「車検証は後日郵送します」と言われたら?仮ステッカーで走れる期間と注意点。保安基準適合標章とは?電子車検証とは?

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第1章 車検が終わったのに車検証も車検シールもない、これは普通のこと

無事に車検が終わったと連絡を受けて、車を受け取りに行ったとします。ところが、お店の担当者からこう言われることがあります。「車検証と車検シールは後日郵送します」。あるいは「発行されたらご連絡しますので、取りに来てください」と言われる場合もあります。

車を返してもらえたのに、肝心の車検証が手元にありません。フロントガラスを見ても、いつもの四角い車検シールが貼られていません。これでは本当に車検が終わったのか不安になります。

受け取り時の状況意味
「車検証は後日郵送します」と言われた民間の工場で車検を受けた場合によくある対応です
車検シールが貼られていない本物のシールがまだ発行されていないためです
見慣れないシールが貼ってあるそれが仮シールの保安基準適合標章です

結論からお伝えします。この状態は何もおかしくありません。むしろ、ディーラーや整備工場で車検を受けた場合には、ごく普通に起こることです。違法でもありませんし、あなたの車に問題があるわけでもありません。

その証拠が、フロントガラスに貼られている1枚のシールです。車を受け取ったとき、通常なら車検シールを貼る場所、つまりフロントガラスの上部に、見慣れないシールが貼られていることに気づくはずです。これが保安基準適合標章と呼ばれるものです。

保安基準適合標章(仮シール)

 

この保安基準適合標章は、いわば車検の仮シールです。あなたの車がきちんと検査を受けて、国の定める基準に合格したことを証明しています。本物の車検証と本物の車検シールが出来上がるまでの間、その代わりを務めてくれる大切なシールです。

保安基準適合標章とは内容
役割本物の車検証・車検シールの代わりを務める仮シール
意味検査に合格し基準を満たしたことの証明
貼る場所フロントガラス上部(車検シールと同じ位置)

そして、この仮シールには15日間という有効期限があります。この15日の間は、本物の車検証や車検シールがなくても、公道を堂々と走ることができます。法律でそう認められているからです。

期限が来るまでには、本物の車検証と車検シールが手元に届きます。届いたら貼り替えをして、ようやくすべての手続きが完了します。つまり、「車検は終わったのに車検証がない」という状態は、本物の書類が届くまでの一時的なものにすぎません。あわてる必要はありません。

ただし、なぜこんな回りくどい仕組みになっているのか、疑問に思う方もいるでしょう。検査に合格したのなら、その場で車検証も渡してくれればいいはずです。実は、ここには車検証を発行する権限がどこにあるか、という日本の制度上の理由が関わっています。次の章で、その仕組みを詳しく見ていきます。

なお、2023年1月からは車検証そのものが電子化され、従来の紙の車検証から電子車検証へと切り替わりました。この変化によって、車検証を受け取るタイミングにも新しい動きが出ています。この点も後の章で取り上げます。

この章のまとめ
後日郵送民間工場の車検では車検証が後から届くのが普通です
保安基準適合標章フロントガラスに貼られる車検の仮シールです
15日間仮シールの有効期限で、この間は公道を走れます
一時的な状態本物が届いて貼り替えれば手続き完了です
引用元
イエローハット「車検シール(検査標章)とは?見方や貼る位置、紛失した際の再発行について」(車検コラム)
WECARS(ウィーカーズ)「車検シール(ステッカー)でわかること。正しい貼り方や再発行のやり方も解説」(車検コラム)
国土交通省「電子車検証について」(電子車検証特設サイト・自動車所有者・使用者の方へ)

第2章 車検証と車検シールを発行できるのは陸運支局だけ

第1章で、車検が終わっても車検証がすぐにはもらえないことがある、とお伝えしました。では、なぜそんなことが起きるのでしょうか。検査に合格したのなら、その場で車検証を渡してくれればいいはずです。

理由は、車検証と車検シールを発行する権限がどこにあるかにあります。これらを発行できるのは、国の機関である運輸支局だけです。陸運支局や陸運局と呼ばれることもありますが、いずれも国土交通省の出先機関です。

