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【記事丸わかり】
まとめ: 交通安全協会の加入率は全国的に低下傾向にあります。徴収方法の見直しや不正の発覚により信用が低下し、透明性の向上が必要とされています。 ⇒⇒【ゆるラジ Vol.835】交通安全協会の会費って払ってる?加入率は?(運転免許更新時) |
【プチ調査】交通安全協会の加入率(入会率)はどのくらい?
※トップ画像は「交通安全協会による加入のお願い」です。加入が任意であることを示す注意書きが貼り付けられています。by Wikipedia
新規に免許証を交付してもらったり、免許証の更新をしたりする際、免許センター等の窓口で加入をすすめられるのが交通安全協会です。
会費は1年あたり500円前後なので、たとえばブルー免許で有効期間3年の場合は1500円前後、ゴールド免許で有効期間5年の場合は2500円前後の金額になります。※地域によって金額は微妙に異なります。
交通安全協会への加入は<任意>であり、強制力はありません。 |
(参考)⇒⇒交通安全協会なんていらない?加入しないと嫌がらせされる?
さて、この交通安全協会は情報公開制度の対象団体になっていないようです。
そのため、各自治体の交通安全協会の加入率(入会率)がどのくらいの割合かは、ごく一部の例外を除いて、交通安全協会のホームページにはほとんど掲載されていません。
そこで、ネットでヒットしたものをアトランダムに下記にご紹介します。
明確に言えることは、加入率(入会率)は右肩下がりであることです。これは全国的な傾向です。 |
加入率(入会率)のご紹介
まず交通安全協会の加入率(入会率)とは何を指すかについて。
新規で免許証を取得した人や免許証の更新をする人の数が分母、それらの人のうち窓口で交通安全協会費を支払った人の数が分子、となります。
例)
(新規と更新で100人、会費を支払った人が30人の場合)
⇒⇒加入率(入会率)は30%となります。※30÷100=0.3 |
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- 宮崎県交通安全協会:2012年の宮崎県内での加入率32%、特に県央部である宮崎運転免許センターでの入会率は11%※宮崎日日新聞
- 佐賀県交通安全協会:「1998年度に91.6%だったのが2018年度は53.0%と、この20年で4割減となっている」※佐賀新聞Live
- 新潟県三条市交通安全協会:加入率36.7%(2020年度)※三条市交通安全協会
- 青森県交通安全協会:下記の通り。※令和2年度事業報告
- 宮城県交通安全協会:平成30年度の加入率(入会率)は31.8%※名取市のHP内に記載
- 鹿児島県交通安全協会:「平成元年度97.8%あった加入率が、平成26年度には36.20%に」※霧島市のHPに記載
- 栃木県交通安全協会:「1998年頃までは80%前後で推移していた加入率が、2005年には59.3%、2008年には49.9%」(朝日新聞2009年10月7日付)※J-CASTニュース
- 山口県交通安全協会:「交通安全協会の入会率35%に減。最盛期の80%台から大幅に入会率が減少している」※2013年6月3日の山口県の地方紙「宇部日報」の記事を紹介。https://car-diy.jp/s/blog/minkara.carview.co.jp/userid/1400958/blog/31194006/HPC-index.htmlのサイトに記載
- 福岡県交通安全協会:2018年度の入会率は新規・更新あわせて21.9%※親父の知恵袋〜オヤジHACK
- 香川県交通安全協会:「10年前には40数パーセントだったが、現在では約35パーセント」※2000年度香川県HP
- 滋賀県交通安全協会:加入率37.4%(2020年度)※滋賀県交通安全協会
なぜ加入率(入会率)が下がっているのか
20~30年くらい前までは平均して80%前後あった交通安全協会の加入率(入会率)が、近年なぜ下がってきたのか。
これには明確な理由・要因があります。
それは、交通安全協会費の徴収の仕方が変わったからです。
交通安全協会費の徴収の仕方の変化
