【5分記事】ピストンリングの合口隙間とは|切れ目のあるリングを使う理由は?

ピストンリング・合口・合口隙間

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そもそもピストンリングの役目について

車やバイクのレシプロエンジンにはピストンとシリンダーが使われます。筒状のシリンダーの中をピストンが行ったり来たりすることで混合気を燃焼し、排気ガスを排出し、燃焼し、排出し・・・を繰り返して出力を発生します。

通常、ピストンもシリンダーも円形で、それぞれの直径はほぼ同じサイズです。同じでなければ隙間が生じるので、そこから燃料が漏れたり、エンジンオイルが混入したりしてしまうからです。

けれども、両者がピッタリ同じサイズで全く隙間がなければ、それはもう動きようがありません。固着した状態になります。でも、隙間があり過ぎると、それはそれで困ります。

エンジンを分解してピストンを取り出すと、ピストンには3本のリングがはめてあります。そして、この3本のリングをピストン本体から取り外すと、完全な輪っかではなくて、一箇所切れ目があります。

この切れ目のことを合口隙間あいくちすきまと呼びます。

さらに、その3本のリングは、バラした状態ではシリンダーの直径をはるかにオーバーする径になります。なぜなら一箇所ある切れ目が大きく開いてしまうからです。

つまり、こういうことです。

もともとはシリンダーの直径より大きな輪っかであるピストンリングを無理やりピストンに巻き付け、その状態でシリンダーの筒にすっぽり押し込む。このことにより、ピストンリングには常に外へ外へと膨らむ力が発生し続け、その外へ膨らもうとする力があるからこそ、シリンダーの壁にぴたりと密着してピストンは往復できる。こういう仕組みになっています。

3本あるピストンリングの上2本はコンプレッションリングと呼ばれ、シリンダー内の圧縮ガスがクランクケースに抜けることを防止しています。※抜けてしまう圧縮ガスのことをブローバイガスと呼びます

また、この2本のコンプレッションリングは、燃焼によってピストンに蓄積した熱をシリンダーブロックへ逃がす働きもしています。

さらに、一番下にある第3リングはオイルリングと呼ばれます。オイルリングは、その名の通り、シリンダー内壁に付着する余分なエンジンオイルをかき落とし、薄くてちょうどいい油膜を残す役割を果たしています。これにより、ピストンの焼きつきを防止します。

合口隙間あいくちすきま

ピストンに巻き付けられ、シリンダーの筒に収まった状態にあるピストンリングの合口隙間は、一般的には、シリンダー直径の200分の1程度に設定されます。ただし、この数値はピストンリングの材質によっても異なります。また、各エンジンのサービスデータには適正値(規定値)が表記されているのが普通です。

いずれにしても、合口隙間が全く存在しないピストンリングはなくて、多かれ少なかれ必ずある程度の隙間は生じざるを得ず、そのため、いくらかのブローバイガスの漏れ、エンジンオイルの侵入は避けられません。

ただ、精密な設計により、限りなくゼロに近い合口隙間になるように各メーカーの技術陣がエネルギーを注ぐ部分でもあります。

けれども、では、最初から合口隙間のないピストンリングなら完璧かというと、上記説明のように、それだとピストンリングが摩耗したら、ピストンとシリンダーは隙間だらけになり、その都度ピストンリングを交換しなければならなくなります。

しかし、合口隙間があって、バラした状態ではシリンダー直径より大きな輪っかになるピストンリングを使用してるからこそ、常にシリンダー壁に膨らもうとする性質により、たとえ少々摩耗したところで、摩耗した分だけさらに膨らめばいいだけですから、やはり、合口隙間には一定の合理性があると思います。

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