こちらの記事も読まれています
事故や自然災害で自分の車が損傷したら車両保険で修理したいところですが、保険を使うと等級が下がり保険料が上がります。
そこで、修理費用と値上がりする保険料とを天秤にかける必要が出てきます。
その際、車両保険を使う・使わないの計算はどのようにすればいいのでしょう?
また、車両保険を使う目安となるおおよその金額はどのくらいでしょう?
このページでは車両保険を使うか使わないか判断するための実際的な方法を詳しく解説します。
しばらくお付き合いいただけると幸いです。
【記事丸わかり】
⇒⇒【MAZDA3(マツダ3)】納車4ヶ月で自損事故!車両保険を使う?使わない?基準は? |
2013年から小さな事故では保険を使いづらくなった
2013年10月から自動車保険の等級に「事故有係数」というものが導入されました。
これにより、10万円前後の小損害の事故では、保険を使いたくても使えないケースが増えてきました。
もちろん保険を使うことは自由なのですが、使えば等級が下がって保険料が上がります。
その「値上がりする保険料の額」が「損害の額」に見合わないほど高くなってしまったのです。
「事故有係数」が導入される前は、10万円前後の修理代なら、みなさん気軽に保険を使っていたのですが、どうしてこんなことになったのでしょう?
そこで、「事故有係数」について要点をご説明したいと思います。
ここに15等級のAさんがいます。
同じく15等級のBさんがいます。
Aさん | Bさん |
15等級 | 15等級 |
Aさんは6等級で新規契約してから、無事故を続け、コツコツと等級の階段を上がって、いま15等級にまでたどり着いたところです。
一方、Bさんも長年無事故を続け、18等級までたどり着いたのですが、昨年事故で保険を使ったために、いまは3等級ダウンして15等級になったところです。
このようにAさんとBさんは、現在同じ15等級ですが、両者の違いは「直近の事故歴」です。
保険会社の立場から見ると、現在は同じ15等級でも、ずっと無事故できた人の15等級と、事故で保険を使った結果として15等級になった人とでは、同じ扱いをしては不公平だとみなすのです。
そこで、このように両者に差をつけることにしました。
Aさん | Bさん | |
15等級 | 51%割引(無事故) | 33%割引(事故有係数) |
同じ15等級でもBさんのほうが割引率が18ポイントも少なくなっています(つまり保険料が高い)。
しかも、事故で保険を使い3等級ダウンしたケースでは、「事故有期間」が3年間続きます。※「事故有期間」とは「事故有係数」を適用する期間のこと
したがって、Bさんは、現在の15等級だけでなく、16等級、17等級と、現在を含めた向こう3年間は割引率の低い「事故有係数」で算出された割高の保険料を支払い続けなければなりません。
15等級 | 16等級 | 17等級 | |
事故無係数 | 51%割引 | 52%割引 | 53%割引 |
事故有係数 | 33%割引 | 36%割引 | 38%割引 |
これが小さな事故では保険を使いづらくなった要因です。
保険を使えば保険料が上がるのは以前も同じでしたが、1013年からその上がり方が極端になってしまったのです。
参考までに、自動車保険のすべての等級、1等級から20等級までを、無事故の割引と事故有の割引に分けて一覧表にしてみました。
等級 | 事故有 | 無事故 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
車両保険を使えば等級が下がり保険料が上がる
車両保険からの支払いがあると、翌年の等級が下がり、保険料が上がります。
※3年契約の場合は次の更新時まで等級・保険料は変わりません
等級ダウンには、3等級ダウンのケースと1等級ダウンのケースがあり、事故の内容によって分かれます。
補償内容 | エコノミー+A | 一般条件 | 保険を使った場合の等級ダウン |
車同士の衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
盗難 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
台風・竜巻・洪水・高潮 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
火災・爆発 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
イタズラ・落書き・窓ガラス破損 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
飛来中・落下中の他物との衝突 | 〇 | 〇 | 1等級ダウン |
2輪自動車・原付バイクとの衝突 | 〇 | 〇 | 3等級ダウン |
単独の自損事故 | × | 〇 | 3等級ダウン |
当て逃げ | × | 〇 | 3等級ダウン |
※原則としては、運転者に過失がある事故は3等級ダウン、無過失の場合は1等級ダウンということになっていますが、当て逃げ・ドアパンチのように「無過失」であるはずの事故が3等級ダウンになるという微妙な例もあります
