目次
1. 警告灯を黒テープで隠して車検に通るのか?
黒テープで隠す行為は完全なNG
車検の時期が近づき、スピードメーター内の警告灯(けいこくとう)が点灯したままになっていると、非常に焦ります。
修理代を節約したいという思いから、警告灯の光を黒テープで隠すという強引な手段を考える人がいるかもしれません。
しかし、結論から言うと、警告灯を黒テープで隠しても車検には絶対に通りません。
検査員はメーターパネルの表面を見るだけでなく、正しい作動状況を厳密にチェックします。
テープを貼って光を見えなくする行為は、意図的な隠蔽(いんぺい)とみなされます。
その状態では、車検の審査そのものを拒否されることになります。
| 隠蔽(いんぺい)方法 | 車検の合否 |
|---|---|
| 上から黒テープを貼る | 不合格(審査不可) |
| シールやステッカーで隠す | 不合格(審査不可) |
| メーターのパネルを黒く塗る | 不合格(審査不可) |
検査員はどのようにチェックするのか
車検の現場において、検査員はイグニッションキーをON(またはパワースイッチをON)にした瞬間のメーターの動きを確認します。
正常な自動車の場合、システムチェックのために一時的にすべての警告灯が点灯します。
その後、エンジンが始動すると、異常がない場合は速やかに消灯します。
検査員は、この「一度点灯し、その後消える」という一連の動作を見ています。
もし黒テープを貼っていた場合、キーをONにした時に点灯すべき警告灯が光りません。
この時点で、警告灯の異常や隠蔽(いんぺい)がすぐに発覚します。
| キーの操作 | 正常なメーターの反応 |
|---|---|
| イグニッションON(エンジン停止) | すべての警告灯が点灯する |
| エンジン始動直後 | すべての警告灯が消灯する |
| エンジン始動後(異常ありの場合) | 該当する警告灯が点灯したままになる |
2017年の審査基準改正による厳格化
昔は検査員の見落としで通ってしまったという噂話を聞くことがあるかもしれません。
しかし、2017年(平成29年)2月から車検の審査基準が厳格化されました。
独立行政法人自動車技術総合機構(じどうしゃぎじゅつそうごうきこう)の規定が改定されたのです。
これにより、特定の警告灯が点灯または点滅している自動車は、車検の審査自体を受けられなくなりました。
これを「審査の受検を認めない」という強い表現で通達しています。
つまり、不合格になる以前に、車検のスタートラインにすら立てないということです。
| 年代 | 警告灯点灯時の車検対応 |
|---|---|
| 2017年1月以前 | 検査員の裁量で通るケースが稀にあった |
| 2017年2月以降 | 規定により審査自体が完全に拒否される |
| 現在 | 隠蔽(いんぺい)を含め一切の誤魔化しが不可 |
| この章のまとめ | |
|---|---|
| 黒テープの隠蔽 | 車検には絶対に合格しない |
| キーON時の動作 | 全点灯の確認でテープの存在がバレる |
| 2017年の法改正 | 警告灯の異常がある車両は審査不可になった |
| 引用元 |
|---|
| 独立行政法人自動車技術総合機構「審査事務規程 第4章 新規検査等の審査結果の判定等」(令和5年更新) |
| 国土交通省「自動車の検査時の警告灯の点灯状態の確認について」(平成29年2月) |
2. 車検でチェックされる重要な警告灯(けいこくとう)の種類
エンジン警告灯(原動機チェックランプ)
車検で厳しくチェックされる警告灯の中でも、最も代表的なのがエンジン警告灯です。
この警告灯は、エンジンの制御系や排気ガス浄化システムなどに異常がある場合に点灯します。
別名原動機(げんどうき)チェックランプとも呼ばれます。
エンジン警告灯が点灯していると、排気ガスが保安基準に適合しない可能性が非常に高いと判断されます。
O2センサー(オーツーセンサー)やエアフロセンサーの故障などが原因で点灯することが多いです。
このランプが点灯している状態では、いかなる理由があっても車検には通りません。
| 主な故障箇所 | 症状や影響 |
|---|---|
| O2センサー | 排気ガスの濃度が基準値をオーバーする |
| エアフロセンサー | エンジンの回転が不安定になる |
| イグニッションコイル | 点火不良でエンジンが正常に作動しない |
ブレーキ警告灯とABS警告灯
自動車の安全に関わる最も重要な機能がブレーキです。
そのため、ブレーキ警告灯が点灯している状態も車検で一発不合格となります。
