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目次
【記事丸わかり】
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【プチ調査】会計年度任用職員とは公務員なのか?ひどい扱いはなぜ?
2020年4月、会計年度任用職員制度がスタートしました。非正規職員を守るために作られた制度です。
しかし、制度開始以降、一部でひどい扱いを受けているのでは?といった意見が出ています。これから会計年度任用職員に応募しようと考えている人にとって、不安が募りますよね。
この記事では、「会計年度任用職員とは公務員なのか、ひどい扱いはなぜ?」というテーマに沿って、プチ調査しました。
制度施行後の実態を、現場で働く声を集めてリアルに検証します。会計年度任用職員として働いている人、これから応募してみようと考えている人は、ぜひ、参考にしてみてください。
会計年度任用職員制度とは
会計年度任用職員は、地方公務員法第22条の2の規定に基づき任用される非常勤職員です。
地方公務員法・地方自治法の改正により、
令和2年4月1日から全国すべての市町村で「会計年度任用職員制度」が始まりました。 |
会計年度任用職員は公務員なのか?
会計年度任用職員は、従来の非常勤職員、臨時職員、パート職員に変わり、地方公務員法が適用される「地方公務員」となります。 |
保育士、図書館司書、博物館学芸員、社会教育指導員など多くの専門職があります。
会計年度任用職員の種類
会計年度任用職員は、勤務時間の長さによって以下のように分けられています。
フルタイム会計年度職員 | 週38時間45分 |
パートタイム会計年度職員 | 週38時間45分未満 |
会計年度任用職員制度が作られた理由
全国の自治体で働く非正規職員の数は、2005年の45.6万人から2020年には69.5万人に達し、約1.5倍に増加しています。
そのため、雇止めや低処遇など正規公務員との格差が生じ、「官製ワーキングプア」として問題視されています。
※「官製ワーキングプア」とは、収入や待遇面で不遇な状況にある自治体の非正規雇用労働者のこと。
このような実態に対して、
「非正規の位置づけを法律で明確にし、待遇を改善する」目的で、会計年度任用職員制度が生まれました。 |
会計年度任用職員制度の内容
従来の非常勤職員とどんなことが違うのか、制度の内容を分かりやすく解説します。(参照:総務省「会計年度任用職員制度について」)
任期
会計年度任用職員の任期は、名前にもある通り1会計年度つまり4月1日~翌3月31日としています。 |
よって1年間その部署で働いた後は原則として更新することはできません。
同一部署で継続して働きたい場合は、改めて公募の採用試験に応募しなければなりません。(※自治体によっては勤務成績が良好な場合、翌年も更新される場合があります。その場合、任用期間の更新回数は原則2回となり、3年間が任用期間の上限となります。)
期末手当の支給がある
会計年度任用職員の給与水準は、正規職員との格差をなくすため常勤職員の給与に紐づけた給与が設定されています。さらに、
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なども支給されます。
6月と12月にはボーナス支給もあり、パートタイム職員も賞与の対象となるため給与面も安定しています。
また、フルタイム会計年度任用職員の場合は、退職手当が支給されます。(※常勤職員の勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が、引き続いて6か月を超えるに至った者)
【追記】格差是正措置、2024年度から
(2023年1月22日共同通信)総務省は、自治体で働く単年度契約の非正規職員(会計年度任用職員)のボーナスを拡充する方針を固めた。公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当で構成。会計年度任用職員には期末手当しか支給できないが、正規職員や国の非正規職員と同じく両方を支給できるようにする。格差是正が狙い。地方自治法改正案を通常国会に提出、早ければ2024年度から適用する。
昇給制度
以前は、どれだけ優秀な人材であっても昇給することは不可能でした。
しかし、制度開始後は、職務の内容や責任、職務遂行上必要となる知識、技術及び職務経験等の要素を考慮して、昇給制度を設けています。
専門性の高い分野で働く職員は、昇給制度があることでモチベーションを保ち、仕事にやりがいを持てますね。
