【記事丸わかり】
|
損保ジャパン日本興亜のASV割引(自動ブレーキ割引)の詳細な内容を徹底解説します。
ASV割引(自動ブレーキ割引)は衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が付いた車の保険料を9%割り引く制度です。
多くの車種がこの割引の対象になりますが、一部には、たとえ自動ブレーキが付いていても対象外になるケースもあります。
対象車種の調べ方についても詳しく解説しています。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
損保ジャパンは2018年1月の制度開始から導入
保険業界でASV割引(自動ブレーキ割引)が導入されたのは2018年1月からです。
損保ジャパンは他の大手代理店型保険会社と共に、いち早くこの割引制度を導入しています。
以下、ASV割引(自動ブレーキ割引)を採用している保険会社一覧です。
まず代理店型の状況です。
ASV割引(自動ブレーキ割引)を採用している代理店型自動車保険 | |
損保ジャパン日本興亜 | 〇(2018年1月~) |
三井住友海上 | 〇(2018年1月~) |
あいおいニッセイ同和 | 〇(2018年1月~) |
東京海上日動 | 〇(2018年1月~) |
※JA共済もASV割引を採用していますが全労済は未採用
次に通販型自動車保険(ダイレクト自動車保険)を見てみます。
ASV割引(自動ブレーキ割引)を採用しているダイレクト自動車保険 | |
SBI損保 | 〇(2018年1月~) |
ソニー損保 | 〇(2018年4月~) |
おとなの自動車保険(セゾン) | 〇(2018年7月~) |
アクサダイレクト | 〇(2018年10月~) |
チューリッヒ | ◯(2019年1月~) |
三井ダイレクト | 〇(2018年7月~) |
イーデザイン損保 | 〇(2018年7月~) |
損保ジャパン:ASV割引(自動ブレーキ割引)とは?そもそもASVとは?
ASV割引のASVとはAdvanced Safety Vehicle(先進安全自動車)のことで、自動車の安全な走行のための先進技術を備えた車のことです。
代表的なものとして、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)、車線維持支援装置、定速走行・車間距離制御装置といったものがあります。
このページのテーマであるASV割引(自動ブレーキ割引)の対象になるのは衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を装着した車です。※AEBとはAutonomous Emergency Brakingのこと
その他の車線維持支援装置や定速走行・車間距離制御装置などは割引とは関係ありません。
いわゆる自動ブレーキだけが割引の対象ということです。
ASV割引(自動ブレーキ割引)の条件 |
衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が装着されていること |
損保ジャパン:ASV割引(自動ブレーキ割引)の対象車・対象車種
ASV割引(自動ブレーキ割引)の対象になる車種は乗用タイプの車で、次の3つです。
ASV割引(自動ブレーキ割引)の対象車種 | |
自家用普通乗用車 | プリウス・アウトランダーなど |
自家用小型乗用車 | フィット・デミオなど |
自家用軽四輪乗用車 | N-Box・ワゴンRなど |
損保ジャパン:ASV割引(自動ブレーキ割引)の対象車・対象車種の見分け方
ASV割引(自動ブレーキ割引)の対象になるのは衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を装備した車です。
つまり自動ブレーキを装着した車です。
しかし、今では安全装備として「自動ブレーキ」だけを単独で装備している車は少数派です。
多くの車は、自動ブレーキはもちろん車線維持支援装置や車間距離制御装置など複数の安全装備をセットにしています。
たとえば、「Hondaセンシング」と名づけられた安全装備には、自動ブレーキ・車線維持支援装置・車間距離制御装置・標識認識機能・オートハイビーム・その他がセットになっています。
このように、自動車各社は独自の名称で安全装備をアピールしています。
ただし、ASV割引(自動ブレーキ割引)の対象になるのは衝突被害軽減ブレーキ(AEB)のみです。
下記の名称で呼ばれている安全装備は、すべてASV割引(自動ブレーキ割引)の対象となる衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を備えています。
ダイハツ | スマートアシスト |