加入率(入会率)が高かった頃は、私たちが免許証の更新などで免許センター等の窓口に行くと、あたかも「免許証更新手数料」であるかのように、「免許証更新手数料と一体になった形」で、交通安全協会費の支払いが要求されていました。
山梨県に住む私がよく記憶しているのは、交通安全協会費を払えば免許証カバーがもらえ、更新に必要な証明写真が無料になり、その他こまごました特典のようなモノがあると告げられたことです。
これが窓口での一連の流れの中に組み込まれていました。
したがって、
「なんか、ちょっと変だな」
という微妙な違和感を抱きつつ、
「まあ、いいか」
と従っていたことを憶えています。
全国のすべての地域でこれと同一の方法で協会費が徴収されていたかは不明です。地域によっては、協会側がもっと高圧的な態度のところもあったようです。
たとえば、加入するのが当然という態度をとり、断るとさらにしつこく勧誘したり、大きな声で「なぜ入らないんですか?」とわざと周囲に聞こえるように振る舞ったりする地域もあったとのこと。※今も続いている地域があるようです。
ですが、おおむね山梨県と似たり寄ったりのやり方であったことはネットの口コミ等でわかります。
こうしたやり方だったので、交通安全協会費の加入率(入会率)は高めで推移していたのです。
ところが、協会側として、このやり方を変えざるを得ない出来事が発生しました。
変化をもたらした2つの「出来事」
1つ目の「出来事」:名古屋地方裁判所の判決
1996年3月1日名古屋地方裁判所で協会費の徴収方法に問題があることが指摘され、この判決文を受けて、警察庁は各都道府県警察に対して会費徴収窓口と免許証更新窓口の分離などを含む運用改善の通達を行いました。
この裁判とその後の経緯は以下の通りです。
- 1996年3月1日名古屋地方裁判所:交通安全協会の協会費徴収方法は、本来任意であるはずのものがあたかも義務であるかのように装って徴収しており、これは詐欺的行為である、という名古屋市民オンブズマンの訴えに対し、「詐欺とまでは言えない」と判決が下りオンブズマン側が敗訴した。
- しかし、その一方で裁判所は「協会費の集め方に問題がないとはいえない」と判決文の中で言及した。
- その後、MBSやTBSなどの報道機関が交通安全協会の現状を掘り下げた報道を行い、国民世論も批判を高めた結果、2006年3月31日に第3次小泉内閣が「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」を閣議決定し、この問題に対し改革すべき旨の方向づけを行った。
- この閣議決定を受け、警察庁が全国の警察本部に対して交通安全協会費の徴収窓口と免許証更新窓口とを分離するよう通達を出した。
- 現在、この通達をまじめに順守している警察もあれば、あいまいにぼかして依然として協会費の支払いが義務であるかのように装っているところもある模様。※全国的には通達に沿った運用が行われているところが多いのではないか
※上記経緯をご覧になった人の中には、「なんだ、裁判でビシッと白黒がついたわけじゃないんだ」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、日本社会の様々な変化を方向づけているのは、ほとんどが「閣議決定」だとか「通達」だとか「政令」といったものが根拠になっています。こういうもので社会が動いているのが実態です。
(参考:Wikipedia「交通安全協会」)
以上が第1の「出来事」です。
この判決とその後の政府・全国の警察関係者の対応によって、「これからは交通安全協会費の徴収方法を変えなければいけない」といういわば<新しい土壌>のようなものが形成されたと言えます。
ただし、この<新しい土壌>によって直ちに日本全国の交通安全協会が一律にすべて会費の徴収方法を一新したのではありません。
そんなにすぐに旧来のやり方が変わるものではありませんでした。
もう1つの「出来事」が必要でした。
2つ目の「出来事」:「交通の教本(教則)」をめぐる不正
免許更新の際に私たちが受ける講習がありますが、その際に使用されるテキストは「交通の教本(教則)」と呼ばれています。