有給休暇
全ての部門、職種において、
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といった有給休暇制度が適用されます。
正規職員と同じように、会計年度任用職員に対しても有給休暇を制度化しています。 |
また、産前産後休暇、看護休暇、介護休暇などの特別休暇も取得可能なので、子育てや介護をしながら仕事をしたい人も、働きやすい環境と言えるでしょう。
パートタイムは副業が可能
公務員は原則、副業が禁止されており、無許可で副業をした場合は処分が下されます。
しかし、パートタイム会計年度任用職員として採用された場合、副業が可能です。 |
多様な働き方ができる点も、メリットにつながります。
任用の空白期間の廃止
制度ができる前は、任用期間が終了し再任する際、退職手当や社会保険料を自治体側が負担しないようにするため、新たな任期との間に一定の「空白期間」を設けていました。
このことが問題視され、
現在ではこのような不適切な空白期間は設定されていません。 |
公平性の高い採用方法
いわゆるコネや人脈を辿って就職していた時代もあったようですが、現在では公平性の高い採用方法が導入されています。 |
自治体が会計年度任用職員を採用する場合は、
- ハローワークへの求人の届け出
- 行政のホームページで募集内容公開
が必要になりました。
明確化されたことで、面接を踏まえて採用する流れが確立されています。
ひどい扱いを検証
この記事では「会計年度任用職員とは公務員なのか、ひどい扱いはなぜ?」をテーマに調査内容をご紹介しています。
いよいよ「ひどい」扱いについてです。
会計年度任用職員制度が開始されてから、給与面や休暇などさまざまな改善が図られています。
しかし、制度が開始された2020年4月以降、職員の待遇や扱いに対して「ひどい」といった声があるようです。
こちらの章では、会計年度任用職員の実態について解説します。
雇用が不安定
会計年度任用職員制度は、1年間の任用期間が定められています。一般の企業であれば有期雇用労働者が5年以上就労すると、労働契約法に基づき無期労働契約に切り替えできる「無期転換ルール」があります。
しかし、公務員である会計年度任用職員はこのルールが適用されず、毎年不安を抱えながら働かなければなりません。
職場に慣れてきて様々な業務がこなせるようになっても、1年で任期満了となるため長く続けられないというデメリットがあります。
多くの職員がパート扱い
2020年4月時点での総務省による「地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査結果」では、
会計年度任用職員の総数62.2万人のうち、
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と報告されています。
千葉県習志野市の実例を見ると、約400人のフルタイムの非正規職員のうち半数近くが週35時間のパートに仕分けされました。
このように少しでも人件費を抑えようと、多くの自治体ではフルタイム職員がパートにシフトしている傾向があります。 |
Twitterでもフルタイムからパートになった人のクチコミがありました。
今までフルタイムで仕事をしていた人にとっては給与が下がるだけではなく、退職金給付の対象外になるため、ひどい扱いを受けたという意見が出るのも仕方ありません。
会計年度任用職員の4分の3を女性が占めている
2020年4月の調査結果によると、
会計年度任用職員のうち男性は145,903人(23.4%)に対して、女性は476,403人と全体の76.6%を占めています。 |
Twitterではこのような声も。
- 「公立保育園で働く嘱託職員は、会計年度任用職員への移行により短時間勤務となり不利益を余儀なくされた」(参照:Twitter)
また、2020年年度末には神奈川県庁で10年間福祉関係の専門職として働いてきた会計年度任用職員の女性が、5月初旬の出産を控えていましたが、3月末の雇止めが通告されました。
本来なら3月末から産休、育休を取得して職場復帰できるはずが、1年任期により継続勤務できなかったという事例もあります。
このような事例は「マタハラ」だと一部で問題となっているようです。
家事、育児をしながらの任期付採用は、長く働き続けたい女性にとってはマイナスでしかありません。 |
ボーナスが出るが月給が減る
会計年度任用職員制度は、昇給制度もありボーナスも支給されることから応募してみたいと思う方もいるでしょう。
しかし、ボーナスを支給する代わりに月額の給料が減額されたという声も見受けられました。 |
