そもそも走行税(走行距離課税)とは?

そもそも走行税とは

【2022年11月2日追記】2022年10月26日、政府の税制調査会は自動車税制の見直しに着手。そのなかで「走行距離課税」が浮上しました。この走行距離課税(走行税)は、以前から議論されては立ち消えになっていたもので、また亡霊のように浮上してきたということになります。※「走行距離課税の導入議論」(日本経済新聞)

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このところ耳にする機会の多い走行税(走行距離課税)ですが、そもそもどんな仕組みの税金なのか、いつから導入されいくら取られるのか、4輪の自動車以外にバイクも対象になるのか、海外の事例はどうなのか・・・などなど疑問点は山ほどあります。

このページでは「これを読めば走行税(走行距離課税)が丸ごとわかる」ようにわかりやすく解説しています。

※(名称に関して)走行税とか走行距離税とか走行距離課税と呼ばれていたものが、「道路利用税」と言い換える動きがあるようです。ですが、このページでは走行税・走行距離課税で話を進めます。

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日本ではまだ未導入の走行税(走行距離課税)ですが、海外ではすでに何カ国かで導入または実証試験中の自動車関連税です。

車の走行距離に応じて課税する方式もあれば、車を走らせる期間に応じて課税する方式もあります。

多く採用されているのは走行距離に応じて課税する方式です。

走行距離が多いほど課税額が多くなり、少ないほど課税額が少なくなります。

しかし、わたしたちが今現在支払っているガソリン税は、1リットル当たり約53.8円(※)で、まさに走行距離が多い人ほど多くのガソリン税を支払い、走行距離が少ない人ほど支払いも少なくなっています。

つまり、ガソリン税とは実質的に走行距離課税です※ただし、車の燃費性能により負担率は異なります。ランクルとアクアでは同じ1リットルでも走れる距離が違います

では、なぜ改めて走行距離に応じて課税される新たな税金を導入する話が持ち上がっているのでしょう?

(※)ガソリン税=揮発油きはつゆ税:1リットル当たり約53.8円(国48.3円+地方5.5円)

<財務省「自動車関係諸税・エネルギー関係諸税(国税)の概要」>

なぜ走行税(走行距離課税)の話が持ち上がったのか?

そもそもなぜ走行税の話が持ち上がったのか

たとえば西暦2000年前後の頃までは道路を走るほぼすべての車がガソリンか軽油で走っていました。

その後はみなさんご存知の通りプリウスに代表されるハイブリッド車(HV/PHV)が普及し、さらにまだ少数ですが電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)も走り始めています。

さらに、若い人を中心に車を所有しないでカーシェアリング等を利用する人も増えています。

こうした動きを一言で表現すると、

要するに、ガソリンの消費量が減り続けている。

これに尽きるわけです。

日本エネルギー経済研究所の試算では、この流れが進み、2050年にガソリン車の新車がなくなると仮定した場合、日本のガソリン税収入は2015年比で8割の減少になると見込まれています。

金額で言うと、2015年のガソリン税(揮発油税)が約2兆5,000億円、2050年が約5,000億円です。

しかし、車は依然として2050年も道路を走り続けるものと予想されるので、道路の補修・管理のためのコストは掛かり続けます。

しかしガソリン税は入ってこない。

ではどうしよう?

そうだ、走行距離に応じて税金を取ればいいじゃないか。

というわけです。

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もちろん、自動車関連の税金は、ガソリン税以外にも自動車税・自動車重量税などがあります。※自動車取得税は2019年10月1日に廃止され環境性能割が導入された

しかしながら、ガソリン税以外の税金は車を「所有」していることに対して課税される税金です。

いっぽうで、車を「使用」することに対して、つまり、道路を走らせることに対する税金は、もしもすべての車が電気自動車になってガソリン税の徴収ができなくなれば、その時は0円になります。

