駐車場などでイタズラされたり落書きされたりして車が傷つけられた場合、犯人が捕まることは稀です(統計で10%以下)。
そうなると自分で何とかしなければなりません。
頼りになるのは自動車保険です。
特約として車両保険をつけている場合は一般条件でもエコノミーでも支払対象です。
保険を使うと1等級ダウンし事故有期間1年が付きます。
このページでは駐車場などで車が傷つけられた場合の自動車保険の扱いについてわかりやすく解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
【記事丸わかり】
⇒⇒車の事故でそれなりに損傷が大きかった時に、保険で修理代が支払われるとしても修理をするべきではないパターン |
車が傷つけられた⇒⇒⇒発見したら即座に警察と保険会社へ
駐車場等に駐車中の車が傷つけられた事例は全国的に頻発しています。
コインで長いひっかき傷をつけられたり、ペンキを塗られたり、ガラス部分を割られたり、タイヤをパンクさせられたり、いろんなやり方で車が傷つけられた経験を持つ人はけっこう大勢います。
これは事故や不注意で起こることではなく、何者かによる「故意」によってなされる立派な犯罪です。
犯人が捕まった場合は器物損壊罪に問うことができ、「三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料」に処せられます(刑法261条)。
ところが、この器物損壊罪の犯人検挙率は10%以下です。
駐車場で車が傷つけられた事例は器物損壊罪の中の一部ですから、車のイタズラ等の検挙率はさらに低いことになります。
では警察に事故届をしてもあまり意味がないのでしょうか?
いえ、そうではありません。
ひょっとすると犯人が見つかるかもしれないと言うだけでなく、自動車保険との関係で、警察への届出は重要になります。
したがって、駐車場などで車が傷つけられた状態にあることを発見した場合は、まず次の行動をとってください。
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以上の行動をまず取っていただきたいと思います。
なんだか当たり前のことを書いているように思われるかもしれません。
しかし、イタズラや落書きの被害に関しては、できるだけ早めに警察等へ届出することが重要になってきます。
一般的に、いたずらや落書きの程度が軽い場合、とかく警察や保険会社への届出を躊躇する傾向が見られます。
「この程度の傷ならたぶん保険を使うほどではないだろう」
とか、
「警察に届出したら、現場検証とかで時間が取られて面倒だし・・・」
ということで、しばらく様子を見てしまうケースが多く見られます。
また、イタズラや落書きなどで車が傷つけられた場合、何となく犯人に思い当たるフシがあることがあって、その場合の想定される犯人は知人であることが多く、そのため、特に警察へ届出すると大事になりそうな気がして、つい届出を思いとどまってしまうこともあります。
しかし、すぐに届出をしない理由が何であれ、こうした初動の遅れは後々不利に働くことがあるので注意しなければなりません。
警察に関して言うと、車にイタズラや落書きをされてから数日とか数週間後に被害届が出された場合、通常、まともには扱ってくれません。
とりあえず被害の受付はするでしょうが、ただそれだけです。
したがって、ただでさえ検挙率が低いのですから、犯人が捕まる可能性はほとんどないでしょう。
自動車保険との関係で言うと、車へのイタズラや落書きは、保険会社にとって要注意案件です。
車の盗難や自損事故と並び、イタズラ・落書きは「自作自演」が容易な案件なので、保険会社は他の事故に比べてより綿密な「調査」を行います。
「本当に被害を受けた傷なのか?ひょっとして自分でつけた傷ではないのか?」
と言う視点で厳しくチェックされます。
その際、警察に被害届が出されていない、マンションや店舗の駐車場管理者にも届出がない、保険会社への届出も遅かった、ということになると、
「そもそもこれは本当にイタズラ・落書きの被害なのか?」
と疑惑をむき出しにした事故対応になるはずです。
認定を得られずに支払いを拒否されるケースもしばしばあります。
このようなあらぬ嫌疑により不快な思いをしたり支払いを拒否されたりすることがないよう、イタズラや落書きの被害を受けたら、即座に警察や保険会社に届出をしてください。
特に保険会社に届出をする際、被害の大小は問題にしないでください。
修理代がいくらになるかはシロウトにはわからないことで、後で見積額を見てびっくりするなんてことはよくあることです。
また、実際に1万円か2万円程度の小損害であったとしても、その時は保険を使わなければいいだけのことです。
事故届けをしたら必ず保険を使わなければならないというルールはありません。
車が傷つけられた⇒保険使用⇒1等級ダウン・事故有期間1年
車の保険の特約の1つに車両保険があります。
イタズラ・落書きなどによって車が傷つけられた場合、車両保険に加入していないと補償されません。
