ドライブレコーダーやデジカメの記録メディアとして、最も一般的なものがSDカードです。
そのSDカードには、データを書き込む「方式」にいくつかの種類があります。
代表的なものがTLC・MLC・pSLC・SLCの4つで、近年はこれにQLCが加わりました。
方式によって、カードの寿命や価格が大きく変わります。
この記事では、それぞれの違いと、購入時の見分け方をできるだけわかりやすく整理します。
目次
第1章 SDカードの「書き込み方式」とは|TLC・MLC・pSLC・SLC・QLCの違い
SDカードの中身には、NAND型フラッシュメモリという部品が使われています。
これは電源を切ってもデータが消えない、不揮発性(ふきはつせい)のメモリです。
このメモリは「セル」という小さな部屋にデータをためます。
1つのセルに何ビットのデータを詰め込むかで、方式の名前が決まります。
1つのセルに1ビットだけ書くのがSLCです。
2ビット書くのがMLC、3ビット書くのがTLCになります。
そして4ビットまで詰め込むのが、新しい世代のQLCです。
1つの部屋にたくさん詰め込むほど、同じ面積で大容量にでき、価格も安くなります。
その代わり、データの判別がシビアになり、寿命や安定性は下がっていきます。
pSLCは、この5つとは少し成り立ちが違います。
pSLCは「疑似(ぎじ)SLC」とも呼ばれます。
中身はMLCやTLCのメモリですが、あえて1セルに1ビットだけ書くように制御します。
こうすることで、本物のSLCに近い耐久性を、より安いコストで実現します。
大容量が得意なTLCを使いながら、信頼性を引き上げる技術だと考えるとわかりやすいです。
| 方式 | 1セルの書き込み | 位置づけ |
|---|---|---|
| QLC | 4ビット | 最も安価で大容量 |
| TLC | 3ビット | 普及品の主力 |
| MLC | 2ビット | 耐久重視の中級 |
| pSLC | 1ビット(疑似) | MLC/TLCを高耐久化 |
| SLC | 1ビット | 最高耐久・高価 |
表の上に行くほど安くて大容量、下に行くほど高価で長寿命になります。
一番上のTLCやQLCは、格安で売られるタイプです。
一番下のSLCは最も長持ちしますが、値段が高く、一般向けにはあまり出回りません。
そのため、コスパの面で注目されているのが、間に位置するpSLCです。
| この章のまとめ | |
|---|---|
| SLC | 1セルに1ビット。最高耐久で高価。 |
| MLC | 1セルに2ビット。耐久重視の中級。 |
| TLC・QLC | 1セルに3〜4ビット。安価で大容量。 |
| pSLC | MLC/TLCを1ビット運用し、SLCに近づける技術。 |
| 引用元 |
|---|
| 佐鳥SPテクノロジ株式会社「NANDの種類 SLC/MLC/TLC/QLC とは?」 |
| HAGIWARA Solutions「SLCモードとは」(疑似SLCの解説) |
| Kingston Technology「2Dとは3D NANDの比較:SLC、MLC、TLC、およびQLCフラッシュストレージの違い」 |
第2章 寿命(書き換え回数)はどれくらい違うのか
SDカードの寿命を決めるのが、書き換え可能回数です。
専門的には「P/Eサイクル(書き込みと消去の回数)」と呼ばれます。
セルは書き換えを繰り返すたびに少しずつ劣化します。
一定の回数を超えると、その部屋にはアクセスできなくなります。
1つの部屋に詰め込むビット数が少ないほど、この回数は多くなります。
各方式のおおよその目安を、数字で並べてみます。
| 方式 | 書き換え回数の目安 |
|---|---|
| SLC | 約9万〜10万回 |
| pSLC | 約2万〜3万回 |
| MLC | 約3,000〜1万回 |
| TLC | 約1,000〜3,000回 |
| QLC | 約数百〜1,000回 |
SLCとQLCでは、寿命に100倍ほどの開きがあります。
pSLCはMLCのおよそ10倍の回数に耐えるとされています。
この差が、ドライブレコーダーのように書き込みを繰り返す機器で効いてきます。
TLCの数字に幅があるのには理由があります。
昔の平面構造の「2D NAND」では、TLCは1,000回程度でした。
今主流の「3D NAND」では、セルを垂直に積み重ねて余裕を持たせています。
そのため、現在のTLCは3,000回前後まで改善している製品が多くなりました。
同じTLCでも、世代によって耐久性が変わる点は知っておくと役立ちます。
具体的なイメージもつかんでおきましょう。
I-O DATAの試算では、一般的な高耐久カード(MLC方式・約3,000回)の16GBで、1日3時間ほどのフルHD録画なら寿命の目安はおよそ3年です。