サイドブレーキを下ろしているのに赤いランプが消えない場合は、ブレーキフルード(ブレーキ液)の不足やブレーキパッドの極端な摩耗が疑われます。
また、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)警告灯も見逃せません。
急ブレーキ時にタイヤのロックを防ぐABS機能に異常があると、安全に停止できない危険性があります。
ブレーキ周りの警告灯は、命に直結する危険な状態を示しているため、厳格に審査されます。
| 警告灯の種類 | 点灯する主な原因 |
|---|---|
| ブレーキ警告灯(赤色) | ブレーキフルード不足、制動力の異常 |
| ABS警告灯(黄色) | 車輪速(しゃりんそく)センサーの断線や故障 |
| ブレーキ警告灯(黄色) | 電子制御パーキングブレーキのシステム異常 |
エアバッグ警告灯
衝突時に乗員を保護するエアバッグ警告灯も、車検における必須チェック項目です。
運転席の前方エアバッグだけでなく、側方(そくほう)エアバッグの異常も審査の対象になります。
エアバッグの配線コネクターの接触不良や、ステアリング内のスパイラルケーブルの断線が主な原因です。
社外品のステアリング(ハンドル)に交換している場合、この警告灯が点灯しやすくなります。
正しくキャンセラーを装着して警告灯を消灯させないと、車検の審査を受けることができません。
乗員の命を守る装置である以上、エアバッグのシステム異常は絶対に許容されません。
| エアバッグの種類 | 車検での扱い |
|---|---|
| 前方エアバッグ | 点灯・点滅していると審査不可 |
| 側方(サイド)エアバッグ | 点灯・点滅していると審査不可 |
| 社外ハンドル交換時 | キャンセラーで正常に消灯すれば合格 |
| この章のまとめ | |
|---|---|
| エンジン警告灯 | 排ガス異常の可能性があり車検NG |
| ブレーキ・ABS警告灯 | 命に関わる制動装置の異常であり車検NG |
| エアバッグ警告灯 | 乗員保護装置の作動不良となり審査不可 |
| 引用元 |
|---|
| 国土交通省「自動車の検査・点検整備に関する基礎知識」(令和4年版) |
| 日本自動車整備振興会連合会「車検時の警告灯点灯に関する注意事項」(平成29年2月) |
3. メーターパネルの分解や電球を抜く行為も車検不合格になる
球切れや意図的な消灯の確認方法
黒テープで外側から隠すのがダメなら、メーターパネルを分解して電球(バルブ)を抜いてしまおうと考える悪質なケースも存在します。
現在主流のLEDメーターでは基板を破壊しなければ消灯させることができませんが、古い車種では物理的に電球を抜くことが可能でした。
しかし、電球を抜いて警告灯を消す行為も完全に無意味です。
第1章で触れた通り、検査員はイグニッションキーをONにした時の全点灯チェックを必ず行います。
もし電球を抜いていれば、エンジン始動前に点灯すべきランプが光りません。
検査員は「球切れ」または「意図的な電球の抜き取り」と即座に判断します。
| 消灯させる手口 | 検査員が気付く理由 |
|---|---|
| メーター内部の電球を抜く | キーON時の初期チェックで光らないためバレる |
| 基板のLEDを破壊する | キーON時の初期チェックで光らないためバレる |
| 配線をカットする | キーON時の初期チェックで光らないためバレる |
配線を細工する悪質な偽装
さらに手の込んだ手口として、他の正常なランプの配線に警告灯の配線を割り込ませるという偽装工作を行う事例も過去にありました。
たとえば、油圧警告灯の配線とエンジン警告灯の配線を繋げてしまうような行為です。
これを行うと、キーON時に点灯し、エンジン始動後に消灯するため、一見すると正常に作動しているように見えます。
しかし、現代の車検ではこのような配線偽装も通用しなくなっています。
なぜなら、各警告灯が消灯するタイミングは、車種やシステムによって微妙に異なるからです。
プロの検査員は、ランプが消える不自然なタイミングや同時消灯を見逃しません。
| 消灯のタイミング | 検査員の判断基準 |
|---|---|
| エンジン始動と同時に全て一斉に消える | 配線を結線した偽装の疑いが強い |
| システムごとの適切な間隔で消える | 正常なシステムチェックの挙動と判断 |
| エンジン始動後も消えない | システムに異常があると判断 |
メーター改ざんの疑いとリスク
