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【プチ調査】「悠」がつく名前は良くない?みんな使ってるけど、どうして?
「悠」(ゆう、ひさ、はる)という漢字が入った名前は、ここ数年の名前人気ランキングにも必ずランクインするほど広く親しまれています。
有名人の名前としても、ゆずの北川悠仁さん、プロ野球の柳田悠岐さん、皇族の悠仁親王など、多くの皆さんが「悠」の字を当てています。
ところが、ネット上には、
「悠がつく名前は良くない」
という言説がチラホラ散見され、その数はあまり多くないものの、これから生まれてくる子供の名前に「悠」の字を有力な候補として考えている親御さんにとっては、やや気になるところだと思います。
そこで、私がプチ調査しました。
「悠」の何が良くないというのか、また、「悠」の字の由来や意味、「悠」の字が入った名前の実例などもご紹介したいと思います。
悠は「憂える」「動揺する」の意であり、良くない字である・・・という説
中国古代の漢字の辞書『説文解字(せつもんかいじ)』には、
「『悠』は『憂』だ」
と記されている。
「憂」は訓読みすれば「うれえる」であり、そこから「動揺する」という意味も引き出される。
それゆえ、「悠」の文字を名前に取り入れるのは良くない。
こういう意見を言う人が一部いるようです。
しかし、漢字文化資料館のホームページでは、上記主張に対して次のように反論しています。
『説文解字(せつもんかいじ)』に「『悠』は『憂』だ」と記されていることは事実である。
しかし、だから「悠」は「うれえる」「動揺する」と解釈するのは現代の学説にあてはまらない。
現代の漢和辞典においては、「悠」から「心」を取り去った部分である「攸」の本来の意味に、「憂い」「動揺」といったものはない。
現代の解釈では、「攸」は「人の背中に水を注ぎかけて洗う」という意味を表した会意文字であり、水が筋を作って長く流れていく様子から、長いことを指すようになり、これに「心」を組み合わせた「悠」という文字は、はるか遠くまで見通す広い空間、ゆったりとした心の性質、悠久の長い時間、といった意味を持っていると考えられる。
したがって、「悠」の漢字を名前に取り入れることには、何らマイナスの要素、デメリット、縁起の悪さなどが入り込む余地はなく、「悠」は名前に採用するにふさわしい文字である、という結論のようです。
私がプチ調査した範囲で言わせていただくと、一般的に「いい漢字」と言われているものにも、実はウラの意味があって、とても人の名前に使用するような文字ではないよ、というのがけっこうありました。
けれども、「悠」の漢字に関しては、上記『説文解字』の解釈以外に、悪い意味を指摘する資料には出会いませんでした。
これから生まれてくるお子様の名前に「悠」の字を候補として考えている方は、ひとまず安心していただいていいのではないでしょうか。
「読めないよ」・・・これが最大の難点かと。
「悠がつく名前は良くないのか」というテーマで解説していますが、「良くない」という意見が100件あるとすると、そのうちの95件くらいを占めるのが、
「いや、とにかく読めないよ」
という内容の意見です。
「悠」の字を名前に取り入れるのは良くないと考えている皆さんのほとんどは、文字の由来や意味ではなく、「読めないよ」というのが最大の反対理由です。
たとえば、下記の名前をあなたはいくつ読めますか?
