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目次
警察は被害届を嫌がる?窃盗や空き巣で警察が動かない理由は何?
常にそうだというのではありませんが、窃盗や空き巣の被害にあい、警察に被害届を出したのに、捜査に動いてくれないことが度々あります。
そもそも警察は被害届を嫌がるという噂も耳にします。実際のところはどうなんでしょう?
この記事ではこのあたりのことを深堀り調査しました。参考になさってください。
まず最初に:「被害届」と「告訴」の違い
もしも空き巣や強盗の被害にあったら、当然警察に「被害届」を出すと思います。しかし、この「被害届」は、いわゆる「告訴」とは性質が異なります。
被害届とは、犯罪の被害者が警察に対して被害を報告する書類のことです。窃盗や詐欺など、犯罪が起こったと思われる場合、被害届を提出することで警察は捜査を開始します。被害届は、犯罪を警察に知らせるための一般的な方法であり、捜査を進めるためのきっかけとなる情報と言えます。
一方で、告訴とは、被害者が犯罪を起こしたとされる人物を公訴(裁判所での訴訟)し、罰せられることを求める手続きです。告訴は、被害者が加害者に対して法的な処罰を望んでいることを示す行為であり、特定の犯罪に関しては告訴がないと公訴が提起されません。例えば、名誉毀損や器物損壊など、告訴状が必要な犯罪もあります。
簡単に言えば、被害届は「おまわりさん、ウチで犯罪が起こったよ!」という報告で、告訴は「ひどい目にあったから加害者に罰を与えてほしい」という要求です。
被害届を受理しても警察が動かない時があるが・・・
上の説明で、「被害届を提出することで警察は捜査を開始します」とありましたが、実際には、被害届を出しても警察が捜査を開始してくれない事案がけっこう発生しています。
実際のところ、すべての被害届が必ずしも捜査につながるわけではありません。警察は、被害届をもとに犯罪が発生したと判断した場合に捜査を開始しますが、捜査の開始や進め方は警察の裁量によります。
警察が捜査を開始しない理由はいくつか考えられます。例えば、犯罪が実際には発生していないと判断された場合や、証拠不足等で犯人特定や立証が困難であると判断された場合、捜査の優先度が低いと判断された場合などです。
また、警察が捜査を開始しないことについて法的な問題があるかどうかは、状況によります。警察は公権力を行使している組織であり、その裁量は一定の範囲内で許容されています。
しかし、警察が明らかな犯罪被害を無視したり、不当な理由で捜査を拒否したりする場合は、その判断に問題があると指弾されることもあります。
被害届の「預かり」とは?
犯罪捜査規範61条1項は、被害届が提出された場合、警察はこれを受理しなければならないことを定めています。
しかし、現実には、被害届が提出されていても、「預かり」とされて正式受理されない場合があります。このように 、そもそも被害届の受領義務があるにもかかわらず、なぜ警察は「預かり」とすることがあるのでしょう?
その理由を分析します。
- 犯罪性が明確でない場合: 警察は、被害届に記載された内容が犯罪に当たるかどうかを慎重に判断する必要があります。犯罪性が明確でない場合、警察は被害届を「預かり」状態にして、事実関係を調査し、判断を保留することがあります。
- 証拠不足: 被害届が提出されたものの、犯罪が立証できる十分な証拠がない場合、警察は捜査を開始することを避けるために、「預かり」とすることがあります。
- 資料不備: 被害届に記載された情報が不十分であったり、不正確であったりする場合、警察は被害届を受理せず、「預かり」として情報の修正や追加を求めることがあります。
- 捜査の優先度: 警察は限られた人員と資源で活動しています。他にも重要な捜査を抱えているので、優先度を考える必要があります。被害届が提出された事件が他の事件に比べて優先度が低いと判断された場合、「預かり」として捜査を保留することがあります。
これらの理由から、「預かり」とされる被害届が出てくることになります。
捜査が開始されない時はどうすればいい?
被害届が受理されているのに捜査が開始されない時もあれば、「預かり」の状態のまま放置されて捜査が開始されない時もあります。
そんな時、空き巣や強盗の被害にあった人はどうすればいいのでしょう。
その場合、警察が「この件は急いで捜査するに値しない案件だ」と見なしている可能性が最も高いので、まずは、客観的証拠を集めて被害に遭った事実を証明することが有効です。
証拠を示すことで、警察が被害届を受理し、捜査を開始する可能性が高まります。
客観的証拠とは、以下のようなものです。
- 写真や動画: 窃盗された物品や現場の状況を撮影した写真や動画があれば、それを証拠として警察に提出します。
- 防犯カメラの映像: 自宅や周辺に設置された防犯カメラが犯人の姿を捉えていれば、その映像は有力な証拠になり得ます。
- 目撃証言: 近所の住人や通行人が犯行を目撃している場合、その方に証言者となってもらえば、捜査の開始につながることがあります。
- 窃盗された物品の詳細な情報: 物品の特徴、ブランド、シリアルナンバーなど、窃盗された物品に関する詳細な情報を警察に提供することで、捜査開始を後押しすることになります。
これらの客観的証拠を集めることで、警察が捜査に着手する後押しになることが期待できます。
それでも捜査が開始されない場合はどうすればいい?
