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狭い駐車場でうっかりやったりやられたりするのがドアパンチです。
もしも自分の車がドアパンチされたら保険は使えるのでしょうか?
相手が判明すれば相手の対物から払ってもらえるのでしょうか?
相手が判明しなかったら自分が入っている車両保険から払ってもらえますか?
もし払ってもらえる場合、等級は下がるのでしょうか?
また、警察に事故届けを出す必要があるのでしょうか?
このページではドアパンチの被害にあった場合の保険の扱いについて詳しく解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
【記事丸わかり】
⇒⇒【悲劇】駐車場で当て逃げされました!警察に通報し犯人を捜査。自動車保険やドラレコの重要性を解説 |
まずドアパンチを軽く見ないこと
駐車場で車のドアを開けたところ、開けたドアが隣の車に当たってしまった。
これがドアパンチです。
日頃から気をつけていても、同乗者(子供など)がうっかりやってしまうこともあります。
日本全国のあちらこちらで日々発生しているドアパンチですが、損害額が小さいこと、これがいずれのドアパンチにも共通しています。
実は、この「損害額が小さいこと」が、ゆくゆく問題をこじれさせる最大の要因になっています。
どういう事かと言うと、大きな損害なら、ドアパンチした側も、された側も、すぐに警察に連絡し、次に保険会社に連絡し、事故解決に向けた行動を迷いなく取ります。
しかし、なまじ損害が小さいがために、ドアパンチした側の多くは逃げますし、逃げなかったとしても、警察や保険会社への連絡をしないで、両者の話し合いで解決しようとする傾向が強くなります。
同時に、ドアパンチされた側も、傷に気がつかなかったなら止むを得ないのですが、気づいた場合でも、すぐに警察と保険会社に連絡しないケースが多いのです。
その結果、解決までに予想外の時間が費やされることは珍しくありません。
解決が長引くさまざまなケースのうち、ほんの一例だけご紹介します。
ドアパンチしたAさんとドアパンチされたBさんの例です。
AさんとBさんは警察や保険会社を通さず、両者のあいだで解決することにしました。
AさんがBさんに修理代を出すということで話がついたのです。
ところが後日BさんがAさんに渡した見積書を見て、Aさんの態度が急変しました。
見積書には85,000円と記載されていました。
Aさんにしてみれば、ちょっと当てただけなので、もし自分が修理するとしたら、コンパウンドで磨いたり、タッチペンを当てるなりで、どう高く見積もっても3万を越えることはありえないという認識でいたのです。
それがいきなり85,000円なので、Aさんとしては「吹っかけられている」と受け止めたのです。
けれども、Bさんにしてみれば、自分でつけた傷なら、タッチペンなどでできるだけ安上がりに仕上げたところかもしれませんが、他人に付けられた傷ですから、後々後悔しないようにここはしっかりプロに補修してもらいたいと考え、専門業者に依頼したのでした。
Bさんの行動は当然のもので、特別神経質に対応しているものとは思えません。
みなさんは驚かれるかもしれませんが、このAさんとBさんの揉め事は、解決までに結局9ヶ月かかりました。
最後はAさんが折れ、85,000円を支払いましたが、Bさんはその間車の修理に取り掛かれずに日々を過ごしました。
けれども、もしもAさんもBさんもすぐに警察に事故届けを出し、保険会社にも連絡していれば、間違いなく9ヶ月もこじれることはなかったと思います。
また、ここは多くの方が誤解しているところですが、このドアパンチの修理代は85,000円で、この金額だと、たとえ保険会社に事故の連絡をしていたとしても、最終的に保険(対物賠償)を使わずAさんは自腹で支払うことになったかもしれません。
けれども、最終的に保険を使わなかったとしても、保険会社に連絡すれば、事故が解決するまでの間、保険会社同士で交渉や連絡をしてくれます。
AさんもBさんも直接交渉しないで、保険会社から進捗状況の報告を受けるという立場でいられます。
事故解決まで精神的に安定した生活を送っていられるのです。
保険を使うか使わないかは、最後の段階で決断すればいいことで、それまでは保険会社に前面に立って動いてもらえばいいわけです。
また、上の事例はドアパンチした側が名乗り出ているケースですが、ドアパンチした側が逃げてしまったケースでも、事情は同じです。
