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【プチ調査】猫の里親はうざい?何様?おかしいよ。自宅訪問、嫌!
これは戦争状態です。
深い溝があり、互いに人間不信に陥っている者同士の闇世界の話のようです。
最初、「猫の里親はうざい」という話を聞いたとき、それは猫の里親を募集している側の引き渡し条件が厳しすぎて、その厳しい条件に対して、里親として猫を引き取ろうという側が「うざい」と言っているのだと思いました。
けれども、調べていくうちに、確かに里親希望者からの強い不満がある一方で、里親を募集している側からも里親希望者に対して激しい憎悪が蔓延していることがわかってきました。
両者には「憎しみ」や「不信感」が渦巻いていて、もはや互いの立場を推し量ろうとする気持ちは失せているようにも感じます。
これでは両者も不幸ですが、一番不幸になるのは猫です。
里親として猫を引き取って飼いたいと思っている側が抱く「うざい」「何様だ」「おかしいだろ」「自宅訪問なんて嫌だよ」という意見
猫の里親を募集するサイト、団体、組織は様々あります。
ジモティーなどでまったくの一個人という立場で里親を募集している方もいますし、猫カフェを運営している組織が同時に里親募集をしているケースもあります。
また、国から助成金を受けボランティアとして里親募集専門に活動している団体もありますし、動物病院がネットワークを形成して里親募集団体を結成しているところもあります(anifareなど)。
さらに、最終的に猫が殺処分される保健所と連携を取り、殺処分される手前の段階で引き取り、里親との間をつなげる活動をしている組織もあります。
こうした個人や団体が、里親になって猫を飼いたいという人に対して、全てが同一の条件を提示しているわけではありません。
一般的に、個人間取引は条件がゆるいですが、全般的な傾向としては、年々厳しい条件が付けられる方向に向かっているようです。
具体的には下記のような条件です。※下記の条件のすべてを要求する団体が実際に存在するということではありませんが、これら諸条件の複数を満たさないと譲渡できないというケースがほとんどです。
- 単身者はダメ
- 学生はダメ
- 高齢者はダメ
- 同性カップルはダメ
- 未婚のカップルはダメ
- 固定電話がない家はダメ
- 連絡用メールがフリーメールの人はダメ
- 顔写真付きの身分証明書の提示がないとダメ
- 世帯主の源泉徴収書の提示がないとダメ
- 預金残高証明の提出がないとダメ
- 不動産登記の提出がないとダメ
- 勤務先の住所・電話番号の提示がないとダメ※実際に確認連絡をする
- 1日8時間以上家を空ける人はダメ
- 猫の予防接種・去勢避妊証明がないとダメ※里親提供先ですでに実施されている場合は除く
- 譲渡後にアポなしの自宅訪問を受け入れられないならダメ
- 譲渡後にアポありで複数人による自宅訪問を受け入れられないならダメ
- 譲渡後の数か月は毎月猫の様子を写した写真を送ることに同意できなければダメ
- 不定期のアンケート調査に応じるつもりがないならダメ
- 過去に猫の飼育経験がない人はダメ
- 賃貸マンションやアパートはダメ
- 猫の餌指定に従えない人はダメ
- お試し期間(トライアル)を設けることに同意できない人はダメ・・・などなど
誤解のないように繰り返しますが、上記の条件すべてを課している個人や団体があるというのではありません。
ただ、上記の半数から3分の2を課している個人や団体はごく普通にあります。とりわけ団体は当たり前に様々な引き渡し条件を課しています。
こうした現状を踏まえて、里親になって猫を飼いたいと思っている人からは、下記のような意見が寄せられています。
- そもそも自分が飼えなくなったから里親を募集しているのに、ああでもないこうでもないと鬼のような条件を突きつけるなんてうざいにもほどがある。何様のつもりなんでしょう。
- こちらには写真だの電話番号だの収入だの個人情報を何から何まで教えさせて、自分はメールアドレスしか教えないなんて、悪用しないという保証がどこにあるんですか?責任とれるんですか?やりかたがおかしいと思いますよ。
- 元飼い主が、自宅を見せろ、定期的に訪問させろ、とうるさい。言いなりになっていたらこの先ずっと付きまとわれる気がして鬱になりそうです。何が嫌って、ストーカーみたいな人に自宅訪問されることほど恐ろしいことはないですからね。こんなことならペットショップで買えばよかった。
