【記事丸わかり】
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1等級ダウン事故は、以前は「等級据え置き事故」の扱いでしたが、保険会社の収支が厳しくなる中、2013年頃に「等級据え置き事故」に替わるものとして新たに導入されました。
通常、事故で保険金の支払いを受けると翌年の等級は3等級ダウンします。
1等級ダウン事故は3等級ダウン事故に比べて過失が小さいかあるいは無過失の事故に適用されます。
また1等級ダウン事故は車両保険のみが支払い対象になる事故に適用されます。
このページでは自動車保険の1等級ダウン事故の詳細を解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
1等級ダウン事故の補償内容
自動車保険は事故で保険を使った場合、翌年度の等級には次のいずれかが適用されます。
3等級ダウン事故 | 翌年度は3等級ダウンする |
1等級ダウン事故 | 翌年度は1等級ダウンする |
ノーカウント事故 | 事故による支払いがなかったものとして扱われる ※無事故と同一の扱い |
このページで扱っているのは「1等級ダウン事故」です。
対象となる補償内容は以下の通りです。
※なお、1等級ダウン事故は「車両保険のみ」のケースに限定されます。したがって、下記のいずれかに該当する場合でも、それ以外に対人賠償や対物賠償からの支払いがあるケースでは3等級ダウン事故になります
1等級ダウン事故の事例 | |
①火災または爆発 | ・飛来中もしくは落下中の物以外の他物との衝突もしくは接触またはご契約のお車の転覆もしくは墜落によって生じた火災・爆発を除きます |
②盗難 | ・警察への盗難届けが必須です ・キーを付けっ放しにして車を離れて盗まれた場合などは支払い拒否になることもあります |
③騒じょう、労働争議に伴う暴力行為または破壊行為 | ・デモ行進中の人々に車が破壊されるケースなど |
④台風・竜巻・洪水または高潮 | ・台風や竜巻の強風で飛ばされてきた物体で車が破壊されたり、洪水や高潮で車が水没したりしたケース |
⑤落書、いたずらまたは窓ガラス破損 | ・(落書き・いたずら)ご契約のお車の運行によるものおよびご契約のお車と他の自動車との衝突または接触によるものを含みません ・(窓ガラス破損)飛来中もしくは落下中の物以外の他物との衝突もしくは接触またはご契約のお車の転覆もしくは墜落によって生じた窓ガラス破損を除きます |
⑥飛来中または落下中の他物との衝突 | ・隕石の落下、ドローンやヘリコプターの墜落などによる車の損害 |
⑦上記以外の偶然な事故 | ・他物との衝突もしくは接触またはご契約の車の転覆もしくは墜落を除きます |
参考:三井住友海上
2013年頃までは上記の①~⑦は等級すえおき事故として扱われ、保険金の支払いがあっても翌年度の等級は今の年度の等級と同一でした。
しかしいろんな理由付けはあるものの、結局のところ保険会社の収支が厳しくなったのが最大の要因で、この等級すえおき事故は廃止され、現在の1等級ダウン事故に改変されました。
現在は「等級すえおき事故」は扱っていません。
※「当て逃げ」や「ドアパンチ」による車の損傷は、被害を受けた側にとっては、コインなどによっていたずらされるケースと同じ部類に思えるのですが、保険会社の言い分としては、あくまでも「車両同士の接触による事故」になるので、3等級ダウン事故として処理されます。
事故有係数とは?
たとえば、強風により近所の家の屋根瓦が吹き飛ばされ、その瓦が車に当たって損傷を受けたので車両保険を使ったとします。
これは1等級ダウン事故なので、翌年度の等級は1等級ダウンします。
現在が11等級だとすると、10等級になります。
ここで次の比較表をご覧ください。
事故有 | 無事故 | |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
同じ10等級なのですが、「事故有」と「無事故」で割引率が違います。
2013年頃までは同じ等級に2つの割引が並存するようなことはありませんでした。
現在の等級制度では、事故で保険を使った結果として10等級になった人と、無事故で一つずつ等級の階段を昇ってきた結果として10等級になった人とを、同じ扱いにしては不公平だという理由から、このように割引率に差を付けています。
10等級の場合は、実に22ポイントも割引率に差が付いています。
たった1等級ダウンしただけでも、保険料的にはかなり高くなるということです。
このように、事故で保険を使った場合に適用される割引率のことを「事故有係数」と呼びます。
参考までに、自動車保険のすべての等級(1等級から20等級)を、事故有の割引(事故有係数)と無事故の割引に分けて一覧表にしてみました。
等級 | 事故有 | 無事故 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
事故有期間とは?