3等級ダウンの場合は、事故有期間(事故有係数を適用する期間)が3年になります。
1等級ダウンの場合は、事故有期間は1年です。
3等級ダウンした場合は元の等級に戻るのに丸4年かかります。
1等級ダウンした場合は元の等級に戻るのに丸2年かかります。
そして、その間(4年間と2年間)の割引率は、通常の割引率より低い(つまり保険料の高い)事故有係数が適用されます
もう一度等級の一覧表をご覧ください。
同じ等級で比べればわかりますが、「事故有」の方が「無事故」より割引率が低いです。
等級 | 事故有 | 無事故 |
20 | 44%割引 | 63%割引 |
19 | 42%割引 | 55%割引 |
18 | 40%割引 | 54%割引 |
17 | 38%割引 | 53%割引 |
16 | 36%割引 | 52%割引 |
15 | 33%割引 | 51%割引 |
14 | 31%割引 | 50%割引 |
13 | 29%割引 | 49%割引 |
12 | 27%割引 | 48%割引 |
11 | 25%割引 | 47%割引 |
10 | 23%割引 | 45%割引 |
9 | 22%割引 | 43%割引 |
8 | 21%割引 | 40%割引 |
7 | 20%割引 | 30%割引 |
6 | 19%割引 | |
5 | 13%割引 | |
4 | 2%割引 | |
3 | 12%割増 | |
2 | 28%割増 | |
1 | 64%割増 |
このようにいったん等級が下がると、ただでさえ割引率が落ちるのに加えて、さらにいっそう低い割引率を適用されるので、支払う保険料は跳ね上がってしまいます。
損害額が50万とか100万の事故を起こしたら、嫌でも保険を使わざるを得ませんが、比較的小額の損害では、使うか使わないかの判断が難しくなってきます。
では、どうすればいいのでしょう?
車両保険を使うか使わないか計算する方法と使う目安
等級がダウンした場合に保険料がどれだけ上がるか。
これが事前にわかっていなければ、保険を使う使わないを判断できません。
そこで、保険を使った場合の将来保険料をシミュレーションしてみたいと思います。
<計算条件> |
|
※実際の保険料算出には、年齢条件・料率クラス・各種特約なども影響しますが、ここではイメージをつかんでいただくために簡略化しています
下の表の左側は、保険を使ったために10等級から3つダウンし、いったん7等級に戻ってからの保険料推移(4年間)です。
右の表は、保険を使わずにいた場合のその後の保険料推移で、11等級から4年間の数字です。
値上がりする保険料の推移 | 保険を使わなかった場合の推移 | |||
経過年 | 等級 | 保険料 | 等級 | 保険料 |
1 | 事故有7等級 | 73,000円 | 無事故11等級 | 48,000円 |
2 | 事故有8等級 | 72,000円 | 無事故12等級 | 47,000円 |
3 | 事故有9等級 | 71,000円 | 無事故13等級 | 46,000円 |
4 | 無事故10等級 | 50,000円 | 無事故14等級 | 45,000円 |
266,000円 | 186,000円 |
※「4年間」で比較するのは、3等級ダウンしたものが元の等級に戻るのに丸4年かかるからです。1等級ダウンのときは元に戻るのに丸2年なので「2年間」の比較でいいと思います
さて、4年後の保険料総額を比較すると、保険を使った場合が266,000円で、使わなかった場合が186,000円です。
その差額は80,000円になります。
266,000-186,000=80,000円 |
すると、あくまでも概算になりますが、80,000円がいわゆる「損益分岐点」になってきます。
ですから、車の修理費が80,000円を超える場合は、「保険を使ってもいいかな」という判断になりますし、車の修理費が80,000円を下回るケースでは、「ここは自腹を切っておこうか」ということになります。
実は、上の保険料シミュレーションは、ソニー損保のホームページにある概算保険料ツールを利用して算出しています。
みなさんも、ご自分の条件を入力して、(あくまでも概算になりますが)保険料を算出してみてください。
大まかなイメージはつかめると思います。
ところで、実は、ここからが本題になります。
ここまで保険料のシミュレーションの話をしましたが、なにもみなさんが上で紹介したソニー損保の計算ツールを利用したりしなくても、みなさんが加入している保険会社の事故担当者が、通常業務の一環として、ちゃんと保険料を算出してくれます。
各保険会社には、ソニー損保の概算保険料ツールをより厳密にした、「将来保険料計算ツール」(名称は会社により様々ですが)というアプリがあります。
そのアプリで、個別具体的なみなさんのデータを入力して、10円単位まで正確な将来保険料を、上の一覧表のように「一瞬にして」算出してくれます。
いよいよ保険を使うか使わないかという段階になれば、その計算結果を担当者が提示してくれるので、みなさんは担当者の助言も考慮しつつ、保険を使う使わないの判断をすればいいのです。