空き巣や窃盗で警察に被害届を提出しても、「預かり」として扱われたり、あるいは、受理されているのに捜査が開始されない場合があります。
そんな場合は、以下のような対策が有効です。
- 警察とのコミュニケーションを続ける:警察と定期的に連絡を取り、捜査の進捗や追加情報の有無を確認しましょう。警察も被害者の協力があれば、捜査が進めやすくなることがあります。
- 犯罪被害者支援団体や弁護士に相談:警察の対応に不満がある場合や、被害届が受理されていない場合は、犯罪被害者支援団体や弁護士に相談することができます。彼らは被害者の権利を守り、適切な対策を提案してくれます。
「犯罪被害者支援団体や弁護士に相談」:具体的な手順は?
犯罪被害者支援団体や弁護士に相談する際の具体的な段取りや準備すべきもの、費用について説明します。
犯罪被害者支援団体に相談する場合:
- まず、居住する地域や犯罪の状況に応じて適切な犯罪被害者支援団体を探しましょう。インターネットで検索するか、警察や市区町村の窓口で情報を得ることができます。⇒⇒犯罪被害者団体等の紹介(警察庁)
- 支援団体に連絡して、相談の予約を取りましょう。電話やメールで連絡できる団体が多いです。
- 相談の際には、犯罪の概要や被害状況、これまでの警察への報告の経緯などを説明しましょう。必要に応じて、証拠となる資料や写真を持参してください。
- 犯罪被害者支援団体は、多くの場合無料で相談に応じてくれます。ただし、団体によっては寄付や会費が求められることもあります。
弁護士に相談する場合
- 弁護士会の相談窓口やインターネットで、犯罪被害に詳しい弁護士を探しましょう。⇒⇒弁護士会法律相談センター
- 電話やメールで弁護士事務所に連絡し、相談の予約を取りましょう。
- 相談の際には、状況の詳細や証拠資料を持参して説明しましょう。また、相談内容に応じて、必要な書類(身分証明書や被害届のコピーなど)を準備しておくとスムーズです。
- 弁護士による相談は、最初の相談が無料であることが多いですが、その後のサポートや代理人としての依頼には費用がかかります。費用は、弁護士や事務所によって異なりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
相談する際には、できるだけ事前に情報や資料を整理し、相手に状況を理解してもらえるように説明しましょう。
また、どのようなサポートや解決策を期待しているか、自分の目的や希望を明確に伝えることが重要です。これによって、相手が適切なアドバイスやサポートを提供しやすくなります。
犯罪被害者支援団体や弁護士に相談することで、警察への再度の被害届の提出や捜査の進め方のアドバイス、犯罪被害者としての権利を行使する方法など、具体的な対策や解決策が得られることが期待できます。
そもそも警察は空き巣や強盗などの被害届を受理することを嫌がっている?
被害届を出してもなかなか動いてくれない警察に対して、しばしば「警察は被害届を嫌がっているの?」という声が聞こえてきます。
実際のところはどうなんでしょう?