ドアパンチされた側は、すぐに警察に事故届けを出し、保険会社にも連絡して、通常、交通事故で当て逃げの被害にあったときとまったく同じ行動を取るべきです。
損害が小さいと言う理由で、軽く見ないほうがいいです。
なお、保険との関係で上の事例を整理しておきます。
まず、ドアパンチしたAさんが逃げずに対応した場合ですが、最終的に保険から支払うとしたら、「対物賠償」で支払うことになります。※Aさんの保険は翌年度3等級ダウンします
もしもドアパンチしたAさんが逃げたままつかまらなかった場合、Bさんは自分が加入している車両保険から支払いを受けます。※車両保険に加入していなかったら、当然、自腹で修理するしかありません
ただし、Bさんが加入している車両保険が「一般条件(オールリスクタイプ)」なら支払い可能ですが、「エコノミー」であった場合は支払ってもらえません。※「エコノミー」はドアパンチした相手が判明しないと対象外になります
ドアパンチは車両保険の契約タイプで扱いが異なる
前の項目の最後でも触れましたが、あらためてドアパンチの被害と車両保険について解説します。
駐車場でのドアパンチは、犯人が特定されずに、そのまま被害を受けた人が泣き寝入りに終わるケースが多い事案です。
ごくまれに、目撃者がいてナンバーを控えていたり、駐車場や車に設置してあるカメラが相手のナンバーや顔をしっかり記録していたりして、それが加害者の特定につながるケースもあります。
このように、ドアパンチは、相手が特定される場合と特定されない場合の2つのケースに分かれます。
車両保険との絡みで言えば、この2つのケースで支払いの有無も分かれます。
車両保険は大別すると「一般条件(オールリスクタイプ)」と「エコノミー」の2つあります。
ドアパンチに限定して補償内容を見ると、次のようになります。
一般条件 | エコノミー | |
ドアパンチ(相手不明) | 支払う | 支払わない |
ドアパンチ(相手判明) | 支払う | 支払う |
このように、「一般条件」では相手がわかってもわからなくても保険金を支払いますが、「エコノミー」では相手が判明した場合にのみ支払われます。
「エコノミー」の車両保険に加入している方は、相手が名乗り出るか、ドライブレコーダーや施設のカメラ映像によって特定されることに期待するしかありません。
車両保険を使うと等級が3つダウンする
駐車場等でドアパンチの被害にあい、車両保険を使用した場合、翌年の等級は3つダウンします。
もちろん、「一般条件」でも「エコノミー」でも、保険金の支払いがあれば3等級ダウンです。
実は、多くの方がこの等級の扱いに不満を抱いています。
なぜなら、ドアパンチは、被害を受けた車のオーナーにしてみれば純然たる「無過失」の事案です。
イタズラによるボディーの傷など、同じく「無過失」の事案では、保険金の支払いを受けても、等級は1等級ダウンにとどまります。
それなのに、なぜドアパンチは3等級ダウンなのか。
「納得できない!」
という方が多いのです。
けれども、ここからは保険会社の見解ですが、ドアパンチは、損害が小さいことが多いので実感がわかないかもしれませんが、これは純然たる車と車のあいだに起こった事故です。
ちょっとオーバーですが「車両同士の衝突事故」です。
コインなどでボディーに傷を付けられたケースとは、損害の内容や程度は似ていても、原因が異なります。
それゆえ、保険会社としては、通常の車同士の事故と同じように、保険を使ったら3等級ダウンという扱いになります。
モヤモヤした気持ちが残るかもしれませんが、現状では、こうなります。
「修理代」と「保険を使った場合の将来保険料」を天秤にかける
以上見てきましたように、駐車場等でドアパンチの被害にあった場合の車の修理代は、車両保険の支払い対象になります。
「一般車両」でも「エコノミー」(相手が判明した場合)でも、保険が使えます。
しかし、ここで立ち止まって考えるべきことがあります。
多くのケースで言えることですが、ドアパンチによる車の被害は、小損害にとどまることが多いです。
50万とか100万の修理代がかかるケースはまずありません。※超高級車の場合はどういうことになるのかわかりませんが
修理費が数十万もかかる場合なら、迷わず保険を使えばいいのですが、たとえば10万前後といった金額の場合、使えば等級が3つダウンしますから、どうしたらいいか悩むケースが出てきます。
とは言え、こうした悩ましいケースでは、あなたが一人であれこれ考える必要はありません。
まずは修理代がいくらになるかディーラーや修理工場の見積額が出るのを待ちましょう。
