【記事丸わかり】
⇒⇒【ゼロから学ぶ自動車保険】自動車保険の等級制度 |
自動車保険にはノンフリート等級制度があり、すべての契約が1等級~20等級のいずれかの等級になります。
各等級には割引率(割増率)が設定してあり、無事故を続けると年々割引率が高くなり(保険料は安くなる)、事故で保険を使うと割引率が低くなり(保険料が高くなる)、そうすることで契約者間の公平性を保っています。
また事故で保険を使った場合は、無事故を続けている場合の割引率とはまた別の系統の割引率が適用され、保険料が極端に高くなります。
この別の系統の割引率が事故有係数と呼ばれる懲罰的な割引率です。
事故有係数が適用される期間は事故の内容によって1年または3年と決まっていて、この期間のことを事故有係数適用期間と呼びます。
このページでは自動車保険のノンフリート等級制度と割引率について詳しく解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
自動車保険の等級は1等級~20等級
自動車保険のノンフリート等級制度というのは、わたしたちが契約する自動車保険を1等級~20等級のいずれかの等級に振り分ける制度です。
自動車保険の契約で、1等級~20等級のいずれの等級にも当てはまらない契約というものは有り得ません。
必ずいずれかの等級に振り分けられます。
その振り分けるルールを定めているのがノンフリート等級制度です。
ノンフリート等級制度 |
自動車保険の契約を1等級~20等級のいずれかの等級に振り分けるルールを定めている制度のこと |
等級には「表の顔」と「裏の顔」がある
自動車保険には1等級~20等級があると書きました。
けれども、この1等級~20等級には2つの系統があります。
たとえば、ここに「10等級」の契約があるとします。
しかし、この「10等級」には2つの割引率があります。
事故有 | 無事故 | |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
上の表のように、同じ「10等級」でありながら23%割引の契約と45%割引の契約があります。
なぜこんなことが有り得るのかは後ほど詳しく解説しますが、ここでは、等級には「表の顔」と「裏の顔」があるということだけ憶えて置いてください。
最初の契約は6等級or7等級から
自動車保険の等級は1等級~20等級まであり、数字が大きくなるほど割引率は高くなります。
つまり保険料は安くなっていきます。
わたしたちが初めて自動車保険を契約する場合は6等級からスタートします。
6等級からスタートして、無事故を続ければ、7等級、8等級、9等級・・・と等級が進んでいきます。
事故で保険を使うと、原則として3等級ダウンします。
みなさんの中には、初めての契約がどうして1等級から始まらないのかと思う方もいらっしゃるでしょうが、その理由は、この3等級ダウンにあります。
事故を起こしたら翌年度の契約は3等級ダウンするわけですが、もしも1等級からスタートしていたら3等級ダウンさせる余地がなくなってしまいます。
だから初めての契約は6等級スタートになっています。
※家族にすでに1台以上車があって、それに追加する形で自動車保険の契約をする場合は7等級からスタートできる場合もあります
事故で保険を使うと保険会社は「裏の顔」を見せるようになる
あなたが初めて自動車保険の契約をした場合は6等級からスタートしますが、その後、無事故を続けて7年目に入った場合、7年目の契約は13等級になります。
もしもこの年に事故を起こして保険金の支払いを受けた場合、翌年度の等級は3つダウンするので10等級になります。
すると、ここで保険会社のあなたに対する態度がコロリと変わります。
あなたは10等級になったのですが、あなたの10等級は下の表の左側の割引率になります。
事故有 | 無事故 | |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
あなたが6等級からスタートして4年目にはすでに一度10等級を経験しているのですが、その時の10等級は上の表の右側の45%割引でした。
しかし、今回、事故で保険を使ったことにより13等級から3つダウンして10等級になったあなたに対して、保険会社は左側の23%割引を突きつけることになります。
等級には「表の顔」と「裏の顔」の2系統あるとすでに書きましたが、あなたが事故で保険を使ったことによって、保険会社はあなたに「裏の顔」で接するようになるのです。
事故有係数
ここで等級の「表の顔」と「裏の顔」を一覧表でご覧ください。
「表の顔」は右側の「無事故」の列です。
「裏の顔」は左側の「事故有」の列です。
事故で保険を使ったあなたには、左側の「裏の顔(事故有)」が適用されることになります。
等級 | 事故有 | 無事故 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
※1等級~6等級までは事故有と無事故は同じ扱いです。また1等級・2等級・3等級は「割引」ではなく「割増」になります
あなたが保険会社からこのように扱われるのは、事故で保険を使った結果として10等級になった人と、無事故で一つずつ等級の階段を昇ってきた結果として10等級になった人とを、同じ扱いにしては不公平だという理由からです。
いちおう、そういう風に説明されています。
けれども、2012年10月までは等級は1系統しかなく、「表」も「裏」もありませんでした。
それでもなんとか保険会社の経営が成り立っていたからですが、いよいよ収支が怪しくなってきたので上のような理由をつけて2系統の等級制度を導入することにしたのが実情です。
いずれにしても、この「懲罰的な(注1)」割引率のことを事故有係数と呼びます。