車両保険には大別すると2つの補償タイプがあって、それがエコノミーと一般条件です。
下記の表は、エコノミーと一般条件の補償内容、保険を使ったときの等級の落ち方についてです。
イタズラ・落書きなどによって車が傷つけられた損害は、上から5行目の「イタズラ・落書き・窓ガラス破損」です。
補償内容 | エコノミー | 一般条件 | 保険を使った場合の等級ダウン |
車同士の衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
盗難 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
台風・竜巻・洪水・高潮 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
火災・爆発 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
イタズラ・落書き・窓ガラス破損 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
飛来中・落下中の他物との衝突 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
2輪自動車・原付バイクとの衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
単独の自損事故 | × | 〇 | 3等級ダウン |
当て逃げ | × | 〇 | 3等級ダウン |
ご覧のように、イタズラ・落書きなどで車が傷つけられた損害は、エコノミーでも一般条件でも支払い対象になり、保険を使うと翌年度の等級は1つダウンします。※事故有期間1年も付く。事故有期間については後ほど解説します
イタズラ・落書きなどで車が傷つけられた損害の特徴は、被害の程度が非常に幅広いことです。
数千円程度の修理代ですむ場合もあれば、10万円を軽く超えてしまう損害も珍しくありません。
とりわけ車の複数のパーツにまたがる線傷などは想像以上に修理代がかかります。
たとえば、フロントフェンダーからフロントドア、リアドア、リアフェンダーにかけて石やコインで一本の引っかき傷が付けられた場合、線そのものが細いものでも、10万円は軽く超えるでしょう。
いずれにしても、保険を使うべきか自腹を切るべきか、具体的な数字で判断するしかありません。
次の項目で、具体的な数字の出し方についてご説明いたします。
参考になさってください。
車が傷つけられた:保険を使うか使わないか計算する方法と使う目安
車が傷つけられた損害で保険を使った場合に翌年の保険料がどれだけ上がるか。
これが事前にわからなければ、保険を使う使わないを判断できません。
そこで、保険を使った場合の将来保険料をシミュレーションしてみたいと思います。
<計算条件> |
|
※実際の保険料算出には、年齢条件・料率クラスなども影響しますが、ここではイメージをつかんでいただくために簡略化しています
下の表の左側は、保険を使ったために11等級から1つダウンし、いったん10等級に戻ってからの保険料推移(2年間)です。
右の表は、保険を使わずにいた場合のその後の保険料推移で、12等級から2年間の数字です。
値上がりする保険料の推移 | 保険を使わなかった場合の推移 | |||
経過年 | 等級 | 保険料 | 等級 | 保険料 |
1 | 事故有10等級 | 73,000 円 | 無事故12等級 | 49,000 円 |
2 | 無事故11等級 | 50,000円 | 無事故13等級 | 48,000円 |
123,000円 | 97,000円 |
※「2年間」で比較するのは、1等級ダウンしたものが元の等級に戻るのに2年かかるからです。しかし何年間の推移で比較するのがいいかは考え方によって意見が分かれるところです
さて、2年後の保険料総額を比較すると、保険を使った場合が123,000円で、使わなかった場合が97,000円です。
その差額は26,000円になります。
123,000-97,000=26,000円 |
すると、あくまでも概算になりますが、26,000円がいわゆる「損益分岐点」になってきます。
ですから、車の修理費が26,000円を超える場合は、「保険を使ってもいいかな」という判断になりますし、車の修理費が26,000円を下回るケースでは、「ここは自腹を切っておこうか」ということになります。
上の計算は年間保険料が50,000円のケースでした。
もう少し幅を広げて、30,000円、50,000円、80,000円、100,000円、120,000円、150,000円で上記とまったく同じ計算をしたものが下の表になります。
年間保険料 | いわゆる「損益分岐点」 |
30,000円 | 16,000円 |
50,000円 | 26,000円 |
80,000円 | 41,000円 |
100,000円 | 51,000円 |
120,000円 | 61,000円 |
150,000円 | 77,000円 |
いかがでしょう?
