自動車保険の弁護士特約は、原則として、事故の被害者になったときに使える特約です。
しかし、事故の加害者になったときにも使えるケースがあります。
まず双方に過失がある事故の場合は相手の過失割合分は「被害者」になるので、この部分については弁護士特約が使えます。
また、現状では損保ジャパンのみが採用していますが、人身事故の加害者となり刑事罰が問われる状況において弁護士に相談したり委任したりする費用が支払われる「刑事弁護士費用」というものがあり、損保ジャパンの弁護士特約に自動セットされています(2019年1月保険始期の契約から)。
【記事丸わかり】
|
弁護士特約:「加害者」でも使えるケース①

たとえば東京海上日動の弁護士特約の説明には次のように書かれています。
「信号待ちで停車中に追突される等、補償を受けられる方に責任が全くない「もらい事故」は、保険会社が示談交渉することはできません。ご自身で交渉することになります。そこで安心なのが、弁護士費用特約(もらい事故アシスト)です。」(アンダーラインは当サイトの管理人)
しかし、上の説明に続く文章には次の一文があります。
「ご契約のお車の事故で相手方に法律上の損害賠償請求をするために負担した弁護士費用または法律相談費用に対して、1事故について補償を受けられる方1名あたり300万円を限度に保険金をお支払いします。」(アンダーラインは当サイトの管理人)
東京海上日動に限らずどの保険会社でも、弁護士特約の説明文には、相手に100%の過失が生じる「もらい事故(被害事故)」が事例として扱われ、そういうケースに使えるのが弁護士特約だと説明されています。
しかし、これは話をよりわかりやすくするための話法であって、実際には、どの保険会社の約款にも「法律上の損害賠償請求をするために負担した弁護士費用・・・」というフレーズが記載されています。
つまり、弁護士特約は事故の100%被害者になったときだけ使える特約ではなく、双方に過失が生じる事故、たとえば40:60(こちらが40%で相手が60%)といった事故でも使えます。
40:60の事故の場合、事故の40%は加害者です。
しかしながら60%は被害者なので、この被害者部分に関しては「法律上の損害賠償請求をするために負担した弁護士費用・・・」が発生するので、この部分について弁護士特約が使えるのです。
このように双方に過失が生じる事故で、自分が完全な被害者でなく、一部分は加害者であるような事故のケースでも弁護士特約は使えるということです。
ただし、実務の世界の話をしますと、双方に過失が生じる事故の場合は、通常、自分が加入している保険会社が相手側と示談交渉をしてくれます。
この示談交渉の中で加害者の部分と被害者の部分を調整しつつ、具体的な賠償額を詰めていきます。
ですから、実際の事故処理においてはほとんどのケースで「双方に過失が生じる事故」で弁護士特約を使うことはありません。
めったに使うことはありませんが、過失割合で大いにモメたりするケースでは、弁護士に出動を願うケースも有り得ます。
弁護士特約:「加害者」でも使えるケース②

2019年1月保険始期の契約からになりますが、損保ジャパンの弁護士特約に「刑事弁護士費用」が追加されました。
損保ジャパンの弁護士特約には、
- 弁護士費用特約(自動車事故限定型)
- 弁護士費用特約(日常生活・自動車事故型)
の2つのタイプがありますが、このいずれのタイプにも「刑事弁護士費用」が自動セットされています。
内容は以下の通りです。
損保ジャパン:弁護士特約:「刑事弁護士費用」とは | |
|
事故の「加害者」といっても、通常の弁護士特約で問題となる加害者とは意味が違いますが、加害者でも弁護士特約が使える事例のひとつです。
ご覧いただきありがとうございました。