ディーラーや整備工場は、あくまで車検を代行している民間の業者です。検査をする力は持っていても、車検証そのものを発行する権限は、原則として与えられていません。

誰が何をできるか検査車検証等の発行
運輸支局(国の機関)できるできる
ディーラー・整備工場できる場合がある原則できない

ここで、民間の工場が車検をどう進めるのかを見てみます。たとえばディーラーに車検を出したとします。自社の検査設備で検査を行い、合格すれば、その車が基準を満たしている証明書を発行します。この証明書をもとに、運輸支局へ手続きをして、はじめて本物の車検証と本物の車検シールが発行されます。

問題は、この運輸支局への手続きです。車を1台仕上げるたびに、その都度ディーラーが運輸支局へ出向いていたのでは、効率が悪すぎます。そこで多くの工場では、数台分をまとめて運輸支局へ持っていく、というやり方をとっています。

民間工場の車検の流れ内容
1. 自社で検査工場の設備で検査して合格を確認します
2. 証明書を発行基準に適合したことを示す書類を作ります
3. まとめて手続き数台分をまとめて運輸支局へ持ち込みます
4. 本物が発行運輸支局で車検証と車検シールが発行されます

このまとめて手続きをする仕組みがあるために、検査が終わってから本物の車検証が手元に届くまで、どうしても数日のタイムラグが生じます。その間、車を預けっぱなしにするわけにもいきません。そこで、第1章で説明した保安基準適合標章という仮シールを貼って、先に車に乗ってもらう、という流れになります。

ここまでが、従来からの基本的な仕組みです。ただし、近年はこの仕組みにも変化が出ています。2023年から始まった電子車検証の制度により、一定の条件を満たした整備工場では、その場で車検証の更新ができるケースも出てきました。発行権限が運輸支局だけ、という従来の説明が、少しずつ変わりつつあるのです。

この電子車検証による変化は、この記事の重要なポイントの1つです。詳しくは第5章でまとめて取り上げます。まずは次の章で、仮シールである保安基準適合標章そのものについて、もう一歩踏み込んで見ていきます。

この章のまとめ
発行権限車検証と車検シールを出せるのは運輸支局だけです
民間工場の立場検査はできても車検証の発行権限は原則ありません
まとめて手続き数台分をまとめて運輸支局へ持ち込むため時間がかかります
タイムラグその間を埋めるのが仮シールの保安基準適合標章です
制度の変化電子車検証で一部即日対応も可能になりつつあります
引用元
国土交通省「自動車検査登録総合ポータルサイト Q&A(検査・登録の手続きについて)」
国土交通省「全国運輸支局等のご案内」(自動車検査登録総合ポータルサイト)
車検の速太郎「車検証の電子化について」(参照2025年2月28日)

第3章 仮シール「保安基準適合標章」の正体と15日の有効期限

ここまで何度か登場してきた保安基準適合標章について、この章でもう一歩踏み込んで見ていきます。フロントガラスに貼られたこの仮シールが、いったい何を証明しているのか。そして、なぜ15日という期限があるのか。順に整理します。

まず、保安基準適合標章は単独で発行されるものではありません。保安基準適合証という書類とセットで作られます。名前がよく似ていて混乱しやすいのですが、この2つははっきり役割が違います。

2つの書類の違い役割
保安基準適合証運輸支局へ提出する書類です
保安基準適合標章車に貼り付ける書類です

保安基準適合証は、指定工場が検査を行い、基準に適合したと判断したときに発行する証明書です。これを運輸支局へ提出することで、車を持ち込まずに本物の車検証の発行手続きが進みます。一方、保安基準適合標章は、その間に車に貼っておく仮シールです。私たちが普段目にするのは、もっぱらこの標章のほうです。

この標章には、ただ「合格」と書いてあるわけではありません。その車だけの情報が細かく印刷されています。

標章に印刷されている主な情報内容
有効期間いつまで使えるか
登録番号車のナンバー
検査年月日・検査員名いつ誰が検査したか
使用者の氏名・住所誰の車か

こうした情報が印刷されているのは、他の車に使い回しできないようにするためです。ディーラーでは検査員が内容を記入し、責任者が確認するなど、間違いが起きないよう管理されています。

そして、この標章には検査日から15日間という有効期限があります。セットの保安基準適合証も同じく15日です。この15日の意味を、少し丁寧に説明します。

民間の指定工場では、検査が終わった車に標章を貼って、先にお客さんへ返します。そのうえで、預かった保安基準適合証を運輸支局へ提出し、本物の車検証と車検シールを発行してもらいます。15日というのは、この一連の手続きを終えるための猶予期間です。本来は、すみやかに手続きを済ませることが前提になっています。