大まかなイメージはつかんでいただけたのではないでしょうか。※金額はあくまでも目安です
実は、上の保険料シミュレーションは、ソニー損保のホームページにある概算保険料ツールを利用して算出しています。
みなさんも、ご自分の条件を入力して、(あくまでも概算になりますが)保険料を算出してみてください。
大まかなイメージはつかめると思います。
ところで、実は、ここからが本題になります。
保険料のシミュレーションの話をしましたが、なにもみなさんが上で紹介したソニー損保の計算ツールを利用したりしなくても、みなさんが加入している保険会社の事故担当者が、通常業務の一環として、ちゃんと保険料を算出してくれます。
各保険会社には、ソニー損保の概算保険料ツールをより厳密にした、「将来保険料計算ツール」(名称は会社により様々ですが)というアプリがあります。
そのアプリで、個別具体的にみなさんのデータを入力して、10円単位まで正確な将来保険料を、上の一覧表のように「一瞬にして」算出してくれます。
ディーラーや修理工場から修理の見積額の連絡が入り、いよいよ保険を使うか使わないかという段階になれば、その計算結果を担当者が提示してくれるので、みなさんは担当者の助言も考慮しつつ、保険を使う使わないの判断をすればいいことになります。
みなさんご自身で複雑な保険料計算をする必要は一切ありません。
代理店型の自動車保険でも通販型の自動車保険でも、いずれもちゃんとやってくれます。
車が傷つけられた:保険を使う使わないは事故処理の最終段階で意思表示すればOK
これは意外と誤解している方が多い事柄なので、念のために書かせていただきます。
イタズラ・落書きなどで車が傷つけられた損害に限らず、どういう形態の事故であれ、とにかく事故で保険会社に事故届けをすると、以後は、保険会社がディーラーや修理工場などと連絡を取り、警察とも情報を交換し、契約者であるあなたにも報告を入れ、事故解決に至るまでの様々な手続きや連絡をあなたに代行してやってくれます。
こうしたサービスは、その事故が「保険金支払いの対象になる事故」である限り、保険会社は提供する義務があります。
ところが、保険の契約者の中には次のように理解(誤解)している方がいらっしゃいます。
「今回の事故は修理代が小額になりそうだから、もしかしたら保険を使わないかもしれない。でも、保険会社に事故連絡したら、結局、保険を使わないといけないことになるのでは?そうなったら困るから、ここは自分でやることにしよう。でも、どこから手をつければいいのか・・・」
このように一人で悩んでしまう方がいらっしゃいます。
とりわけ、イタズラ・落書きなどの損害は相手を特定できないことがほとんどなので、事故直後に保険会社に報告しないケースが結構あります。
先ほど、「保険金支払いの対象になる事故」と書きました。
これは「支払いの対象」になるかどうかが問題で、最終的に保険金を支払うか支払わないかは無関係です。
損害額が1万円とか2万円の事故で、車両保険を使うことはまずないだろうという事故であっても、保険会社は事故解決のためのサービスを提供する義務がありますし、実際、提供してくれます。
修理代が小額になることが予想される事故であっても、事故解決までには、車をディーラーや修理工場に入れ、見積もりを取り、修理の際には代車を手配するなど、様々な手続きが必要になります。
警察との連絡もあります。
保険会社にやってもらうことはたくさんあります。
これを一人でやれますか?
ですから、修理費の見込み額が多い少ないに関わらず、保険金支払いの対象になる事故が発生したら、まず保険会社に事故届けを出し、その後の事故処理は保険会社に任せてください。
事故届けをすると、後日、保険会社から「保険金請求書」という書類が送られてきます。
あなたが確実に保険を使う場合は、この書類に必要事項を記入し、保険会社に返送してください。
使うか使わないか迷っている場合は、この書類を送らず、手元に保管しておいてください。
保険会社は、「保険金請求書」がなければ保険金の支払い手続きに入れません。
いずれにしても、どんな軽微な事故でも、まず保険会社に事故届けを出し、一連の事故処理を代行してもらうことです。
保険を使うか使わないかは、修理見積もりが出た段階で、保険会社の事故担当者に出してもらった将来保険料とを天秤にかけ、そこで最終的な判断をすればいいことです。
保険会社を大いに活用して欲しいと思います。
そのためにお金を払っているのですから。
代理店型でも通販型でも、この点に関しては、対応に違いはありません。
事故有係数とは?
