【記事丸わかり】
|
自動車保険の等級が下がらない特約として一世を風靡したのが等級プロテクト特約です。
2012年の等級制度の大幅な改正により、保険会社では順次この特約の販売を終了し、現在では等級プロテクト特約を扱っている保険会社は0です。
このページでは等級プロテクト特約なき後、これに代わるもの、あるいはこれに近いものについて詳しく解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
等級プロテクト特約とは?
2012年10月に損害保険業界では大きな改正が行われました。
等級制度の改正です。
「事故有係数」「事故有期間」という概念が導入され、1つの等級に2つの割引率が併存する事になりました。※詳細は後ほど解説しています
同時に、それまであった「等級すえおき事故」が廃止され、事故で保険を使った際の等級は次の3つに改正されました。
|
さて、このページのテーマである等級プロテクト特約ですが、この特約は、たとえば3等級ダウン事故を起こし保険を使った場合、通常であれば翌年の等級は3等級ダウンするのですが、等級プロテクト特約を適用することで3等級ダウン事故を「等級すえおき事故」として扱う、というものでした。
具体的には、15等級で3等級ダウン事故を起こした場合でも、翌年の等級は12等級にはならず15等級のままに据え置く、という特約です。
もちろん、こういうありがたい内容の特約なので、等級プロテクト特約を付けるには別途保険料が必要でした。
しかし、この特約の発売当初は保険会社も大キャンペーンを張って販売にエネルギーを注いだこともあり、あっという間にスマッシュヒットと呼べる人気商品となったのです。
しかし、すぐに収支が悪化しました。
保険会社にとってメリットが少ないことが判明すると、今度は販売縮小に入り、やがて販売そのものを終了してしまいました。
最終的に2015年前後にすべての保険会社で等級プロテクト特約の販売は終了しました。
3等級ダウン事故 | こちらのページ |
1等級ダウン事故 | こちらのページ |
ノーカウント事故 | こちらのページ |
等級プロテクト特約に代わるものはあるか?
結論を言うと、ありません。
ありませんが、適用される条件が限定されるものの、やや似たような特約は存在します。
それは車両保険無過失事故特約(保険会社により呼び方が異なる)と呼ばれるものです。
この特約は、車対車のもらい事故・被害事故で車両保険から支払いを受けた場合、通常なら3等級ダウンするところをノーカウント事故(無事故とまったく同じ)として扱うというものです。
たとえば赤信号で信号待ちしていたところ、脇見運転をしていた後続車に追突された場合、追突された側には一切過失が生じません。
100:0の事故であり、追突した相手が100%の責任を追うべき事故です。
通常、こういうケースでは、相手の対物賠償保険から保険金が支払われるので、追突された側が自分の保険(車両保険)を使う必要はありません。
しかし相手が無保険だったらどうでしょう?
無保険なら自腹で払ってもらえばいいのですが、無保険で車を運転するような人なのでそもそも支払能力がないことがほとんどです。
そうなると、追突された側は泣き寝入りになってしまいます。
そこで登場するのが車両保険無過失事故特約です。
この特約により、追突された側の車両保険から車の修理代が支払われます。
その際、通常は翌年度3等級ダウンするのですが、そうはなりません。
ノーカウント事故として扱われ、無事故とまったく同じ扱いになるので、(他の事故がなければ)翌年度の等級は1等級アップします。※ですから等級プロテクト特約より車両保険無過失事故特約の方が条件が良いです
「事故有」と「無事故」の2つの系統
2012年に等級制度が改正されたことはすでに触れましたが、ここでは改正の骨子となる部分を解説します。
参考になさってください。
ノンフリート等級は1等級~20等級まであります。
このうち7等級~20等級は2系統に分かれています。
つまり、同じ等級でありながら2つの割引率が並存しています。
等級 | 事故有 | 無事故 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
※1等級~6等級までは事故有と無事故は同じ扱いです。また1等級・2等級・3等級は「割引」ではなく「割増」になります
上記のように、7等級~20等級は2系統に分かれています。
従来は1系統でしたが、2012年10月の改正から2系統に分かれています。
その理由を以下ご説明します。
たとえば、現在等級が13等級のAさんが3等級ダウン事故を起こして保険を使った場合、翌年度の等級は10等級になります。
そこで次の表をご覧ください。
事故有 | 無事故 | |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
同じ10等級なのですが、「事故有」は23%引き、「無事故」は45%引きとなっています。
今回10等級になったAさんには「事故有」23%割引が適用されます。
割引になる数字が小さいということはより高い保険料になるということです。
このように事故で保険を使った契約に適用される割引率のことを「事故有係数」と呼びます。
いっぽう、無事故を続けている契約に適用される割引率のことを「無事故係数」と呼びます。
事故で保険を使った結果として10等級になった人と、無事故で1つずつ等級の階段を昇ってきた結果として10等級になった人とを、同じ扱いにしては不公平だという理由から、このように割引率に差を付けています。
10等級の場合は、実に22ポイントも割引率に差が付いています。
事故で保険を使うと等級がダウンして保険料が高くなること自体は、2012年10月以前も以後もまったく同じです。
しかし、2012年10月以降は保険料の上がり方が極端になり、小損害の事故では保険を使いづらくなっています。
「事故有」の等級には必ず「事故有期間」がつきまとう
前の項目の例を続けます。
ノンフリート等級が13等級だったAさんが、3等級ダウン事故で保険を使ったために翌年の保険が10等級にダウンした場合、事故有係数による割引率が適用されますが、それと同時に「事故有期間」が3年付きます。
※会社によっては「事故あり期間」のように「有」を「あり」とひらがなで表記するところもあります
3等級ダウン事故では「3年」、1等級ダウン事故では「1年」の事故有期間が付きます。
保険証券にも下記のように記載されます。
上の画像では事故有期間は「0年」になっていますが、3等級ダウン事故で保険を使った場合の翌年の保険証券には「3年」と表示されます。※1等級ダウン事故なら「1年」と表示
この事故有期間というのは、「事故有係数による割引率を適用する期間」という意味です。
つまり、事故で保険を使うと2系統ある割引率のうちのより割引率の低い事故有係数を適用するけれど、永遠にそこに留まるのではなく、定められた期間を過ぎたら、また無事故係数に復帰できる、というわけです。
事故有期間 | |
3等級ダウン事故 | 3年 |
1等級ダウン事故 | 1年 |
もしも同じ年度に2度、3度と事故を起こして保険を使ったら、その分は事故有期間が加算されるのですが、事故有期間は最長6年で打ち止めになります。
そのため3等級ダウン事故で3回保険の支払いを受けた場合、事故有期間は9年ではなく6年になります。
話を整理します。
ノンフリート等級が13等級だった人が3等級ダウン事故で保険を使うと、翌年の保険は10等級になります。
この10等級は、無事故で等級の階段を昇ってきた人の10等級とは割引率が異なり、より割引率の低い事故有係数が適用されます。
同時に、事故有期間が3年付きます。
3年間は事故有係数の割引率によってより高い保険料を支払うことになりますが、3年間無事故で過ごせば、4年目にはまた13等級に戻ります。
戻った13等級は、事故有期間の3年がリセットされているので、無事故係数による割引率が適用されます。
3等級ダウン事故で保険を使った場合 |
無事故で過ごせば4年後に元の保険料レベルに戻る |
1等級ダウン事故で保険を使った場合 |
無事故で過ごせば2年後に元の保険料レベルに戻る |
ご覧いただきありがとうございました。