- 凪悠
- 虎悠
- 一悠
- 悠暉
- 瑚悠
- 悠生
- 悠月
- 悠香
- 悠寿
いま私の脳裏には、耳まで真っ赤になって爆発寸前になっている<あなた>のお顔が浮かんでいます。
う~ん。実際、読めませんよね。
読めても一つか二つ。しかも、下記の答えのように、読みが複数あったりするので、もはや暗号レベルです。
上記の答え。
- 凪悠(なゆ)
- 虎悠(こはる)
- 一悠(いちか、いゆ)
- 悠暉 (はるき、ゆうき)
- 瑚悠(こはる)
- 悠生(ゆい、はるき、ゆうき、ゆうと)
- 悠月(ゆつき、ゆづき)
- 悠香(はるか、ゆうか)
- 悠寿(ゆず、はるとし、ひさとし)
さて、OKWAVEというQ&Aサイトがあります。そこにこんな回答コメントがありました。「悠隼」と書いて、ゆうと、と読ませたいが、どう思うかという質問に対する答えが下記のコメントです。
名前というのは、本人よりも他人が使うものですから、
まずは、「無理なく読める」というのが一番大事です。
ある種の人達は「読めない=希少=素晴らしい」
と思考するようですが、まともな人なら
「普通そう読めない=親が馬鹿=こいつもろくな人間でない可能性高い」
と考えると思います。
いやはや、これは日本全国のキラキラネームとかDQNネームとか読みにくい漢字とか、そういう名前を持つご本人とそれを名付けた親御さんのもれなく全員を敵に回す発言であり、ハレーションが怖いですが、ただし、全面的に賛成はできないものの部分的には私も同意できるところがあります。
昔の偉い人の言葉に、健全な時代は客観的であるが堕落した時代は主観的である、という意味の格言がありましたが、上記回答コメントは、やや品位を欠くものの、それを思い出させるようなコメントだと思います。
どんどん主観が強くなっていき、周りがどう感じるかでなく自分がどう思うかだけが関心事になっていく精神的傾向は、決して望ましいものとは言えないと思います。
なお、「全面的に賛成はできないものの」と私は書きましたが、それは名前が読める読めないは時代の変化に大いに影響されるところがあると思うからです。
具体的には、冒頭でもご紹介した秋篠宮家の長男である悠仁親王をはじめとして、ゆずの北川悠仁さんやプロ野球の柳田悠岐さんなど、多くの人に注目される有名人の名前に「悠」の漢字が使われていて、毎年生まれてくる子供にも「悠」のつく名前が続々と使われているのが現状です。
確かに、高齢の人には「悠」のつく名前は読めないものが多いかもしれませんが、若い世代の人には周囲に「悠」の字を持つ友人・知人が何人もいるはずで、多少読み間違えることはあっても、けっこう何とかやっている面があると思います。
このように、時間の経過に伴い読める読めないという問題も変化していくものなので、自分が読めないからと言って名付けた親までこき下ろすのは、ちょっと言い過ぎではないかと。※痛快でスカッと気持ちいいコメントですが、言われた側はかなり不愉快でしょう。もう少し言葉を選ばないと・・・
「悠」の字の説明の仕方
ここまで見てきたように、名前に「悠」の文字を入れることに関しては、文字の由来や文字の持つ意味はまったく問題なしであるものの、読めないケースが多い点がやや良くないところかもしれません。
けれども、「悠」という漢字は美しいしカッコいいしどの読みもソフトで響きがいいし、エイヤッと意を決して子供の名前にしてしまう親御さんもいらっしゃるでしょう。
そうなった場合、親御さんはもちろん、名づけられた本人が、電話などで相手に自分の名前を説明する際、どんな表現がふさわしいでしょう?
