CVTとDCTの違い|どっちが低燃費で走りがいいのはどっち?
CVTもDCTも車のトランスミッションの形式名です。
トランスミッションとは変速機のことです。
車の変速機は、ドライバーの操作方法で区別すると、次の2種類に分類できます。
- MT:マニュアルトランスミッション::アクセルとブレーキとクラッチの3つのペダルがあって、変速ギアの切り替えを手動で行う⇒⇒MT
- AT:オートマチックトランスミッション::アクセルとブレーキの2ペダル方式で、変速ギアの切り替えはオートで行なう⇒⇒トルコンAT・CVT・DCT
つまり、ドライバーの操作方法で言うなら、CVTもDCTも同じ方式になります。
CVTやDCTは、トルコンATと同じように、運転免許はAT限定免許で運転できます。
要するに、上記の2つの分類は運転免許の区分とイコールになります。
しかし、構造的な分類で言うと、また話が違ってきます。
CVTとDCTは構造が全く異なります
CVTとは、Continuously Variable Transmissionの略で、つまり無段変速機のことです。
CVTは基本的にスチールベルト1本でエンジンやモーターの動力をタイヤに伝えます。
ただし、スチールベルトだけでは常に同じ比率でしか動力を伝達できないので、ベルトを2つのプーリーで挟み込み、2つのプーリーの間隔を広げたり狭めたりすることで伝導比率を変化させます。
これにより、MTのギアチェンジと同様の働きをします。
したがって、CVTは本来は「無段」の変速機ですが、ベルトを挟み込む2つのプーリーの間隔を飛び飛びにすることで、疑似的に5速変速とか7速変速のような使い方も可能になっています。
一方で、DCTとはDual Clutch Transmissionの略で、機構的にはマニュアルトランスミッション(MT)と同じです。
MTとの違いは、MTがギアの変速を手動で行うのに対して、DCTは電子式に行うところです。
DCTの機構をもう少し具体的に解説すると、その名の通り2つ(dual)のクラッチがあり、外側のクラッチが偶数ギアに、内側のクラッチが奇数ギアと繋がっています。
そして、この2つのクラッチが常に次のギアに変速する準備をするのです。
たとえば、2速で走行中は、いつでも1速と3速にギアチェンジする準備ができています。3速で走行中は、2速と4速にギアチェンジする準備ができています。1速の場合のみ、2速への準備をします。
ギアのつなぎ方も選択するギアもプロのドライバーと同等かそれ以上であり、ほぼ完ぺきです。
以上のように、CVTもDCTも機構的にはまったく異なる方式ですが、ドライバーの運転操作は同じです。
アクセルとブレーキの2つのペダル操作のみで車を運転できます。
どっちが低燃費でどっちの走りがいいか
もしも全く同じ車にCVTとDCTを交互に積んで比較したとしたら、DCTの方が低燃費ではないかと思います。
なぜなら、CVTは一般に言われるほどエンジンへの負荷が少ない方式ではないからです。
CVTで動力を伝えるスチールベルトは、滑らに回ることと、2つのプーリーの間に滑らずにしっかりとどまっている、この2つのことが要求され、とりわけ滑らずに同じ位置にとどまっているためには油圧等でがっちりとプーリーの動きを支える必要があります。
この油圧の力を生み出す源はエンジンの動力です。
つまり、この分だけエンジンに負荷を掛けるのがCVTです。
ただ、従来のトルコンATに比べるとエンジンへの負荷が小さいので、「CVTは省燃費」と言われるわけです。
一方で、DCTはエンジンへの負担は少なく、かなりエコな走りが実現できます。
さらに、DCTは大排気量または高出力のエンジンにも対応できますが、CVTは比較的小排気量で低出力の車との相性がいいトランスミッションです。
最後は、熟成の度合いで決まります
走りがいいトランスミッション、あるいは省燃費なトランスミッションということで比較する場合、必ずしも機構の違いだけでは説明できません。
従来からあるトルクコンバーター方式のATも、現在では熟成が進んでいて、省エネ性能においても以前のようなロスが少なく、高級車にも積極的に使われているトランスミッションです。
発進時の滑らかさ、変速ショックの少なさ、燃費の良さ、大排気量かつ高出力にも対応する万能のトランスミッションとして、いまでもトルコンATは現役の超優秀なトランスミッションとして君臨しています。
CVTも同様に進化しています。
出始めの頃のCVTは、私もスバルのジャスティーという小型車を所有していた時に経験していますが、とてもヘンテコな感じの走行感覚でした。
よく言われる「エンジンの回転上昇とスピードの上昇がうまくマッチしないちぐはぐな感じ」がありました。
でも、しかし、現在の日本の小型車のCVTはどうでしょう?
