【記事丸わかり】
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車や原付やバイクの自賠責(自賠責保険)では、契約者本人以外が運転して事故を起こした場合、保険金支払いの対象になりますか?
たとえば、友人から車を譲り受けた場合など、自賠責(自賠責保険)の契約者は友人のままになっていることがありますが、このように契約者が違うケースでも支払い対象になるのでしょうか?
このページでは、自賠責(自賠責保険)の契約者以外の人が運転して事故を起こした場合の扱いを解説します。
※自賠責(自賠責保険)の補償内容・その他取り扱い内容は、自動車・2輪バイク・原付バイク全て共通です
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
本人以外・契約者が違うケースの事故でも支払い対象になる
たとえば車で人身事故を起こし、被害者に治療費等を支払わなければならない場合、事故を起こした車についている自賠責保険から治療費等を支払います。
この場合、事故を起こした車が運転者本人の車で、当然、自賠責保険も運転者本人名義になっている場合であれば、何の問題もありません。
しかし、事故を起こした車が、つい最近中古車として購入したばかりの車であったり、あるいは友人から譲り受けた車であったりした場合が問題です。
こうしたケースでは、ほとんどの場合、自賠責保険の契約者は前のオーナーの名前になっています。
住所も前のオーナーの住所です。
では、このように「契約者名」や「契約者住所」が前のオーナーになっている場合で、実際にその車を運転して事故を起こしたのが新オーナーであるようなケースでは、自賠責保険から治療費等は支払ってもらえるのでしょうか?
はい、大丈夫です。
自賠責保険から被害者の治療費等を支払ってもらえます。
なぜなら、自賠責保険は「車両」そのものにかけてある保険だからです。
事故を起こしたのが自賠責の契約者と違う場合でも、事故を起こした車にちゃんと自賠責保険がかけてあれば、問題なく支払い対象になります。
このように「契約者が違う」・「本人以外」のケースでも自賠責保険は支払われますが、実際の支払い手続きの際には、まず前の契約者から現在の契約者に名義変更し、そこから通常の支払い手続きに入ります。つまり、手続きが煩雑になるので、保険会社では自賠責の名義変更を速やかに行うことを推奨しています。
⇒損保ジャパン日本興亜「自賠責保険Q&A」
自賠責が「車両」と紐付けられているか確認する
前の項目で、自賠責保険は「車両」そのものにかけてある保険、と書きました。
では、これを確認するには何をどう確認すればいいのでしょう?
そこで、自賠責保険証明書をもう一度見てみましょう。
上の画像は自賠責保険証明書ですが、赤い四角の部分に「登録番号」と「車台番号」が記載されています。
「登録番号」というのは「富士山 300 あ 1234」といったナンバープレートの表示のことです。
「車台番号」というのは世界に1つしかないその車のシリアルナンバーのことです。
いずれも車検証(自動車検査証)に記載があるので、両者を照合してみてください。
自賠責保険の記載内容と車検証の記載内容がぴったり同一であることが確認できれば、それでOKです。
自賠責保険は「車両」そのものにかけてある保険ですから、ちゃんと自賠責保険に加入してあることになるので、この車を運転して人身事故を起こした場合、たとえ運転者が本人以外・契約者が違うケースであっても、自賠責保険から被害者に対して保険金が支払われます。
※運転者が誰であっても支払われるのが基本ですが、ただし、車泥棒が運転して事故を起こした場合は、「その車を運転する正当な権利を有しない」とみなされ、保険金は支払われません
自賠責に「年齢条件」や「家族限定」はない
自動車保険(任意保険)には「年齢条件」とか「家族限定」あるは「本人限定」といった条件があります。
この条件に合致する人が運転した場合でないと、事故にあっても保険金は支払われません。
たとえば、「年齢条件」が35歳以上で、「本人限定」がついている任意保険の場合で、この保険が付いている車を友人が借りて運転し、事故を起こしたケースを考えて見ましょう。
その友人が38歳であった場合、「年齢条件」には合致します。
しかし「本人限定」がついているので、ここで不一致となり、任意保険からは一切支払いがなされません。
対象外になってしまいます。
このように、自動車保険(任意保険)の場合は、「車両」にかける保険であると同時に、「人(被保険者)」に対してかける保険でもあるので、まさに「運転する人を選ぶ保険」なのです。
これに対して、このページのテーマである自賠責保険は、その「車両」のみにかけてある保険なので、「運転する人を選ばない保険」です。
だから、運転する人の年齢は関係ありませんし、「本人限定」とか「家族限定」といった概念そのものが自賠責保険にはありません。
※ただし、自賠責保険の補償範囲は、事故にあった相手(被害者)の傷害や死亡に対する賠償責任だけです。そしてこの補償には限度額があって、傷害は120万円まで、死亡は3000万円までとなっています。したがって、これらを超える賠償額、また相手の車の修理代等の物的損害に対しては、自賠責保険からは一切支払うことが出来ません。こうした賠償額も支払ってもらうには、自動車保険(任意保険)に加入していなければならず、その場合は、事故を起こした運転者が「年齢条件」や「家族限定」などの条件に合致していなければなりません。
飲酒運転でも無免許運転でも麻薬服用中でも支払い対象になる
これは自賠責保険だけでなく自動車保険(任意保険)にも共通したことですが、事故を起こした運転者が飲酒運転であっても無免許運転であっても麻薬服用中の運転であっても、保険金は支払われます。
これは「被害者救済」の観点から取られている措置です。
なお、自賠責保険からは、事故で相手がけがをしたり死亡した場合にのみ支払い対象になりますが、相手の車の損害などは対象外になります。
一方、自動車保険(任意保険)からは、相手のけがや死亡に対して支払い対象になるだけでなく、相手の車の損害等の物的損害に対しても支払い対象となります。
このように、飲酒運転・無免許運転・麻薬服用中の運転で事故を起こした場合でも、「被害者救済」の観点から、相手のけがや死亡に対しては自賠責と自動車保険の両方から支払われ、相手の物的損害に対しては自動車保険からだけ支払われます。
ただし、注意点が1つあります。
自動車保険(任意保険)に関してですが、事故を起こした運転者が、もともと自動車保険(任意保険)の被保険者に該当しない場合は、いかなるケースでも支払対象外になります。
つまり、「年齢条件」や「家族限定」に適合しない人が運転した場合は、いくら「被害者救済」のためとはいえ、保険会社はそこまで面倒は見ません、ということになります。
それと、車泥棒が運転していたケースも、もちろん対象外です。
自賠責は人身事故被害者に対する補償のみ(対物補償はない)
前の項目でも触れましたが、自賠責保険の補償内容は、もともと人的損害に対してだけです。
事故で相手にけがをさせたり死亡させたりした場合に、その損害に対して保険金が支払われます。
しかし、相手の車が破損し、修理代が発生しても、自賠責保険からは一切支払われません。
物的損害の補償が欲しければ自動車保険(任意保険)に加入するしかありません。
なお、自賠責保険の補償内容は以下の通りです。
損害の範囲 | 支払い限度額(被害者1名あたり) | |
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合 常時介護のとき:最高4,000万円 随時介護のとき:最高3,000万円 後遺障害の程度により 第1級:最高3,000万円~第14級:最高 75万円 |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人および遺族) | 最高3,000万円 |
死亡するまでの傷害による損害 | (傷害による損害の場合と同じ) | 最高120万円 |
引用:損保ジャパン日本興亜
※自賠責保険の補償内容は損害保険各社共通です
ご覧いただきありがとうございました。