15日間の使われ方内容
標章を貼って車を返却検査合格後すぐにお客さんへ
工場が運輸支局へ提出適合証を持ち込んで手続き
本物が発行・郵送車検証と車検シールが届く
貼り替えて完了標章を本物のシールに交換

ここで1つ、知っておくと安心な点があります。車検は、有効期間の満了日の30日前以内に受ければ、次回の満了日がずれません。早めに車検を受けても損をしない仕組みです。15日の期限と合わせて覚えておくと、スケジュールを考えやすくなります。

本物の車検証と車検シールが届いたら、車検証は車内に保管し、車検シールは標章と貼り替えます。役目を終えた保安基準適合標章は、廃棄してかまいません。これで、すべての手続きが完了します。

問題は、何らかの事情でこの15日を過ぎてしまった場合です。期限切れの標章を貼ったまま公道を走ると、罰則の対象になります。この罰則については、第6章でほかのケースと整理して詳しく取り上げます。まずは次の章で、車検の受け方によって書類の受け取り方がどう変わるのかを見ていきます。

この章のまとめ
2つの書類適合証は提出用、適合標章は貼付用です
車だけの情報標章には使い回し防止の情報が印刷されています
15日間検査日から数えた手続きの猶予期間です
満了日30日前この期間内に車検を受ければ満了日はずれません
届いたら廃棄本物に貼り替えれば標章は捨ててよいです
引用元
MOBY(モビー)「保安基準適合標章とは?有効期限と期限切れについて」
WECARS(ウィーカーズ)「車検の保安基準は?適合・不適合の基準を徹底解説」(車検コラム)
金子行政書士事務所「保安基準適合証・保安基準適合標章とは?有効期限・注意点も解説」(2026年1月更新)

第4章 指定工場・認証工場・ユーザー車検で受け取り方が変わる

これまで「民間の工場では車検証が後日になる」と説明してきました。ただし、これはすべての車検に当てはまるわけではありません。実は、どこで車検を受けるかによって、車検証や車検シールの受け取り方は変わります。

車検の受け方は、大きく3つに分けられます。指定工場認証工場、そしてユーザー車検です。まずはこの3つの違いを整理します。

車検の受け方検査をする場所
指定工場自社の検査設備で行う
認証工場国の車検場へ持ち込む
ユーザー車検本人が国の車検場へ持ち込む

最初に指定工場です。指定工場は、いわゆる民間車検場のことです。道路運送車両法に基づいて、地方運輸局長から指定を受けた工場です。自社に検査設備と、自動車検査員という資格を持ったスタッフを置いていて、車検を自社内で完結できます。店舗には青色の標識が掲げられています。

指定工場の強みは、スピードです。自社で検査できるので、早ければ数時間から1日で車検が終わります。ただし、これまで説明してきたとおり、検査が終わっても車検証と車検シールはその場では出せません。保安基準適合標章を貼って車を返し、本物は後日となります。

次に認証工場です。認証工場は、整備をする技術や設備は持っていますが、車検の検査設備は持っていません。そのため、車検のときは工場のスタッフが車を国の車検場へ持ち込んで検査を受けます。店舗には黄色の標識が掲げられています。

項目指定工場認証工場
検査設備ありなし
検査の場所自社内国の車検場へ持ち込み
標識の色
車検証の受け取り後日が多い揃って返ることが多い

ここで、少し意外に思えることがあります。認証工場は車を国の車検場へ持ち込むため、その場で本物の車検証と車検シールが発行されます。つまり、車検証が揃った状態で車が返ってくることが多いのです。

「それなら、車検証が後日になる指定工場より、認証工場のほうがいいのでは」と思うかもしれません。ところが、そう単純でもありません。認証工場は1台ずつ車を国の車検場へ持ち込む必要があります。そのぶん、車検の受付から車が返ってくるまでに日数がかかりやすいのです。スピードを取るか、車検証が揃って返ることを取るか、という違いになります。

最後にユーザー車検です。これは、車の所有者が自分で車を国の車検場へ持ち込んで、検査を受ける方法です。検査に合格すれば、その場で本物の車検証と車検シールを受け取って、そのまま帰れます。仮シールを使う必要がありません。

3つの方式の受け取り方受け取り方
指定工場仮シールを貼って返却、本物は後日
認証工場本物が揃って返ることが多い
ユーザー車検その場で本物を受け取れる

このように、車検証がすぐにもらえるかどうかは、車の問題ではなく、車検をどこで受けたかで決まります。指定工場で「後日郵送します」と言われるのは、スピードと引き換えのごく自然な流れです。

