※トップ画像は「山椒の木」 by Wikipedia
【プチ調査】山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメって本当?
サンショウはウナギの蒲焼にふりかける香辛料として有名ですが、爽やかで刺激的な香りを放つ香辛料のサンショウは、このページのトップ画像にある山椒の木から作られます。
私の家にも以前は山椒の木が植えられていて、近づくと独特の香りを放っていたのを懐かしく思い出します。
ところで、この山椒の木には地方によっていろんな言い伝えのようなものがあるらしくて、タイトルにもあるように「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメ」と言われる地域もあれば、私の家(山梨県の南側)のようにごく当たり前に庭に植えられている地域もあります。
確かに、庭木に関しては様々なタブーが言い伝えられていて、棘のある草木は縁起が悪いとか、玄関先に松の枝がアーチ状にかかるのは病気を招くとか、やはり地域によって内容は様々です。
こうした言い伝えに関して、実際に言われていることが当たっているかいないかを調査した統計データの存在などは聞いたことがありません。
たぶんないでしょう。
でも、ある言い伝えを人の口から聞き、それと同じ言い伝えが本やネットの情報ページにも記載されていたりすると、特に迷信を信じる人でなくても、また風水とか運勢とかスピリチュアルなものに関心がない人であっても、やはり気になるものだと思います。
できることなら、「良くない」とされているモノやコトを避けたいと思うのが人情でしょう。
その一方で、世の中には、迷信とか言い伝えとか風水などをこれっぽっちも気にかけないタイプの人が一定数いて、そういう人はむしろタブーとされることを積極的に取り入れるような天邪鬼的行動をとりたがる傾向もあって、本当にいろんな人がいて面白いことだと思います。
以下、迷信や言い伝えに影響を受けやすい人に対しても、そうしたタブーを一切気にかけない人に対しても、「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメ」という言い伝えやその他類似のものについて、私がプチ調査した結果をご紹介したいと思います。
山椒の木にまつわる言い伝え等について
まず、山椒の木は庭木に適さないという言い伝えについて。
- 家の庭には棘のある草木を植えてはいけない:山椒の葉っぱの根元には棘があります。だから庭木には適さないという風水による言い伝えのようです。※ただしアサクラサンショウという品種には棘がないそうです。それにしても、実態を見ると棘のある草木を自宅の庭に植えている家はそこらじゅうにあります。ミカンの木にも棘がありますし、バラにも棘があります。私の家にはゆずの木がありますが、アイスピックの代用になりそうな恐ろしく大きな棘があって、一昨年の暮れに実を収穫する際に手首のあたりが傷だらけになり、それ以来ゆずを恨んでいます。いずれにしても、棘のある草木に関する言い伝えは、実質的にほぼ誰も気にかけていないのではないでしょうか。
- 山椒の木は家の横側と裏側に植えてはいけない:これは語呂合わせで、家の横に植えると横山椒つまり「(家を)ヨコサンショウ=家をよこしてください」ということで家屋敷が人に取られてしまう。また、家の裏に植えると裏山椒つまり「(家を)ウラサンショウ=家を売ってください」ということで家屋敷が人に買い取られてしまう。どちらも家を失うことになるので、山椒の木を植えてはいけないという言い伝えです。ただ、横と裏はダメだが前ならいいと受け止めて家の前に山椒を植える人もいるようです。なお、「泣くサンショウ」という言葉もあり、これは山椒の木を植えると結果的に家を手放す羽目になるということを指している言葉のようです。でも、そうなると家の前なら植えてもいいだろうという解釈は崩壊しますね。とにかく山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメということなのでしょうか。
反対に、山椒の木は庭木に適しているという言い伝えについては下記の通りです。
- 山椒は魔除けとなり子孫繁栄につながる縁起のいい木:風水では棘のある草木は庭木に適さないとされていますが、風水を生んだ中国には、これとは反対に、山椒が放つ強い香りは邪気を追い払う魔除けとなるし、多数の実をつける様はまさに子孫繁栄の象徴であるから、山椒は庭木として縁起のいい木であるという言い伝えもあるようです。※山椒の木には雄と雌があって、雄には実がつきませんが雌にはたくさんの実がなります。また、山椒の木が庭になくても玄関先に山椒の葉を吊るしておくだけで魔除けの効果があるという言い伝えも。
「縁起」との付き合い方
普段私は縁起とか風水などに全く関心を持たずに生活していますが、もしも区画整理された土地を購入してそこに家を建て庭木を植えようという段階になったら、これから植える草木について「いちおう」調べると思います。
たとえば、子供のころ実家に生えていた山椒の木を思い出し、ぜひとも新しい家を彩る庭木の1つとして植えたいという場合に、ネットや本に「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメ」とか「山椒には棘があるから不幸を招く」などという記述を発見したら、けっこう悩むと思います。
きっと、庭に山椒の木が植えてある家に育って今日まで来たのだから、その「実績」を考えれば、べつにそんな言い伝えを真に受ける必要はないだろう、と頭では考えるでしょう。
でも、その一方で、これまでのことはともかくとして、これから新しい家で新生活を始めるのだから、何かしら頭にモヤのかかるようなモノやコトは避けたい、という気持ちも強く働くと思います。
このページを訪問された皆さんも、たぶんこういう状況に近いのではないでしょうか?
本当に縁起とか風水とか迷信とか言い伝えとか、こういうものとの付き合い方って、普段は上の空でいられても、人生のターニングポイントとかスタートラインといった場面では、自分で自分に驚くほど気にかけてしまうものだと思います。
で、最終的にどうするか?