そういうわけで、すでに海外で導入あるいは社会実験中の走行税(走行距離課税)が脚光を浴びたわけです。

走行距離に応じて課税されることになれば、ガソリン車も電気自動車も、ある意味、「平等に」税金を払うことになります※現在の「ガソリン税」を全廃した上で、新たに「走行税(走行距離課税)」が導入された場合

それによって安定的に道路整備に関わるお金が入ってくることになります。

課税当局がイメージする走行税(走行距離課税)の見取り図は、恐らくこうしたものだと思います。

「若者のクルマ離れを助長する」「地方民をさらに苦しめるのか」の声について

走行税・走行距離税・走行距離課税・道路利用税・運輸運送業の車・地方の声・クルマ離れ

亡霊のように再浮上した走行税(走行距離課税)に関して、様々な反発の声が上がっています。

たとえば「女性自身」には次のような声が紹介されています。

「若者の車離れとか言うくせに、車持ちにくい社会にしてるのは国」

「走行距離課税とか作るんなら絶対に“若者の車離れ“とか言うなよ、お前らが離しよるだけやけんな」

また、「FLASH」には次のような声が紹介されています。

「車がなければ何の娯楽にも買い物さえもままならない地方民からこれ以上搾り取って何が楽しいの」

「物流業からがっぽり取る計画か、只でさえ燃料高騰や仕事減で経営厳しい所にこれは…補助金は遅いが増税はクッソ早いからなぁ…この国。」

ただ、ちょっと冷静になる必要があります。

上記の意見は、すでにあるガソリン税を継続しつつ、これに上乗せする形で新たに走行税(走行距離課税)を導入した場合を想定していると思います。

もしもそうなら、確かに若者のクルマ離れを助長し、地方民や物流業に大打撃を与えることになると思います。

けれども、そうではなくて、今あるガソリン税は全廃にした上で、新たに走行税(走行距離課税)を課すのであれば、その時は話がまた変わってくるはずです。

その時は、走行税(走行距離課税)の税率がどのくらいになるのか、今より負担は重くなるのか同じくらいなのか、という点が論点になるはずで、クルマ離れとか地方民ウンヌンといった声はちょっと話の焦点がズレると思います。

もしも現在のガソリン税が全廃され、新たに走行税(走行距離課税)が導入された場合、怒り心頭に達して我慢ならない精神状態になるのは、今現在日産リーフなどの100%電気自動車(BEV)に乗っている人たちでしょう

なぜなら、いま現在電気自動車に乗っている人たちは、

「初期費用はかかったし、充電で不便な面はあるけれど、でも電気で走るのはお金がかからなくていいなあ」

と、こと維持費に関しては我が世の春を謳歌している人たちだからです。

それが、新たな課税によって、これまで支払っていなかった税金を新規に負担しなければならなくなるのです。

「話が違うじゃないか!」

と反発の声が上がるのは、地方民でも物流業者でも若者でもなく、電気自動車のオーナーたちになるはずです。

「カーボンニュートラルのためにEVに乗ろう!SDGsのためにはEVシフトだ!EVでクリーンな世界を実現しよう!・・・というあの掛け声は何だったのか?時代の先端を走っているつもりだったのに、ハイ、そこの電気自動車、停止して。ハイ、税金!」

というわけです。

※リーフ乗りの知人R君は耳まで真っ赤にしています。

現に、「女性自身」の記事の中では、政府税制調査会の委員の一人が次のような発言をしています。

「EVは政策的に普及させるために多額のお金がかかっている上、重いので道路への負担が大きい。エンジンがないからといって安い課税水準でいいのか疑問だ」

この意見からもわかるように、走行税(走行距離課税)の話が亡霊のように再浮上してきた背景は、今後ガソリンや軽油で走る車が減り電気で走る車が増えていったら、道路を補修するお金がどこからも入ってこなくなる。このことへの危機感からです。

ですから、現在ガソリンや軽油で走っている人は、今回の議論でより注意を払うべき点は、新たに走行税(走行距離課税)を導入するとして、その際、税率がどの程度になるのか、いまあるガソリン税を全廃にするのか、一部残すのか、といった論点ではないでしょうか。

