S20エンジンがフェアレディZ432で失敗した本当の理由|旧プリンスと日産の確執と二番手配分問題

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スカイラインGT-Rでは伝説となったS20型エンジン

しかし、フェアレディZ432に搭載された途端、現場での評判は最悪でした。

なぜ同じエンジンなのに、ここまで明暗が分かれたのか。

その背景には、1966年のプリンス自動車・日産吸収合併から続く、技術者同士の根深い確執があったのです。

この記事では、S20エンジンの配分問題と、旧プリンス陣営のプライドが生んだ悲劇についてご紹介します。

1966年プリンス自動車を日産が吸収合併|消えなかった技術者の確執

物語の発端は、1966年のプリンス自動車と日産自動車の合併にさかのぼります。

組織としては一つになりましたが、技術者同士の確執は消えませんでした

そして、その象徴となったのがS20型エンジンだったのです。

項目内容
合併年1966年
合併形態日産自動車がプリンス自動車を吸収
確執の象徴S20型エンジン
旧プリンス陣営の拠点スカイライン開発
日産側の主力車種フェアレディZ

S20型エンジンとは|R380直系の究極ユニット

S20型エンジンは、ただの市販エンジンではありませんでした。

レーシングカーR380に搭載されたGR8型エンジンをベースに、公道用へ再設計された、いわば究極のエンジンだったのです。

スペック内容
形式直列6気筒 DOHC
バルブ数24バルブ
排気量1,989cc
最高出力160馬力
ベースエンジンR380搭載のGR8型
性格レーシングエンジンの市販版

1969年、スカイラインGT-Rに搭載されると、レースで連勝を重ねる伝説のエンジンとなりました。

フェアレディZ432への搭載は悲劇だった

ところが、同じS20型をフェアレディZ432に搭載した結果は、悲惨なものでした。

まず立ちはだかったのが、車体構造の違いです。

GT-RとZではホイールベースが異なり、GT-Rで使っていた分割構造式プロペラシャフトがZには採用できなかったのです。

その結果、激しい振動に悩まされることになりました。

さらに、Zはエンジンルームが狭く、GT-Rと同じ効率の排気システムも使えませんでした。

問題点原因結果
激しい振動ホイールベースの違いで分割構造式プロペラシャフトが使えない乗り味の悪化
排気効率の低下エンジンルームが狭くGT-Rと同じ排気系が使えない本来の性能を発揮できず
現場の評判最悪

二番手しか回ってこなかったZ432|旧プリンス陣営のプライド

そして、最も根深い問題がエンジンの配分でした。

旧プリンス陣営は、調子の良いエンジンをまずスカイライン勢に優先配分していたのです。

つまり、Zには二番手のエンジンしか回ってこなかった

これは技術的な問題というより、プリンス技術陣のプライドの問題だったといえるでしょう。

「我々が作り上げたS20を、なぜ日産側のZに譲らねばならないのか」――そんな感情が、現場で渦巻いていたのかもしれません。

皮肉な結末|SOHCのL24型を積んだ240Zが大成功

ところが、ここから先の展開が実に皮肉です。

Zはその後、SOHCのL24型エンジンへと移行します。

2.4リッターの240Zとして海外市場に打って出ると、一転して大成功を収めたのです。

しかも、このL24型は旧プリンス陣営から**「トラックのエンジンだ」と揶揄されていた**SOHCエンジン。

エンジン搭載車結果
S20型(DOHC、旧プリンス系)フェアレディZ432振動・排気問題で評判最悪
L24型(SOHC、日産系)240Z海外で大成功、Z伝説の礎

プリンス陣営が見下していたSOHCエンジンで、Zは世界的成功を手にしたのです。

技術者同士の確執がいかに不毛だったか、これ以上ない形で示された結末でした。

S20型エンジンの終焉|1973年3月、排出ガス規制で生産終了

伝説のS20型エンジンは、1973年3月に静かに姿を消します。

理由は排出ガス規制への不適合

しかし、エンジンが生産終了になっても、技術者間の遺恨は残り続けたのです。

時期出来事
1966年プリンス自動車、日産に吸収合併
1969年スカイラインGT-RにS20搭載、レース連勝
1969年フェアレディZ432にもS20搭載するも評判最悪
1970年代初頭240ZがL24型で海外大成功
1973年3月S20型、排出ガス規制で生産終了

まとめ|技術者のプライドがぶつかり合って火花を散らした時代

S20型エンジンの物語は、単なるメカの話ではありません。

合併によって一つになったはずの組織で、技術者同士のプライドがぶつかり合って火花を散らした――そんな時代の象徴でした。

調子の良いS20はスカイラインへ、二番手はZへ。

その配分問題こそが、フェアレディZ432の悲劇を生んだ本当の理由だったのです。

しかし皮肉にも、Zは**「トラックのエンジン」と馬鹿にされたL24**で世界を制しました。

技術の優劣ではなく、人間同士の感情こそが、時に名車の運命を左右する――。

S20エンジンにまつわるこの逸話は、自動車史におけるもっとも示唆に富んだエピソードの一つといえるでしょう。