【記事丸わかり】
⇒⇒飛び石でガラス交換する場合に自分で自費と保険修理どっちがお得? |
走行中フロントガラスに飛び石が衝突してヒビが入ることがしばしばあります。
この場合の補修または交換修理は車両保険に加入していれば補償されます。
「飛来中・落下中の他物との衝突」に該当します。
車両保険のエコノミーでも一般条件でも補償対象です。
車両保険に入ってない場合は補償されません。
ただし、修理金額によっては自腹で払ったほうがいいケースもあります。
では、修理代金がいくらなら保険を使い、いくらなら自腹で払ったほうがいいのか、目安になる数字を知りたいところです。
このページでは、その点も含めて、以下詳しく解説していきます。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
飛び石によるフロントガラスの損害は保険使用の判断を迷わせる
飛び石によってフロントガラスにヒビや傷が付いた場合、補修や交換にかかる費用は保険で支払うことができます。
この場合の保険とは車両保険のことです。
車両保険にはエコノミーと一般条件がありますが、いずれのタイプでも補償されます。
その際、車両保険には免責金額があるので、たとえば免責0万円なら修理費用は全額保険から支払われます。
免責金額5万円なら、修理費用-5万円=保険金となります。
あくまで一般的な金額ですが、飛び石でフロントガラスにヒビが入ると、修理費用は2万円~5万円ほどかかると思います。
フロントガラスの交換となると、社外品の場合で、軽自動車で5万円~8万円、普通車(登録車)で7万円~10万円(共に工賃込み)くらいになると思います。
※ディーラー等でメーカー純正品に交換する場合は上記金額に3万円~5万円上乗せになると思います。
こうした金額は、車両保険との関係で言うと、実に微妙な金額になります。
保険を使うと翌年度の保険料は上がりますから、修理費用と上がる保険料とを天秤にかけて、保険を使うべきか自腹で払うべきか決断しなければなりません。
悩ましいところですが、しかし、保険を使う目安になる金額の出し方については後ほど詳しくご説明します。
飛び石の原因を探ると、たいていの場合、前を走る車のタイヤが弾いたり、対向車線の車が弾いたり、といったケースが考えられます。
けれども、いずれの場合であっても、被害を受ける瞬間は突然やってきて、明確にどこから飛んできた石かを判断することは困難です。
仮に、ドライブレコーダーに石を弾いた車が記録され、確証を得た中で相手運転手を制止してパーキングや路則で話し合いを行っても、相手がすんなりと損害賠償に応じることはまずないでしょう。
飛び石は故意にやることではないし、ドライバー自身に石を飛ばしたという自覚はないことから、責任を追及することには困難が伴います。
そもそも法的には飛び石は器物損壊罪には問えないのが通説です。※「飛び石 損害賠償」で検索すればいくつかの弁護士事務所の見解がヒットします。いずれも「責任は問えない」という内容です。ただし、トラックやダンプカー等の荷台の荷物が落下して後続車に損害を与えた場合は損害賠償を問える可能性があります。
このように相手を特定できず、特定できても損害賠償を問えないのが飛び石の特徴で、こうしたケースでは、結局のところ自分が加入している車両保険に頼るしかありません。
車両保険に加入していないと支払いの対象にはなりません。
飛び石によるフロントガラス損傷は「1等級ダウン・事故有期間1年」
車の保険の特約の1つに車両保険があります。
飛び石によるフロントガラスの損害は車両保険に加入していないと補償されません。
車両保険には大別すると2つの補償タイプがあって、それがエコノミー+Aと一般条件です。
下記の表は、エコノミー+Aと一般条件の補償内容、保険を使ったときの等級の落ち方についてです。
飛び石によるフロントガラスの損害は、上から6行目の「飛来中・落下中の他物との衝突」です。
補償内容 | エコノミー+A | 一般条件 | 保険を使った場合の等級ダウン |
車同士の衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
盗難 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