同社のpSLC方式(約3万回)の16GBでは、同じ条件で約30年が目安になるとされています。
あくまで計算上の目安ですが、方式による差の大きさが伝わります。
| この章のまとめ | |
|---|---|
| SLC | 約10万回で群を抜く。 |
| pSLC | 約2万〜3万回。MLCの約10倍。 |
| TLCの幅 | 2D世代は約1,000回、3D世代は約3,000回。 |
| QLC | 数百〜1,000回。書き込みが多い用途には不向き。 |
| 引用元 |
|---|
| Kingston Technology「2Dとは3D NANDの比較:SLC、MLC、TLC、およびQLCフラッシュストレージの違い」 |
| SSSTC「A Guide to NAND Flash Memory: Comparing SLC, MLC, TLC, QLC」 |
| 株式会社アイ・オー・データ機器「ドラレコのデータ破損対策!暑さに強い高耐久microSDカードで安心録画」(I-O DATA MAGAZINE) |
第3章 見分け方|パッケージとスペック欄のどこを見るか
ここが、この記事でいちばん知りたい部分だと思います。
結論から言うと、書き込み方式を見分ける近道は、メーカーの表示を読むことです。
消費者がカードを分解して中身を調べることは、現実的にはできません。
専用ソフトでチップの種類を確実に判定する方法も、一般には用意されていません。
そのため、パッケージや製品ページの記載が、いちばん確かな手がかりになります。
見るべきポイントは、大きく3つあります。
1つ目は、「MLC」「pSLC」という方式名の明記です。
これがはっきり書かれていれば、いちばん確実です。
2つ目は、「高耐久」「High Endurance」という表示です。
この表示がある製品は、MLCやpSLCなど耐久性の高いメモリを使っていることが多くなります。
3つ目は、書き換え回数や累計書き込み時間の数字です。
「書き換え◯回」「累計◯◯時間」といった耐久スペックが書かれていれば、寿命を比べる材料になります。
| 手がかり | 意味 |
|---|---|
| MLC・pSLC明記 | 方式が確定。最も確実。 |
| 高耐久/High Endurance | 耐久メモリ採用の目印。 |
| 書き換え回数の表示 | 寿命を比較できる。 |
| 累計書き込み時間 | 録画用途の目安になる。 |
逆に、こうした表示がまったくない格安カードには注意が必要です。
方式が非公開の場合、安価なTLCやQLCが使われている可能性があります。
家電量販店やネット通販で「高耐久」と明記された製品を選ぶだけでも、失敗はかなり減らせます。
ネットで探すときのコツもあります。
Amazonなどで「SDカード MLC」「microSD 高耐久 pSLC」といったワードで検索する方法です。
方式を指定して探せば、目当てのタイプを見つけやすくなります。
| この章のまとめ | |
|---|---|
| 基本 | メーカーの表示を読むのが近道。 |
| 方式名 | MLC・pSLCの明記が最も確実。 |
| 高耐久表示 | 耐久メモリ採用のサイン。 |
| 注意 | 方式非公開の格安品は安価メモリの可能性。 |
| 引用元 |
|---|
| 株式会社ヤマダデンキ「【2026年】ドラレコ用SDカードおすすめ3選!高耐久で記録も安心」(ヤマダ家電情報サイト/2026年) |
| Car Watch「【インタビュー】ドラレコでの過酷な使用環境に向いたサンディスクの『高耐久microSDカード』について聞いてみた」(2023年) |
| 株式会社アドテック「産業用SDカードの選び方」 |
第4章 メーカー別の表記状況と2025年のブランド再編
書き込み方式は、メーカーによって表示する会社としない会社があります。
そして、ここ数年でメモリ業界のブランドが大きく動きました。
古い情報のまま製品を探すと、社名で混乱することがあります。
まず、押さえておきたい再編を整理します。
1つ目は、東芝メモリからキオクシアへの変更です。
東芝の半導体メモリ事業は、2019年にキオクシア(KIOXIA)へ名称が変わりました。
かつて「東芝」ブランドだったSDカードは、現在はキオクシアの系統だと考えてください。
2つ目は、サンディスクの独立です。
サンディスクは2016年にWestern Digitalに買収されていました。
その後、2025年2月にWestern Digitalが事業を分割し、サンディスクは再び独立した会社になりました。
日本法人も2025年8月にサンディスクへ社名を変更しています。
HDD事業はWestern Digital、フラッシュメモリ事業はサンディスク、という住み分けになりました。