鈴木財務大臣の国会答弁
2022年10月20日、鈴木俊一財務大臣は、電気自動車(EV)の走行距離に応じた課税の導入に関する参院予算委員会での質問に対し、「一つの考え方だと思っている」と答弁しています。【産経新聞(2022年11月4日)】

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走行税(走行距離課税)は、総論としてはガソリン車もディーゼル車も電気自動車(EV)もすべてを対象にした税です。

ただし、短期的かつ暫定的な議論としては電気自動車(EV)を狙い撃ちにした意見もあるようです。つまり、今現在はガソリン税を支払っていない電気自動車に対してのみ走行税を課すべき、という意見です。

鈴木財務大臣の上記答弁は、そうした質問に対する見解を述べたものだと思います。

二重課税、三重課税にならないのか?

二重課税・三重課税にならないのか

ガソリンにかかる税金はガソリン税と消費税の二重課税ではないのかという議論があります。より厳密には、tax on taxの状態になっている点が問題視されています。

tax on taxとは、たとえば税金を除いた素のガソリン代が100円の場合、これにガソリン税53.8円がまず課税されて153.8円になります。そして、この153.8円に対して消費税10%が課税されるのです。

素のガソリン代100円に対して消費税10%ではなく、ガソリン税を含む153.8円に10%の消費税が課税されているのです。

(参考)『世の中にこんなにある「二重課税」への疑問』(東洋経済online)

いずれにしても、こうした現状にさらに走行税(走行距離課税)も課税されるとなれば、もはや三重課税だという批判・不信感が当然沸き起こるでしょう。

ところで、2019年10月1日以降に新たに新車を購入した場合の自動車取得税は廃止され(新たに環境性能割を導入)、自動車税も同時期にすべての排気量で引き下げが行われました。

これは2020年以降に走行税(走行距離課税)を導入するための布石と言われてきました。

本格的に走行税(走行距離課税)が導入されれば、ガソリン税も減額されるか全廃されるかする可能性はあると思います。

すでに導入されているアメリカのオレゴン州や実証試験中のカリフォルニア州では、燃料税(日本のガソリン税に相当)の控除制度も同時に採用しています。※つまり、走行税からすでに燃料税で支払った分を差し引くということ

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いずれにしても、いつの時代も税を徴収する側が税を徴収される側に取る態度は決まっていて、それは、

生かさず殺さず

です。

今より良くなることは考えられないけれど、そうかといって、あまりむしり取ると車離れを助長してかえって税収は落ち込むので、完全に弱ってしまわない程度にさじ加減をしておこう、といったところでしょう。

ただし、政治力を持った特定の勢力によって税体系が捻じ曲げられることは歴史が証明しているので、一部の自動車ユーザーに過重な負担がのしかかることも有り得ることであり、油断はできません。

どうやって走行距離を確認するのか?

どうやって走行距離を確認するのか

もしも日本でも走行税(走行距離課税)が導入された場合、走行距離はどうやって確認するのでしょう?

仮に車のオドメーター(走行距離計)を自己申告することになれば、誰もが予想するように、メーターの改ざん、不正が横行するのは目に見えています。

海外の事例では、オドメーターの自己申告も一部あるようですが、大勢としては、GPSを利用した距離の計測がほとんどです。

GPSによる距離の確認方法ではプライバシーが守られるのか?

gpsの距離の確認でプライバシーが守られるのか

上記のように、海外の事例ではGPSによる走行距離の計測が主流です。

しかし、この方法だとドライバーの走行経路や各地点の通過時刻、さらには距離と時間の計算からスピード違反の有無も割り出せるし、一時停止標識のある場所できちんと停止したかもわかります。

※現在大手代理店型保険会社4社が採用している自動車保険のドライブレコーダー特約では、通信機能を持つドライブレコーダーがこうした情報をクラウドサーバーに日々蓄積しています。

