※トップ画像は「新生銀行」(Wikipediaより)
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目次
【記事丸わかり】
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【プチ調査】新生銀行は大丈夫か?危ない銀行か?高い金利はどうやって実現した?
2021年12月、SBIホールディングスの傘下に入った新生銀行は、これまでにもあおぞら銀行との合併の破談や、SBIによる敵対的TOB買い付けなど何かと世間を騒がせています。
もはや再・再スタートともなる新生銀行、今後の先行きが気になるところ。今回のプチ調査では、「新生銀行は大丈夫か?危ない銀行か?高い金利はどうやって実現した?」というテーマに沿って、分かりやすく解説します。
新生銀行の歴史
新生銀行の前身は、日本長期信用銀行。1952年に長期信用銀行法に基づき、北海道拓殖銀行と日本勧業銀行の債券部門が分離して設立されました。
日本長期信用銀行(=長銀)は、日本興業銀行(現みずほ銀行)、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)と伴に「長信銀3行」と呼ばれ、銀行の中の銀行として高度経済成長の立役者と呼ばれていました。
しかし、1990年代バブル崩壊とともに巨大な損失を計上し、1998年10月には公的資金が注入され、金融再生法に基づき一部国有化されて経営破綻しました。
その後、2000年にアメリカの投資会社リップルウッドに経営権を譲渡、外資系銀行の個人向けサービスで再出発。
2006年には名前を現在の「新生銀行」と改め、他の銀行に先駆けてインターネットバンキングにいち早く参入。ATMの365日稼働、ATM手数料・送金手数料の無料化などに日本で初めて取り組んだのも「新生銀行」です。
2021年12月、SBIホールディングスの子会社となり、社長の工藤英之氏を含め経営陣6名は退任。代表取締役にはSBIホールディングス前副社長の川島克哉氏、会長には五味広文元金融庁長官が就任し、経営陣を一新して新生銀行が再スタートしました。
新生銀行は大丈夫か?危ない銀行か?といわれる理由
SBIの傘下に入ったものの、「新生銀行は大丈夫か?潰れるの?危ない銀行ではないの?」と不安視する声も噴出しています。この章では、危ない銀行と言われる理由を解説します。
危ない銀行と言われる理由①公的資金の一部が未完済
約20年前の長銀時代の経営破綻の際、国から注入された公的資金は約3500億円。しかしこの公的資金のうち、新生銀行はすべてを完済できていません。
バブル崩壊時に公的資金が注入された銀行の中で、同じように破綻したあおぞら銀行、りそな銀行が公的資金を完済している中、大手銀行の中で未完済なのは新生銀行だけ。
2008年のリーマンショックの影響もあり、他の大手銀行からも大きく遅れを取ってしまい返済が出来ていない状況に「新生銀行は大丈夫か?」「完済できるの?」といった不安の声があがっています。
危ない銀行と言われる理由②会員プログラムのリニューアル
SBIの子会社になったことで、さまざまなサービスが追加され、リニューアルの取り組みが進んでいます。これに対して、ネットでは「改悪だ」「新生銀行は大丈夫か?」といった声も見受けられます。
【改悪されたとの声多数】
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新生銀行は2018年と、2021年、2度にわたってATM手数料を改定しています。
2018年までは無条件で入出金が無料でしたが、利用者のステージが「新生スタンダード」の場合、1回110円の手数料がかかることに。
また、シルバー以上のランクになれば0円で出金可能ですが、一部対象外になるATM(※)がある点に不満の声が出ているようですね。
※対象外のATM
ゆうちょ銀行ATM(ファミリーマートに設置のATMも含む)・全都市銀行ATM・三菱UFJ信託銀行ATM・三井住友信託銀行ATM・商工中金ATMをご利用の場合、1回あたり110円(税込)です。 |
危ない銀行と言われる理由③ステージ判定のハードルの高さ
2022年5月1日から、新生ステップ・アッププログラムのリニューアルにより、これまでの「新生プラチナ」「新生ゴールド」「新生スタンダード」の3ステージに「新生ダイヤモンド」「新生シルバー」の2ステージを追加しています。
ステージランクが上がれば、他銀行宛の振込手数料無料サービスなどの優遇サービスが受けられます。しかし、新生シルバーは100万以上、ゴールドでは500万、プラチナでは2000万以上の預入が必要となり、ハードルの高さに不満が出ているようです。
会社員の方ならメインバンクとして給与振り込み口座に設定することで、ステージランクが上がることが想定できますが、学生さんのアルバイト向け口座としてはメリットを感じないでしょう。
危ない銀行と言われる理由④合併によるペイオフ問題
新生銀行がSBIグループと合併したことで、ペイオフは大丈夫?といった意見もありました。
日本の銀行では、金融機関が破綻した場合に備えて資金を確保するため、預金者1人当たり1000万円までの資金が保護される預金保険制度があります。新生銀行がSBIと合併し、仮に公的資金の返済が未完済であったとしても、このペイオフ制度は対象になるので、心配はいりません。
危ない銀行と言われる理由⑤高い金利策
2022年6月、新生銀行では定期金利を10倍の0.1%に引き上げています。メリットのように感じますが、不安視する声もあります。
【SNSの声】
新生銀行の高い金利策
【新規口座開設の方限定】
(参照:新生銀行公式ページ) 【2週間満期預金】
2週間で満期が来る手軽でお得な円預金。一口50万円以上から利用可能で、普通預金(スタンダード1000万未満年利0.001%)に比べ、年利0.03%と高い金利設定になっています。(参照:新生銀行公式ページ) 【バースデー円定期預金】
誕生日前月の初日から誕生日月の月末までの間に、3ヶ月ものの定期預金を新規に申し込みした場合は金利が優遇されるサービスです。(参照:新生銀行公式ページ) |
(※こちらで解説した年利は2022年10月15日現在のものとなります)
このようにさまざまなサービスが展開され、金利の大幅アップを実現しています。
大手銀行の1年物定期預金の金利は0.0002%なので、年利0.3%は150倍の金利の高さになることから、「新生銀行は大丈夫か?」といった声があがるのも納得です。
高い金利はどうやって実現?
