【記事丸わかり】
⇒⇒台風・水害被害は保険請求で対応が出来ます |
車両保険で補償する自然災害には台風・竜巻・突風・高潮・洪水・雹(ひょう)・大雪・雪崩・落雷などによる車の損害があります。
こうした自然災害で保険を使うと翌年の等級は1等級ダウンし事故有期間1年が付きます。
全保険会社共通のルールです。
車同士の事故では3等級ダウンですが、自然災害は無過失のアクシデントなので1等級ダウンに留まります。
このページでは自然災害で車両保険を使った場合の等級の扱いについて詳しく解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
自然災害で車両保険を使うと1等級ダウン・事故有期間1年
台風・竜巻・突風・高潮・洪水・雹(ひょう)・大雪・雪崩・落雷など自然災害による車の損害に対して車両保険から支払いを受けた場合、翌年の等級は1等級ダウンし、事故有期間1年が付きます。
補償内容 | エコノミー+A | 一般条件 | 保険を使った場合の等級ダウン |
車同士の衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
盗難 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
自然災害 (台風・竜巻・洪水・高潮など) | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
火災・爆発 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
イタズラ・落書き・窓ガラス破損 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
飛来中・落下中の他物との衝突 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
2輪自動車・原付バイクとの衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
単独の自損事故 | × | 〇 | 3等級ダウン |
当て逃げ | × | 〇 | 3等級ダウン |
事故有係数とは?
自動車保険のノンフリート等級制度は、ただ単に何等級であるかが問題ではなく、「直近の事故歴」の有無がわかるような表示の仕方になっています。
たとえば、「20等級・事故有期間0年」といった表示で、保険証券にもそのように記載されます。
そこで、キーワードとなるのが「事故有係数」と「事故有期間」です。
以下、順次解説していきますので、しばらくお付き合いください。
台風による河川の氾濫により自宅の駐車場の車が冠水してしまった場合、これは車両保険の対象になります。
自然災害は1等級ダウン事故なので、翌年度の等級は1等級ダウンします。
現在が11等級だとすると、10等級になります。
ここで次の比較表をご覧ください。
事故有 | 無事故 | |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
同じ10等級なのですが、「事故有」と「無事故」で割引率が違います。
2012年10月までは同じ等級に2つの割引が並存するようなことはありませんでした。
しかし現在の等級制度では、事故で保険を使った結果として10等級になった人と、無事故で一つずつ等級の階段を上ってきた結果として10等級になった人とを、同じ扱いにしては不公平だという理由から、このように割引率に差を付けています。
10等級の場合は、実に22ポイントも割引率に差が付いています。
たった1等級ダウンしただけでも、保険料的にはかなり高くなるということです。
このように、事故で保険を使った場合に適用される割引率のことを「事故有係数」と呼びます。
いっぽうで、無事故を続けている場合に適用される割引率のことを「無事故係数」と呼びます。
参考までに、自動車保険のすべての等級(1等級から20等級)を一覧表でご覧ください。
等級 | 事故有係数 | 無事故係数 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
※事故有係数と無事故係数の2系統に分かれるのは7等級~20等級だけです
事故有期間とは?