このテキストは交通安全協会が外部の業者に発注するのですが、その際にその本を監修した人に対して「監修料」という名目で、テキスト代金とは別枠で支払われていました。
ところが、実態としては、「監修料」などは口実に過ぎず、実際のところ、そのお金は協会に戻ってくる仕組みになっていたのです。
こうしてできたいわば「裏金」は、歓送迎会の費用に当てたり、その他使い勝手のいいお金として協会の、特に幹部が自由に使っていたことが発覚したのです。
⇒⇒安全協会『交通の教則』は安全の啓蒙以外に使い道—架空経費!?(2002年3月19日RESPONSE)
その他、もっと直接的に協会の会計からお金を引き出して私的に流用していた事件も発覚しています。
交通安全協会によるこうした不正はいくらでもあって、
- 「交通安全協会 交通の教本 裏金」
- 「交通安全協会 事件」
- 「交通安全協会 着服」
といったキーワードでグーグル検索してみればその概要がお分かりになるでしょう。
このような一連の関連事件がマスコミで報道される機会が増えるにしたがって、すでに1996年3月1日名古屋地方裁判所での判決によって醸成されていた<新しい土壌>が出来上がっていたこともあり、交通安全協会の加入率(入会率)は低下していったのです。
それが、以前は80%前後あったのが普通だったのに、地域によっては20%台(福岡県交通安全協会)にまで低下してきている要因と思われます。
加入率(入会率)はこのまま下がり続けるのか
このページのテーマは「交通安全協会の加入率(入会率)はどのくらい?」というもので、ここまで加入率(入会率)が大幅に下がることになった要因を解説してきました。
では、加入率(入会率)はこのままずっと下がり続け、近い将来交通安全協会という組織が消滅することになるのでしょうか?
それは、今後のやり方次第でしょう。
私は、まだチャンスはあると思っています。
そもそも、交通安全協会の活動の中には、確かに私たちの交通環境を改善するために役立っている活動があるからです。
透明性の高い滋賀県の交通安全協会
たとえば、滋賀県の交通安全協会のホームページには下記の活動内容が紹介されています。
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上記の内、3番目にある「新入学(園)児の交通事故防止活動の実施」などは、もしも交通安全協会が消滅したとしても、他のいずれかの団体が取り組むべき啓発活動だと思います。
大いに必要性の高い活動であり、誰かが取り組むべき社会的に有益性の高い活動内容だと思います。
問題は、多くの交通安全協会が透明性の低い組織で、活動内容にしても決算内容にしても「非公開」にしていることです。
※滋賀県の交通安全協会は透明性の高い組織で、収入金額から各事業の支出額までしっかり開示しています。役員名簿も事業計画書も事業報告書も貸借対照表もHPに掲載されています。
いずれにしても、法的強制力のないお金を広く徴収しておきながら、そのお金の使い方やその組織の内実を隠し、秘密裏の中でやっているような印象を抱かせる組織であるなら、そんな組織への加入率(入会率)が低下するのは当然の結果ではないでしょうか。
ユニセフも日本赤十字も活動内容や収支を開示している
「つなぐよ子に」のテレビCMで知られるユニセフ、赤い羽根(今では赤い羽根の図柄を印刷した四角いシール)で有名な日本赤十字、こうした団体に私たちがお金を届けることは、法的義務ではなく、あくまでも任意です。
ユニセフにしても日本赤十字にしても情報開示はしっかりなされています。
「2021年度 日本ユニセフ協会 収支報告概要」
「日本赤十字社 令和3年度 業務報告書から」
繰り返しますが、交通安全協会の中には、活動内容や決算内容を開示しているところもありますが、まだまだ非開示の組織が数多くあります。
結論
人からお金を集めておきながら、そのお金をどう使っているかを秘密にしておく組織とは何なのでしょう?
交通安全協会が、活動内容やお金の流れを毎年しっかり公開する組織であれば、その活動内容に社会的有益性の高いものが含まれているのですから、多くの人は協会費の支払いを拒むことはないのではないか。 |
私はそう思います。
皆さんはどうお考えですか?
ご覧いただきありがとうございました。