2019年10月25日、国土交通省はタクシーの事前確定運賃を認可しました。
同月28日以降に準備が整った会社から順次スタートです。
事前確定運賃とは、利用者がスマホのタクシー配車アプリで出発地と目的地を入力すると、即座に利用料金が表示・確定するというものです。
これにより、「支払い寸前にメーターが変わった」とか「渋滞で料金が高くなるのでは」とか「遠回りしたんじゃないか」といったタクシーにまつわる不安が解消されます。
また、外国人旅行者にとっても事前に料金が確定することは大きな安心材料であり利用拡大が予想されます(支払いもキャッシュレスなので日本語を話せなくても安心して利用できる点も大きい)。
国土交通省とタクシー事業者は2017年8月から10月にかけて東京都内で実証実験を行い、その結果が良好であったことから導入に踏み切りました。
タクシーは電車やバスとは異なりドアtoドアの移動手段として非常に重要で、MaaS等の新しいモビリティサービスの展開を目指すタクシー業界や国土交通省にとっても、事前確定運賃は実現すべき目標の一つでした。
サービス開始時点の参加予定事業者は約200社、タクシー車両は約20,000両、実施地域は約27地域(札幌、東京、横浜、長野、名古屋、大阪、京都、神戸等)、配車アプリ会社はS.RIDE(エスライド)、JapanTaxi(ジャパンタクシー)、スマたく、MOV(モブ)など。
「配車アプリ」あってのサービス
スマホの配車アプリ。
これが全ての始まりです。
配車アプリが普及しつつあるからこそ実現したのがタクシー事前確定運賃サービスです。
2019年現在において配車アプリの5強と言われるのがJapanTaxi、DeNA(MOV)、DiDi、みんなのタクシー、Uberです。
2019年10月からスタートした事前確定運賃には5強のうちの3社(JapanTaxi、DeNA(MOV)、みんなのタクシー)が参加していますが、いずれDiDiとUberも参入してくると思います。
もちろん、その他の配車アプリ運営会社も参入するでしょうが、いずれ淘汰が始まり、大きく勢力図が塗り替えられていくものと思われます。
今回の事前確定運賃導入前であっても、配車アプリの利用者は、出発地と目的地を入力すれば概算の料金が確認でき、決済もクレジットカードで済ませることができ、初めての土地でも安心だし、日本を訪れている外国人にも利便性の高いものでした。
こうした下地があってこそ実現したのが事前確定運賃です。
事前確定運賃とは?
日本人であれ外国人旅行者であれ、日本でタクシーを利用しようとする際には様々な不安要因がありました。
「渋滞に巻き込まれたら料金がいくらになるかわからない」
「以前利用したとき降りる寸前にメーターが回って料金が増えた。あれは故意にやっているんだろうか?」
「友達が利用したときドライバーがわざと遠回りしたといっていた。本当にそんなことをするんだろうか?」
「日本語がわからないので、目的地や料金のやりとりができない」
こうした不安は、事前確定運賃サービスで全て解消します。
タクシー利用者がやることは次の3つだけです。
|
あとはタクシーがやってくるのを待つだけです。
料金は、大手の配車アプリの場合、クレジットカードで決済します。
料金は乗車前に確定しているので、追加料金は発生しません。
ただし、配車アプリが表示する事前確定料金には以下のものは含まれていません。必要に応じて追加になったり、差し引かれたりします。
|
また、次のようなケースでは別料金が発生します。
|
上記の場合は、事前確定運賃の全額を支払い、これに追加する形で新たな目的地までの料金が発生します。
その際、新たな目的地までの料金は通常のメーターが表示する金額となります。
なお、2019年10月のサービススタート時点では、通常のタクシー乗り場で乗車したり、道端で手を挙げてタクシーを呼び止めたりした場合は、この事前確定運賃サービスは利用できません。
あくまでも、配車アプリを利用して自分が今いる地点に迎えに来てもらうという利用形態のときのみ、事前確定運賃サービスが使えます。
いつから?
事前確定運賃サービスは2019年10月25日に国土交通省によって認可されました。
サービス開始時期は2019年10月28日以降、準備が整った会社から順次スタートします。
導入目的
2019年3月14日、国土交通省の「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会 中間とりまとめ」において、日本版MaaSについて次のようなイメージを提示しています。
・・・利用者にとっては、例えば、ある1つのスマートフォンアプリを立ち上げれば、全国津々浦々の交通手段の検索から予約・決済までができるようになり、さらには、病院や飲食店、行政サービスなどの予約・決済もワンストップで行えるようになる。これにより、人々の外出や旅行など移動に対する抵抗感が低下することで、移動・交流意欲が高まり、健康が増進され、まちや地域全体も活性化し、豊かな生活が実現すること、日本版 MaaS が目指すところである。(アンダーラインは当サイト管理人)
現状では「全国津々浦々の交通手段」はJR・私鉄・民間バス・公営バス・個人タクシー・全国規模のタクシー会社などが混在しています。
チケットの予約や決済は各運営組織ごとに窓口や方式が異なっています。
タクシーの配車アプリにしても、1つのアプリで全国のあらゆるタクシーの予約・決済ができるわけではありません。
これを、将来的には、たった1つのアプリを利用することで、A地点からB地点に移動するのに関係する全交通機関の予約・決済ができる、こと交通機関に関して言えば、これが日本版MaaSの将来ビジョンです。
今回のタクシー事前確定運賃サービスは、その手始めに過ぎません。
これからが本番です。
タクシー業界の課題と今後の展望
すでに数年前から国土交通省とタクシー事業者は下記の実証実験を行っています。
- 事前確定運賃
- 変動迎車料金
- 定額タクシー運賃
- 相乗りタクシー
今回は①の事前確定運賃がスタートすることになりましたが、今後も②③④が順次導入される可能性は大です。
②の変動迎車料金ですが、これは需要の多寡によって料金が変動するダイナミックプライシングの考え方をベースにしています。
たとえば、タクシー需要が少ない時間帯は迎車料金を0円にし、多い時間帯は800円にすることで、料金が高くても優先的に利用したい人の需要を取り込めると同時に交通量を均す効果も期待できます。
今回の事前確定運賃において、迎車料金は下記の計算式のように固定料金となっています。
事前確定運賃=(初乗り運賃+加算運賃)× 統一係数+迎車料金 |
次に③の定額タクシー運賃ですが、これは鉄道などの定期券のイメージです。
A地点からB地点に移動する場合、鉄道・バスだけでなくドアtoドアの強みを持つタクシーも使い放題の定額料金とすることで格段に利便性の向上が見込まれます。
すでに観光などでは一部でタクシーの定額サービスが導入されているので、今後はさらに広範囲に実施されることが期待されます。
④の相乗りタクシーに関しては、全国各地で数多くの実証実験が行われています。
地域社会などの顔見知りの間で相乗りする場合は、特に問題は発生しにくいのですが、都市部において従来からの室内スペースの狭い車両における相乗りは、敬遠する人も多いようです。
アメリカやオーストラリアでのUber体験記が数多くネットに上がっていますが、Uber Poolと呼ばれる相乗り車両は避ける人が多いようです。
料金は安いけれど、何となく嫌な感じがするのでしょう。
車両がライトエース級の、空間に余裕のあるものであったら、また話は違ってくるかもしれません。
導入のメリット
さて、タクシーの事前確定運賃サービスが始まるとどんなメリットがあるのでしょう?
|
導入のデメリット
事前確定運賃に関して考えられるデメリットは以下のとおりです。※デメリットと言うより改善して欲しいところと言うべきか
|
下記の記事も参考になさってください。
ご覧いただきありがとうございました。