たとえば、「理香子」という名前であれば、電話の相手に、
「理科社会の理に、香りの香、そして子供の子」
と説明すれば、相手も漢字で書けるようになります。
これと同じように、たとえば「悠依(ゆい)」という名前の説明をする場合、
「悠依の悠は、悠仁さまの悠を悠と読みます。それから、悠依の依の方は、ニンベンにコロモの依です」
といったところでしょうか。
なかには、皇族の名前を引き合いに出すのをためらう方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、
「悠依の悠は、悠々自適の悠の字です。」
で切り抜けられそうです。
ところが、です。
ここでは、かなり高い確率でちゃぶ台返しが起きるでしょう。
「悠々自適の悠ですが、その悠ってどう書くんですか?」
一瞬焦りますが、落ち着いて、再度説明を始める必要があります。
「ああ、それはですね、まず左にニンベンを書いて、真ん中に縦の一本棒があって、右側に牧場の牧のツクリの部分が来ます。その結果、3つのパーツで一つのカタマリができますが、そのカタマリの下に心をくっつけるんです。それが悠の字です。(ああ、疲れた)」
いや、説明するご本人も疲れるでしょうが、その説明を聞かされる相手の人も大いに疲れるでしょう。
こういう時は、LINEで「悠依(ゆい)」と送れば瞬時に解決します。ただ相手が初対面の人であれば、それはそれでまた面倒が一つ増えますが。
「悠」という漢字は、いまではかなりメジャーな漢字になりつつありますが、文字を正確に伝える際にはまだまだハードルが高い漢字かもしれません。
お子様の名前に「悠」の字を取り入れようという方は、ご自身にもお子様にもこうしたハードルが今後待ち受けていることを事前に引き受けた上で、覚悟を決めて名づけを行っていただきたいと思います。
というのも、プチ調査をする過程で、「悠(はるか)」という名前の女性が、様々な場面で苦労するコメントに出会ったからです。
「悠という名前が正直辛い」
悠(はるか)という名前が正直辛いです。私の名前です。初見の人には「ゆう」と読まれた事しかありません。いちいち「はるか」と読むと説明するのが本当に面倒で公的な手続き以外は平仮名で名前を書いています。
なぜこんな読み辛い漢字にしたのか?両親に苛々します。
悠(はるか)と読むのは、DQNネームというものなのでしょうか?また、読み辛い名前にして、常識のない名付け親だと本当は周囲に思われているのでしょうか…??
もっとも、相手に説明するのに苦労するのは、何も「悠」だけの話ではありません。
その他、端から見ていても「この人、いろんな場面で苦労してるんだろうな」と思える超ド級の難解文字を使用した名前の人も世の中にはいらっしゃるので、「悠」はまだマシな方かもしれません。
読みづらさを武器にすることも可能
こうした苦労やハードルを、てこの原理のように、逆にメリットに変えている話もよく聞きます。
- ビジネスシーンなどで、初対面の相手に読みにくい自分の名前を説明すると、一発で自分をアピールすることができる。
- 学校でクラス替えがあったりすると、いつも自分の名前が話題になるので、友達を作る最初のコミュニケーションツールみたいになっている。
読み方が難しかったり、漢字が説明しづらかったりする場合、案ずるより産むが易しで、往々にしてマイナスがプラスに転換するこうした現象が見られます。
良くない名前と思っていたのが有難い名前に化学変化した瞬間、名づけてくれた親に感謝する気持ちが湧きあがるかもしれません。
「悠」の字が名前に入るケースでも、読み間違われる確率が高いがゆえに、コロッと幸いに転じる場面にも出会うはず。
読むのも書くのも難解な名前ばかりでは困りますが、一方で、花子さんや太郎さんのような名前ばかりになったら、それはそれで寂しい世界になります。※いや、花子さん太郎さんは現在では逆に目立っていいかも。うちの犬はポチでしたが、動物病院で先生にすごくウケていました
「悠」の入った名前をご紹介:男女兼用・女の子・男の子
「悠がつく名前は良くないのか」というテーマでここまでお話ししてきました。
良い話も良くない話も出そろいましたから、ここまできたら万難を排して突き進む以外ないでしょう。
そこで、名前の具体例です。
