※トップ画像は「交通安全協会による加入のお願い」です。加入が任意であることを示す注意書きが貼り付けられています。by Wikipedia
目次
【記事丸わかり】
まとめ: 交通安全協会への加入は任意であり、加入しなくても問題ありません。過去には嫌がらせがありましたが、現在は改善されています。協会の活動に対する透明性の向上が求められています。 ⇒⇒自動車免許更新時 交通安全協会費は払わなくて良い!!(任意) |
交通安全協会はいらない?
運転免許証の更新時、運転免許センターなどの窓口で交通安全協会への入会案内があることは日本全国共通の光景です。
まず、明確にしておくべきことは、交通安全協会への加入は「任意」であって、何らかの法令に定められた強制的なものではないという点です。
1996年3月1日名古屋地方裁判所で協会費の徴収方法に問題があることが指摘され、この判決文を受けて、警察庁は各都道府県警察に対して会費徴収窓口と免許証更新窓口の分離などを含む運用改善の通達を行い、現在に至っています(会費の徴収率が激減した)。
- 1996年3月1日名古屋地方裁判所:交通安全協会の協会費徴収方法は、本来任意であるはずのものがあたかも義務であるかのように装って徴収しており、これは詐欺的行為である、という名古屋市民オンブズマンの訴えに対し、「詐欺とまでは言えない」と判決が下りオンブズマン側が敗訴した。しかし、その一方で裁判所は「協会費の集め方に問題がないとはいえない」と判決文の中で言及した。
- その後、MBSやTBSなどの報道機関が交通安全協会の現状を掘り下げた報道を行い、国民世論も批判を高めた結果、2006年3月31日に第3次小泉内閣が「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」を閣議決定し、この問題に対し改革すべき旨の方向づけを行った。
- この閣議決定を受け、警察庁が全国の警察本部に対して交通安全協会費の徴収窓口と免許証更新窓口とを分離するよう通達を出した。
- 現在、この通達をまじめに順守している警察もあれば、あいまいにぼかして依然として協会費の支払いが義務であるかのように装っているところもある模様。※全国的には通達に沿った運用が行われているところが多いのではないか
※上記経緯をご覧になった人の中には、「なんだ、裁判でビシッと白黒がついたわけじゃないんだ」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、日本社会の様々な変化を方向づけているのは、ほとんどが「閣議決定」だとか「通達」だとか「政令」といったものが根拠になっています。こういうもので社会が動いているのが実態です。
(参考:Wikipedia「交通安全協会」)
したがって、私たちが運転免許センターで免許証の更新手続きの際に、窓口で「交通安全協会への加入をお願いします」と言われても、断れば、それでなんの問題も発生しません。※私も今年(2021年)の夏に更新に行って「持ち合わせがないので今回はけっこうです」と言って断りました。断る口実としてでなく本当に持ち合わせがなかったのが情けないところですが
以前はもっと高圧的だった!
