代・30代だけで全体の約20%を占める。これは、4代目までのプリウスでは考えられなかった分布です。
つまり、
「プリウス=シニア層メインの車」という構図そのものが、60系で大きく崩れた
ということ。
Webモーターマガジンも「若年層から高年齢層まで、まんべんなく人気を集めている点には注目したい」と評しています。
ちなみに、トヨタのプレスリリースを読み込んだ自動車専門ライターが指摘していたのは、開発時のターゲット像のひとつが「若い頃にレビン/トレノやセリカを乗り回していた世代の”老後のパーソナルカー”」だったということ。
その結果として、「まだまだ走りを楽しみたいシニア」だけでなく、「カッコいい車に乗りたい若者」まで取り込むことになったようです。
真実③「シフトレバー問題」、ちゃんと直しました(いちおう)
前回の分析編で、プリウスの最大の構造的弱点として挙げたのがシフトレバーでした。
- 操作後に中央に戻ってしまう
- Pレンジが別のボタン
- R・N・Dの配置が一般的なATと違う
- どのレンジに入っているかディスプレイ確認が必要
これが踏み間違い事故の遠因になっているのでは、と何年もネットで議論されてきました。Xでは「プリウスのシフトレバーわかんねぇわこれ」「Bってなんだよブレイク?」と困惑する声があふれ、レンタカーやカーシェアでプリウスを借りた人たちが「異質」「慣れない」と口を揃えていた、あの問題です。
60系では、これがある程度改善されました。
自動車サブスク系メディアの解説によれば ―
「操作が難しいと言われていた従来のシフトレバーを一新。シフトの位置、形状、スイッチを集約させることで、直感的に操作できるシフト周りとなり、使いやすく走りの良さを楽しめる空間になっています」
レバーは引き続き電子式(戻り式)の構造を残しつつ、Pボタンとシフト操作部をひとまとめに集約。レバーの形状と位置関係も整理され、「どこに何があるか」が視覚的に分かりやすくなりました。
完全に従来型ATと同じ、というわけではありません。電子式シフトの基本構造は残っているので、「ベテランのプリウス批判勢」からはまだ厳しい目が向けられている部分も。
でも、トヨタが「ここは課題だった」と認めて手を入れた、その事実は大きい。←ここが一番大きいのかも。これまで頑なに変更を拒否してきた経緯がある
真実④「踏み間違い対策」が、もう手厚く搭載
60系プリウスの安全装備リストを見ると、これがちょっとビックリします。
- プリクラッシュセーフティシステム(歩行者・自転車検知付き衝突回避支援ブレーキ)
- パーキングサポートブレーキ(駐車・低速時の踏み間違い検知&自動ブレーキ)
- レーンディパーチャーアラート(車線逸脱警報)
- レーンチェンジアシスト
- オートマチックハイビーム
- レーダークルーズコントロール(全車速対応)
- トヨタチームメイト アドバンストパーク(自動駐車支援、Zグレード標準)
- 周辺車両接近時サポート(録画・通報提案機能)
特に注目すべきは、踏み間違い対策(パーキングサポートブレーキ)が手厚く搭載されていること。
これは ―
アクセルの踏み間違いやシフトレバーの操作ミスによる急発進時に作動し、衝突を軽減してくれる機能
※装備範囲はグレードによって異なります。最新のグレード別装備はトヨタ公式サイトでご確認ください。
つまり、「プリウスミサイル」と揶揄された踏み間違い暴走を、車側がアシストして止めにいく仕組みが、60系プリウスにはしっかり組み込まれているということ。
しかも、ソフトウェアアップデートで安全機能をさらに強化できる仕組みも導入されました。みんカラの実オーナーの投稿では、税込11,000円で「プリクラッシュセーフティの対応範囲拡大(先行車との速度差が大きい時や先行車が急減速した時の対応範囲を拡大)」というアップデートが配信されていることが報告されています。
「事故になれば11,000円では済まないから、安全を金で買えるならすぐ買う」 ―
こうコメントしているオーナーがいる。
これが、現在のプリウスオーナーの平均像です。安全意識、めちゃくちゃ高い。
真実⑤「ちゃんとしたオーナー」が、ちゃんと声を上げ始めている
ここまでデータで見てきましたが、最後はちょっと違う角度で。
みんカラやX、ブログ系メディアで「60系プリウス」を検索すると、ここ2年で出てくるオーナー投稿の質が、明らかに変わっているのが分かります。
- 自分でDIYでカスタムを楽しむ大人のオーナー
