【記事丸わかり】
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契約した自動車保険に自動セットされている特約として無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)があります。
この特約は相手に対する補償ではなく被害を受けた際の補償です。
「無保険車」との事故で死亡・後遺障害を負った場合に自分が加入している保険の特約である無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)から保険金が下りるというものです。
事故の相手が保険に入っていない場合やひき逃げで相手が判明しない場合などに頼りになる補償です。
このページでは自動車保険に自動セットされている無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)について詳しく解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)とは?
自動車保険の基本補償には対人賠償保険・対物賠償保険・人身傷害保険などがあります。
こうした基本補償に自動セットされているものの1つが無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)です。
特約と言っても、オプションとして追加保険料を払って付帯するものではなく、ほぼすべての保険会社で自動セットされているものです。
したがって、みなさんが自動車保険の契約をする際、通販型でも代理店型でも、保険会社からは特に説明がないと思います。※改めて説明はしないけれどいざというときはお助けしますよ、というのが保険会社のスタンスのようです
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)は自動車事故の被害者になったときの補償です。
人身事故に限られます。
運転者や同乗者が死亡あるいは後遺障害を負った場合で、その際、加害車両が無保険状態であった場合などに、本来相手が支払うべき賠償金を自分の保険の特約であるこの無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)から支払ってもらうことができます。
人身事故に限られ、しかも死亡や後遺障害という重大な事故に限定されています。
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)~その1~ |
死亡・後遺障害が対象 |
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)の補償限度額は会社によって異なるものの、次の3つのいずれかになります。
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)~その2~ |
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死亡や後遺障害の賠償額では、時には億という単位になることはあるものの、上の3つのいずれかであれば特に不足するというケースはないと思います。
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)は人身事故が対象なので、当然、物損事故は対象外です。
車が大破したとしても、それはこの特約の対象外です。※相手から支払ってもらえない場合は自分が加入している車両保険を使えます
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)~その3~ |
人身事故が対象で物損事故は対象外 |
人身傷害保険があればこの特約は必要ないのでは?
現在、ほぼすべての保険会社において人身傷害保険は基本補償の1つとして定着しています。
人身傷害保険は事故で運転者や同乗者がケガをしたり死亡したり後遺障害を負ったりした場合、過失割合にかかわらず、治療費・休業損害・慰謝料などを全額支払う保険です。
したがって、無保険車との事故で死亡したり後遺障害を負った場合には、相手に支払能力があるかないかに関係なく、人身傷害保険から保険金が受け取れるはずなのでは?
はい、まったくそのとおりです。
事故の相手が無保険車で支払能力がない場合は、まず自分が加入している人身傷害保険から優先的に保険金が支払われます。
その際、人身傷害保険では不足する額があった場合には、その不足額は無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)から支払われます。
このように人身傷害保険と無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)は連携プレーによって被害者を守っています。
政府保障事業との関係は?
自動車が「無保険」という時には2つの意味があります。
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上記2つの保険のいずれにも加入していない、いわば完全無保険の状態の車と事故にあい、死亡・後遺障害の被害を受けた場合を考えてみましょう。
この場合、自動車保険だけでなく自賠責保険からの支払いも期待できません。
するとどうなるか?
ここで登場するのが政府保障事業からの保障です。
政府保障事業を簡略に説明すると、完全無保険の状態の車と事故にあい相手から十分な補償が得られない場合、あるいは、ひき逃げにあい相手が不明な場合、自賠責保険の補償内容と同額の補償が政府保障事業によって支払われます。※政府保障事業は「補償」ではなく「保障」です
具体的な金額は、死亡の場合は最高3,000万円、後遺障害は最高4,000万円です。
したがって、無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)との関係でいうと、政府保障事業からの支払いで不足する額があった場合には、その不足額をこの特約から支払うことになります。
「最後の最後に登場する後出しジャンケン補償」であること
人身傷害保険との関係、そして政府保障事業との関係を見てきました。
こうした関係からわかるように、無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)は、事故で死亡・後遺障害の被害にあい、相手から十分な補償が得られない時に、いきなりこの特約から支払われるのではありません。
まず、受け取ることが可能なもの(自賠責保険、人身傷害保険、労働者災害補償制度、政府保障事業など)からの支払いを受け、それでも不足する場合にその不足分を無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)から支払ってもらう、こういう図式です。
いわば「最後の最後に登場する後出しジャンケン補償」とでも呼ぶべき補償、それが無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)です。※不謹慎な表現ですみません
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)とは【詳細版】
以上、無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)のアウトラインをご説明しました。
ここで、より詳細な補償内容・適用条件について箇条書きでご説明します。
保険会社により内容が異なる点がありますが、ここでは共通点を抽出してご案内します。
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)とは【詳細版】 | |||
◆自動車事故で人身事故の被害を受け死亡・後遺障害を負った際、事故の相手が無保険等で本来支払われるはず額が満額支払われない場合にこの特約から支払います。※死亡・後遺障害のみが対象で一般的な傷害は対象外です ◆「無保険等」とは次のようなケースを指します。
◆支払われる保険金の限度額は会社によって異なりますが、無制限・2億・対人賠償保険の額のいずれかです。 ◆人身傷害保険に加入している場合は人身傷害保険から優先的に支払われ、人身傷害保険では不足する部分をこの特約で支払います。 ◆人身傷害保険では被害を受けた側の過失割合は問いませんが、この特約は被害者の過失割合分を差し引き、相手の過失割合分のみを支払います。 ◆自賠責保険(強制保険)、政府保障事業、労働者災害補償制度などから支払いがある場合は、それらの額を差し引いて支払います。※保険金の重複は不可ということ ◆対象となる被保険者の範囲は以下の通りです。
◆保険金を支払えない主な場合は以下の通りです。
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名称の違い・限度額の違い
このページで「無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)」と呼んでいる補償は保険会社により名称が少し異なります。
また補償限度額も異なります。
以下、すべての保険会社ではありませんが、一括見積サイトなどに参加している会社を中心に一覧表にしました。
参考になさってください。
無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)の名称と限度額 | ||
保険会社 | 正式名称 | 補償限度額 |
ソニー損保 | 無保険車傷害 | 無制限 |
チューリッヒ | 無保険車傷害特約 | 対人賠償と同額※ただし2億円限度 |
アクサダイレクト | 無保険車傷害保険 | 2億円 |
おとなの自動車保険(セゾン) | 無保険車傷害 | 無制限 |
三井ダイレクト | 無保険車傷害特約 | 2億円 |
イーデザイン損保 | 無保険車事故傷害保険 | 2億円 |
SBI損保 | 無保険車傷害保険 | 2億円 |
セコム損保 | 無保険車事故傷害特約 | 不明※おそらく対人賠償と同額 |
損保ジャパン日本興亜 | 無保険車傷害特約 | 無制限 |
三井住友海上 | 無保険車傷害特約 | 2億円 |
東京海上日動 | 無保険車事故傷害特約 | 2億円 |
あいおいニッセイ同和損保 | 無保険車傷害特約 | 2億円 |
楽天損保 | 無保険車傷害特約 | 2億円 |
全労済 | 無共済車傷害補償 | 対人賠償と同額 |
JA共済 | 無共済車傷害特則 | 不明※おそらく対人賠償と同額 |
上記すべての保険会社(共済)において無保険車傷害保険(無保険車傷害特約)は基本補償に自動セットされています。
ご覧いただきありがとうございました。