画像:東京海上日動・パイオニア
(このページで解説する東京海上日動のドライブレコーダー特約は東京海上日動の自動車保険の加入者(新規あるいは継続契約)だけがつけられる特約です。ドライブレコーダー特約を単独で契約することはできません。)
東京海上日動の自動車保険には、いわゆる「ドライブレコーダー特約」を付帯することができます。
正式名は「事故発生の通知等に関する特約」といい、愛称はドライブエージェントパーソナルです。
自動車保険の契約でドライブレコーダー特約を付けた場合、東京海上日動からオリジナルのドライブレコーダー(パイオニア製)が貸与されます。
契約者はこれを自分で車に取り付けます。
自分でできない場合は取り付けサービスも用意されています(有償)。
以後は、一定の衝撃を伴う事故が発生すると、ドライブレコーダーの通信機能が発動して「自動的に」事故の連絡が東京海上日動に届きます。
その際、事故発生の前後10秒程度の画像が同時に送信されます。
この映像は、事故の状況を把握するためだけでなく、相手との過失割合等の交渉をする際にも役立てられます。
通報を受けた東京海上日動は、事故の状況に応じて救急車を手配するなどの初期対応を行います。
こうした自動通報は「エアバッグが作動する程度の事故」(事故例:時速30キロ程度以上で壁と激突した事故)が発生した場合です。
これに満たない衝撃、たとえば、時速20キロ程度以上で運転中にフルブレーキを踏んだケース、などでは自動通報は働きません。
この場合は、手動でオペレーターと通話することができます(手動通報)。
さて、東京海上日動のドライブレコーダー特約の基本機能は上記の通りですが、みなさんご存知の通り、今問題になっているのは「あおり運転」です。
東京海上日動では、この「あおり運転」に対応するために、あおり運転にあったときにドライブレコーダーのボタンを押すことでオペレーターに警察への通報を依頼できる機能を追加しました。
この追加機能は2019年10月からスタートします。
より安心感が増したけれど、残念な点も・・・
大手代理店型保険会社(東京海上日動・損保ジャパン・三井住友海上・あいおいニッセイ)の4社は、名称は異なりますが、それぞれドライブレコーダー特約を用意しています。
そのサービス内容は、細かい点では違いがあるものの、ほぼ同様の内容です。
そうした中で、「あおり運転」への対応に乗り出したのは東京海上日動が最初の会社で、大いに評価できることだと思います。
(※)三井住友海上とあいおいニッセイ(両者はグループ会社)では2019年5月31日付広報において、あおり運転に対応するために「専用リアカメラで車両後方の運転映像を録画できる機能も新たに追加します」と発表しています。詳細を確認したところ、この両社でドライブレコーダー特約に加入した人で、リアカメラも希望する場合は、別途リアカメラを購入して取り付けできるという内容です。最初から後方カメラが標準装備されるのではありません(電話で確認しました)
走行中にあおり運転に遭遇したら、ドライブレコーダーのボタンを押すことでオペレーターにつながり、警察への連絡を依頼できるというのですから、これはずいぶん心強い機能だと思います。
日産自動車が一部車種にオプション設定している「SOSコール」とほぼ同じ機能です。
ドライブレコーダーにはGPS(全地球測位システム)が搭載されているので、どの地点であおり運転の被害にあっているのか、オペレーターは現在進行形で把握できます。
警察にも発生地点をピンポイントで伝達できます。
ですから、これはこれで大いにありがたい機能であることは間違いないところです。
しかし、です。
問題はドライブレコーダーです。
これは東京海上日動だけではなく、大手代理店型保険会社4社すべてがそうなのですが、ドライブレコーダー特約で貸与される端末が、いわゆる「前1カメラ」なのです。
車の前方しか記録できないカメラなのです。
現在、ドライブレコーダーは、大別すると下記の3タイプがあります。
- 前1カメラ(前方撮影)
- 前後2カメラ(前方・後方撮影)
- 360度カメラ(前方・後方・側方・車内)
大手代理店型4社のドライブレコーダー特約では、すべてが①のタイプなので、前方の映像しか記録されません。
けれども、そもそも事故は背後から追突されることもあれば、真横から衝突されることもあります。
ただし、事故の場合なら、たとえば背後から追突された場合には、ドライブレコーダーには衝撃による車の揺れが記録されますから、間接的にではあるけれど、「事故」が記録されることになり、それなりに実用の役に立つと言えるでしょう。
けれども、「あおり運転」はどうでしょう?