- 安全装備のアップデートを律儀に追いかける真面目層
- 妻が気に入って毎日乗っている、というファミリー層
- レクサスからの乗り換えで「普段乗りはコンパクトで低燃費なほうがいい」と語る60代
ある60代のYahoo!知恵袋ユーザーは、レクサスを保有しながら新型プリウスへの乗り換えを検討中、と書いていました。「カッコいいクルマを知っている世代にこそ刺さるデザイン」という、ぐうの音も出ない指摘です。
そして、シャコタン・爆音マフラー・濃色フィルムといった、いわゆる”ヤン車仕様”の60系は、街でほぼ見かけません。
これにも理由があって、
- そもそも新車価格が高い(Zハイブリッドで370万円、Z PHEVは460万円)
- 中古車市場にまだ大量に出回っていない(2023年1月発売、中古車流通量はまだ少なめ)
- デザイン自体が完成度が高すぎて、いじる隙がない
10系〜30系のように「安く手に入る大衆エコカーをベースに改造する」という流れが、60系では(まだ)構造的に発生しづらい。
中古市場が成熟するまでの数年間、60系プリウスは「真面目なオーナーが大事に乗る車」というポジションを維持できる可能性が高いのです。
それでも残る、いくつかの正直な弱点
ここまで擁護一辺倒で書いてきましたが、フェアな記事にするために、60系プリウスの正直な弱点にも触れておきます。
❶ 車高が低すぎて、シニアには乗り降りが辛い
60系プリウスの車高はZ・Gで1,430mm、U・Xで1,420mm。アイポイント(運転席からの目線)が低く、年配のオーナーには「乗り降りが大変」という声が多数。これがシニア層比率が下がった一因でもあります。
❷ メーターパネルの文字が小さい(ホンマにホンマにちいさいねん)
ステアリング越しに前方奥に置かれた小さなメーターパネルは、コックピット感を出すための演出。ですが、ある評論家は「老眼の中高年には辛い。『中高年は乗るな!』と言われているようだ」と苦言を呈しています。※今では若年層もスマホ使用で目が悪いことをトヨタは知らないの?
❸ 後方視界の悪さは健在
クーペライクなルーフラインのおかげで美しさは増しましたが、後方視界の悪さは歴代プリウスの伝統。これは構造的にどうにもならない部分です。※このデザインを選んだのだから、ここは仕方ないかも
❹ 内装の質感は、価格の割に微妙
プラスチック多めの内装は、Zハイブリッドで370万円、Z PHEVで460万円という価格を考えると「もう少しなんとかならなかったのか」と感じる人も。
このように完璧な車ではありません。
でも、過去のプリウスが抱えていた”本質的な弱点”の多くは、確実に潰されてきた。これが事実です。
まとめ ― 街で60系を見かけたら、ちょっと優しい目で
3回の連載で、プリウスについて長々と語ってきました。
最後に、もう一度整理させてください。
「プリウスは嫌われている」のではなく、「ある時代のプリウスをめぐる現象が、嫌われていた」
これが、たぶん正しい理解です。
そして60系プリウスは、そのほとんどの要因に、一つひとつ手を入れて変えてきた車です。
- デザインを根本から作り直した
- 購入者層が若返り、世代がバランスよく分散した
- シフトレバーを直感的にした
- 踏み間違い対策をしっかり装備に組み込んだ
- アップデートで安全機能を強化できるようにした
街であのシャープなハンマーヘッドフェイスを見かけたら、思い出してください。
あなたの脳が反射的に発動しかけている「またプリウスか…」という確証バイアス、それはたぶん10系〜50系の記憶から来ているものです。
60系は、もう、あの頃のプリウスじゃない、と思います。
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【第1回】【プリウスが嫌われる理由】運転マナーが悪すぎる…ドライバーたちの本音、集めました
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【第3回】5代目「60系」プリウスへ。デザイン、購入者層、シフトレバー、安全装備 ― すべてが変わった現行モデルは、本当に”あの頃のプリウス”とは別の車なのか?
※本記事は2026年6月時点の公開情報に基づいています。グレード別装備内容や価格は変更される可能性があるため、購入を検討される際は必ずトヨタ公式サイトまたは販売店で最新情報をご確認ください。


