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全固体電池はいつ?実用化できない?いや、トヨタが日産を追い抜く勢い
全固体電池に関しては、これまで日本のメーカーでトップを走っているのは日産だと思われてきました。
日産は、2028年度に全固体電池を搭載したEVを市場投入する予定で、2024年度までに横浜工場内にパイロット生産ラインを導入し、全固体電池の量産化に向けた準備を進めています。
ところが、トヨタは、全固体電池を2027年にも実用化する方針を明らかにしました。(2023年6月13日毎日新聞)(2023年6月13日ドライバーWeb)
航続距離1200km、急速充電10分以下
2026年に次世代BEVをレクサスから投入すると公言しているトヨタでは、その車両には航続距離1000kmを実現する次世代のパフォーマンス版リチウムイオン電池が搭載されます。
今回公表された全固体電池では、そのパフォーマンス版電池と比較して航続距離20%向上を実現し、単純計算で1200kmを達成する見込みです。
さらに、急速充電時間は10分以下(充電率10%→80%)を目標に開発を進めています。
航続距離1500kmも開発中
トヨタはさらにレベルアップした全固体電池の研究開発も進めており、パフォーマンス版電池と比べてなんと航続距離が50%向上する電池の模様。※つまり1500km
ただし、そのためには、電池のコンパクト化による車体側の空力アップや軽量化など、電池の進化以外の効率向上が同時に必要です。
HVから、を修正。BEVに投入
トヨタは、2021年に「全固体電池導入はHV(ハイブリッド)から」と説明していましたが、今回その計画が見直され、BEV用電池として2027~28年の実用化にチャレンジしていくと表明。
これはもう、完璧に日産の「2028年度までに市場投入」という計画に勝負を挑む形です。
ただし、全固体電池の実用化にはまだ課題があり、「いかに高い品質で安く作るか」が問題となっています。
当初は少量生産での実用化を図る予定です。
全固体電池は日本メーカーが先行
全固体電池の開発は日本勢が先行しており、各社が量産化に向けてしのぎを削っています。
ホンダも2024年春に量産技術の確立に向けた生産ラインを設置する予定です。
調査会社の富士経済によると、全固体電池の世界の市場規模は現在はほぼゼロですが、2040年には3兆8605億円規模に拡大する見通しです。
中国勢も鋭意開発中
EV車用のバッテリーで世界をリードしているのは中国勢で、当然、リチウムイオン主体の現在のバッテリーの「次」を研究開発しています。
しかし、もしも2027年~2028年にトヨタあるいは日産が全固体電池を実用化させ、しかも、その製造コストが低く抑えられ、そして量産化可能な体制に入れば、その時は世界のEV勢力図が一定の範囲で塗り替えられるかもしれません。
「産業化」が勝負
繰り返しますが、たとえ全固体電池が実用化されたとしても、問題は、コストと量産化、この2点だと思います。
日本は新技術を開発するのが得意ですが、それを「産業化」するのがちょっと苦手なところがあると思います。
一充電航続距離1200kmとか1500kmなどと聞くと、まさにゲームチェンジャーになりそうに思えますが、でもその電池が高額で、量産もままならないものなら、勢力図は変化しないはず。
EVで先行しているテスラ、中国勢、そしてフォルクスワーゲンは、「いかに安く作るか」の段階に入っています。
日産とトヨタ、そしてホンダには、コストを抑えた全固体電池を量産して、ライバルたちをやっつけて欲しいです。
あるいは、コストが大幅に下げられるのであれば、全固体でなく従来のリチウムイオンでも「産業化」は達成できます。
とにかく、ガツンとやっつけて欲しい。