台風・竜巻・洪水・高潮 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
火災・爆発 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
イタズラ・落書き・窓ガラス破損 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
飛来中・落下中の他物との衝突 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
2輪自動車・原付バイクとの衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
単独の自損事故 | × | 〇 | 3等級ダウン |
当て逃げ | × | 〇 | 3等級ダウン |
ご覧のように、飛び石によるフロントガラスの損害は、エコノミー+Aでも一般車両でも支払い対象になり、保険を使うと翌年度の等級は1つダウンします。※事故有期間1年も付く。事故有期間については後ほど解説します
もしも飛び石によるフロントガラスの損害額が30万円とか50万円であれば、誰も迷うことなく保険を使うでしょう。
しかし、悩ましいことに、飛び石によるフロントガラスの損害の多くは、比較的小額な修理代で済むことが多く、それゆえ多くの保険契約者の頭を悩ませます。
結局のところ、保険を使うべきか自腹を切るべきか、具体的な数字で判断するしかありません。
次の項目で、具体的な数字の出し方についてご説明いたします。
参考になさってください。
保険を使うか使わないか計算する方法と使う目安
飛び石によるフロントガラスの損害は1等級ダウン事故です。
保険を使った場合に翌年の保険料がどれだけ上がるか。
これが事前にわからなければ、保険を使う使わないを判断できません。
そこで、保険を使った場合の将来保険料をシミュレーションしてみたいと思います。
<計算条件> |
|
※実際の保険料算出には、年齢条件・料率クラスなども影響しますが、ここではイメージをつかんでいただくために簡略化しています
下の表の左側は、保険を使ったために11等級から1つダウンし、いったん10等級に戻ってからの保険料推移(2年間)です。
右側は、保険を使わずにいた場合のその後の保険料推移で、12等級から2年間の数字です。
値上がりする保険料の推移 | 保険を使わなかった場合の推移 | |||
経過年 | 等級 | 保険料 | 等級 | 保険料 |
1 | 事故有10等級 | 73,000 円 | 無事故12等級 | 49,000 円 |
2 | 無事故11等級 | 50,000円 | 無事故13等級 | 48,000円 |
123,000円 | 97,000円 |
※「2年間」で比較するのは、1等級ダウンしたものが元の等級に戻るのに2年かかるからです。しかし何年間の推移で比較するのがいいかは考え方によって意見が分かれるところです
さて、2年後の保険料総額を比較すると、保険を使った場合が123,000円で、使わなかった場合が97,000円です。
その差額は26,000円になります。
123,000-97,000=26,000円 |
すると、あくまでも概算になりますが、26,000円がいわゆる「損益分岐点」になってきます。
ですから、車の修理費が26,000円を超える場合は、「保険を使ってもいいかな」という判断になりますし、車の修理費が26,000円を下回るケースでは、「ここは自腹を切っておこうか」ということになります。
上の計算は年間保険料が50,000円のケースでした。
もう少し幅を広げて、30,000円、50,000円、80,000円、100,000円、120,000円、150,000円で上記とまったく同じ計算をしたものが下の表になります。
年間保険料 | いわゆる「損益分岐点」 |
30,000円 | 16,000円 |
50,000円 | 26,000円 |
80,000円 | 41,000円 |
100,000円 | 51,000円 |
120,000円 | 61,000円 |
150,000円 | 77,000円 |
いかがでしょう?