| かつての呼び方 | 現在 |
|---|---|
| 東芝メモリ | キオクシア(2019年〜) |
| WD傘下のサンディスク | 独立したサンディスク(2025年〜) |
次に、方式の表示状況です。
方式名(MLCやpSLC)まではっきり書く製品を出しているのは、I-O DATA、ケンウッド、パナソニック、トランセンドなどです。
一方で「高耐久」「High Endurance」とは書くものの、TLCかMLCかまでは公表しないメーカーもあります。
サンディスク、シリコンパワー、サムスンなどは、高耐久シリーズを出しつつ、内部の方式は明記しない傾向です。
| 表示の傾向 | 主なメーカー |
|---|---|
| 方式名まで明記 | I-O DATA、ケンウッド、パナソニック、トランセンド |
| 高耐久のみ表示 | サンディスク、シリコンパワー、サムスン |
方式をきっちり指定して買いたい場合は、明記するメーカーを選ぶと安心です。
特にpSLCを名指しで採用しているのは、I-O DATAのMSD-DRシリーズやケンウッドの製品です。
| この章のまとめ | |
|---|---|
| キオクシア | 旧・東芝メモリ。2019年に改称。 |
| サンディスク | 2025年にWDから独立。 |
| 方式を明記 | I-O DATA、ケンウッド、パナソニック、トランセンド。 |
| 高耐久のみ | サンディスク、シリコンパワー、サムスン。 |
| 引用元 |
|---|
| 株式会社プロバイダ「【半導体産業の動向】キオクシアとウエスタンデジタルの統合が破談に」(東芝メモリのキオクシア改称の経緯) |
| ウィキペディア「サンディスク」(2025年の分社化・社名変更の記載) |
| ITmedia PC USER「『Western Digital(WD)』が『Sandisk』の分離を完了 SSDを含むフラッシュメモリ関連事業を移管」(2025年2月) |
第5章 ドラレコ用にどれを選べばいいか
最後に、ドライブレコーダー用としての選び方をまとめます。
ドラレコは、エンジンをかけている間ずっと録画と上書きを繰り返します。
駐車監視を使えば、停車中も書き込みが続きます。
つまり、書き込み回数の多い、過酷な使い方になります。
だからこそ、耐久性の高いカードを選ぶことが大切です。
基本の方針は、高耐久(High Endurance)タイプを選ぶことです。
方式で言えば、pSLCかMLCが安心です。
pSLCは寿命が長い分やや高価で、MLCはその中間のバランス型になります。
たまにしか乗らず、駐車監視も使わないなら、大容量のTLC高耐久品でも十分なことがあります。
容量にも、見落とせないポイントがあります。
容量が大きいほど、同じ場所への上書き頻度が下がります。
その結果、カード全体としての寿命は延びます。
そのため、小容量のMLCより、大容量のTLCのほうが長持ちする場合もあります。
目安として、最低でも32GB、できれば64GB以上を選ぶと安心です。
前後2カメラで同じカードに録画する場合は、書き込み量が2倍になるので、より大きめを選びましょう。
| 使い方 | おすすめの方向性 |
|---|---|
| 毎日長時間・駐車監視あり | pSLCの高耐久 |
| 通勤など毎日そこそこ | MLCの高耐久 |
| 週末だけ・監視なし | 大容量TLCの高耐久 |
| 前後2カメラ | 容量を大きめに |
耐久性以外で見ておきたい点もあります。
車内は夏に高温、冬に低温と、温度差が激しい環境です。
使用温度範囲が広い製品や、防水・耐衝撃・耐X線をうたう製品だと、より安心です。
また、SDカードは消耗品です。
高耐久品でも、定期的なフォーマットと、ときどきの動作確認は続けてください。
「いざというときに録画されていなかった」を防ぐ、いちばん確実な習慣です。
| この章のまとめ | |
|---|---|
| 基本 | 高耐久タイプを選ぶ。 |
| 方式 | pSLCかMLCが安心。 |
| 容量 | 32GB以上、できれば64GB以上。 |
| 環境 | 温度範囲・防水・耐衝撃も確認。 |
| 習慣 | 定期フォーマットと動作確認。 |
| 引用元 |
|---|
| 株式会社ヤマダデンキ「【2026年】ドラレコ用SDカードおすすめ3選!高耐久で記録も安心」(ヤマダ家電情報サイト/2026年4月) |
| サキドリ「ドライブレコーダー向けSDカードのおすすめ10選。高耐久モデルをピックアップ」(2026年4月更新) |
| カタログクリップ「おすすめのドラレコ向けmicroSDカード7選!」(容量と寿命のトレードオフの解説) |
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