ル・マンを制したマツダ787B
「全力で行こう」とジャッキー・イクス
守りのチームが攻めに変わって
遂にチェッカーフラッグ
マツダスピードの日本人スタッフは いつも慎重だった。
速く走ることよりも 壊れないことを優先する。
24時間を生き残ることが チームの絶対原則だった。
だから彼らはいつも 抑えて走った。
エンジンを労わり
タイヤを守り
リスクを避ける。
それがマツダスピードの文化だった。
しかし1991年
レースウィークの金曜日。
戦略会議の場で
一人の男が口を開いた。
ジャッキー・イクス。
ル・マン6勝のレジェンドにして チームのアドバイザー。
「全力で行こう」。
この言葉の意味はシンプルだった。
縁石にも躊躇なく乗る
クラッシュしても
マシンが最後まで持たなくても
構わない。
787Bはすでに
24時間走り切れる信頼性を
テストで証明していた。
だから今度は
速さを解放する番だ
とイクスは言った。
その瞬間
空気が変わった。
チームデザイナーのストラウドは
こう証言している。
「彼の口からそれを聞いて、全部決まった。日本人スタッフにとって、イクスは神様だったんだ」。
ドライバーたちは全開で走った。
縁石を踏み
限界を攻め続けた。
そして24時間後
787Bはトップでゴールを超えた。
「全力で行こう」。
歴史を変えた言葉だった。