スズキ | デュアルセンサーブレーキサポート |
スバル | アイサイト |
マツダ | レーダーブレーキサポート |
ミツビシ | 三菱e-Assist |
ホンダ | Hondaセンシング |
日産 | インテリジェントエマージェンシーブレーキ |
トヨタ | トヨタセーフティーセンス |
では、こうした名称の安全装置を備えている車であればすべてASV割引(自動ブレーキ割引)の対象になるかというと、そうではありません。
ここがわかりにくいところで、ちょっと説明が必要になります。
損保ジャパン:発売から3年以内の「型式」であること
登録車と軽自動車で扱いが異なるので、まずは登録車(自家用普通乗用車・自家用小型乗用車)からご説明します。
自動車の車検証には必ず「型式」があります。
ASV割引(自動ブレーキ割引)の対象になるのは、この型式が「発売から約3年以内のもの」に限られます。
ですから、たとえばスバルのアイサイトを搭載したレヴォーグですが、2014年の発売以来、型式はずっと「DBA-VM4」です。
この記事を書いているのは2018年11月ですが、今現在もレヴォーグは「DBA-VM4」で販売されています。
すると、2018年11月を保険始期とする契約を結んだ場合、レヴォーグはASV割引(自動ブレーキ割引)の対象外になります。
なぜなら、「発売から約3年以内の型式」という条件から外れるからです。
なお、「発売から約3年以内」というのは少し簡略化して表現しています。
割引適用期間に関する厳密な記述として、損保ジャパンでは次のように記載しています。
ご契約期間の初日がご契約の自動車の型式に対応する割引適用終了日※以前であること。
※その型式の自動車が発売された年度に「3年」を加算した年度の12月末日をいいます。
損保ジャパン日本興亜「自動車保険改定のご案内(P2)」
※上の説明の中の「その型式の自動車が発売された年度」ですが、「車を購入した年度」とは違うのでご注意ください。
それでは、例として「2017年1月に発売された型式の自動車」について上の規定を当てはめてみます。
この自動車の発売年度は2016年になります。※年度は4月~翌3月
次に、2016年に3年を加算すると2019年となります。
最後に、2019年度の12月末日とは、文字通り2019年12月31日です。
すると、損保ジャパンで「2017年1月に発売された型式の自動車」を保険契約する場合は、2019年12月31日までに保険始期となる契約を結べば、ASV割引(自動ブレーキ割引)が適用されます。
2019年12月31日以前なら問題ありませんが、2020年1月1日では、1日オーバーしているので、対象外になります。
このように、型式が発売されてから約3年の車が対象です。
この約3年間のあいだに保険契約の初日がくれば対象になります。
※上の例で言うと、1年契約の場合はその1年間が割引対象になりますが、3年契約の場合は1年目のみ割引対象で、2年目、3年目は対象外になります
それにしても、なぜ「発売から約3年」なのでしょう?
これに関しても説明が必要だと思います。
損保ジャパン:3年経過したら「型式別料率クラス」に組み込まれる
なぜ「3年」なのか、について。
自家用普通乗用車と自家用小型乗用車(白地に分類番号5・7・3のナンバー)の自動車保険料は、車の型式ごとに決められた「型式別料率クラス」によって計算されます。※軽自動車は対象外
料率クラスは、対人、対物、傷害、車両それぞれ9つのクラスに分けられます。
この型式別料率クラスは、過去3年分の保険金支払い実績が反映されるしくみになっていて、毎年1月1日に見直されます。
つまり、「3年」経過すれば、その型式を持つ車の事故率やそれに伴う保険金支払い実績のデータが得られるので、得られたデータを元に料率クラスを更新すればいいわけです。
ASV割引(自動ブレーキ割引)というのは、いわば「経過措置」として導入されている割引です。
一口に自動ブレーキといっても、日々改良されています。
その改良された自動ブレーキによる事故率などはまだデータが得られていないので、データが集約されるまでの3年間は一律9%で暫定的に割引しておき、3年経過したら料率クラスに反映させ、割引もそこで終了ということになります。
前の項目で2014年発売のレヴォーグにはASV割引(自動ブレーキ割引)が適用されないと書きましたが、適用されないのは、すでに発売から3年経過しているので型式別料率クラスに事故率・保険金支払い実績等のデータが反映されているからです。
ちなみに2018年度のレヴォーグ(DBA-VM4)の型式別料率クラスは以下の通りです。
対人 | 対物 | 傷害 | 車両 |
4 | 3 | 4 | 4 |
※レヴォーグに装備されたアイサイトによる事故率・保険金支払い実績のデータが組み込まれた料率クラスです(だからASV割引はない)