わたしたちがテレビやyoutubeで見てきたあおり運転の実例は、多くの場合、「非接触」です。
車と車が接触してトラブルになるケースももちろんあるものの、多くのあおり運転は、車と車は接触しないけれども、後ろから車間を詰められ、横に並んで幅寄せをされ、前に割り込んで急ブレーキをかけられたりジグザグ運転されたりする・・・といった一連の流れの総体をもって「あおり運転」と呼び習わしているはずです。
だから、後ろや横の映像が記録されていないと、現場へ警察に駆けつけてもらっても、証拠となるのは前方の映像のみで、あとは口頭で説明するということになり、「証拠」として役不足ということになってしまうと思うのです。
また、みなさんの記憶に新しいところでは、2019年の夏に全日本国民を震撼させた常磐自動車道でのあおり運転殴打事件を思い出してください。
あの事件では、強引に前方に割り込み被害者の車を停車させた後、宮〇文〇容疑者と連れのガラケー女が車から降りてきて、ガラケー女は被害者の車を撮影し、宮〇文〇容疑者は被害者の車の運転席側に回りこんで、(なぜか)開いていた窓から被害者を数回殴打しました。
みなさんご存知のこの映像は、被害者の車に取り付けてあった先ほどの③のカメラ、つまり、360度カメラ(前方・後方・側方・車内)で記録されていました。
このタイプは、前方に広角カメラ1つ、車内に向けられた広角カメラが1つ、という2カメラで成り立っています。
車内に向けられたカメラは、車内を撮影すると同時に、車のウインドー越しに、車の側面や車の後方も記録しています。
被害者がこのタイプのドライブレコーダーを取り付けていたからこそ、宮〇文〇容疑者のあの空恐ろしい狂気の殴打場面が記録され、決定的な「証拠映像」として逮捕・立件にまでたどり着いたのです。※「あの映像が決定打になった」と多くの関係者が証言していると新聞記事が報じています
したがって、東京海上日動があおり運転への対応を追加したことはすばらしいことではあるものの、肝心のドライブレコーダーが前1カメラである点が何とも残念でなりません。
わたしもそうですが、みなさんの多くも、いったんはドライブレコーダー特約に関心を持ったものの、二の足を踏んでしまう要因ではないでしょうか?
東京海上日動のドライブレコーダー特約は、月額650円で年払だと7,480円です。
もしも3年~5年保険を継続した場合、オートバックスなどで360度カメラのドライブレコーダーを購入できる金額です。
だから、わたしたちは迷ってしまうのです。
ドライブレコーダー特約なら、事故の際に自動的に事故連絡がなされ、救急車の出動要請までしてもらえる安心感があり、あおり運転にあった場合も警察に連絡してもらえるけれど、しかし、あおり運転の一部始終を証拠映像として記録できない。
一方で、オートバックスで360度カメラのドライブレコーダーを購入すれば、事故の映像もあおり運転の映像もほぼ完璧な形で記録に残せるけれど、ただし、大事故で意識を失うような際に自分で事故連絡できずにそうした初期対応の遅れが重大な結果を招くケースも起こりうる。
一体どちらを選択すればいいのか。
わたしたちは、こんな風に迷ってしまいます。
もしも東京海上日動がドライブレコーダー特約を360度カメラを搭載したものに進化させてくれれば、悩みは一発で解決されます。
東京海上日動さん、これ読んでいたらよろしくお願いいたします!
東京海上日動のドライブレコーダー特約「ドライブエージェントパーソナル」の詳細は下記の記事をご覧ください。
個別に解説:4社のドライブレコーダー付き自動車保険 | |
東京海上日動 ドライブエージェントパーソナル | 詳細内容はこちらのページ |
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