前の項目の例を続けます。
11等級だった人が、1等級ダウン事故で保険を使ったために翌年の保険が10等級にダウンした場合、事故有期間(事故有係数適用期間)が1年付きます。
1等級ダウン事故なので「1年」、3等級ダウン事故なら「3年」が付きます。
上の画像では事故有期間は「0年」ですが、1等級ダウン事故で保険を使った場合の翌年の保険証券には「1年」と表示されます。※3等級ダウン事故なら「3年」と表示
この事故有期間というのは、前の項目で解説しました「事故有の割引(事故有係数)を適用する期間」のことです。
つまり、1等級ダウン事故で保険を使ったら、1年間だけ事故有の割引(高い保険料)を適用しますが、1年過ぎたら11等級に戻り、その11等級は事故有の割引ではなく元の割引(無事故の割引)になります、ということです。
3等級ダウン事故で保険を使ったら、3年間高い保険料を適用するけれど、3年経過したら元に戻ります。
もしも同じ年度に2度、3度と事故を起こして保険を使ったら、その分は加算されるのですが、事故有期間は最長6年で打ち止めになっているので、たとえば3等級ダウン事故で3回保険の支払いを受けても事故有期間は6年ということになります。
話を整理します。
11等級だった人が1等級ダウン事故で保険を使うと、翌年の保険は10等級になります。
この10等級は、無事故で等級を昇ってきた人の10等級とは割引率が異なり、より割引率の低い事故有の割引(事故有係数)となります。
同時に、1等級ダウン事故で保険を使った場合は、事故有期間が1年付くことになります。
1年間は事故有の割引によって高い保険料を支払うことになりますが、1年間無事故で過ごせば、2年目にはまた11等級に戻ります。
そしてこの11等級は、事故有期間の1年がリセットされているので、また無事故の割引が適用されます。
1等級ダウン事故で保険を使った場合のまとめ |
無事故であれば2年後に元の保険料レベルに戻る |
保険を使うか使わないか計算する方法と使う目安
1等級ダウン事故で保険を使った場合に翌年の保険料がどれだけ上がるか。
これが事前にわからなければ、保険を使う使わないを判断できません。
そこで、保険を使った場合の将来保険料をシミュレーションしてみたいと思います。
<計算条件> |
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※実際の保険料算出には、年齢条件・料率クラス・各種特約なども影響しますが、ここではイメージをつかんでいただくために簡略化しています
下の表の左側は、保険を使ったために11等級から1つダウンし、いったん10等級に戻ってからの保険料推移(2年間)です。
右の表は、保険を使わずにいた場合のその後の保険料推移で、12等級から2年間の数字です。
値上がりする保険料の推移 | 保険を使わなかった場合の推移 | |||
経過年 | 等級 | 保険料 | 等級 | 保険料 |
1 | 事故有10等級 | 73,000 円 | 無事故12等級 | 49,000 円 |
2 | 無事故11等級 | 50,000円 | 無事故13等級 | 48,000円 |
123,000円 | 97,000円 |
※「2年間」で比較するのは、1等級ダウンしたものが元の等級に戻るのに2年かかるからです。しかし何年間の推移で比較するのがいいかは考え方によって意見が分かれるところです
さて、2年後の保険料総額を比較すると、保険を使った場合が123,000円で、使わなかった場合が97,000円です。
その差額は26,000円になります。
123,000-97,000=26,000円 |
すると、あくまでも概算になりますが、26,000円がいわゆる「損益分岐点」になってきます。
ですから、車の修理費が26,000円を超える場合は、「保険を使ってもいいかな」という判断になりますし、車の修理費が26,000円を下回るケースでは、「ここは自腹を切っておこうか」ということになります。
実は、上の保険料シミュレーションは、ソニー損保のホームページにある概算保険料ツールを利用して算出しています。
みなさんも、ご自分の条件を入力して、(あくまでも概算になりますが)保険料を算出してみてください。
大まかなイメージはつかめると思います。
ところで、実は、ここからが本題になります。
保険料のシミュレーションの話をしましたが、なにもみなさんが上で紹介したソニー損保の計算ツールを利用したりしなくても、みなさんが加入している保険会社の事故担当者が、通常業務の一環として、ちゃんと保険料を算出してくれます。
各保険会社には、ソニー損保の概算保険料ツールをより厳密にした、「将来保険料計算ツール」(名称は会社により様々ですが)というアプリがあります。
そのアプリで、個別具体的にみなさんのデータを入力して、10円単位まで正確な将来保険料を、上の一覧表のように「一瞬にして」算出してくれます。
いよいよ保険を使うか使わないかという段階になれば、その計算結果を担当者が提示してくれるので、みなさんは担当者の助言も考慮しつつ、保険を使う使わないの判断をすればいいことになります。
みなさんご自身で複雑な保険料計算をする必要は一切ありません。
代理店型の自動車保険でも通販型の自動車保険でも、いずれもちゃんとやってくれます。
自動車保険の「等級」に関しては以下のページも参考になさってください。
等級と割引率 | こちらのページ |
3等級ダウン事故 | こちらのページ |
1等級ダウン事故 | このページ |
ノーカウント事故 | こちらのページ |
ご覧いただきありがとうございました。