そうなるとドライバーのプライバシーは課税当局に丸裸になり、その結果、本来の使用目的である走行距離の割り出しに使用されるだけでなく、権力の側が「イザとなったら使える各納税者の弱み」を握ることにもなり、悪用されることもあるのでは・・・といった懸念や批判があります。

確かにその通りなのですが、ただし、わたしたちのプライバシーというのは、今現在がすでに上記のような状況に置かれているとわたしは認識しています。

社用車・営業車にドライブレコーダーが搭載されている場合、社員の行動は今現在すでに会社に把握されています。さらに、社用車・営業車へのドライブレコーダーの搭載の是非に関しても、裁判で「違法性なし」との判断が下されています。(⇒社用車のドライブレコーダーはプライバシー侵害か

また、損害保険会社や自動車メーカーがドライブレコーダーやカーナビのGPS情報を把握している事例もあります。

さらに、映画ではネットに接続されたあらゆる機器を駆使して犯罪者を追跡するシーンなどはもはやありふれたシーンとなっています。

もちろん、現実がすべて映画通りとは言えないものの、「ほぼ映画通り」だと考えていいと思います。

街中の防犯カメラ、パソコンやスマホの通信用カメラ、道路上のNシステムなどなど、すでにわたしたちのプライバシーは丸裸あるいは半裸状態にあって、幸いなことに、まだそう頻繁には悪用されていないだけなのではないか。

いまさら走行距離計測のためのGPSでプライバシーがどうのと言っても、「時すでに遅し」かもしれません。

なお、アメリカではGPSを使わずに距離を計測する装置(オドメーター以外の装置)も使われているようですが、どういう装置かは不明です。

税額:いくら課税されるのか?

いくら課税されるのか

これまでに報じられた新聞記事やコラムニストの記事に目を通しても、何キロ走行ごとに何円といった具体的課税額はまったくの未定のようです。

「1000キロで5000円?」

唯一具体的な金額に触れているのは、NHK NEWS WEBの「ビジネス特集 1000キロで5000円? 走行税の実態は」(2019年4月12日)という記事です。※この記事は既に削除されています。わずか3年前の記事をなぜ消去する必要があるのでしょう?最近は怖いですね。(2022年11月2日確認)

その内容。※上記記事が投稿された当時の内容を私は保存してあります

ニュージーランドのオークランドにある観光ツアーバスでは、最低レベルの税額として「1000キロ当たり68NZドル、日本円にして約5000円」。※2019年の為替レートを基にしています

上記数字は、ニュージーランドにおける観光ツアーバスに対する2019年の金額です。この金額をそのまま日本が導入するという見込みがあるわけではありません。

ですが、何事も具体的な数字がないと話は進みませんので、あくまでも仮の話ですが、この「1000キロ当たり5000円」という金額をそのまま日本に当てはめてみましょう。

もしも、現在の自動車関連税(自動車税・自動車重量税・環境性能割・ガソリン税or軽油引取税)をいったんすべて廃止し、新たに走行税(走行距離課税)に一本化した場合、今現在と比べて皆さんが収めることになる税金の額は、増えるでしょうか、減るでしょうか?

単純に「1000キロ5000円」を適用した場合、

  • 年間3000キロ走行する車は、年に収める税金は15,000円になります。
  • 年間10,000キロ走行する車は、年に収める税金はは50,000円になります。
  • 年間50,000キロ走行する車は、年に収める税金は250,000円になります。
  • 年間100,000キロ走行する車は、年に収める税金は500,000円になります。

あくまでも超単純な試算に過ぎませんが、税額はこうしたものになります。

あまり車を使わない人は今より税額は安くなるかもしれません。反対に、走行距離が多い人は今より高くなるでしょう。

観光バスや運送業などの場合は、おそらく、ほぼ軒並み今現在より高い税額になるのではないか。

改正は「税収中立」となるのか?