ここまでは、従来からの仕組みを前提に説明してきました。ところが、2023年から始まった電子車検証の制度によって、この受け取り方にも新しい変化が起きています。次の章で、その電子車検証について詳しく見ていきます。

この章のまとめ
指定工場自社で検査完結、スピードが強み、車検証は後日が多い
認証工場国の車検場へ持ち込み、車検証は揃いやすいが日数がかかる
ユーザー車検本人が持ち込み、その場で本物を受け取れる
決め手車検証が即日かどうかは受けた場所で決まります
引用元
JAF(日本自動車連盟)「クルマ何でも質問箱:認証工場と指定工場はどこが違うのですか?」
Seibii(セイビー)「民間車検とは?認証工場と指定工場の違いや費用相場を解説」
東京工科自動車大学校「自動車整備工場の『認証工場』と『指定工場』の違いとは」

第5章 2023年から始まった電子車検証で何が変わったか

電子車検証

ここからは、近年の大きな制度変更について見ていきます。2023年から、車検証そのものが電子車検証に切り替わりました。この変化は、車検証を受け取るタイミングにも関わってきます。順を追って説明します。

まず、電子車検証がいつから始まったのかを整理します。普通車と軽自動車で開始時期が違います。

電子車検証の開始時期時期
普通車2023年1月4日から
軽自動車2024年1月4日から

見た目も大きく変わりました。従来の車検証はA4サイズの紙でした。電子車検証は、A6サイズ相当の厚紙に、ICタグを貼り付けたものになっています。手のひらに乗るくらいのコンパクトなサイズです。

中身の記録方法も変わりました。電子車検証では、めったに変わらない基礎的な情報だけが券面に印刷されています。一方で、車検の有効期間や所有者の氏名・住所など、変わる可能性のある情報は、ICタグの中に電子的に記録されています。

情報の記録場所どこに記録されるか
車台番号などの基礎情報券面(紙の表面)に印刷
有効期間・所有者の住所などICタグの中に記録

このため、券面を見ただけでは車検の有効期間がわかりません。ICタグの中身を確認するには、国土交通省が提供する車検証閲覧アプリや、ICカードリーダーが必要です。車検を受けても券面の日付が変わらないので、戸惑う方もいますが、ICタグの情報はきちんと更新されています。

さて、この電子車検証が、車検証を受け取るタイミングにどう関わるのでしょうか。ここが重要なポイントです。

電子車検証では、記録等事務代行という新しい制度が始まりました。この制度の委託を受けた指定整備工場は、自社でICタグの中の車検満了日を書き換え、検査標章、つまり車検シールを発行できるようになりました。これまで運輸支局しかできなかった作業の一部を、工場側でできるようになったのです。

記録等事務代行で工場ができること内容
ICタグの書き換え車検満了日を新しい日付に更新
検査標章の発行車検シールを印刷して交付
運輸支局への出頭一定の条件で不要になる

これはつまり、第2章で説明した「発行権限は運輸支局だけ」という従来の仕組みが、一部変わったことを意味します。委託を受けた工場であれば、その場で車検証の更新と車検シールの交付ができる場合が出てきました。仮シールである保安基準適合標章を使わずに済むケースも増えています。

ただし、注意が必要です。すべての工場がこうなったわけではありません。運輸支局への出頭が不要になるのは、ICタグの書き換えだけで済み、券面の記載事項に変更がない継続検査などに限られます。記録等事務代行の委託を受けていない工場では、従来どおり保安基準適合標章を貼って、本物は後日、という流れが続いています。

工場による違い車検証・車検シールの受け取り
記録等事務代行に対応した工場その場で更新・交付できる場合がある
対応していない工場従来どおり仮シールを貼って後日

もう1つ、知っておきたい変更があります。電子車検証の導入にあわせて、紙の自動車検査証記録事項という書類が補助的に交付されてきました。これは、ICタグの中身を紙でも確認できるようにしたものです。ところが、継続検査で券面の記載事項に変更がない場合、この紙の窓口での交付は2025年12月末で終了しました。

そのため、2026年に車検を受けた方の中には、「以前はもらえた紙がもらえなくなった」と感じる方もいます。これは手続きのミスではなく、制度上の変更によるものです。記録事項の内容は、車検証閲覧アプリで確認できます。