大まかなイメージはつかんでいただけたのではないでしょうか。※金額はあくまでも目安です
実は、上の保険料シミュレーションは、ソニー損保のホームページにある概算保険料ツールを利用して算出しています。
みなさんも、ご自分の条件を入力して、(あくまでも概算になりますが)保険料を算出してみてください。
大まかなイメージはつかめると思います。
ところで、実は、ここからが本題になります。
保険料のシミュレーションの話をしましたが、なにもみなさんが上で紹介したソニー損保の計算ツールを利用したりしなくても、みなさんが加入している保険会社の事故担当者が、通常業務の一環として、ちゃんと保険料を算出してくれます。
各保険会社には、ソニー損保の概算保険料ツールをより厳密にした、「将来保険料計算ツール」(名称は会社により様々ですが)というアプリがあります。
そのアプリで、個別具体的にみなさんのデータを入力して、10円単位まで正確な将来保険料を、上の一覧表のように「一瞬にして」算出してくれます。
ディーラーや修理工場から修理の見積額の連絡が入り、いよいよ保険を使うか使わないかという段階になれば、その計算結果を担当者が提示してくれるので、みなさんは担当者の助言も考慮しつつ、保険を使う使わないの判断をすればいいことになります。
みなさんご自身で複雑な保険料計算をする必要は一切ありません。
代理店型の自動車保険でも通販型の自動車保険でも、いずれもちゃんとやってくれます。
保険を使う使わないは事故処理の最終段階で意思表示すればOK
これは意外と誤解している方が多い事柄なので、念のために書かせていただきます。
飛び石によるフロントガラスの損害に限らず、その他どういう形態の事故であれ、とにかく事故で保険会社に事故届けをすると、以後は、保険会社が事故の相手やディーラーや修理工場などと連絡を取り、代車を手配し、契約者であるあなたにも報告を入れ、事故解決に至るまでの様々な手続きや連絡をあなたに代行してやってくれます。
こうしたサービスは、その事故が「保険金支払いの対象になる事故」である限り、保険会社は提供する義務があります。
ところが、保険の契約者の中には次のように理解(誤解)している方がいらっしゃいます。
「今回の事故は修理代が小額になりそうだから、もしかしたら保険を使わないかもしれない。でも、保険会社に事故連絡したら、結局、保険を使わないといけないことになるのでは?そうなったら困るから、ここは自分でやることにしよう。でも、どこから手をつければいいのか・・・」
このように一人で悩んでしまう方がいらっしゃいます。
とりわけ、飛び石でフロントガラスにヒビが入るような事故は、相手を特定できないことがほとんどなので、事故直後に保険会社に報告しないケースが結構あります。
先ほど、「保険金支払いの対象になる事故」と書きました。
これは「支払いの対象」になるかどうかが問題で、最終的に保険金を支払うか支払わないかは無関係です。
損害額が1万円とか2万円の事故で、車両保険を使うことはまずないだろうという事故であっても、保険会社は事故解決のためのサービスを提供する義務がありますし、実際、提供してくれます。
修理代が小額になることが予想される事故であっても、事故解決までには、車をディーラーや修理工場に入れ、見積もりを取り、修理の際には代車を手配するなど、様々な手続きが必要になります。
保険会社にやってもらうことはたくさんあります。
これを一人でやれますか?
ですから、相手がある事故であれ単独の事故であれ、修理見込み額が大きくても小さくても、保険金支払いの対象になる事故が発生したら、まず保険会社に事故届けを出し、その後の事故処理は保険会社に任せてください。
事故届けをすると、後日、保険会社から「保険金請求書」という書類が送られてきます。
あなたが確実に保険を使う場合は、この書類に必要事項を記入し、保険会社に返送してください。
使うか使わないか迷っている場合は、この書類を送らず、手元に保管しておいてください。
保険会社は、「保険金請求書」がなければ保険金の支払い手続きに入れません。
※「保険金請求書」をすでに提出済みであっても、保険会社は契約者の意思を確認した上でなければ支払いを実行しません
いずれにしても、どんな軽微な事故でも、まず保険会社に事故届けを出し、一連の事故処理を代行してもらうことです。
保険を使うか使わないかは、修理見積もりが出た段階で、保険会社の事故担当者に出してもらった将来保険料とを天秤にかけ、そこで最終的な判断をすればいいことです。
保険会社を大いに活用して欲しいと思います。
そのためにお金を払っているのですから。
代理店型でも通販型でも、この点に関しては、対応に違いはありません。
事故有係数とは?