みなさんご自身で複雑な保険料計算をする必要は一切ありません。
代理店型の自動車保険でも通販型の自動車保険でも、いずれもちゃんとやってくれます。
その点はご安心を。
なお、場合によっては、計算上は保険を使わないほうがおトクなケースであっても、手元に余裕資金がないときは、ソンを承知で保険を使う場面もあるかと思います。
この場合、翌年度から毎年高くなる保険料は、ちょうど修理代を分割払いする代わりとみなせばいいと思います。
おサイフ事情によっては、こうした選択もアリだと思います。
保険を使う使わないは事故処理の最終段階で意思表示すればOK
これは意外と誤解している方が多い事柄なので、最後に書かせていただきます。
どういう形態の事故であれ、とにかく事故で保険会社に事故届けをすると、以後は、保険会社が事故の相手やディーラーや修理工場などと連絡を取り、契約者であるあなたにも報告を入れ、事故解決に至るまでの様々な手続きや連絡をあなたに代行してやってくれます。
こうしたサービスは、その事故が「保険金支払いの対象になる事故」である限り、保険会社は提供する義務があります。
ところが、保険の契約者の中には次のように理解(誤解)している方がいらっしゃいます。
「今回の事故は修理代が小額になりそうだから、もしかしたら保険を使わないかもしれない。でも、保険会社に事故連絡したら、結局、保険を使わないといけないことになるのでは?そうなったら困るから、相手との連絡は自分でやったほうがいいかもしれない。でも、自分でやるとなるとどうやったらいいかわからないし、ちょっと困ったな・・・」
このように一人で悩んでしまう方がいらっしゃいます。
あるいは、通販型自動車保険に関する誤った情報(デマ)を耳にしていて、見当違いの思い込みを持っている方もいらっしゃいます。
つまり、
「通販型の自動車保険は、代理店型と違って、最終的に保険を使うか使わないかわからないような事故処理はやってくれない。初めから保険を使うことが明白な事故しか受け付けてくれない」
というデマです。
先ほど、「保険金支払いの対象になる事故」と書きました。
これは「支払いの対象」になるかどうかが問題で、最終的に保険金を支払うか支払わないかは無関係です。
損害額が1万円とか2万円の事故で、車両保険を使うことはまずないだろうという事故であっても、保険会社は事故解決のためのサービスを提供する義務がありますし、実際、提供してくれます。
代理店型でも通販型でもまったく同じです。
ですから、相手がある事故であれ単独の事故であれ、保険金支払いの対象になる事故が発生したら、損害額の見込みが多い少ないに関係なく、まず保険会社に事故届けを出し、その後の事故処理は保険会社に任せてください。
事故届けをすると、後日、保険会社から「保険金請求書」という書類が送られてきます。
あなたが確実に保険を使う場合は、この書類に必要事項を記入し、保険会社に返送してください。
使うか使わないか迷っている場合は、この書類を送らず、手元に保管しておいてください。
保険会社は、「保険金請求書」がなければ保険金の支払い手続きに入れません。
いずれにしても、どんな軽微な事故でも、まず保険会社に事故届けを出し、後のことは事の進展具合に応じて判断すればいいことです。
保険会社を大いに活用して欲しいと思います。
そのためにお金を払っているのですから。
信号待ちをしていたら、後ろから追突されて車が損傷するという事故がありました。
この場合、過失割合は100:0で、追突した側が100%責任を負う事故になります。
追突された側の保険会社にとって、車の損害に関しては「保険金支払いの対象」になりません。
ただし、運転者や同乗者にケガがあれば、搭乗者傷害保険や人身傷害保険の支払い対象になります。
かりに、運転者にも同乗者にもケガがなければ、追突された側の保険会社には、この事故に関して事故処理に関するサービスを提供する義務は生じません。
と言うより、そもそもサービスを提供したら法律違反になります。
※契約者に損害賠償義務が生じない事故に関して保険会社が示談等を行うことは弁護士法第72条違反になります
ですが、こうした場合でも、事故の連絡を受けたら、保険会社は、事故の初動に関しては対応してくれるのが普通です。
最終的に保険金の支払いの段階まで関わることはありませんが、相談には乗ってくれます。
通販型の自動車保険でしばしば「デマ」が飛ぶのは、ひょとしてこんなケースなのかもしれません。
「通販型の自動車保険は、最後まで事故処理をやってくれなかった」
などと言いふらす人の顔が目に浮かぶようです。
けれども、こうした事故では、代理店型の保険会社でも、保険金支払いの段階までは関わってくれません。
なぜなら、そもそも「保険金支払いの対象になる事故」ではないからです。
※保険会社は関わってくれませんが、代理店は事故解決まで関わってくれるはずです
※契約している自動車保険に弁護士費用特約が付いていたら、このようないわゆる「もらい事故」のケースで弁護士に示談の代行を依頼できます。加入している保険会社にお問い合わせください
こちらの記事も読まれています
ご覧いただきありがとうございました。