メーターパネルを不用意に分解したり細工を施したりすると、メーターの改ざんを疑われるという大きなリスクを背負います。
スピードメーターは、走行距離を記録する重要な部品です。
不自然な分解の痕跡が見つかった場合、走行距離を戻したのではないかという疑惑を持たれます。
また、自分でメーターを分解した際、スピードメーターの針を壊してしまったり、他の正常な機能まで破損させたりするケースが後を絶ちません。
そうなれば、メーターアッセンブリーごとの高額な交換が必要になります。
警告灯を誤魔化そうとした代償は、結果的に数十万円の出費という形で跳ね返ってくるのです。
| メーター細工のリスク | 発生する問題と被害 |
|---|---|
| 改ざんの疑い | 車の査定額が大幅に下落、または買取拒否される |
| 部品の破損 | スピードメーター自体の故障を引き起こす |
| 修理費用の増大 | メーター一式の交換となり高額な修理費がかかる |
| この章のまとめ | |
|---|---|
| 電球の抜き取り | キーON時に点灯しないためすぐに発覚する |
| 配線の偽装 | 不自然な消灯タイミングで検査員に見破られる |
| 分解によるリスク | メーター破損や走行距離改ざんの疑いを持たれる |
| 引用元 |
|---|
| 日本自動車整備振興会連合会「メーターパネル内の警告灯の確認手法について」(平成30年) |
| 自動車公正取引協議会「走行距離計(メーター)の交換・改ざんに関する注意喚起」(令和3年) |
4. 最新の「OBD車検」により誤魔化しは完全に不可能に
OBD(車載式故障診断装置)車検とは何か
2024年(令和6年)10月から、日本の車検制度に「OBD(車載式故障診断装置)車検」という新しい検査が本格的に導入されました。
OBD(オービーディー)とは、車のコンピューターが記憶している故障の履歴を記録する装置のことです。
正式には車載式故障診断装置(しゃさいしきこしょうしんだんそうち)と呼びます。
この新しい車検制度では、法定の電子的なスキャンツールを車のコネクターに直接接続して検査を行います。
これまでは検査員の目視によるチェックが中心でした。
しかし、これからは車のコンピューターに記録されたエラーコードを直接読み取ることになります。
| 検査手法の違い | 内容 |
|---|---|
| 従来の車検 | 検査員の目視によるメーターパネルの確認 |
| OBD車検 | スキャンツールを用いた電子的なエラーの読み取り |
電子的な故障記録はテープでは隠せない
このOBD車検の導入により、黒テープで警告灯を隠す行為は完全に無意味なものとなりました。
たとえ外側からメーターの光を見えなくしても、電球を抜いて消灯させても、コンピューターの内部には故障の記録がエラーコードとして残っているからです。
スキャンツールを接続した瞬間、「特定DTC(故障コード)」という形で異常が画面に表示されます。
自動運転技術(ADAS)に関わるカメラやレーダーの故障、排ガス制御システムの異常などが対象になります。
特定DTCが検出された場合、問答無用で車検は不合格となります。
物理的な隠蔽(いんぺい)ではなく、電子的なデータ通信で検査されるため、誤魔化しは100%不可能です。
| 隠蔽工作 | OBD検査機による結果 |
|---|---|
| 黒テープで警告灯を隠す | 特定DTCが検出され不合格 |
| 警告灯の配線を切断する | 特定DTCが検出され不合格 |
| エラー履歴を一時的に消去する | 異常が根本的に直っていなければ再点灯して不合格 |
OBD車検の対象となる車両
すべての車がすぐにOBD車検の対象になるわけではありません。
対象となるのは、国産車の場合は2021年(令和3年)10月1日以降に新型車として生産された車両です。
輸入車の場合は、2022年(令和4年)10月1日以降に新型車として生産された車両が対象となります。
これらの対象車両が最初の車検を迎えるタイミング(乗用車であれば3年後)に合わせて、順次検査がスタートしています。
対象外の古い車であっても、目視による警告灯の点灯チェックは従来通り厳格に行われます。
つまり、年式を問わず、警告灯の異常を放置したまま車検を通す手段は存在しないということです。
| 車両区分 | OBD車検の対象となる製造時期 |
|---|---|
| 国産車 | 2021年(令和3年)10月1日以降の新型車 |
| 輸入車 | 2022年(令和4年)10月1日以降の新型車 |
| それ以前の車両 | 対象外(ただし従来の目視チェックは継続) |
| この章のまとめ | |