以前は、協会側の態度はもっと高圧的でした。
加入するのが当然という態度で窓口の応対をしていた時期が長く続いていて、断るとさらにしつこく勧誘したり、大きな声で「なぜ入らないんですか?」とわざと周囲に聞こえるように振る舞ったり、もはや悪徳業者を絵に描いたようなところがあったのです。
それが、ある事件が発生し、またそれと同種の事件が全国のあちこちで発覚したことで、形勢が変わってきました。
それは「交通の教本(教則)」に関するものです。
免許更新の際に私たちが受ける講習がありますが、その際に使用されるテキストです。このテキストは交通安全協会が外部の業者に発注するのですが、その際にその本を監修した人に対して「監修料」という名目で、テキスト代金とは別枠で支払うのです。
しかし、監修料などは口実に過ぎず、実際には、そのお金は協会に戻ってくる仕組みになっていたのです。
こうしてできたいわば「裏金」は、歓送迎会の費用に当てたり、その他使い勝手のいいお金として協会の特に幹部が自由に使ったわけです。
⇒⇒安全協会『交通の教則』は安全の啓蒙以外に使い道—架空経費!?(2002年3月19日RESPONSE)
その他、もっと直接的に協会の会計からお金を引き出して私的に流用していた事件も発覚しています。
交通安全協会によるこうした不正はいくらでもあって、「交通安全協会 交通の教本 裏金」「交通安全協会 事件」「交通安全協会 着服」といったキーワードでグーグル検索してみればその概要がお分かりになるでしょう。
当然のことながら、こうした事件がマスコミで報道される機会が増えるにしたがって、さらに1996年3月1日名古屋地方裁判所での判決文もあり、協会への加入率は低下していきました。
交通安全協会は情報公開制度の対象団体ではないようで、明確な統計数字が得られないのですが、一部公開されているものを見ると、
- 香川県:約35%
- 滋賀県:約37.4%
というのが2020年の数値です。加入率の数値です。
以前は80%越えの地域も珍しくなかった中でのこの数値です。
加入率が開示されていない他の地域でも恐らく似たり寄ったりの数値だと推測されます。
いかに交通安全協会の信用が失墜しているかが明白にわかるものだと思います。
多くの人が「交通安全協会はいらない」と判断していることを示す数値だと考えるしかないと思います。
加入しないと「嫌がらせ」をされる?
前の項目でもちょっと触れましたが、確かに以前は窓口で加入を断ると「嫌がらせ」と言うべき対応をされたようです。
何で入らないんですか、みなさん入るのにどうしてですか、と周囲に聞こえるような大声で攻め立てるケースもけっこうあったようです。
また、今はシステムが変わってそんなことはありませんが、協会に加入しない人には免許証の更新案内が届かないなどというケースもあったようです。※現在は必ず全員に届きます。
日本全国、全都道府県の交通安全協会がすべてかつてのような「嫌がらせ」をしなくなっているとは断言できませんが(なぜなら嫌がらせの実例を報告するコメントが少数ながらネットに散見されるので)、今ではほとんどなくなっていることは間違いないようです。
滋賀県の交通安全協会の活動内容
交通安全協会の活動内容は各都道府県によって異なりますが、比較的情報公開が進んでいる滋賀県の交通安全協会の内容を見てみたいと思います。
<公益財団法人 滋賀県交通安全協会の活動内容>
1.交通安全運動の実施
- 春・秋の交通安全運動の実施
- 夏・年末の交通安全県民運動の実施
- 新入学(園)児の交通事故防止活動の実施
- 近江路交通マナーアップ運動の実施
- 地域ボランティア指導員による交通立番など
2.交通安全指導及び広報・啓発活動
- ラジオ放送等各種の広報媒体を活用した広報
- 県協会ホームページやフェースブックを活用した広報
- 機関紙「おうみの交通」(年4回、約5万枚)
- のぼり旗や看板等の掲出
- 各種交通安全DVD等の貸出し
3.交通安全教育・講習会の開催
- 幼稚園・小学校・中学校等における交通安全教室の開催
- 高齢者交通安全教室の開催
- 自転車教室の開催
- 子供自転車大会の開催
- 二輪車大会の実施
- ビワイチ参加者に対する現地安全教育
4.会員特典
- 交通事故入院見舞金制度
- チャイルドシートの無料貸出し
- 運転免許証ケースまたはチャック袋の進呈
- オートバックスの10%割引券
- サカイ引越センターの基本料金20%以上割引 等
※ホームページをご覧になるとお分かりのように滋賀県の交通安全協会では収入金額から各事業の支出額までしっかり開示しています。役員名簿も事業報告書も貸借対照表もHPに掲載されています。こうした「透明性」は住民にとって信頼の基礎になるものだと思います。