- 会計年度任用職員についてグチ。月給下げられ、ボーナス出るからトントンって言われたけど全然足らんし。昇給付けたとか言うが、3年で止まり、3年経っても時給はそれ以前より断然低い。(参照:Twitter)
年間の総支給額は増えていても、月額のやりくりが大変になるのは辛いですよね。
公務非正規女性全国ネットワークの調査によると、5割以上が年収200万未満、回答者の42%の方が「給与が低い」と回答しています。(参照URL)
正社員並みの業務量
正社員と同じように業務量が多い、立場の違う正規職員に仕事を教える、サービス残業は当たり前といったクチコミもありました。
役所の会計年度任用職員は、自分は毎年毎年1円たりとも昇給しないのに、毎年4月に何千円か昇給しながら異動してくる慣れない正規職員たちに、毎年毎年仕事を教え続ける。これは何かおかしくないでしょうか。
おかしいと思う人はちゃんとそう言いましょうよ。(参照:Twitter)
会計年度任用職員は残業がなくて良い、ではなく残業禁止。したくてもできない 予算が決まってて年収が固定だから業務量は正規と同じだからもちろんサービス残業はしてる 日本の悪習(参照:Twitter)
「同一労働同一賃金」という名目で施行された会計年度任用職員制度ですが、正規職員と会計年度任用職員の待遇の差に「ひどい待遇だ」と疑問を感じている人もいるようです。
公務の民間委託化で採用人数が激減
近年では、自治体業務に民間の資金や技術を導入することで、効率化、専門技術の向上、コスト削減を図る動きが出てきています。また、近年では財政負担軽減から公立保育園の民営化が進んでいます。
そのため、非正規職員の働く場がなくなっていることも問題視されています。
会計年度任用職員でよかったという声も
この記事では「会計年度任用職員とは公務員なのか、ひどい扱いはなぜ?」をテーマに調査内容をご紹介しています。
ここまでは「ひどい」扱いについて検証してきました。
けれども、マイナスの意見がある一方で、会計年度任用職員になって「よかった」といった声もあります。
昇給やボーナスもあり、職場環境に恵まれている会計年度任用職員の方もいらっしゃいます。
とは言え、ひどい扱いを受けていると感じる人も数多くいるのは確かで、それが次のような動きとなっています。
女性のための「公務非正規女性全国ネットワーク」(はむねっと)を結成
2021年3月、相次ぐ女性非正規職員たちの惨状に、当事者たちが「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」を立ち上げました。
2022年7月には総務省、厚労省、男女共同参画局との懇談会を行い、正規と非正規間の格差について実情を伝えています。
ホームページ内の「私たちの声」では、現場で働く実態が記載されています。(参照:はむねっと)
安定した公務サービスを続けていくためにも、このような現場の声を直接国に伝えていくのは大切なことではないでしょうか。
正規職員への道もある
会計年度任用職員制度にはさまざまな課題があるものの、福利厚生や昇給、休みがとりやすいといったプラスの部分もあります。
会計年度任用職員として働けば公務員としての仕事をリアルに体験できるのも魅力です。
職員採用試験を受けて、非常勤職員から正規職員になることも可能です。現場での経験は、採用時の面接に大きなアドバンテージになりますよ。 |
まとめ
「会計年度任用職員とは公務員なのか?ひどい扱いはなぜ?」というテーマに基づき、実態を調査しました。
ひどい扱いを受けている理由は、以下の通りです。
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ただし、このような実態は、勤め先の財政状況や地域によって異なります。
会計年度任用職員制度が始まったことで、年間収入は他の職場より安定収入が見込まれ、頑張り次第で昇格もできます。
そのため、オンオフを切り替えてしっかり休みを取りたい人や、副業をしたい人、きっちり時間内で帰りたい人に向いています。
学校のソーシャルワーカーや介護認定職員、公立保育園の看護業務など、資格が十分に活かせる職種もたくさんあります。また、今後公務員を目指しているなら、会計年度任用職員の経験は就活時に大変役立ちますよ。
自治体によっては現役大学生を対象とした募集もあるので、気になっている方は自治体の公募情報を確認してみましょう!
ご覧いただきありがとうございます。
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