見積額が出たら、今度は保険会社の担当者に相談する番です。
「修理代が〇〇万円かかるようですが、保険を使った場合、来年以降の保険料はいくらになりますか?つまり、この場合、保険を使うのと使わないのとどっちがトクですか?」
こうした相談を担当者に持ちかけてください。
損害保険各社には、保険を使った場合の将来保険料をシミュレートするアプリが備わっています。
ですから、ドアパンチで3等級ダウンした場合の翌年以降の保険料は即座に算出できます。
※現在の等級が7等級とか8等級のようにまだ割引が進んでいない契約では、保険料はかなり高くなってしまうと思いますが、20等級かそれに近い割引まで進んでいる契約では、わずかな値上がりにとどまると思います
これによって、あなたは自腹で修理するか車両保険を使うか、合理的に判断することが可能になります。
その際、注意すべきことは、翌年1年分の保険料だけで判断してはいけない、という点です。
現在の保険料レベルに戻るまでに何年かかり、その間、現在の保険料よりトータルでいくら余計に保険料を支払うのか、こうした合計の金額を出してもらうことが肝心です。
保険会社の担当者も、当然このことは心得ていますから、あなたの判断が付くようにアドバイスしてくれるはずです。
※自動車保険の主流は3年契約になりつつあり、3年契約は事故で保険を使った場合に契約者に有利に働くケースが多いです。たとえば3年契約の1年目に事故で保険を使った場合でも、3年契約なので、残り2年は保険料は変わらず、3年目に契約を更新する際には、等級は、いったん3つ下がっていたのが2つ戻った状態に回復しています。したがって、更新する契約は1等級ダウンで済むことになり、事故から2年間本来なら支払うべき高い保険料を払わずにすみます
※言うまでもなく、将来保険料をシミュレートする場合、1年契約の人には1年契約の、3年契約の人には3年契約の、それぞれの将来保険料を指し示してくれるので安心です
車両保険を使っても等級が下がらないケースもある
ドアパンチで車両保険を使うと3等級ダウンすることはすでにお話しました。
そして、車のオーナーにしてみれば、ドアパンチのような「無過失」の事故に対して3等級ダウンすることは、どうにも納得いかない思いがあることにも触れました。
実は、車両保険には「車両無過失事故に関する特約」あるいは「車両保険無過失事故特約」と会社によって名称は異なりますが、同じ内容の補償があります。
車両保険を付ければ自動的についてくる保険会社もあれば、特約として別途保険料を支払う会社もあります。※加入している保険会社にお問い合わせください
この特約の主旨ですが、以下の4条件を満たしている場合に限り、車両保険から支払いがあっても、「ノーカウント事故」として扱う、というものです。
- 契約の車以外の自動車との接触または衝突事故(車対車事故)であること※自動車には原付・2輪バイクを含む
- 契約の車の運転者にその事故に関する過失がないこと
- 相手自動車の情報(登録番号)と、相手自動車の運転者の情報(住所・氏名)が確認できること
- 新車特約、車両全損時修理時特約、車両積載動産特約等の保険金の支払いがないこと
要は、ドアパンチした相手が名乗り出たり、防犯カメラの映像から特定されたり、目撃者がメモしていたナンバーから人物が明らかになったりした場合には、車両保険を使っても等級に影響を及ぼさない、ということになります。
「3等級ダウン」でもなければ「1等級ダウン」でもなく、「ノーカウント」扱い、すなわち、何事もなかった扱いになります。※無事故であったのと同じ扱い
警察に事故届けを出し、しばらく様子を見ること
このページの最初の項目で強調したことですが、ドアパンチは被害の程度が小さいことが多いために、とかく軽く見てしまいがちですが、それがあとあとトラブルを招くことになります。
繰り返しになりますが、この項目でも、警察への届出がいかに大切か、重ねて解説したいと思います。
まずドアパンチされていることに気づいたら、その段階ですぐに警察に事故届けを出してください。
日を置いて届出をすると、ドアパンチした相手が見つかりにくくなるだけでなく、現場の状況も変化することもあって、警察はあまりいい応対をしてくれません。
人身事故であれば警察の応対はまったく異なりますが、物損で、誰もけがをしていなくて、しかもドアパンチから日数が経ってからの届出では、警察としても気合が入らない、というところかもしれません。
したがって、とにかく時間を置かずすぐに届出をしてください。