※型式別料率クラスは毎年更新されます
レヴォーグを購入した方が「なぜ割引が適用されないんだ」とクレームをつける必要はなく、なぜなら、保険料はすでにアイサイトによる事故率・保険金支払い実績のデータを基に算出されているからです。
割引が適用されないと言われると気分的によくないのはわかりますが、実質的には「割引が適用されている」ことになります。
ところで、この型式別料率クラスは、現在のところ自家用軽四輪乗用車には採用されていません。
しかし、2020年1月1日までに導入される予定です。
けれども、2020年までは採用していないので、ASV割引(自動ブレーキ割引)に関して自家用小型(普通)乗用車などとは扱いが異なります。
どう異なるのか、次の項目をご覧ください。
損保ジャパン:軽自動車のASV割引(自動ブレーキ割引)に年数制限はない
自家用軽四輪乗用車の場合は、ごく単純に、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が付いてさえいればASV割引が適用されます。
自家用軽四輪乗用車のASV割引(自動ブレーキ割引)適用期間 |
型式の年数制限なし(古い型式でも自動ブレーキが付いていれば割引が適用される) |
ただし、2020年には型式別料率クラスが導入される予定なので、それ以後の扱いは自家用小型乗用車や自家用普通乗用車と同じ扱いになると思います。
損保ジャパン:あなたの車がASV割引(自動ブレーキ割引)の対象車種(型式)かどうか検索する方法
損害保険料率算出機構の「型式別料率クラス検索」を利用します。
「メーカー・車名」からでも「型式」からでも検索できます。
「型式」を入力する際に注意していただきたいのは、たとえばスバル・レヴォーグの場合、車検証の型式欄には「DBA-VM4」とありますが、入力するのはハイフンの右側の「VM4」だけです。
自動ブレーキ付きの車は本当に事故率が低いか?
最後に、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が付いた車の事故率の統計数字を見ておきたいと思います。
<ボルボが公表した事故率> 2009〜2015年度に新規登録されたボルボのオートブレーキ・システム搭載車は、非搭載車に比べて日本における事故発生率が69.0%減、追突事故発生率が76.5%減少、対人事故発生率が58.6%減少。 |
<スバルが公表した事故率> 2010年~2014年において、アイサイト(ver2)搭載車と非搭載車の比較で、事故総件数61%減、対歩行者49%減、対車両その他62%減(うち追突84%減)。 |
<公益財団法人交通事故総合分析センター> 2018年9月3日公表資料。 衝突被害軽減ブレーキ(AEB装置)の対四輪車追突事故低減効果の分析結果です。 衝突被害軽減ブレーキ(AEB装置)を搭載した自家用乗用車(普通・小型・軽)と未搭載車を比べると、登録・届出車数10万台当たりの対四輪車追突死傷事故件数は、AEB 未搭載車:208.9件、AEB 搭 |
ボルボとスバルの統計はやや古く、またメーカー自身が公表している数字なのである程度の「上乗せ」はあると見るべきですが、交通事故総合分析センターの事故率は一応信頼していいのではないでしょうか。
事故がおよそ半分と言うことですから、かなりすごい数字だと思います。
それと、実際に自動ブレーキの事故を見た場合、最終的に止まりきれずに衝突した場合は、もちろん1件としてカウントされるのですが、しかし、自動ブレーキによって減速しつつ衝突した場合の衝撃と、減速なしに衝突した場合の衝撃とは、まったく異なる結果になります。
つまり、自動ブレーキ付の車で事故件数としてカウントされた中には、自動ブレーキが付いていなかったらさらにもっと重篤なケガ・物の損傷になっていたであろう事故が含まれていると思います。
そうした事情も考慮すると、やはり自動ブレーキの効果はかなり出ているのだと思います。
その一方で、みなさんもご存知かと思いますが、一口に「自動ブレーキ」と言っても、性能にはかなりの開きがあるのが実態です。
20km以下では作動しない自動ブレーキもあれば、反対に一定の速度以上で作動しないものもあります。
人間を感知しない自動ブレーキもあります(人呼んで「おばかブレーキ」)。
また、再現性が乏しいもの、つまり、同じ条件なのにあるときは作動しあるときは作動しないといったバラつきが多い自動ブレーキもあります。
今後、性能が向上し、すべての自動ブレーキが最低限のレベルをクリアーするのを願うばかりです。
・・・とやや優等生的な文言で文章を閉じたのですが、もちろん、本音は違います。
わたしが言いたいのは、自動ブレーキといってもピンキリなので、だめな自動ブレーキ車は買わないほうがいいですよ、ということです。
ご覧いただきありがとうございました。