無事故を続けている人は上の表の右側の割引率が適用されますが、事故で保険を使うと左側の割引率(事故有係数)となります。
(注1)「懲罰的な」と表現するのは、事故で保険を使えば3等級ダウンするのでここですでにペナルティーを課しているのに、それに乗じる形でより保険料が高くなる割引率を適用しているからです。ガソリンに対するガソリン税と消費税の2重課税を彷彿とさせるやり方です。収支が厳しいゆえに保険料を高くすること自体は止むを得ないことだと思いますが、制度を複雑にすることに違和感を感じます。わたしたち消費者を「煙に巻く」行為に思えるからです。とは言え、自動車保険はわたしたちにとって大切な商品なのでお世話にならざるを得ないのですが
事故有係数適用期間
例を続けます。
事故で保険を使ったために3等級ダウンして13等級から10等級になった場合、事故有係数による割引率が適用されます。
同じ10等級でも無事故の10等級より割引率が低く、それゆえ保険料が高くなります。
このように事故有係数が適用されると、それと同時に、事故有係数適用期間というものが発生します。
読んで字のごとく「事故有係数が適用される期間」のことです。
13等級だった人が、3等級ダウン事故で保険を使ったために翌年の保険が10等級にダウンした場合、事故有係数適用期間(事故有期間)が保険証券にも記載されます。
上の画像では事故有期間は「0年」ですが、3等級ダウン事故で保険を使った場合の翌年の保険証券には「3年」と表示されます。※1等級ダウン事故なら「1年」と表示
自動車保険では等級がダウンする事故は2種類あって、それは3等級ダウン事故と1等級ダウン事故の2つです。
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これまでの例に当てはめると、3等級ダウン事故により13等級から10等級にダウンした場合、同時に3年間事故有係数適用期間が付くので、10等級⇒11等級⇒12等級と向こう3年間は事故有係数による割引率が適用されます。
3年経過すると事故有係数適用期間はリセットされるので、4年目の13等級になった時点で、やっと無事故の割引率(「表の顔」の割引率)に戻ることができます。
1等級ダウン事故の場合は、事故有係数適用期間は1年間だけなので、事故有係数による高い保険料は1年間だけ適用され、2年目には無事故の割引率に戻ります。
事故有係数適用期間は最長6年まで
これは補足説明になりますが、たとえば同じ年度に3等級ダウン事故を2回起こした場合、翌年度の等級は6等級ダウンし、事故有係数適用期間は6年になります。
向こう6年間は事故有係数による高い保険料を支払い続けることになります。
もしも同じ年度に3等級ダウン事故を3回起こした場合は、翌年度の等級は9等級ダウンとなりますが、同時に事故有係数適用期間も9年・・・にはなりません。
なぜなら事故有係数適用期間は「最長6年まで」というルールになっているからです。
ですから、単純計算では9年になるところが、このルールによって6年となります。
※ただし、同じ年度に3等級ダウン事故で3回保険金の支払いを受けたら、翌年度は「引き受け拒否」の対応を受ける可能性大です
初めて自動車保険に加入する方へ
上でも少し触れましたが、2012年10月に自動車保険は大きく改定されました。
事故有係数と事故有係数適用期間の新設が最大の改定項目です。
ざっくりまとめると、この改定により、小損害の事故では保険を使えなくなった、ということです。
このことは、現在19等級とか20等級の人にも当てはまることですが、まして、これから自動車保険に加入する方は、6等級あるいは7等級からスタートしますので、よりいっそう少損害の事故では保険を使えないことになります。
なぜなら、6等級で保険をスタートして、その年度に3等級ダウン事故で保険を使うと、翌年度は等級が3つダウンして3等級となります。
3等級は割引ではなく割増の等級です。
12%割増です。
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
保険料が高くなることも問題ですが、それよりも等級の問題のほうが大きいです。
こうした状況に陥ることを自動車保険業界では「リーチが掛かる」と表現することがあります。
つまり、3等級になり、もしもそこでまた3等級ダウン事故を起こした場合、そこからさらに3等級ダウンするのですが、1等級が打ち止めなので、翌年の契約は1等級になります。
通販型の保険会社でも代理店型の保険会社でも、1等級とか2等級は、多くの場合「引き受け拒否」となります。
保険を契約してくれる会社がなくなってしまいます。
したがって、初めて自動車保険に加入して6等級からスタートした人は、よほど大きな事故でない限り、加入している自動車保険を使おうなどと思ってはいけません。
数年間はじっと辛抱しなければなりません。
ある程度等級が進んでいけば、たとえ3等級ダウン事故を2度起こしたとしても、なんとか契約してくれる保険会社は残っています。
しかし、6等級の時点では、1度3等級ダウン事故で保険を使っただけで「リーチが掛かる」のです。
まして3等級ダウン事故を2度起こしたら、どの保険会社とも契約できない状態に放り出されます。
初めて自動車保険に入った人は、以上の理由から、数年間は保険は使えないものと考えるべきです。
あくまでも多額の賠償事故が発生したときのための「お守り」であって、少損害の事故では使えないものとお考えください。
自動車保険の「等級」に関しては以下のページも参考になさってください。
等級と割引率 | このページ |
3等級ダウン事故 | こちらのページ |
1等級ダウン事故 | こちらのページ |
ノーカウント事故 | こちらのページ |
ご覧頂きありがとうございました。