前の項目の例を続けます。
11等級だった人が、1等級ダウン事故で保険を使ったために翌年の保険が10等級にダウンした場合、事故有期間(事故有係数適用期間)が1年付きます。
1等級ダウン事故なので「1年」、3等級ダウン事故なら「3年」が付きます。
上の画像では事故有期間は「0年」ですが、1等級ダウン事故で保険を使った場合の翌年の保険証券には「1年」と表示されます。※3等級ダウン事故なら「3年」と表示
この事故有期間というのは、前の項目で解説しました「事故有の割引(事故有係数)を適用する期間」のことです。
つまり、1等級ダウン事故で保険を使ったら、1年間だけ事故有係数を適用しますが、1年過ぎたらリセットされます。
いったん10等級にダウンし、無事故で11等級に戻った場合、戻ったその11等級は事故有係数ではなく元の割引率(無事故係数)になる、ということです。
3等級ダウン事故で保険を使ったら、3年間高い保険料を適用するけれど、3年間無事故であれば4年目には元の等級に戻ります。
もしも同じ年度に2度、3度と事故を起こして保険を使ったら、その分は加算されるのですが、事故有期間は最長6年で打ち止めになるので、たとえば3等級ダウン事故で3回保険の支払いを受けても事故有期間は9年ではなく6年ということになります。
話を整理します。
11等級だった人が1等級ダウン事故で保険を使うと、翌年の保険は10等級になります。
この10等級は、無事故で等級を上ってきた人の10等級とは割引率が異なり、より割引率の低い事故有の割引(事故有係数)となります。
同時に、事故有期間が1年付きます。
1年間は事故有の割引によって高い保険料を支払うことになりますが、1年間無事故で過ごせば、2年目にはまた11等級に戻ります。
戻った11等級は、事故有期間の1年がリセットされているので、また無事故の割引が適用されます。
1等級ダウン事故で保険を使った場合のまとめ |
翌年度1等級ダウンし事故有期間1年が付く。無事故であれば2年後に元の保険料レベルに戻る |
自然災害は一般条件・エコノミーいずれも補償対象
自然災害による車の損害には次のようなケースがあります。
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車両保険には「エコノミー+A(車対車・限定危険)」と「一般条件」の2つの補償タイプがあります。
自然災害による車の損害はいずれの補償タイプでも支払い対象です。
補償内容 | エコノミー+A | 一般条件 |
車同士の衝突 | 〇 | 〇 |
盗難 | 〇 | 〇 |
自然災害 (台風・竜巻・洪水・高潮など) | 〇 | 〇 |
火災・爆発 | 〇 | 〇 |
イタズラ・落書き・窓ガラス破損 | 〇 | 〇 |
飛来中・落下中の他物との衝突 | 〇 | 〇 |
2輪自動車・原付バイクとの衝突 | 〇 | 〇 |
単独の自損事故 | × | 〇 |
当て逃げ | × | 〇 |
「全損」・「分損」により支払い方が異なる
自然災害は車両保険の対象ですが、車の損害が「全損」であるか「分損」であるかによって、車両保険からの支払い方に違いが出ます。
「全損」というのは、修理費が車両保険金額を上回る場合、あるいは修理不可能な場合のことです。
「分損」というのは、修理費が車両保険金額の範囲内にある場合のことです。
まず「全損」の支払い方について。
たとえば、車両保険金額「200万円」、免責金額「5万円ー10万円」(初回事故が5万円、同じ年度の2回目以降が10万円)で車両保険に加入していたとします。
大雪による雪崩に巻き込まれ、車が修理不能なほどの損傷を受け、保険会社により「全損」と認定された場合。
このケースでは、通常なら免責金額5万円が適用されるところですが、「全損」なのでその適用はなく、200万円がそっくりそのまま支払われます。
その際、車両保険には車両全損時諸費用補償特約(会社により名称が異なる)が自動セットされているのが通常なので、全損時にはこの特約から車両保険金額の10%に相当する額(上限20万円程度)が支払われます。
次に「分損」の支払い方です。
水没による車の損害額が50万円で、保険会社により「分損」と認定された場合。
このケースでは免責金額の5万円が適用されるので、車両保険からの支払額は45万円(50万円ー5万円)となります。
「車内身の回り品特約」が付いていれば積載物も補償される
上の項目で扱ったのは、自然災害で車両保険を使った場合の、車両本体の損害に対して車両保険から支払われる金額の話でした。