- 里親サイトを利用したのは、正直なところ、お金がかからないと思ったところもあります。ペットショップでは最低でも数万円ですからね。ただ、命を預かるんだから、決していい加減な気持ちで里親になろうとしたんじゃありません。それなのに、サイトの人って私を里親詐欺犯のように扱うんです。言葉遣いから態度から超上から目線で、マウントとって話すし、人を何だと思っているんでしょう。あなたたち何様なのと言いたい。うざいにもほどがある。態度がおかしいのよ。こんな人たちが自宅訪問なんて嫌です。
まず大前提として、猫の里親になろうと考えている人たちは、そのままであればやがて保健所で殺処分されるであろう猫を、自分が飼うことで救うことができる、こうした考えを持って里親に応募していると思います。
里親募集サイドが様々な条件を設定していることにも、一定の理解は示しているし、止むを得ないと考えている人も数多くいらっしゃいます。
それでも両者に衝突が起こるのは、里親募集する側の関係者が、過去の経験から、里親になりたいという人の中には一定の割合で必ず<悪党>がいることを知っているからでしょう。
里親詐欺に代表される、とても命を持ったかわいい猫たちを預けることなどできないような非道な人間たちが潜んでいて、この連中が善良な里親を装って接近していることを知っているからこそ、性善説に立って行動できないのだと思います。
だから、猫を引き取って大事に飼いたいと思っている人に対しても、時に「上から目線」なものの言い方をしてしまったり、やり過ぎではないかと思える条件を突きつけたりして、さらなる溝を作ってしまっているのかもしれません。
次に、里親を募集する側が、ついつい手厳しい条件を突きつけたり、傲慢な態度を見せたりしがちな要因を見ていきたいと思います。
里親募集する側は<悪党>たちを念頭に仕事をしている
猫は命を持った生き物であり、命あるものを預かる以上はそれ相応の責任ある行動が要求される。
このことを自覚せず、甘い考えで猫を飼いたがる普通の人たちがいることは間違いないと思います。
けれども、もしもただ単に考えが甘い人がいるというだけなら、話はそう複雑にはならないでしょう。
丁寧に説明し、フォローをしていくことで、たいていのトラブルは克服できるはずです。
たとえば、これから里親として猫を飼うというのに、トイレやケージなど何の準備もしない人がいるようですが、こうした人はもしも猫が病気になってもタイムリーに病院に連れていくとは思えません。
ただ猫がかわいいかわいいというだけのこういう人には、ちゃんとした指導が必要だし、指導に従う様子が見られなければ、譲渡することを拒絶するケースも出てきます。
反対に、そうした態度を反省して、気持ちを入れ直して前向きに取り組む姿勢が見られれば、預けてみようということにもなるはずです。
里親を募集するサイドが常にこういう普通の人ばかりを相手にしているのであれば、両者から「うざい」「何様」「おかしい」といったののしり合いは発生しにくいと思います。
問題は、最初から確信犯として行動する<悪党>の存在です。
具体的には次のような者たちです。
- 去勢や避妊をしていない猫のみを探し、里親を装って手に入れ、繁殖させ、ペットショップに売りつける
- (里親募集している側の人に対して)1万円で私が引き取りますと申し出て、引き取った後にどこかに遺棄してしまう※目的が何なのか不明
- 里親となって大事に育てたいと言って引き取った猫を動物実験に使う医療関係者がいる
- 黒猫とか三毛猫などその時々流行している猫を専門に集め、海外などに売り飛ばす
- 単身者では里親になれないというルールのサイトに、知り合いの夫婦に頼んで応募してもらって猫を手にし、後は転売して利益を得る
- 手に入れた猫をあの手この手でひたすら虐待する。こういう人物は自宅訪問を極端に嫌がる。猫の舌を切断したり、腰を骨折させたり、川で溺れさせたり、耳をライターであぶり床にたたきつけたり、2階から放り投げたり、爪を深く切ったりしてどす黒い欲望を満たす。猫が死んだらまた別の猫を何としてでも手に入れる。身分証明書を偽造するなんて当たり前で、普通の人間を装って里親募集サイトに応募したり、ジモティーなどの個人取引を利用したりして、また次の獲物を探す。※猫などを虐待した人物がやがて人間を殺害するようになるケースはしばしば連続殺人犯の経歴としてよく知られている事柄です。
里親を募集しているサイドの人たちは、過去にこうした普通の里親希望を装った<悪党>たちに向き合わざるを得ない経験をしています。