警察が被害届を受理しない、あるいは「預かり」にして捜査を行わない理由にはいくつかの要因が考えられます。すでに触れたことと重なる部分がありますが、以下のように推測できそうです。
- 資源的な制約:警察は限られた人員や予算で、さまざまな犯罪を捜査しています。そのため、犯罪の重大性や解決の可能性、緊急性などを考慮し、捜査の優先度を決める必要があります。これにより、警察がある犯罪の捜査に消極的になることがあるかもしれません。
- 証拠が不十分:警察が捜査を開始するためには、十分な証拠や情報が必要です。被害届が提出されたものの、証拠が不十分であれば警察は捜査を開始しづらくなります。
- 犯罪の解決率への影響:警察の業務評価の一部に犯罪の解決率があるようです。そのため、捜査が難しいと判断される犯罪に対しては、捜査を開始しないことで解決率を維持しようとする考え方も存在する可能性があります。これは、ちょうど、いじめ被害をなかったことにしたがる校長先生と同じかもしれません。
警察は公共の機関であり、被害者の権利を守る役割を担っています。実際に他の犯罪捜査で手一杯なケースを除き、困っている住民のために動いていただきたいと思います。
地域や近隣住民との情報共有の大切さ
- 防犯意識の向上:犯罪が発生したことを地域や近隣住民に伝えることで、彼らも自分たちの身の回りに起こりうる犯罪への意識が高まります。その結果、防犯対策の徹底や、犯罪に対する警戒心が向上し、犯罪抑止につながります。
- 犯罪の連鎖防止:犯罪が発生したことを周囲に知らせることで、同じような犯罪が連続して起こることを防ぐことができます。犯罪者は犯行後に周囲の警戒が緩んだタイミングで再び犯行に及ぶことがあるため、周囲に注意喚起を行うことで連続犯罪の防止につながります。
- 新たな証拠や情報の収集:近隣住民に犯罪の発生を知らせることで、彼らが目撃情報や証拠を持っていることを発見することがあります。そのような情報を警察に提供してもらうことで、捜査が進展する可能性があります。
- 地域の連携強化:犯罪の発生を地域全体で共有することで、住民同士が助け合いや協力を行いやすくなります。例えば、地域住民が防犯パトロールを行ったり、犯罪の発生を監視カメラで把握しやすくするための取り組みを行うことができます。
このように、地域や近隣住民へ犯罪の発生を知らせることは、防犯意識の向上や犯罪抑止、新たな証拠や情報の収集、地域の連携強化など、さまざまな点で重要です。
被害に遭った場合は、警察への被害届提出と同時に、地域や近隣住民にも犯罪の発生を知らせることが重要です。
再発防止策を講じる
警察に被害届を出すのと並行して、今後の犯罪を防止するために、個人としてできる防犯対策を取る必要があります。以下に具体的な防犯対策をいくつか挙げます。
- 防犯カメラの設置:家の周囲や玄関に防犯カメラを設置することで、犯罪者が侵入しにくい環境を作ります。また、万が一の際に映像が証拠となり、捜査に役立ちます。
- 窓やドアの施錠:外出時や寝る前には必ず窓やドアをしっかり施錠することが大切です。また、窓に窓ガラスフィルムを貼ると犯罪者が侵入するのに時間を稼げますし、適切な素材のカーテンやブラインドを設置して外から中が見えにくくすることも効果的です。
- セキュリティシステムの導入:ホームセキュリティシステムを導入することで、侵入者を検知し、警報を発することができます。また、セキュリティ会社と契約することで、24時間監視や緊急対応が可能になります。
- 照明の工夫:玄関や庭先に照明を設置し、夜間も明るい状態を保つことで、犯罪者が侵入しにくい環境を作ります。また、タイマー機能付きの照明を使用することで、外出中でも家に誰かがいるかのように見せかけることができます。
- 防犯意識の向上:自分自身や家族に対して、防犯意識を高めることが大切です。外出時には貴重品を目立たない場所に入れる、不審者や怪しい状況には日頃から注意するなど。
- 地域の防犯活動への参加:地域の防犯活動に参加することで、近隣住民との連携が強化され、犯罪抑止に繋がります。自治会や町内会で行われる防犯パトロールや防犯訓練には積極的に参加しましょう。地域住民と日頃のつき合いは希薄であっても、こと防災活動・防犯活動だけは別物という認識が必要だと思います。
これらの防犯対策を実践することで、空き巣や強盗などの被害に遭うリスクを減らすことができます。
まとめ
「警察は被害届を嫌がる?窃盗や空き巣で警察が動かない理由は何?」のテーマで解説しました。
警察が被害届を嫌がると断定するのは、やはり、警察に対して失礼だと思います。ごくまれに、犯罪率を落とさないために、解決しそうにない案件を受理しないといった対応があるのかもしれませんが、それは例外中の例外だと思いたいところです。
そうではなくて、警察が被害届を受理しない、または、受理してもなかなか捜査を開始しないことの理由は、証拠不足や人員不足などが関係していることが多いと思います。
それならそれで、被害にあった側として、対応策があります。有力な証拠を集めたり、証人を探したりして、再度警察に掛け合う必要があるでしょう。
それでも警察が動いてくれない場合は、犯罪被害者支援団体や弁護士会の法律相談センターにアプローチする手もあります。
また、その間も警察とコミュニケーションを重ねることは重要です。警察の立場に立てば、何度も捜査の進捗を尋ねに来る人をぞんざいに扱えないでしょう。
粘り強く対応していただきたいと思います。
ご覧いただきありがとうございました。
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