走行税・走行距離税・走行距離課税・道路利用税・税収中立

「1000キロ5000円」を超単純に適用すると、前の項目で指摘した通りの税額になります。もちろん、仮に走行税(走行距離課税)が実施されたとしても、この通りにはならないと思います。

さて、一般的に政府が税制を改正する場合、「税収中立」の立場で実施するのがよしとされます。

「税収中立」とは、税制改正の前後で税収が変わらないようにすることです。これにより、納税者の理解が得られやすくなるのではないか、というわけです。

改正前の自動車関連税の総額が、たとえば6兆円であったら、改正後も6兆円になるように制度設計をする、ということになります。

現在の自動車関連税(自動車税・環境性能割・自動車重量税・ガソリン税・軽油引取税)をいったんすべて廃止し、新たに走行税(走行距離課税)に一本化した場合、各納税者ごとに見ると、今より増える人もいれば減る人もいるでしょうが、税収全体としては今現在と同額程度になるようにする、という意味です。

いや、そんなことはないだろう。課税当局は少しでも税収を増やしたいのだから、改正を機に今までより税収が多くなるように制度設計するに決まっている

というツッコミの声が聞こえてきそうです。

ですが、そこはどうなんでしょう。むしろ、改正当初は今より税収総額を少なく設計する可能性すらありうると思います。

いったん納税者を安心させておいて、その後、少しずつ少しずつ税額を上げていく。こうしたやり方をする可能性が高いのではないでしょうか。

※「少しずつ少しずつ税額を上げていく」という考え方は、このページの最後でご紹介している自動車評論家の国沢光弘さんのご意見を借用しています。

※走行税(走行距離課税)導入の議論を、財務省が事務局となって行う場合は、最低でも「税収中立」となるよう制度設計を行うと思います。しかし、これを機会に交通全般(陸上・河川・海上等)の将来像とその税制を議論することになれば、事務局は財務省だけでなく国土交通省や経済産業省や環境省も参加することになり、その場合、仮に税制改正が行われたとしても、必ずしも「税収中立」とはならないのではないか。つまり、自動車の税制に関して、改正前より税収総額が少なくなるケースも、「政策的に」あり得ると思います。議論を主導するのがどの省庁かで、結果はおおよそ推測できそうです。

運輸・運送業の車は税額を抑えなければならない

道路を走行する車は、マイカーだけでなく、バス・タクシー・宅配業者・引越し業者・運輸業者といった、まさに道路を走行すること自体を業としている車もたくさんあります。

私たちが寝静まっている深夜の東名高速道路は壮観です。一度目にしたら、誰もが、

東名高速道路は産業道路だ!!!

と叫ぶはず。

深夜の高速を一心不乱に走り続けるトラックの姿は、いわば、平穏な水面を泳ぐカモが水中で動かし続けている足です。われわれの意識の背後に横たわる広大な無意識の存在にも似ていて、こういう物言わぬひたむきな仕事に支えられて社会は成り立っているんだ、と思い知らされる光景の1つです。

運輸・運送業に関わる車は、自らの利潤のために車を走らせている側面がある一方で、顧客の利便のために車を走らせている側面もあります。

つまり、「公共性」や「公益性」が高い車たちです。

自分以外の誰かの欲望や生活のために走っている車たちです。

完全に社会インフラの一部と化しています。

現代の、何事につけスピーディーな社会は、コンピュータの発達のみでは実現できません。たとえば、テレビ通販やスマホの通販サイトで顧客が商品を注文しても、それだけでは何も「完結」しません。

実際にその商品を顧客の元へ届けるという行為があって、はじめて通信販売という経済行為が実現することになります。

ですから、日本中の道路を走行している運輸・運送業の車たちは、何も自分たちの享楽のために走っているのではありません。たとえば宅配トラックは、今では日本全国のほとんどの国民が、頻度の差はあれ、日常的に行っている「注文をポチッ」のために車を走らせているのです。