「危ない銀行ではないの?」「新生銀行は大丈夫か?」という不安な声がある中で、このような高い金利はどうやって実現しているのでしょうか?その仕組みを分かりやすく解説します。
世界的な金利上昇を先取りした戦略
2022年10月15日現在、3大メガバンクと呼ばれる銀行の金利は下記の通りです。
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大手銀行に100万円預けても、1年後にもらえる利息はたったの10円です。(税引き後は約8円)
国内銀行は日銀のマイナス金利政策に応じる形で、預金金利を下げてきました。しかし、今回の新生銀行の高い金利は国が推奨するやり方とは逆の戦略です。
現在、ロシアのウクライナ侵攻により天然資源や穀物価格の高騰など物価の上昇が生じています。欧米の中央銀行では、そのようなインフレを抑え込む目的で従来の量的緩和政策とは決別しています。
このため、イングランド銀行が異例の大幅利上げに踏み切る一方で、日本銀行は大規模な金融緩和の継続を決め、2022年10月現在、先進国では唯一日本だけがマイナス金利政策をとる国となっています。
日銀の黒田総裁は「日本経済は回復過程にあり、金融緩和が必要だ。当面、金利を引き上げることはない」と述べています。(参照:読売新聞)
その中でも金利アップに踏み切った新生銀行は、世界的な金利上昇を先取りした戦略を実行していると言えるでしょう。 |
高い預貸率で収益を上げる計画
高い金利を実現できる理由に、高い預貸率が挙げられます。(※預貸率とは、銀行が集めた預金がどれだけ融資に回っているかを示す比率です。)
2021年末の新生銀行の定期預金額は2兆5422円、引き上げた0.1%の金利分は年間25億円となる見込み。このようなリスクを負ってまで高い金利を維持する理由は、それを上回る利益が見込まれているからです。
新生銀行の2021年度の預金総額は6兆4001億円、貸付金総額は5兆2118億円
預貸率(貸付金÷預金+譲渡性預金×100%)を計算すると、81.4%となります。
2021年3月期、国内107銀行の貸与率は62.1%と報告されているため、新生銀行の預貸率は他の銀行を大きく上回っていることが分かります。(参照:東京商工リサーチ)
つまり、新生銀行では獲得した預金の大半を融資に回し、多くの収益が見込める銀行であると言えるでしょう。 |
SBIグループと連携した顧客基盤の拡大
SBIグループと連携し、顧客基盤の拡大が見込める点も高い金利を打ち出せる理由のひとつ。実際、SBI証券では手数料を業界最低水準まで引き下げることで、顧客基盤の拡大に成功しています。
今回SBIの傘下になった新生銀行もこの戦略を引き継ぎ、定期預金金利の引き上げで得た顧客にSBIグループ各社の商品を販売し、顧客基盤の拡大を目論んでいるわけです。 |
例えば、新生銀行×SBI証券のクレカ積み立て。
このサービスは100円からできる積み立て投資で、毎月の積立額に応じてアプラスポイントが貯まるほか、積み立てNISAにも対応しており、長期的な投資をしたい若い層からの集客を見込んでいます。
新生銀行の今後
新生銀行は2023年1月4日に「株式会社SBI新生銀行」として改名し、新たに再出発する予定です。
2022年6~8月に日本マーケティングリサーチが実施したブランドイメージ調査によると、
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の三冠を取得しています。(参照:SBIグループ公式ページ)
第四のメガバンク構想
SBIグループには「第四のメガバンクを構築したい」という大きな構想があります。
第四のメガバンク構想とは、新生銀行と地域金融機関、SBIホールディングスとの三位一体とした「トライアングル戦略」を打ち出し、サービスや商品、投融資などを相互活用するビジネスモデルです。
SBI傘下になっても新生銀行に残る公的資金の返済については、大きな課題です。新生銀行の川崎社長はロイターのインタビューで「3年程度で公的資金返済に道筋をつける」との考えを示しました。(参照:ロイター)
積極的な買収や提携戦略、デジタル技術の活用によって金融ビジネスを成長させてきたSBIホールディングス。第四のメガバンクとして、合併後の新生銀行の再出発を期待したいですね。
まとめ
「新生銀行は大丈夫か?危ない銀行か?高い金利はどうやって実現した?」というテーマに基づき解説しました。
「新生銀行は大丈夫か?危ない銀行?」と言われる理由は、以下の5つ。
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会員プログラムのリニューアルは一部で「改悪」と言われており、ネット銀行に比べると無料回数が少なく「改悪」と感じてしまう人もいるでしょう。しかし、今やキャッシュレスの時代です。
クレジットや口座と結びつけて決済する若い層の人には、手数料問題は大きな問題ではないでしょう。また、合併によるペイオフについての不安もありますが、新生銀行もペイオフの対象となる金融機関です。
高い金利策についても、親会社であるSBIホールディングスの今までの経営戦略の元で先取りした施策と言えるでしょう。しかし、公的資金の未完済については懸念材料であることは確かです。
新生銀行では、Tポイント、dポイント、nanacoポイント、ANAマイルが貯まったり、金利や手数料が優遇されたりとメリットが多い銀行です。
資産運用のサポートも充実しているので、今後投資用に口座をひとつ持ちたいという人は、他銀行との比較のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?
ご覧いただきありがとうございます。