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【プチ調査】酸化マグネシウムの便秘薬は毎日飲む?飲んでも大丈夫?やめどきは?
※記事内容はインターネットの情報を収集・精査したもので、あくまでも執筆者個人の見解によるものです。診断・治療行為ではありません。便秘症状のある方で診断・治療を必要とする方は、消化器内科、胃腸内科、内科、肛門科などを受診してください。 |
酸化マグネシウムは便秘薬の主成分として、病院での処方薬、市販の便秘薬として、広く使用されている成分です。
酸化マグネシウムを主成分とした市販の便秘薬としては、コーラックMg(大正製薬)、スルーラック・マグネシウム(エスエス製薬)、酸化マグネシウムE便秘薬(健栄製薬)、3Aマグネシア(佐藤薬品)などがあります。
日本で酸化マグネシウムが使用されるようになったのは昭和25年からで、関連企業による平成25年の推定使用患者数は約1,000万人です。<参考:厚生労働省>
このページのテーマは「酸化マグネシウムの便秘薬は毎日飲む?飲んでも大丈夫?やめどきは?」というものですが、私がプチ調査した結果として、まずは大まかな結論をご報告しておきます。
- 酸化マグネシウムの便秘薬を毎日飲んでいる人はかなりの数いる。
- 市販の酸化マグネシウム剤を販売している製薬会社の説明文には、「酸化マグネシウムは非刺激性の薬で、腸を直接刺激するものではない。したがって、お腹が痛くなりにくく、クセになりにくい」という意味の記載がある。どの製薬会社の説明文もこの点はほぼ共通している。
- ただし、酸化マグネシウムを毎日飲むことの是非、毎日飲んでも大丈夫かに関しては、特に明確な記載はない。毎日飲んでも大丈夫、と記載している説明文は見当たらない。<参考:大正製薬、エスエス製薬、健栄製薬、佐藤薬品>
- 記載はないが、実際には、便秘に悩む多くの人がほぼ毎日、あるいは、けっこうな頻度で飲んでいるようである。※正確な調査はないのであくまでも推測。
- そのようにほぼ毎日、あるいは、けっこうな頻度で年間1000万人を超える便秘持ちの人々が酸化マグネシウムの便秘薬を飲み続けているであろう中で、重篤な副作用が日本のあちらこちらで頻繁に報告されているか?
- いや、そういう報告はほとんどない。
- ただし、一部重篤な報告はある。
- 平成17年4月から平成20年8月までに、「酸化マグネシウムの服用と因果関係が否定できない高マグネシウム血症15例(うち死亡2例)」が報告されている。<参考:北海道薬剤師会>
- その他の比較的重篤な事例として、「酸化マグネシウム製剤を服用していた80歳代の女性は、朝6時に嘔吐があり、9時半までは意識清明だったが、その1時間後に意識消失しているところを発見され、救急搬送された。搬送時の血清マグネシウム値は10.7mg/dLに上昇し、その後、血液透析を受けて正常値まで戻った。」<参考:保健指導リソースガイド>
- また、「70歳代の男性は、呼吸困難、悪心があり、救急外来を受診。慢性うっ血性心不全増悪の診断で入院したが、その後も悪心、食欲不振が続き、血液検査を受けた。血清マグネシウム値が4.2mg/dLと高く、酸化マグネシウム製剤の内服を中止。その後、悪心、食欲不振は改善した。」<参考:保健指導リソースガイド>
- こうした事例を踏まえて、厚生労働省では関連企業(製薬会社など)に対して、酸化マグネシウムの使用上の注意事項に以下の点を加えるよう指導している。(1)酸化マグネシウムの使用は必要最小限にとどめること。(2)長期投与又は高齢者へ投与する場合には、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなど高マグネシウム血症の発症に十分注意すること。(3)高マグネシウム血症の初期症状(嘔吐,徐脈,筋力低下,傾眠等)が認められた場合には,飲むのを中止し,医療機関を受診するよう患者に指導すること。<参考:厚生労働省>
- 以上のことから、このページのテーマである「酸化マグネシウムの便秘薬は毎日飲む?飲んでも大丈夫?やめどきは?」に関する答えは、ある程度明確である。
- つまり、毎日酸化マグネシウムを飲み続けると、高マグネシウム血症になる可能性がある(特に高齢者)。また、すでに腎障害を持つ人が毎日酸化マグネシウムを飲み続けると高マグネシウム血症になるリスクが高まる。