私たち消費者が通信販売という経済行為を行うと、それに伴って宅配トラックが道路を走ります。すると、道路は損傷しますし、渋滞が発生し、排気ガスや騒音が環境に悪影響を与えます。交通事故の頻度も高まるでしょう。

こうした悪影響は、経済学では「外部不経済」とか「外部性」とか「Externality」などと呼びます。そして、こうした悪影響に対して必要な費用を払って対策を講じることを「内部化する」と表現します。つまり、それまで経済活動の「外部」にあったものを経済活動の「内部」に取り込む、ということです。

通信販売で発生する「外部不経済」「外部性」は、私たち消費者の、商品を手間暇かけずに手軽に手に入れたい、少しでも早く手に入れたい、という欲望・欲求によって発生しているものです。

宅配業者もそれによって利益を得るので、「外部不経済」に対して宅配業者が一部の費用を負担するのは当然です。しかし、「全額」を負担するのは理不尽ではないか。

私たち消費者(と通販業者)もここで発生する「外部不経済」「外部性」に対する費用の一部を負担すべきであり、それは経済合理性からみて正しい理解になると思います。

つまり、通販という経済行為で発生する「外部不経済」を内部化するための費用は、宅配業者と通販業者とポチっとした消費者とが<共同責任>として行うべきです。

もしも今後走行税(走行距離課税)を導入するとして、運輸・運送業の車に対しては、単に重量が重くて路面を傷めるのでそれに正比例した額を課税する、などというやり方は避けるべきだと思います。「不合理」であり「不条理」なのでそれはダメだと思います。(※「注文をポチッ」とした一般消費者とそれにより利益を得る通販業者も、道路損傷等に対して<連帯責任>があります。)

※マイカーについて。マイカーの使用目的は、都市と地方では異なる側面があります。走行税(走行距離課税)を導入するとしたら、この部分に関しても、「政治的配慮」などではなく「経済合理性」の下に、課税額の調整は必ず必要になると思います。

(参考1)「インターネット通信販売物流における宅配便事業者の施策評価

(参考2)「正の外部性(外部経済)と負の外部性(外部不経済)とは?

「道路の補修費用は全て車の使用者に払わせよう」という考えは50年前の発想

道路の新設・補修等に係る費用は、車の使用者から徴収した税金のみで全額賄うのではなく、国や地方の一般会計からも一部支払われるべきで、実際、現状はそうなっています。

ところが、これは車の使用者は皆さん肌身にしみて感じていることと思いますが、道路関連の費用は限りなく全額を車の使用者に負担させるべき、といった圧力が常に働いています。

これこそが自動車関連税制の辿ってきた道であり、今ある現状です。

繰り返しますが、道路に関する費用の一部を一般会計から賄うこと、これは経済合理性の観点から<当然>だと思います。今よりさらに一般会計からの注入が必要です。

「受益者負担」という言葉がありますが、道路からは車の使用者だけが利益を得ているのではなく、一般国民・一般消費者も大いに利益を得ています。

依然として道路に関する費用はすべて車の使用者から徴収すべきという考え方が根強くあります。しかしながら、こうした考え方の基礎を築いたといえる宇沢弘文さんの時代とは、道路が果たしている役割はまったく異なっています。

日本社会の中で「道路」が果たす役割は真に変容しています。

宇沢さんは1974年に『自動車の社会的費用』を出版しています。岩波新書です。この本がその後の自動車関連税制のバックボーンになっていると言われています。(参考)「我が国における自動車の外部性を考慮した走行距離課税の検討」(2の1「国内における自動車の外部性に係る検討」の部分)

※国や地方の一般会計には車の使用者が支払った自動車重量税やガソリン税等がすでに投入されています。しかし、道路の整備等に一般会計から予算を引っ張ってくるべきという上記主張は、すでに投入された分を取り戻すべきだという趣旨ではありません。そもそも一般財源化された税金の何%が道路整備等に使われているのかわからないのです。そうではなくて、現在の日本における道路は、車の所持・不所持に関係なく、いまや全国民・全消費者の生活を下支えするなくてはならない「インフラの中のインフラ」というべき地位を占めています。50年前とは様相を異にする甚大な社会的影響力をもつこの道路の維持管理等に要する費用を、車の使用者がメインで負担すべき点に異論はないものの、道路の役割の進化を考慮すれば、今までよりもっと広く国民全般のお金で賄うべきである。こうした趣旨で申し上げています。

いつから導入されるのか?