わたしなら、最終的に山椒の木を植えると思います!
悩みはしますが、私の場合は、やはり子供の頃に庭にあった山椒の木とのつながりを優先したい。
風水や言い伝えを軽く見るというのではなく、いいことも悪いことも含めて一緒に育った庭木の1つである山椒の木を大事にしたいという気持ちです。
ただ、もしも山椒の木に特別な思い出はなく、つい最近になって関心を持っただけというのであれば、庭木には良くないという言い伝えがある山椒の木をわざわざ植えることはしないと思います。
そういうわけで、みなさんはどう判断されますか?
答えはネットや本にはなくて、結局は皆さんの胸の内にしかないと思います。
改めて山椒の木とは?
ここまで「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメって本当?」というテーマでお話ししてきました。
改めて山椒の木にはどんな特徴があるのか、以下簡単にご案内したいと思います。
- 山椒はミカン科サンショウ属の落葉低木で日本全域に自生している。
- 剪定など手入れをしないと5mほどに伸びるケースもある。
- 山椒には雄と雌があって、実がなるのは雌の木のみ。実の収穫は6月~7月が最適。収穫するときは棘に刺されないよう手袋をすること。
- 山椒の実を育てるには実のなる雌株だけではダメで、雄株も必要。ただしアサクラサンショウ(朝倉山椒)は雌雄同株なので1本だけでも実がなる。
- 棘について。実から育てたサンショウは刺があるが、アサクラサンショウには棘がない。またイヌザンショウに接木したものにも刺がなく、実も大きくなる。
- 山椒は一般的に湿気を好むとされていて、半日蔭の場所でもよく育つけれど、日当たりがいい場所でもしっかり育つ。その場合、土は湿り気があるほうがいい。山椒は西日に弱いと言われるのは、西日が当たる場所は土が乾燥しやすいから。
- 山椒の水やりには注意が必要で、地植えでも鉢植えでも土が乾燥しないように目を配り、反対に梅雨時などは水に浸かり過ぎないように気を付けたい。
- 山椒を半日蔭で育てる場合は鉢植えよりは地植えの方が育ちやすい。
- 山椒は寒い気候には強いので、冬場にも特に防寒対策をする必要はない。
- 山椒には有機質肥料の油かすが適している。1月~2月にも追肥として油かすをやるといい。
- 山椒は挿し木や種まきで増やすことができる。人間が種をまかなくても実から落ちた種で勝手に生えてくることがある。
- 山椒を剪定するには12月から3月くらいが適している。
- 山椒の葉っぱにはアゲハチョウの幼虫がついて食べてしまうので、見つけたら駆除したほうがいい。
- 山椒がかかる病気の代表的なものが白絹病で、症状は株元に白カビが生えてきて枯れてしまう。湿度が原因とされるが、いったんこの病気にかかったら株ごと処分するしかない。
- 山椒は適切な時期に剪定すれば枯れることはなく、葉に棘があるため、防犯上の理由で生垣に使われることもある。
- 山椒の葉と実には強い香りがあり日本最古の香辛料とも言われている。
- 山椒は捨てるところのない木で、葉も実も茎も幹も余さず利用されてきた。山椒のスリコギ棒は固くて持ちがいい。
- 山椒の雄には実がならないが、芽や花はお吸い物などの料理に利用できる。実のならない雄は花ザンショウとも呼ばれる。
- 山椒にはビタミンB1、ビタミンB2、カルシウム、食物繊維、鉄、その他いろんな栄養が豊富に含まれている。またサンショオールという物質が含まれていて胃の働きを助けたり発汗を促すといわれている。
まとめ
以上、「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメって本当?」というテーマに沿って見てきましたが、気になる人はやめたほうがいいし気にならない人は堂々と植えればいいと思います。
それにしても、山椒について調べてみると、これほど有用で役に立つ植物はめったにないと思いました。
こんな万能選手に対して、どうして自宅の敷地に植えたらダメだなどという言い伝えが広がったのか、ほとんど意味不明です。
山椒の木の特徴については前の項目で列挙しましたが、まだまだ言い足りません。
山椒は漢方薬、調味料、薬味、美容品、香辛料などに幅広く使われてきました。ウナギの蒲焼に使われるのはほんの一例にすぎません。
たとえば、
- 山椒エキスを含有するシャンプーは薬用シャンプーとして普及していて、白髪予防や血行促進に効果が期待されています。
- 花山椒は高級珍味です。刺激と爽やかさを併せ持つ風味が愛されていて、佃煮などに使われています。
- 山椒を生のまま使用する場合は魚料理の臭い消しとして使われ、乾燥させ粉に挽いたものは粉山椒や七味とうがらし、山椒塩、カレー粉といった香辛料、薬味として愛用されています。
- 山椒の芽はちらし寿司やお吸い物などに使われています。
- また、山椒は漢方薬の素材としても古くから利用されています。
- なにより、山椒の木で作ったスリコギ棒は超固いことで知られていて、腹の立つことを言われたらその人の頭をぽかんと叩くのに使えます(ダメです)。
いずれにしても、こんなとんでもなく有用な植物に対して、
「山椒の木は自宅の敷地に植えたらダメ」
などと、どこの誰が言いふらしたのでしょう?
きっと、ゆずの木の棘でひどい目にあった私のように、山椒の棘に刺されてどえりゃぁ目にあった人が恨みに思って言いふらしたのではないか。
私はそう推測しています(ウソです)。
ご覧いただきありがとうございました。