- したがって、酸化マグネシウムのやめどきは、高マグネシウム血症の初期症状である「吐き気、嘔吐、立ちくらみ、めまい、脈が遅くなる、皮膚が赤くなる」等の症状が出た時、あるいは、定期的な血清マグネシウム濃度を測定した結果、高濃度の数値が出た時であり、すぐに飲むのをやめ、医師に相談すべきである。
- その一方で、比較的年齢の若い人が酸化マグネシウム便秘薬を頻繁に飲んでも、それほど重篤な症状に至るケースはほとんど見られない。
- これが現時点での答えになる。<参考:厚生労働省><参考:保健指導リソースガイド>
- なお、酸化マグネシウムを主成分とする市販の便秘薬には、次のような「使用上の注意」がある。
次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)高齢者。
(4)次の症状のある人。 はげしい腹痛、吐き気・嘔吐
(5)次の診断を受けた人。 腎臓病<参考:スルーラックマグネシウム・エスエス製薬>
服用の「やめどき」は高マグネシウム血症の初期症状
「酸化マグネシウムの便秘薬は毎日飲む?飲んでも大丈夫?やめどきは?」というテーマで解説しています。
プチ調査の結果、酸化マグネシウムの便秘薬を長期間にわたって毎日飲み続けた場合は、高マグネシウム血症になるリスクがあることがわかりました。
そのため、厚生労働省では、酸化マグネシウムを長期間投与したり高齢者へ投与したりする場合には、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するよう注意を呼びかけています。
そこで、「血清マグネシウム濃度」と「症状」の関係をまとめてみました。
血清マグネシウム濃度 | 症状 |
4.9~ | 悪心、嘔吐、起立性低血圧、皮膚潮紅、傾眠、筋力低下、無気力など |
6.1~12.2 | ECG異常など |
9.7~ | 腱反射消失、嚥下障害、低血圧など |
18.2~ | 昏睡、血圧低下、心停止など |
出典:医薬品医療機器総合機構(2020年)
上記にあるように、血清マグネシウム濃度が4.9を超えてくると、明白な副作用が現れてくることがわかります。
したがって、酸化マグネシウムを毎日、あるいは、頻繁に飲んでいる人は、定期的に血清マグネシウム濃度の検査を受けるべきです。
特に、高齢者や腎臓を患っている人、妊娠中の人、その他医師の治療を受けている人は、定期検査を受けるべきです。
検査の結果、上記数値に達している場合は、酸化マグネシウム便秘薬の「やめどき」と言うことになります。
あるいは、自覚症状として高マグネシウム血症に特有の初期症状である、
- 吐き気
- 嘔吐
- 立ちくらみ
- めまい
- 脈が遅くなる
- 皮膚が赤くなる
- 体がだるい
- 眠気でぼんやりうとうとする
といった症状が現れたら、やはりその時は酸化マグネシウムの「やめどき」ということになります。
薬を飲むのをやめて、すみやかに消化器内科、胃腸内科、内科、肛門科などを受診してください。
酸化マグネシウム便秘薬を使用している人の声
「酸化マグネシウムの便秘薬は毎日飲む?飲んでも大丈夫?やめどきは?」をテーマにプチ調査した結果をご紹介しています。
この章では、アットコスメに投稿された口コミをご紹介します。非刺激性である市販の酸化マグネシウム便秘薬を飲んでいる人の声です。
オリンピックの採点競技のように、最高点と最低点をカットし、中間点の声に絞りました。
病院から貰ったのが無くなったので代わりに良いのないかなーと見つけたのがこれです。1錠330mgで処方されていたのと同じ量だったので同じ効果得られました。ちょっと痛くなるけど下痢ほどじゃないし出せば楽になるからおすすめです。(19歳・コーラックMg)
最少量の3錠から始めました。確かにお腹は痛くなりませんが、尿と同じくらい緩くなりました。自分は服用後12時間位すると効き始めます。幼少期から慢性的な便秘持ちだった自分としては感動しました。(26歳・コーラックMg)
1-3錠と書いてありどうせ飲むならしっかり出したいと思い3錠飲みました。20時に飲み夜中の3時ごろ腹痛で起き、その後も朝方2、3回起きました。しっかりお腹は痛くなりますが、期待通り出てくれます。(22歳・スルーラックマグネシウム)