以下、男女いずれにも使えそうな例、女の子にふさわしいと思われる例、男の子にふさわしいと思われる例をご紹介します。
もちろん、ここでいう男女の区別は、ごく一般的なものですから、男の子に区分した名前を女の子につけてもそれは自由です。感性のままにどうぞ。
男女いずれにも合いそうな名前
- 悠(はる、はるか、ゆう、ひさ)
- 悠寿(ゆず)
- 悠希(ゆうき、はるき、ゆき)
女の子に合いそうな名前
- 悠佳(ゆうか、はるか、ゆか)
- 凪悠(なゆ)
- 一悠(いちか、いゆ)
- 悠乃(ゆうの、ゆのん、ゆの、はるの)
- 瑚悠(こはる)
- 悠依(ゆい)
- 悠月(ゆつき、ゆづき)
- 心悠(こはる、みゆ)
- 悠香(ゆうか、はるか)
- 悠莉(ゆり、ゆうり)
- 悠希(ゆき、ゆうき、はるき)
男の子に合いそうな名前
- 悠人(ひさと、ゆうと、はると、はるひと、ひさひと)
- 虎悠(こはる)
- 悠大(ゆうだい、はるき)
- 悠真(ゆうま、はるま、ゆうしん、ゆま)
- 悠仁(ひさひと、はると、ゆうと、ゆうじん)
- 悠太郎(はるたろう、ゆうたろう、ひさたろう)
- 悠斗(はると、ゆうと)
- 悠暉 (はるき、ゆうき)
- 悠樹(はるき、ゆうき)
- 一悠(かずひさ、いちゆう)
- 悠一(ゆういち、ひさかず)
- 悠生(はるき、ゆうき、ひさき、ゆうと、ゆい)
- 悠太(ゆうた、はるた)
- 悠汰(ゆうた、はるた)
- 悠翔(ゆうと、はると)
- 悠希(ゆうき、はるき、ひさき、ゆき)
名前を決める際の一般的注意点
「悠」のつく名前に限らず、名づけの際の一般的注意点について整理しておきたいと思います。
- 複数の候補で迷ったときは、Web上の姓名判断や神社やお寺の姓名判断を取り入れると、迷いが吹っ切れて決断しやすいことがある。
- 名前の候補があったら、苗字と合わせてフルネームで声に出して読んでみる。書いた名前と読んだ名前で印象が異なることがあるので、音の印象もチェックしたいところ。
- 名前に漢字一文字を使う場合と他の漢字を組み合わせる場合で意味が変わることがあるし、苗字とのバランスが気になるケースがある。フルネームでの意味やイメージも忘れずにチェックしたいところ。
なお、名前にどんな漢字を選んでも、その漢字を調べてみるといい意味と悪い意味が必ずあるのが普通です。※「悠」にも悪い意味を指摘する人がいたように。
ですから、ちょっとくらい悪い意味があるからといって、それにひるまずに、いい面を前向きにとらえる気持ちが大事だと思います。
役所に届け出を済ませた後で、人から「その名前の漢字、こういう悪い意味があるよ」と意地の悪いことを言われても、「ああ、それ知ってます。でも、こういういい意味もあって、こちらの意味の方が強いので、私ぜんぜん気にしてません。」と平然と答えられるように心の準備をしておきましょう。世の中には悪意を持って嫌なことを言う人物が必ずいますから。
「悠」の字が持つ意味とイメージ
このページのテーマは「悠がつく名前は良くない?」というものですが、読みがわかりにくい点はともかく、「悠」の漢字は良い意味やイメージばかりであって、良くないところなど探しても見つかりません。
以下、プチ調査で集めた意味やイメージをご紹介します。参考になさってください。
- おおらかな様子
- 悠久の長い時間
- 落ち着きがある様子
- 壮大で永遠なイメージ
- 器の大きさを感じさせる様子
- 身も心も清められた美しい心
- 相手の心を見抜くことが得意である
- 人柄が良く直観力、洞察力に優れている
- はるか遠くまで見通す広い空間のイメージ
- 幼少時から大人まで育成環境に恵まれる運を持つ
まとめ
- 「悠」の漢字を使った名前に良くないところがあるとすれば、それは読み方がわかりにくいケースが多い、というこの一点のみ。
- けれども、読み方がわかりにくい名前は、学生時代も社会人になってからも、読みにくいというその弱点を逆手にとって相手に自分を印象付ける武器ともなり得る。
- 「悠」の文字は文句なく最上級のイメージを持ち、前途有望な子供の名前に取り入れるにふさわしい漢字である。
- 子供の名前に「悠」の字を取り入れ、役所に届け出を済ませたら、以後の半年間を「電話などの相手に悠の字を伝えるにはどうすればいいか」の研究に没頭すべきである。
ご覧いただきありがとうございました。