|---|---|
| OBD車検の開始 | 2024年10月からスキャンツールによる電子検査が導入 |
| スキャンツールの威力 | 内部の故障記録を読み取るためテープの隠蔽は無意味 |
| 対象となる自動車 | 2021年10月以降の国産新型車(輸入車は1年遅れ) |
| 引用元 |
|---|
| 国土交通省「OBD検査ポータルサイト 制度の概要」(令和5年更新) |
| 独立行政法人自動車技術総合機構「特定DTCの照会等の運用について」(令和6年) |
5. 警告灯が点灯したまま車検を迎える場合の正しい対処法
ディーラーや整備工場での診断(しんだん)を急ぐ
車検が近づいているにもかかわらず警告灯が点灯してしまった場合、素人が自己判断で何とかしようとするのは最も危険です。
まずは一刻も早く、ディーラーや設備の整った民間整備工場へ車を持ち込んでください。
プロの整備士は専用の診断機(スキャンツール)を使って、車のコンピューターにアクセスします。
これにより、どこがどのように故障しているのか、正確な原因を特定することができます。
単なるセンサーの一時的な誤作動であれば、エラー履歴の消去だけで警告灯が消えるケースもあります。
しかし、部品の故障であれば、適切な交換作業を行わなければ警告灯は消えません。
| 依頼先 | 特徴とメリット |
|---|---|
| 正規ディーラー | メーカー専用の診断機があり、複雑な電子故障に強い |
| 民間整備工場 | 汎用の診断機を持ち、修理費用が比較的安く抑えられる |
| カー用品店 | 簡易的な診断は可能だが、深いシステム修理は断られる事がある |
センサー類の故障は早めの修理が鉄則
エンジン警告灯やABS警告灯の原因として最も多いのが、各種センサー類の故障です。
O2センサーや車輪速(しゃりんそく)センサーなどは、走行距離が伸びると劣化して故障しやすくなります。
センサー自体の部品代は数千円から数万円程度ですが、放置すると他の重要な部品まで連鎖的に壊してしまう恐れがあります。
たとえば、O2センサーの異常を放置すると、排気ガスを浄化する触媒(キャタライザー)が破損し、修理費が10万円を軽く超える事態になります。
車検を通すためだけでなく、車を安全に長く乗るためにも、警告灯の修理は最優先で行わなければなりません。
黒テープで隠そうなどという考えは捨てて、根本的な修理に予算を回すのが正解です。
| 故障箇所 | 放置した場合の二次被害の例 |
|---|---|
| O2センサー | 触媒(キャタライザー)の破損による高額修理 |
| ABSセンサー | 雨天時の急ブレーキでタイヤがロックし事故に繋がる |
| イグニッションコイル | エンジン内部に未燃焼ガスが入りエンジン本体の故障 |
修理費用の見積もりと買い替えの検討
整備工場で診断を受けた結果、修理費用が数十万円と非常に高額になるケースもあります。
ハイブリッドカーの駆動用バッテリーの寿命や、制動倍力装置(せいどうばいりょくそうち)などの主要ユニットの故障が原因の場合です。
車検費用に加えて高額な修理代が上乗せされるとなると、家計にとって大きな負担になります。
その車がすでに10万キロ以上走行していたり、初度登録から10年以上経過している場合は、車の買い替え(乗り換え)を検討するタイミングかもしれません。
警告灯が点灯した状態でも、買取専門業者であれば値段をつけて買い取ってくれることがあります。
修理して車検を通すか、車を売却して新しい車に乗り換えるか、複数の選択肢から冷静に判断することが重要です。
| 選択肢 | 判断の目安となる状況 |
|---|---|
| 修理して車検を通す | 修理代が数万円以内で、これからも長く乗りたい場合 |
| そのまま買い取りに出す | 修理代が数十万かかり、車の年式も古くなっている場合 |
| 廃車(スクラップ)にする | 走行不能で、買取店でも値段がつかない重大な故障の場合 |
| この章のまとめ | |
|---|---|
| プロによる診断 | スキャンツールを使って故障原因を特定してもらう |
| 早期修理の重要性 | 放置すると別の部品が壊れて修理費が跳ね上がる |
| 買い替えの検討 | 高額な修理代がかかる場合は売却・乗り換えも視野に入れる |
| 引用元 |
|---|
| 日本自動車整備振興会連合会「定期点検整備推進ポータルサイト 警告灯の意味と対応」(令和4年) |
| 各自動車メーカー(トヨタ、ホンダ、日産など)公式取扱説明書「警告灯が点灯したときは」(令和6年版) |


