フェアレディZの中でも、ひときわ異彩を放つ2台があります。
Z432とZ432R。
名前は似ていますが、その性格は完全に別物です。
どちらも国宝級の価値を持つ希少車ですが、片やストリート、片やサーキット仕様。
この2台の決定的な違いと、それぞれが持つ唯一無二の魅力を詳しく解説していきます。
Z432の「432」が意味するもの|伝説のS20エンジンを搭載
まずZ432という名前の由来から見ていきましょう。
「432」という数字には、明確な意味が込められています。
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 4 | 4バルブ |
| 3 | 3キャブレター |
| 2 | 2カム(DOHC) |
そして搭載エンジンは、あの伝説のスカイラインGT-Rと同じS20型 2.0リッター直6 DOHCエンジン。
最高出力160馬力を誇り、高回転で唸るそのエンジンは、Zの名前に「ただのクーペ」以上の存在感を刻みました。
Z432は走りと快適性のバランスを追求したモデル
Z432は、走りと快適性のバランスの上に成り立つ高級スポーツカーでした。
装備内容も充実しており、当時のベースモデルとは一線を画す内容でした。
主な装備は以下の通りです。
LSD(リミテッドスリップデフ)搭載
専用マグネシウムホイール装着
一線級の各種メカニズム採用
しかし、その代償として価格はベースモデルのほぼ倍になっていました。
| グレード | 価格 |
|---|---|
| Z | 93万円 |
| Z-L | 108万円 |
| 240ZG | 150万円 |
| Z432 | 185万円 |
当時の物価を考えると、まさに高嶺の花と言える存在だったのです。
Z432Rとは何か|「R」が意味するレーシング仕様
ここから本題のZ432Rの話に入ります。
末尾の「R」は、文字通り「レーシング仕様」の証です。
エンジン自体はZ432と同じS20型を搭載していますが、それ以外の装備は徹底的に削ぎ落とされていました。
Z432Rの徹底した軽量化|サーキットのための妥協なき改造
Z432Rの軽量化メニューは、まさに執念とも言えるものでした。
| 部位 | 通常仕様(Z432) | レーシング仕様(Z432R) |
|---|---|---|
| ボディ鉄板 | 通常厚 | 薄板化 |
| エンジンフード | スチール | FRP製 |
| サイドウインドウ | ガラス | アクリル |
| リアウインドウ | ガラス | アクリル |
これだけでは終わりません。
機能面でも大胆な変更が施されています。
イグニッションキーシリンダーをセンターコンソールへ移設
大型オイルクーラーの装着
ラジオ・時計・ヒーターを完全排除
そしてさらに極めつけは、荷室部分の処理でした。
通常の荷室の代わりに、100リットルもの大容量燃料タンクを搭載していたのです。
これはまさに耐久レース仕様そのものでした。
100kg以上の軽量化に成功した走りのマシン
これらの徹底した削ぎ落としの結果、Z432Rは100kg以上の軽量化に成功しました。
ただの公道用スポーツカーが、サーキットで戦うマシンへと完全に変貌を遂げたのです。
ベースは同じでも、目的が違えば仕上がりはここまで変わるという、教科書のような事例と言えるでしょう。
外観の違い|黒い低光沢ボンネットがRの証
見た目においても、Z432Rは別格の存在感を放っていました。
最大の特徴は、Z432では決して見ることのなかった黒い低光沢のボンネット。
これこそが「R」であることの証です。
室内に目を移すと、こちらも妥協はありません。
シートはバケットシートのみ。
無駄を完全にそぎ落としたミニマルなコックピットが広がっています。
| 比較項目 | Z432 | Z432R |
|---|---|---|
| ボンネット | ボディ同色 | 黒・低光沢 |
| シート | 通常シート | バケットシートのみ |
| 快適装備 | 完備 | 全廃 |
| 方向性 | 高級GT | 純粋な走り |
Bピラーまでが同じボディで、同じS20エンジンを積みながら、求めるメンタリティはまるで違っていたのです。
Z432Rの生産台数と販売条件|超希少な限定モデル
Z432Rがどれほど希少な存在だったか、その販売条件を見れば一目瞭然です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生産期間 | 1970年〜1971年の2年間 |
| 生産台数 | 約50台 |
| 販売対象 | 国内A級ライセンス保有者のみ |
| 公道走行 | 不可 |
| ボディカラー | グランプリオレンジ一色のみ |
販売は国内のA級ライセンスを持つドライバーに限定され、しかも公道を走ることは不可能でした。
ボディカラーもグランプリオレンジ一色のみという、徹底した競技専用車だったのです。
72年に一般販売された公道仕様の存在
なお、約50台生産されたZ432Rのうち、約10台ほどは公道走行可能な改造が施され、1972年に一般販売されています。
これらの個体は現在、コレクター市場で極めて高い評価を受けています。
| 種別 | 台数 | 用途 |
|---|---|---|
| 純競技仕様 | 約40台 | サーキット専用 |
| 公道仕様改造車 | 約10台 | 一般販売(1972年) |
純粋な競技仕様のオリジナル個体は、今や博物館級の価値を持つ国宝的存在となっています。
まとめ|Z432とZ432Rは似て非なる兄弟車
| 比較項目 | Z432 | Z432R |
|---|---|---|
| エンジン | S20型直6DOHC | 同じS20型 |
| 最高出力 | 160馬力 | 160馬力 |
| 重量 | 標準 | 100kg以上軽量化 |
| 快適装備 | 充実 | 全廃 |
| ボンネット | ボディ同色 | 黒・低光沢 |
| 窓ガラス | ガラス | アクリル |
| 燃料タンク | 通常 | 100L大容量 |
| 生産台数 | 数千台規模 | 約50台のみ |
| 販売対象 | 一般 | A級ライセンス保有者 |
| 方向性 | 高級GT | レーシングマシン |
同じS20エンジンを積み、Bピラーまでは同じボディを共有しながら、その方向性は完全に別物。
Z432は走りと快適性を両立した最高峰のグランドツアラー。
Z432Rは快適性を全て犠牲にして純粋な走りを追求した、究極のレーシングマシン。
どちらもフェアレディZの歴史において、絶対に忘れることのできない国宝級の存在です。
特にZ432Rは、現代では出会うことすら奇跡と言える超希少車。
日本の自動車史に燦然と輝く、永遠のレジェンドなのです。