自動車保険のノンフリート等級制度は、ただ単に何等級であるかが問題ではなく、「直近の事故歴」の有無がわかるような表示の仕方になっています。
たとえば、「20等級・事故有期間0年」といった表示で、保険証券にもそのように記載されます。
そこで、キーワードとなるのが「事故有係数」と「事故有期間」です。
以下、順次解説していきますので、しばらくお付き合いください。
高速道路を走行中、前方を走る車のタイヤが弾いたと思われる飛び石がフロントガラスに当たり、10センチ程度のヒビが入ったので、後日、車両保険から修理費用を支払ってもらったとします。
これは1等級ダウン事故なので、翌年度の等級は1等級ダウンします。
現在が11等級だとすると、10等級になります。
ここで次の比較表をご覧ください。
事故有 | 無事故 | |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
同じ10等級なのですが、「事故有」と「無事故」で割引率が違います。
2012年10月までは同じ等級に2つの割引が並存するようなことはありませんでした。
しかし現在の等級制度では、事故で保険を使った結果として10等級になった人と、無事故で一つずつ等級の階段を上ってきた結果として10等級になった人とを、同じ扱いにしては不公平だという理由から、このように割引率に差を付けています。
10等級の場合は、実に22ポイントも割引率に差が付いています。
たった1等級ダウンしただけでも、保険料的にはかなり高くなるということです。
このように、事故で保険を使った場合に適用される割引率のことを「事故有係数」と呼びます。
いっぽうで、無事故を続けている場合に適用される割引率のことを「無事故係数」と呼びます。
参考までに、自動車保険のすべての等級(1等級から20等級)を一覧表でご覧ください。
等級 | 事故有係数 | 無事故係数 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
※事故有係数と無事故係数の2系統に分かれるのは7等級~20等級だけです
事故有期間とは?
前の項目の例を続けます。
11等級だった人が、1等級ダウン事故で保険を使ったために翌年の保険が10等級にダウンした場合、事故有期間(事故有係数適用期間)が1年付きます。
1等級ダウン事故なので「1年」、3等級ダウン事故なら「3年」が付きます。
上の画像では事故有期間は「0年」ですが、1等級ダウン事故で保険を使った場合の翌年の保険証券には「1年」と表示されます。※3等級ダウン事故なら「3年」と表示
この事故有期間というのは、前の項目で解説しました事故有係数を適用する期間のことです。
事故有期間とは |
事故有係数を適用する期間のこと |
つまり、1等級ダウン事故で保険を使ったら、1年間だけ事故有係数を適用しますが、1年過ぎたら11等級に戻り、戻ったその11等級は事故有係数ではなく元の割引率(無事故係数)になる、ということです。
3等級ダウン事故で保険を使ったら、3年間高い保険料を適用するけれど、3年間無事故であれば4年目には元の等級に戻ります。
もしも同じ年度に2度、3度と事故を起こして保険を使ったら、その分は加算されるのですが、事故有期間は最長6年で打ち止めになるので、たとえば3等級ダウン事故で3回保険の支払いを受けても事故有期間は9年ではなく6年ということになります。
話を整理します。
11等級だった人が1等級ダウン事故で保険を使うと、翌年の保険は10等級になります。
この10等級は、無事故で等級を上ってきた人の10等級とは割引率が異なり、より割引率の低い事故有の割引(事故有係数)となります。
同時に、事故有期間が1年付きます。
1年間は事故有の割引によって高い保険料を支払うことになりますが、1年間無事故で過ごせば、2年目にはまた11等級に戻ります。
戻った11等級は、事故有期間の1年がリセットされているので、また無事故の割引が適用されます。
1等級ダウン事故で保険を使った場合のまとめ |
翌年度1等級ダウンし事故有期間1年が付く。無事故であれば2年後に元の保険料レベルに戻る |
ご覧いただきありがとうございました。