いつから導入されるのか

いずれにしても、日本で走行税(走行距離課税)が導入されるのはいつからなのでしょう?

あくまでも報道ベースですが、数年前には「2020年以降に導入を検討している」ということでした。

「2020年以降」なので、2023年かもしれませんし2025年かもしれません。

いずれにしても、自動車関連税はいくつもあるので、そうした税金とセットで考えるべき税金であり、ある程度議論する時間が必要だと思います。

対象車種:トラック・バス・タクシー・自家用車・バイクは?

対象車種は・トラック・バス・タクシー・自家用車・バイク

走行税(走行距離課税)が日本に導入された場合、トラックやバス、あるいはタクシーなどの事業用の車だけに課税されると言うことはまず考えられません。

走行税(走行距離課税)は、そもそも電気自動車等が増えてガソリン税による税収が減少することに対する危機感から出てきた話なので、導入されるとしたら事業用はもちろん自家用も含めた全車種が対象になるはずです。

ただし、バイクに関しては距離計測装置のコスト、また車体がむき出しであることによるそうした装置の盗難などのリスク、さらに交通量全体に占めるバイクの台数などを考慮すると、当面は見送られるのではないかと思います。

あるいは、導入された走行税(走行距離課税)が予想以上に過重な税負担を強いる税であった場合に、車からバイクへの大量のシフトが発生し、その結果、バイクにも走行税(走行距離課税)がかかる事態も有り得る話でしょう。

まとめ

いずれにしても、マスコミの皆さんにお願いしたいのですが、走行税(走行距離課税)が本決まりになってから騒ぐのではなく、検討段階から頻繁に取り上げ議論を盛り上げていただきたいと思います。

【2022年11月21日追記】

走行距離税に関する意見として、現時点で最良・最高の骨子案の1つと言うべき記事を発見しました。「非難轟々の「自動車走行距離税」。それでも「ぜひやるべきだ」と、僕が考える理由。」(安藤眞)

走行距離税に関する具体的な提案としては、他の専門家による本格的な研究が数多く提出されています。ですが、今回の安藤眞さんのご意見は、短い文章の中にそうした専門家が指摘・提案している内容がぎっしり凝縮されています。まさに「議論のたたき台」とするにふさわしい内容です。わかりやすくて、理にかなっていると思います。

安藤眞さんのご意見は「骨子案」と呼ぶべきものです。より具体的な制度設計をご覧になりたい方には、全身でかく汗の量と同じ量の汗を前頭葉のみでかいたような、尊敬すべき次の2つの力作をご紹介します。※部分的に異論があっても、そんなことは小さな問題です。「全体像を提示する」ということがいかに骨の折れる作業か、その部分こそ真にリスペクトすべき点だと思います。

今回の安藤眞さんの短いご意見には、上記の優れた2案にも共通する論点がみっちり詰まっています。ぜひお読みください。

【2022年11月9日追記】

AERA dot.が走行距離税の記事をアップしています。自動車評論家の国沢光弘さんのご意見です。

AERAdot.の記事『走るほど課税される“走行距離税”に自動車評論家が「もう、めちゃくちゃです」と憤る決定的な理由』

2022.11.09

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下記の記事も参考になさってください。

ご覧いただきありがとうございました。




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元保険代理店代表です。ほぼ毎日新しい記事を追加しています。何かお役に立つ記事があったら、次のお役立ちのためにお気に入りに登録していただけるとうれしいです。励みになります。また、スーパーWebライター・グレース泉の記事もよろしくお願いします(署名入り)。