車両保険のオプションである「車内身の回り品特約」(会社により名称が異なる)を付けていた場合は、車に乗せていたカメラ、ゴルフバッグといった身の回り品の損害も補償されます。※身の回り品に含まれる物品の範囲は会社により扱いが微妙に異なり、たとえば東京海上では携帯電話やノートパソコンは対象外です
このオプションを車両保険につけている場合は、保険金請求の際に被害にあった身の回り品についても被害届を出してください。
災害救助法が適用された場合の自動車保険の猶予措置
近年の度重なる大規模な自然災害はみなさんもご存知のとおりです。
こうした大規模な災害が発生すると国が災害救助法を適用します。
災害救助法とは、「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかった者の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的」とした法律です(災害救助法第一条)。
災害救助法は自動車保険にも適用されます。
2018年(平成30年)7月豪雨の際に損害保険業界が実施した特例措置は下記のとおりです。
1.継続契約の締結手続き猶予
継続契約の締結手続きについて、最長6か月後の月末(2019年1月末日)まで、猶予できるものとします。
2.保険料の払い込み猶予
保険料の払い込みについて、最長6か月後の月末(2019年1月末日)まで、猶予できるものとします。
このように、台風・集中豪雨・地震などの大災害により、避難所生活を送ったり、家の動産が流出したりして自動車保険の継続手続きができない場合でも、一定の猶予期間を設けることで、そのあいだに発生した事故に対して保険金を支払うことができる措置をとっています。
平成30年7月豪雨の際の自動車保険の猶予期間は6ヶ月でしたが、この猶予期間は災害の規模などで変わる可能性があります。
ただし、家の全壊や半壊には補助金などが支払われますが、車の損害に対しては一切補助金等はありません(現状では)。
自然災害に車両保険で備える意味合いは増大している
車両保険は交通事故のときだけの保険ではなく、その他さまざまなアクシデントに対して保険金が支払われます。
その代表例が台風・竜巻・突風・高潮・洪水・雹・大雪・雪崩・落雷などの自然災害による車の損害です。
実際のところ、損害保険各社が自然災害の被害にあった車に対して車両保険から支払っている金額は、まさに右肩上がりになっています。
では、車両保険で支払いの対象になる自然災害をもう一度確認してみます。
自然災害 | 車両保険 (エコノミー+A) | 車両保険 (一般条件) |
大雨・洪水 | 支払い対象 | 支払い対象 |
台風 | 支払い対象 | 支払い対象 |
雹 | 支払い対象 | 支払い対象 |
大雪・雪崩 | 支払い対象 | 支払い対象 |
車両保険は2つの補償タイプに分けられます。
「エコノミー+A」と「一般条件」の2つのタイプです。
この2つの補償タイプでしたら、上記自然災害による車の損害は全て支払い対象です。
これら自然災害は都市部、郊外、山間地域などを問わず、日本列島の南から北まで、全ての都道府県で発生しています。
車同士の衝突事故などと違い、自然災害による車の損害は、車のオーナーにしてみれば、まさに無過失の損害です。
自分で起こした事故なら、自分が(ある程度)悪いのですから、諦めがつくのですが、自然災害による損害の場合は、精神的なショックは長く尾を引くことが多いです。
また、たとえ激甚災害に指定されるような大災害であっても、車そのものの損害に対しては、基本的に国や自治体からの補償・救済はありません。
唯一の救いは、車両保険から支払いを受けたとしても、翌年の等級は1等級ダウンで済むところでしょう。
通常、車同士の事故で車両保険を使った場合は3等級ダウンですから、この点はちょっと助かります。
いずれにしても、車両保険の補償内容として、いまでは自然災害による損害は重要な柱になっていることをここで強調しておきたいと思います。
「安全運転するから事故は起こさない。だから車両保険は必要ない」という論法は、自然災害には通用しません。
なお、同じ自然災害でも、「地震・噴火またはこれらによる津波」によって生じた車の損害は、車両保険では補償されません。
しかし、「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」(会社によって名称が異なる)を付け加えることで、こうした災害にも部分的に対応可能です。※この特約により支払われる一時金は50万円です
ご覧いただきありがとうございました。