重箱の隅を突っつく見方をしなければ、ヘンな感じはあまり受けないのではありませんか?
これはDCTについても言えます。
出始めのDCTは、いったん走り出せば優秀なのですが、発進時のギクシャク感がかなり明確にあって、いつも長距離を乗る人にはいいトランスミッションであるものの、近所の買い物や送迎に使う人にとっては未完成感の強いトランスミッションでした。
まあ、今でも発進時のギクシャク感はやや残っていますが、それでも最新のDCTは優秀なトランスミッションとして誰にでもおすすめできる内容です。※わたしの現在のマイカーはフォルクスワーゲンゴルフでトランスミッションは7速DCT(フォルクスワーゲンではDSGと呼ぶ)です。発進時以外は優秀な機械です
結局のところ、トランスミッションに関しては、機構の方式だけでは語れない部分があって、いい悪いの判断は、メーカーがどれだけその機構を熟成させているかによると思います。
下記の記事も参考になさってください。
⇒⇒デュアルクラッチトランスミッション(DCT)とは:普通のATとDCTの違いは何かというと、普通のATが、トルクコンバーターの流体により変速するか、CVTの場合はベルトで無段階に変速するのに対して、DCTはMTと全く同じギアによる変速をする点です。 ⇒⇒インパネMTモード付CVTとは:インパネMTモード付CVTとは、「インパネ部分に取り付けられたMTモード付のCVT」という意味です。インパネとは、運転席のエアコンスイッチなどがある場所です。 ⇒⇒AT車でキックダウンしないのは?CVTやトルコンATでアクセルを床まで踏み込むと・・・:キックダウンはCVTでもトルクコンバーター式AT(従来のAT)でも発生します。ただし、CVTはもともと無段変速なので、シフトダウンするといっても「疑似的な低速ギア」に入るだけですが、しかし、キックダウンすればちゃんとトルクフルな加速を始めます。 ⇒⇒ダイハツのD-CVTとは|仕組み・構造:2019年にダイハツが新型タントに搭載し、その後ロッキーにも搭載し、さらに今後発売される車にも続々と搭載する予定の新機構CVT、それがD-CVTと呼ばれるトランスミッションです。従来のCVT(無段変速機)はベルトのみの駆動ですが、D-CVTは「ベルト+ギア」による駆動です。ここで使われるギアは「スプリットギア」と呼ばれます。 ⇒⇒CVTをassy交換したら費用・工賃はいくら?:CVT(無段変速機)は高いです。ASSEMBLY交換したら300,000円~500,000円はかかります。リビルド品なら半額程度に抑えられるかもしれません。5万キロあたりから不具合が発生する頻度が増します。10万キロ前後になると様々な不具合が出ることが多いです。 ⇒⇒電気自動車(EV車)にトランスミッションがないって本当?:すべての電気自動車(EV車)にトランスミッションがないわけではありません。電気自動車によるフォーミュラカーレースであるフォーミュラEにエントリーしている車両にはトランスミッションが付いているものがあります。しかし、一般の市販車では、ほとんどの車種にトランスミッションはついていません。日産のリーフにも付いていません。無段変速の1速ですべてまかなっています。 ⇒⇒カローラスポーツのiMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)とは:これはマニュアルミッションに慣れたプロの技を電子制御であっさり実現してくれる補助装置です。たとえば、発進時にクラッチをミートさせる際、エンストしないようにエンジン回転を少しだけ上げてくれます。AIが勝手にやってくれるのです。 ⇒⇒ATのブリッピング|オートマなのにシフトダウンでブリッピングが入る?:オートマ車なのにシフトダウン時に電子制御でブリッピングが入る車種は以下の通りです。レガシィ・BRZ・インプレッサ。CX-5・アクセラ・アテンザ。ランサーエボリューション10・ギャランフォルティス。フーガ・シーマ・GT-R・スカイラインなどなど。 |
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