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上咽頭と自律神経:鼻うがいは自律神経の働きに効果ある?
上咽頭と自律神経
上咽頭とは
上咽頭とは、喉の奥側に位置する咽頭の一部で、鼻腔と口腔の中間に位置します。上咽頭は、鼻腔から入った空気や口腔から入った食物が通過する場所であり、呼吸や嚥下に関わる重要な役割を果たしています。
自律神経とは
自律神経とは、身体の機能を自動的に調節する神経系のことです。自律神経は、交感神経と副交感神経の2つの部分に分かれており、それぞれが異なる機能を担当しています。
交感神経は、身体を興奮状態に調節する神経で、ストレスや興奮などの状況下で活発に働きます。このとき、心拍数や血圧が上昇し、呼吸が速くなるなどの反応が起こります。
一方、副交感神経は、身体をリラックス状態に調節する神経で、休息や睡眠の状態下で活発に働きます。このとき、心拍数や血圧が低下し、消化や代謝などの回復や再生作用が働くようになります。
自律神経に異常が生じると、様々な症状が引き起こされることがあります。例えば、交感神経が過剰に働くと、不安や興奮状態が続いたり、心臓病や高血圧症などの病気のリスクが高まることがあります。副交感神経が優位になることも、眠気やだるさなどの症状を引き起こすことがあります。
上咽頭と自律神経の関係
さて、上咽頭と自律神経には密接な関係があります。上咽頭は、喉頭神経や迷走神経などの神経線維によって支配されています。これらの神経は、自律神経の副交感神経枝から支配されており、上咽頭の刺激によって、副交感神経が優位になることが知られています。
つまり、上咽頭を刺激すると副交感神経の活動が高まり、交感神経の活動を抑制するわけです。このため、上咽頭の刺激によって、呼吸や心拍数、血圧などの自律神経に関連する機能が調節されることがあります。
さらに、上咽頭は免疫システムとも密接な関係があり、上咽頭の刺激によって、免疫細胞の活性化が促進されることが知られています。このように、上咽頭は身体の様々なシステムと密接に関連しており、自律神経とも密接な関係があることがわかります。
鼻うがいと自律神経の関係
これは一部の医師の間で言われていることで、学説が固まっているものではありませんが、鼻うがいを行うことで、副交感神経系の刺激が増え、身体をリラックス状態に導くことができ、これにより、ストレスや不安などの心理的ストレスを緩和する効果が期待できるといわれています。
また、副交感神経系の刺激は、自律神経系のバランスを整え、免疫力を高める効果もあると考えられています。
たとえば、鼻うがいをすることで鼻の換気状態が良くなり、上咽頭を刺激することで、免疫や自律神経の機能を高めるという意見があります。(はりきゅう・こきゅう ホクラク)
また、医療法人モクシン堀田修クリニック院長の堀田修氏は、著書『つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい―――鼻の奥が万病のもと!退治する7つの方法 』の中で、
原因不明の心身の不調を抱える患者さんの鼻奥を調べると上咽頭という部分に炎症が認められます。上咽頭は免疫の関所であるとともに自律神経のコントロールにも密接に関わっています。この上咽頭を強化すると、驚くほど不調が軽快し、心身が病みにくくなります。
と述べ、上咽頭を強化する方法の一つとして鼻うがいを推奨しています。
鼻うがいは自律神経失調症に効果ある?
自律神経失調症は、交感神経系と副交感神経系のバランスが崩れてしまうことによって、様々な症状が現れる疾患です。
鼻うがいは、副交感神経系を刺激し、交感神経系を抑制することができます。このため、鼻うがいを行うことで、自律神経系のバランスを整え、自律神経失調症の症状を一定程度軽減する効果が期待できます。
ただし、ここで気を付けなければいけないことは、自律神経失調症は原因が複数あるため、鼻うがいだけで十分な治療効果があるとは言えない点です。
自律神経失調症の治療には、適切な食生活や運動、ストレスマネジメントなどの生活習慣の改善が重要ですし、必要に応じて薬物療法やカウンセリングなども行われます。
したがって、各自の症状によって治療法は様々です。鼻うがいも一定の効果は認められるものの、これだけで治ると考えないほうがいいです。
医師に相談して適切な治療を受けるようにしてください。
医師が推奨する鼻うがいのやり方
<ウイルス感染予防にも!「鼻うがい」のメリットを医師が解説>の中で耳鼻咽喉科医の木村聡子先生は次の方法を推奨しています。
- 用意した生理食塩水をボトルに入れる。
- 次に前かがみの姿勢で、片方の鼻の穴からゆっくり洗浄液を入れていく。このとき「あー」と声を出しながら入れていくのがポイント。あまり勢いよく入れると粘膜を傷つけるので、ゆっくり入れていきましょう。
- 反対の鼻の穴や口から、洗ったあとの液を出す。
- 反対側も同じように洗う。
- 最後に片方ずつゆっくり、かつ優しく鼻をかんで終了。
※薬局で売っている生理食塩水をあたためる、もしくは一度沸騰させた水を人肌に冷まし、水1リットルに対して9グラムの食塩を溶かして、0.9パーセントの生理食塩水を作る。面倒な場合は、鼻うがいキット用として販売している市販の粉を使用するのも◎。
市販のおすすめ鼻うがい商品
市販の商品でも問題なく鼻うがいができます。
下記のおすすめ商品は耳鼻咽喉科の医師も推奨するものです。
ニールメッドの「サイナスリンス」:医師が開発した商品であり、全国3,000以上の医療機関でも取り扱われています。
小林製薬の「ハナノア」:海水に近い成分で作られており、体液にも近い成分であるため、鼻うがいをしても鼻の奥が痛くならないという特徴があります。
株式会社サイキョウ・ファーマの「鼻美盛 鼻うがい」:花粉や風邪などによって引き起こされるトラブルを洗浄液でしっかり洗い流すことができる商品。
鼻うがいの商品は、自己判断ではなく、受診している医師や薬剤師に相談してから使用するのが安心だと思います。
まとめ
「上咽頭と自律神経:鼻うがいは自律神経の働きに効果ある?」のテーマで解説しました。
上咽頭部と自律神経には密接な関係があり、そして、鼻うがいは上咽頭部を刺激するので、結果的に自律神経にいい働きをする。
おおよそ、こういった内容がこのページのまとめになります。
ただし、鼻うがいが自律神経の不調に一定の効果が期待できる点は間違いないと思いますが、これだけでたとえば自律神経失調症のような病気を治せるとまでは言えないようです。
とは言え、治せないまでも一定の効果があるのはほぼ間違いないところですから、自律神経の不調に悩んでいる方は、鼻うがいを試す価値は大いにあると思います。
鼻うがいで気を付けるべきことは、事前に医師に相談すべきだということ。また、1日に何度も行わずに、多くても2回程度にすべきであること(粘膜が炎症を起こすから)。
注意点はそのくらいだと思います。
ご覧いただきありがとうございました。