最後に、車検シールそのものについても変更がありました。2023年7月3日から、車検シールを貼る位置が変わっています。従来はルームミラーの裏側付近など「前方から見やすい位置」でしたが、現在は「運転席側の上部で、車両の中心から離れた位置」に変わりました。右ハンドル車なら、運転席から見てフロントガラスの右上が基本です。

この章のまとめ
電子車検証普通車2023年・軽自動車2024年から開始
ICタグ有効期間などはタグに記録、アプリで確認
記録等事務代行対応工場ならその場で更新・交付できる場合がある
記録事項の紙一部手続きで2025年12月末に窓口交付終了
シール位置変更2023年7月から運転席側の上部へ
引用元
国土交通省「電子車検証について」(電子車検証特設サイト・自動車所有者・使用者の方へ/事業者の方へ)
一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(日整連)「継続検査OSS代理申請ご利用マニュアル(導入編)」(2025年11月版)
JAHIC 日本高速情報センター「【2026年1月〜】電子車検証で『自動車検査証記録事項』の提供が終了!今後の入手方法と注意点」

第6章 車検証がない状態で走ると違法?罰則をはっきり区別する

「車検証が手元にない」と聞くと、多くの方が不安を感じます。罰則があるのではないか、と心配になるからです。ここで大切なのは、2つのまったく違う状態を混同しないことです。同じ「車検証がない」でも、意味も罰則もまるで違います。

1つ目は、これまで説明してきた状態です。車検は有効だが、書類がまだ手元にないケースです。指定工場で車検を受けて、保安基準適合標章を貼って車に乗っている状態がこれにあたります。車検そのものは合格しています。

2つ目は、車検そのものが切れているケースです。有効期間が過ぎたまま放置している、いわゆる車検切れの状態です。これは検査に合格していません。

2つの「車検証がない」状態
書類待ち車検は有効。本物の書類が届くのを待っている
車検切れ車検そのものが切れている。検査に合格していない

この2つは、罰則の重さがまったく違います。順に見ていきます。

まず、1つ目の書類待ちのケースです。仮シールの保安基準適合標章を貼っている15日間は、何の問題もありません。公道を堂々と走れます。問題になるのは、15日の期限が切れたあとも、その標章を貼ったまま走った場合です。

この場合、車検証の備付けと検査標章の表示を義務づけた道路運送車両法66条1項に違反します。罰則は、同法109条により50万円以下の罰金です。ただし、これは道路交通法ではないので、免許の違反点数は加算されません。車検証を車に積み忘れた、検査標章を貼り忘れた、というケースも同じ扱いです。

書類待ちで期限切れの場合内容
違反する条文道路運送車両法66条1項
罰則50万円以下の罰金(109条)
違反点数加算なし

次に、2つ目の車検切れのケースです。こちらは格段に重くなります。車検が切れた車で公道を走ると、無車検運行となり、道路運送車両法58条1項に違反します。罰則は、同法108条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。拘禁刑は、2025年6月から始まった刑罰で、以前の懲役にあたります。

さらに、車検切れには道路交通法上の行政処分も加わります。違反点数6点が加算され、前歴がなくても30日間の免許停止となります。罰金だけでなく、免許も止まるのです。

車検切れ(無車検運行)の場合内容
違反する条文道路運送車両法58条1項
罰則6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(108条)
違反点数6点(30日間の免許停止)

車検切れには、もう1つ重い問題がついてきます。自賠責保険です。自賠責保険は車検のときに更新することが多いため、車検が切れた車は自賠責保険も切れていることがよくあります。自賠責が切れたまま走ると、自動車損害賠償保障法に違反し、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が加わります。車検も自賠責も両方切れていると、刑事処分が併せて科され、さらに重くなります。

ここまで見てきたとおり、同じ「車検証がない」でも、書類待ちと車検切れではまったく別の話です。指定工場で車検を受けて仮シールを貼っている状態は、車検切れではありません。あわてる必要はありません。心配なのは、車検そのものが切れているケースです。

罰則の比較書類待ち(期限切れ標章)車検切れ
罰金50万円以下30万円以下
拘禁刑なし6か月以下あり
違反点数なし6点・免停30日

なお、ここで取り上げた罰則の話は、ご自身の状況に不安がある場合の参考としてお考えください。実際の処分は個別の事情によって変わります。判断に迷うときは、車検を受けた工場や、運輸支局などの窓口に確認することをおすすめします。