届出をしておけば、犯人が捕まる可能性も出てきますし、実際に捕まったら連絡もしてくれます。
それから、「エコノミー」タイプの車両保険の場合は、保険金支払いの条件として、相手の車・氏名・住所が判明していなければなりません。
その際、保険会社は何をもって相手の身元を確認するかというと、警察が発行する交通事故証明書です。
この交通事故証明書を発行してもらうには、まず、ドアパンチの被害にあった当事者が警察に事故の届出をしておかなければなりません。
したがって、ドアパンチの被害にあったら、まず警察に事故届けを出し、現場で実況見分を受けて、きちんと事故受付を警察に残しておく必要があります。
※保険会社が交通事故証明書が必要になった場合は、保険会社から警察に申請するので(交付申請代行サービス)、あなたが警察に申請する必要はありません。あなたがすべきことは、事故届けを出しておくことだけです
※大きなショッピングモールの駐車場なら問題ありませんが、小規模の駐車場や私有地でドアパンチにあい、警察に事故届けした場合、警察は交通事故証明書を発行しないケースがあります。道路交通法上の「交通事故」に該当しないと言う理由です。しかし、その場合でも、事故受付はしてくれますし、事故の記録を残してくれるので、それが事故証明書の代用として役に立ちます
それから、当然、保険会社にも事故届けを出すわけですが、ドアパンチの場合、すぐに保険金支払いの手続きに入るのではなく、しばらく様子を見る必要があります。
逃げていた犯人が判明するかもしれないからです。
いったん車両保険から支払いを受けてしまうと、その後で犯人が判明しても、犯人に修理代を請求する権利は、あなたから保険会社に移行しているので、あなたは一切の請求権を失ってしまいます。
車両保険からの支払いを受ける前に相手が判明すれば、相手が加入している自動車保険の対物賠償から修理代の支払いを受けることができます。
もしも相手が無保険で、支払い能力がなかったとしても、氏名・住所が判明していれば、前の項目で解説した「車両無過失事故に関する特約」を適用することで、車両保険からの支払いを受け、なおかつ「ノーカウント事故」として処理できます。
ですから、ドアパンチにあったら、「もう犯人は捕まらないな」とあきらめざるを得ないぎりぎりのところまで、保険金支払いは保留にしたほうがいいです。
・・・などと書きつつ、実際のところは、いつまでもドアパンチで受けた損傷部分を放っては置けませんし、また、もしも車をディーラーなどに預け代車を借りて生活している場合なら、何日も引き伸ばせない事情も出てきたりするものです。
そこは苦しい判断を迫られる場面も出てくるかと思いますが、いちおう、ここに書いたことも頭に入れておいていただきたいと思います。
(まとめ)ドアパンチの被害にあった場合の手順
駐車場などで車がドアパンチの被害にあった場合のあなたが取るべき行動をまとめてみました。
参考になさってください。
- 警察に事故届けを出す※相手ナンバー、ドライブレコーダーの画像などわかっているものがあればそれも提出
- 保険会社に事故届けを出す
- 警察からの連絡を待つ
- 相手が判明したら相手からの支払いを受けられるか確認
- 相手に支払い能力がなかったら「一般条件」あるいは「エコノミー」から支払い可能※相手が判明しない場合は「一般条件」のみ支払いが可能
- 保険会社と相談し保険を使うか使わないか検討し、最終判断する
※相手が判明した場合は、「車両無過失事故に関する特約」を適用してノーカウント事故扱いできるか保険会社に確認する
※最後に念押しをしておきますが、上の6で保険を使うか使わないか最終判断するそのときまで、自分で動くのではなく、加入している保険会社に動いてもらうことです。
警察や相手との交渉・連絡をすべて保険会社に任せることが肝心です。
保険会社に事故連絡をした以上、必ず保険を使わなければならないと考えている方が相当数いらっしゃいますが、それは保険を誤解されています。
最終的に保険を使わなかったとしても、それまでのさまざまな面倒な手続きは、保険会社に任せてください。
保険会社に事故処理をしてもらったが、結果的に保険を使用しなかったとしても、そうしたサービスも含めて、あなたは保険会社に保険料を支払っています。
大いに保険会社を活用なさってください。
保険会社の事故処理部門のスタッフは、皆そういう教育を受けて仕事をしていますから。
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ご覧いただきありがとうございました。