不透明な組織は存在価値がない
上記滋賀県の交通安全協会のように透明性のある協会がある一方で、活動の概要しか明示しておらず、実際のところどんな活動にいくら使っているのか、協会の職員数やその人件費が全支出に占める割合がどのくらいか、あるいは警察組織からの天下りがどのくらいの数存在するのか(要するに「役員名簿」のこと)、こうしたことがHPで明示されていない協会は相当数あります。※私の地元の山梨県の交通安全協会はけっこう透明度が高いです。よかった。
公的な性質が強い組織に求められる最大の要件は、私たち一般市民のチェックが可能かどうか、これに尽きると思います。
中には次のようなツッコミを入れる人もいるかもしれません。
「一般市民のチェックというが、一般市民が役員名簿をチェックしたり決算報告書をチェックしたりしても、それが何を意味するのか、どうせわからないじゃないか。」
いや、そうではないのです。
医師の処方箋を薬局に持っていき、そこで薬を受け取った際に薬の名称や成分が明記されていますが、これは私たちがわからなくてもいいんです。
この紙を保管しておき、別の病気で他の医師から薬を処方してもらう際にその紙を医師に提出すれば、医師がその紙に記載された薬と相性が悪い薬を避けてくれるのです。
見る人が見ればわかる状態にあること、これが情報公開の持つ意義です。
だから、公的機関や公的な性質の強い機関は常に市民に対して情報を透明にしておく必要があって、専門知識を持った一般市民、弁護士、会計士、報道機関などが、公開された情報を(普通の市民の代表として)チェックできるようにしておくことがとても重要な意味を持ちます。※名古屋市民オンブズマンの活動はその典型的な事例です
こうした重要な情報を「隠している」組織があったら、そういう組織は一度解体して、透明性が確保された組織に再構築すべきでしょう。
不透明な組織は「いらない」と思います。
一部の有益な活動をアピールしても意味がない
滋賀県の交通安全協会の活動内容で、「幼稚園・小学校・中学校等における交通安全教室の開催」とか「高齢者交通安全教室の開催」というものがありました。
これと同様なものはおそらく全国の交通安全協会も取り組んでいるものだと思います。
有益な活動だと思います。
私も子供の頃にこうしたイベントを学校で受けた記憶があり、意味のある内容だと今でも思っています。
ただし、この種の一部の有益な活動があることをもって、交通安全協会という組織そのものを正当化することはできません。
他の組織ならもっと内容の濃いものをもっとお金をかけずに行うことができる可能性があるからです。
現在、全国の交通安全協会は各都道府県の警察と「随意契約」で結ばれている組織です。
競争相手が存在しないのです。
競争相手がなく、なおかつ、私たち市民のチェックを受けない組織は、その組織の偉い人が口では何と言おうが、結局のところ自らに甘くなるのは人類の歴史が示している通りです。
交通安全協会が行っている活動のすべてが「いらない」というと言い過ぎになるし、子供や高齢者への交通安全の啓蒙活動自体はいずれかの組織が担うべきものだと思います。
しかし、現在の交通安全協会がそのまま今まで通りの活動をするというのであれば、これは「いらない」と言うべきでしょう。
「交通安全協会がいらない」なら新たな税金が必要になる、という意見について
現在の交通安全協会は不透明な組織で、それゆえ現状のままならもはや「いらない」として、では、いま交通安全協会が担っている活動の内、今後も継続すべき価値ある活動はいずれかの組織が担う必要が出てくるはず。
その際、交通安全協会が消滅したら、その継続すべき価値ある活動をするための新たな組織が必要になり、当然、新たな資金(税金)が支出されることになる。
つまり、結局はお金がかかることになるのであるから、それなら、交通安全協会が免許更新時に協会費を徴収するのはそれほど指弾されるようなことではないのではないか、という意見があるかもしれません。
一見もっともらしく思える意見ですが、しかし、新たな組織が透明性を確保した組織であれば、また話は変わってくるでしょう。
どんな活動にも結局はお金が必要です。
ですが、問題はお金の流れが後から辿れるような組織であることが最も重要な勘所であり、今の組織にはそれが期待できない、という点は明白だと思います。
今のままの組織なら「いらない」と思います。
5年~10年後に今のままでない透明な組織に変わっていることを私は期待しているのですが。
ご覧いただきありがとうございました。