そして、こうした犯罪行為が発覚する度に、自分たちの仕事振りを責め、猫に詫びる気持ちを募らせ、もうこの先は2度と猫たちに同じ思いを味あわせてはならないという決意を固めて、その後の仕事に向き合っています。
時として里親を希望する人たちに「上から目線」で接したり、「鬼のような厳しい条件」を突きつけたりするのは、こうした背景があるからです。
もちろん、だからと言って里親を希望する人たちが「うざい」「何様」「おかしい」と感じるような対応をしていいと言っているのではありません。
ただ、私の率直な気持ちを言わせていただければ、どちらかと言うと里親募集している側の人たちの厳しめの態度や条件提示の方を支持したい気持ちが大きいです。
止むを得ない、という気持ちです。
せっかく殺処分を逃れることができたのに、もしもこんな<悪党>たちの手中に落ちてしまったら、猫たちはむしろさらにもっと酷い思いをしてその命を閉じなければならないのです。
里親の条件が厳しめになるのは仕方ないと思います。
これから里親として猫を家族の一員に迎えようとする方は、「うざい」とか「何様」とか「おかしい」とか感じることもあるでしょうし、「自宅訪問なんて嫌だ」と思う気持ちもあるでしょうが、かわいい猫たちが保健所の殺処分よりもっと劣悪な運命にさらされて命を閉じてしまうことを防ぐためにこそ、そうした対応がなされているのだと理解すれば、感じ方はもう少し変わってくるのではないでしょうか。
猫の殺処分数は減少している
2020年4月1日~2021年3月31日の猫の殺処分数は19,705頭になります。(⇒⇒環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」)
2008年度の猫の殺処分数は193,748頭で、まさに一桁違います。
もちろん、今だ2万頭弱が1年間に処分されているのですから、減少しているとはいえ悲しい現実があり続けていることに変わりはありません。
ただ、ここ12年ほどの間で大幅に処分数が減少している背景には、命あるものを飼育することに対する私たちの意識が大きく変容していることが大きな要因であるはず。
とりわけ、行政と連携した動物愛護団体やその周辺の活動に関わる皆さんの力は大きな支えになっていると思います。
ネットでは、
「あの人たちは頭がおかしい。自分たちが正しいことをやっているという気持ちに陶酔していて、言うことやることがうざいし、まさに何様と言いたくなるような口の利き方をする。こんなタイプの人たちに自宅に訪問されたら嫌に決まっている。たまったもんじゃない。」
などと突き放した言い方をする人がけっこういるようです。
よほど腹に据えかねた経験がおありのようです。
私がその場に居合わせたわけではないので、確かなことは言えないものの、場合によってはそのように言いたくなるような扱いを受けるケースもあったのかもしれません。
特に、自分が猫を飼うことに対して決して甘い考えなど持たず、これまでも責任ある飼育者としてやってきた自負がある人にとっては、いわば子ども扱いされるように感じる場面があったのかもしれません。
そういう意味で、こうした発言をする人を全否定はできないと思います。
ただ、そこを踏まえた上で、やはり猫の殺処分数の推移を見ると、動物愛護関連の皆さんの活動は称賛に値するものだと言わざるを得ないと思います。
残念ながら、生き物を飼うことに高い意識を持った人たちだけではないのが現実で、陰に陽に「管理」されることで、やっとまともに生き物を扱えるレベルにまで至る人たちがいることも確かでしょう。
口うるさい指導が必要な人たちもいるのです。間違いなく。
里親を募集する側と里親になって猫を飼いたい側の間にある「深い溝」は、まだ当面の間埋まることはないでしょう。
ある意味、仕方がないことです。
両者は見ている風景が違うのですから。
募集する側は、決して<悪党>に猫を渡してはいけないという思いが先に立っているのに対して、里親になりたい側は、かわいい猫ちゃんに一日でも早く癒されたいという思いが先に立っています。
互いに穏便にやっていただきたいと思うけれど、世に<悪党>がはびこる限りはそう簡単に収まる話でもないでしょう。
「うざい」「何様」「おかしい」「自宅訪問、嫌」という声は今後も消滅する日はやってこないでしょう。
でも、それが猫のためになるのであれば、止むを得ないことだと私は思います。
減少したとはいえ、今でも年間2万頭弱の猫、それもそのうちの3分の2は子猫が、強制的に命を終結させられています。
真剣勝負になるのは当たり前です。
ご覧いただきありがとうございました。