次の章では、本物の車検証や車検シールが届かないとき、あるいはなくしてしまったときに、どう対処すればいいのかを見ていきます。

この章のまとめ
2つの状態書類待ちと車検切れはまったく別物です
書類待ち期限切れ標章で走ると50万円以下の罰金、点数なし
車検切れ6か月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金、6点で免停
自賠責車検切れは自賠責も切れていることが多く罰則が重なる
結論仮シールを貼った状態は車検切れではありません
引用元
チューリッヒ保険会社「車検切れ(無車検)運転や無保険運転の罰則・罰金」
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所「無車検車運行・無保険車運行」
法務省 関連解説「2025年6月1日施行 懲役・禁錮の拘禁刑への一本化について」

第7章 車検証・車検シールが届かない・なくした時の対処法

最後に、トラブルが起きたときの対処法をまとめます。大きく2つの場面を取り上げます。1つは、本物の車検証や車検シールがなかなか届かない場面。もう1つは、車検証をなくしてしまった場面です。

まず、届かないケースから見ていきます。第3章で説明したとおり、保安基準適合標章の有効期限は15日間です。ふつうは、この期限が来る前に本物の車検証と車検シールが届きます。ところが、まれに15日が近づいても届かないことがあります。

このときは、期限が切れる前に、車検を依頼した工場へ連絡してください。待っているだけでは解決しません。工場側が運輸支局への手続きを忘れている、あるいは手続きは済んでいるのに連絡が来ていない、といった可能性が考えられます。

届かないときの確認手順内容
1. 期限を確認標章の有効期限が15日以内か確認します
2. 早めに連絡期限が切れる前に工場へ連絡します
3. 状況を確認手続きの進み具合を聞きます

ここで注意したいのは、責任の所在です。たとえ工場側の手続き忘れが原因だったとしても、期限切れの標章を貼ったまま公道を走れば、罰せられるのは車を使う本人です。車の使用者が運行の責任者だからです。だからこそ、人任せにせず、自分から早めに確認することが大切です。

次に、車検証をなくしてしまったケースです。車検証は再発行できます。手続きをする場所は、車の種類によって違います。

再発行の手続き先場所
普通車・バイク運輸支局(自動車検査登録事務所)
軽自動車軽自動車検査協会

注意点として、どこの窓口でもいいわけではありません。ナンバープレートの地域を管轄する窓口で手続きをします。手続きの内容を整理します。

再発行の手続き内容内容
手数料300円程度(印紙代)
所要時間窓口が空いていれば30分から1時間ほど
受付時間平日のみ。昼休みを挟む時間帯が一般的
必要なもの申請書、本人確認書類など

普通車やバイクの場合、なくした理由を書く理由書が必要なこともありますが、申請書に事由を記入すれば不要なケースもあります。近年は印鑑が認印や署名で済むなど、手続きは簡素になってきています。混雑していなければ、その日のうちに新しい車検証を受け取れます。

ここで、見落としがちな点があります。再発行の窓口へは、その車では行けません。車検証がない車で公道を走るのは違反になるからです。別の車や公共交通機関で行くか、行政書士などの代行業者に依頼することになります。代行の場合は、印紙代とは別に数千円から1万円ほどの費用がかかります。

なお、電子車検証になってからは、車検証の券面が読み取りにくくなったと感じる方もいます。ICタグの中身は、第5章で触れた車検証閲覧アプリで確認できます。再発行が必要かどうか迷ったときは、まずアプリで状態を確かめる方法もあります。

この記事では、車検後に車検証が手元にない理由から、罰則の区別、トラブルの対処法まで見てきました。指定工場で仮シールを貼って車に乗っている状態は、何もおかしくありません。本物の車検証と車検シールが届いたら、すみやかに貼り替えをして、すべての手続きを完了させてください。

この章のまとめ
届かないとき期限が切れる前に工場へ連絡します
責任の所在期限切れで走ると使用者本人が罰せられます
再発行の場所普通車は運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会
費用と時間手数料300円程度、当日30分から1時間ほど
注意点その車では窓口へ行けないので別の手段で
引用元
ネクステージ「車検証を紛失した時の再発行の方法は?車検証以外の書類についても解説」
SOMPOダイレクト損害保険「教えて!おとなの自動車保険:車検証の再発行はどこで行う?普通車・軽自動車の手続き方法や手数料、必要書類について」
オートバックス「車検証とは?住所変更や紛失時の再発行の方法、必要書類まで解説」