自動車保険のノンフリート等級制度は、ただ単に何等級であるかが問題ではなく、「直近の事故歴」の有無がわかるような表示の仕方になっています。
たとえば、「20等級・事故有期間0年」といった表示で、保険証券にもそのように記載されます。
そこで、キーワードとなるのが「事故有係数」と「事故有期間」です。
以下、順次解説していきますので、しばらくお付き合いください。
自宅駐車場に駐車していた車にイタズラされてボンネットに傷ができ、警察と保険会社に連絡したけれど、結局犯人は捕まらず、後日、車両保険から修理費用を支払ってもらったとします。
これは1等級ダウン事故なので、翌年度の等級は1等級ダウンします。
現在が11等級だとすると、10等級になります。
ここで次の比較表をご覧ください。
事故有 | 無事故 | |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
同じ10等級なのですが、「事故有」と「無事故」で割引率が違います。
2012年10月までは同じ等級に2つの割引が並存するようなことはありませんでした。
しかし現在の等級制度では、事故で保険を使った結果として10等級になった人と、無事故で一つずつ等級の階段を上ってきた結果として10等級になった人とを、同じ扱いにしては不公平だという理由から、このように割引率に差を付けています。
10等級の場合は、実に22ポイントも割引率に差が付いています。
たった1等級ダウンしただけでも、保険料的にはかなり高くなるということです。
このように、事故で保険を使った場合に適用される割引率のことを「事故有係数」と呼びます。
いっぽうで、無事故を続けている場合に適用される割引率のことを「無事故係数」と呼びます。
参考までに、自動車保険のすべての等級(1等級から20等級)を一覧表でご覧ください。
等級 | 事故有係数 | 無事故係数 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
※事故有係数と無事故係数の2系統に分かれるのは7等級~20等級だけです
事故有期間とは?
前の項目の例を続けます。
11等級だった人が、1等級ダウン事故で保険を使ったために翌年の保険が10等級にダウンした場合、事故有期間(事故有係数適用期間)が1年付きます。
1等級ダウン事故なので「1年」、3等級ダウン事故なら「3年」が付きます。
上の画像では事故有期間は「0年」ですが、1等級ダウン事故で保険を使った場合の翌年の保険証券には「1年」と表示されます。※3等級ダウン事故なら「3年」と表示
この事故有期間というのは、「事故有係数を適用する期間」のことです。
つまり、1等級ダウン事故で保険を使ったら、1年間だけ事故有係数を適用しますが、1年過ぎたら11等級に戻り、戻ったその11等級は事故有係数ではなく元の割引率(無事故係数)になる、ということです。
3等級ダウン事故で保険を使ったら、3年間高い保険料を適用するけれど、3年間無事故であれば4年目には元の等級に戻ります。
もしも同じ年度に2度、3度と事故を起こして保険を使ったら、その分は加算されるのですが、事故有期間は最長6年で打ち止めになるので、たとえば3等級ダウン事故で3回保険の支払いを受けても事故有期間は9年ではなく6年ということになります。
話を整理します。
11等級だった人が1等級ダウン事故で保険を使うと、翌年の保険は10等級になります。
この10等級は、無事故で等級の階段を上ってきた人の10等級とは割引率が異なり、より割引率の低い事故有係数となります。
同時に、事故有期間が1年付きます。
1年間は事故有係数によって高い保険料を支払うことになりますが、1年間無事故で過ごせば、2年目にはまた11等級に戻ります。
戻った11等級は、事故有期間の1年がリセットされているので、また元の無事故係数が適用されます。
1等級ダウン事故で保険を使った場合のまとめ |
翌年度1等級ダウンし事故有期間1年が付く。無事故であれば2年後に元の保険料レベルに戻る |
ご覧いただきありがとうございました。