(気をつける点)お腹は痛くなるので飲んだ翌日予定ない日に飲んでいます!下痢になることもあります△。
(良い点)癖になりにくいかも◎。リピートしているので結構飲んでいますが一錠で効果あります◎。(27歳・スルーラックマグネシウム)
個人的に良いサイクルになるのは「寝る前」の服用。朝起きてからや、日中の空腹時(食後から3時間以上経過した頃)に飲んでも効果を感じられましたが、1日のサイクルが整うのもあって寝る前がちょうど良かったです。(34歳・酸化マグネシウムE便秘薬)
初めては3粒からとありましたが、私の場合3粒だと効果がありすぎました。不思議なものでお腹は全く痛くないけど、下痢なんですよね。2粒でも結構ゆるい感じなので、今は1日おきに1粒で落ち着いています。ちなみに就寝前に服用すると出るのは次の日の昼過ぎです。(43歳・酸化マグネシウムE便秘薬)
参照:アットコスメ
「得られるメリットとリスクを天秤にかけた場合」
上記口コミにもあるように、酸化マグネシウム便秘薬を飲んでいる人は、毎日あるいは頻繁に使用しているようです。
厚生労働省の報告には、高マグネシウム血症になった人のうち、「その多くは意識消失等の重篤な症状があらわれるまで高マグネシウム血症の発症に気づかれていませんでした。」とあります。<参考:厚生労働省>
つまり、特に高齢者に対して症状をよく確認しないままルーティンとして酸化マグネシウムを投与し続けた結果、高マグネシウム血症を発症する人が出たという話です。
しかも、酸化マグネシウムの平成25年における推定使用患者数は約1,000万人であるのに対して、酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症は,平成24年4月から平成27年6月までに29例(うち死亡4例)報告され、このうち19例(うち死亡1例)は酸化マグネシウムの服用と因果関係が否定できない症例ということです。
1000万人対19例(うち死亡1例)です。
<参考:厚生労働省>
新型コロナウイルスのワクチン接種の議論で何度も耳にしてきた「得られるメリットとリスクを天秤にかけた場合」で考えると、酸化マグネシウムが相当程度安全な薬であることは間違いないようです。
とりわけ年齢が若い人の場合は、習慣的に毎日飲むのはよくないでしょうが、頻繁とは呼べない程度の頻度であれば、酸化マグネシウム便秘薬は飲んでも大丈夫な成分かもしれません。
ただ、ここでも繰り返しますが、たとえ年齢が若い人であっても、毎日あるいは頻繁に服用していて、高マグネシウム血症の初期症状である、
- 吐き気
- 嘔吐
- 立ちくらみ
- めまい
といったものが見られたら、その時は酸化マグネシウムは「やめどき」だと思います。薬の服用をやめて、病院を受診してください。
受診すべき病院の診療科は、消化器内科、胃腸内科、内科、肛門科などです。
まとめ
このページでは「酸化マグネシウムの便秘薬は毎日飲む?飲んでも大丈夫?やめどきは?」というテーマで私がプチ調査した結果をご案内してきました。
一般論として、酸化マグネシウム便秘薬を毎日飲み続けることは避けた方がいいと思います。たとえ、重篤な副作用等の報告例がわずかであっても、毎日飲んでも大丈夫だと安心しきって飲み続けるのは良くないと思います。
そもそも、便秘を解消するには、生活習慣や食生活の見直しが大前提であり、薬は対症療法です。
製薬会社の説明、また、使用者の口コミにあるように、確かに酸化マグネシウムはクセになりにくい薬で、腸を直接刺激するタイプの薬ではないので、仮に毎日飲む習慣が身についていたからといって、必ず重篤な副作用が起こる、といった薬ではないと思います。
けれども、薬に頼りきって、自分の食生活や生活リズムを見直さず、今まで通りの便秘になりやすい生活を続けていては、5年たっても10年たっても何も改善されないと思います。
酸化マグネシウムをはじめとする便秘薬は、一時避難的な使用にとどめるべきで、薬を服用して便通が安定している期間は、便秘になりにくい新たな生活リズムや食習慣を身につけるための助走期間と捉えるべきだと思います。
・・・と正論を吐きつつ、しかし便秘になりやすい人が相当数いて、そう簡単に便秘に縁のない体質が得られるものでないことも承知しています。
私としては、一日でも早く薬の「やめどき」が来ることをお祈りしています。
ご覧いただきありがとうございました。