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【記事丸わかり】
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記事のポイント
- 車検証と車検シールの発行権限: 車検証と車検シールを発行する権限は陸運支局にのみあります。
- 保安基準適合標章の役割: 車検の仮シールとして機能し、15日間の有効期限があります。
- 指定整備工場と認証整備工場の違い: 指定整備工場は自社で車検検査を完了させることができますが、車検証と車検シールの発行はできません。認証整備工場は車検検査設備を持たず、陸運支局で検査を行います。
- ユーザー車検の特徴: ユーザーが自分で車を陸運支局に持ち込み、車検検査を受ける方法です。
車検後に車検証がない!そういえばまだもらってないけど・・・
ディーラーや整備工場に車検に出して、無事審査が通ったという連絡を受けて車を取りに行ったのはいいけれど、担当者から、
「車検証と車検シールは後日郵送します」
とか、
「車検証と車検シールが発行されたらご連絡します。取りに来てください」
といった説明を受けることがあります。
その際、フロントガラスの中央上部、つまり、通常なら車検シールを貼る場所に「保安基準適合標章」というシールが貼ってあったりします。
このシールは、いわば車検の仮シールのことで、ちゃんと車検に合格したことを証明するシールです。
このシールは、本物の車検証と本物の車検シールが出来上がるまでの間、具体的には「15日間」が有効期限で、このシールを貼っていれば公道を走行しても法的には問題ありません。
では、ディーラーや整備工場ではなぜ本物の車検証と本物の車検シールを渡してくれないのでしょう?
発行する権限は陸運支局にしかない
そもそも車検証と車検シールを発行する権限は、国の直轄機関である各地の陸運支局にしかありません。
指定整備工場と呼ばれる民間の車検場(ディーラーや整備工場)には、車検の検査を行い、検査に合格したらそれを証明する書類(保安基準適合証と保安基準適合標章)を発行する権限はありますが、しかし、本物の車検証と本物の車検シールを発行する権限は与えられていません。
そこで、たとえばディーラーに車検に出すと、自社の車検場で検査を行って、それに合格したら保安基準適合証と保安基準適合標章を発行します。
もしもディーラーがその足で陸運支局に出かけ、検査した車の車検証と発行したばかりの保安基準適合証を提出すれば、その場で本物の車検証と本物の車検シールが発行されるので、それを検査した車に備え付ければ、そこで晴れて完全に車検が終了することになります。
けれども、1台1台そういう対応をしていたらあまりにも効率が悪いので、ディーラなどでは数台まとめて自社の検査場で車検を行い、数台まとめて陸運支局で手続きをするわけです。
だから、自社工場で車検に合格した車には、仮の車検シールである保安基準適合標章をフロントガラス中央上部に貼り付けて、しばらくその状態で車に乗ってもらうことになるのです。
その間、その車には車検証は存在しません。車検証はディーラーが預かっています。
でも、それでいいのです。
なぜなら、保安基準適合標章が車検証と車検シールの代用品として法的に認められているからです(15日間の期限付きですが)。
車検に出した人は、後日本物の車検証と本物の車検シールが郵送で送られてきたら、まず車検証をダッシュボードなどに保管し、車検シールを保安基準適合標章と貼り替えてください。
その時こそ、完全に車検が完了する時です。
車検シールをきれいに貼り付ける自信がない方は、郵送で送ってもらうのではなく、ディーラーに取りに行って、ディーラーの担当者さんにその場で貼り替え作業をやってもらうといいと思います。
ユーザー車検では最初から本物の車検証と本物の車検シール
ディーラーや整備工場は、いわば車検の代行業者です。
一方で、ユーザー車検は、車のユーザー本人が自分で車を陸運支局に持ち込んで、そこで車検の検査を受けるやり方です。
この場合は、車検に合格したらその場で本物の車検証と本物の車検シールを発行してもらい、そのまま家に帰ることができます。
つまり、その場で車検は完全に完結することになります。
けれども、多くの車のユーザーは、ディーラーとか整備工場とかガソリンスタンドとかカー用品店などに車検を依頼するでしょう。
こうした民間の業者さんは、2つの種類に分かれています。
まず、「指定整備工場」と呼ばれる自社工場内に車検の設備を備えているところでは、自社で検査を完了させることができます。
ただ、検査は完了させられますが、すでに触れたように、車検証と車検シールを発行する権限はないので、それらを発行するまでにタイムラグが生じます。
そのタイムラグを埋め合わせているのが、仮の車検シールである保安基準適合標章です。
一方で、「認証整備工場」と呼ばれるところがあって、こうした工場は一定レベルの整備技術や整備施設は備えているものの、車検の検査をする設備は備えていません。
そこで、認証整備工場に車検を出すと、担当者が陸運支局に車を持ち込んで、ちょうどユーザー車検をやるように、陸運支局の車検設備で検査を行います。
だから、認証整備工場に車検を出した場合は、本物の車検証と本物の車検シールが備わった状態で車が返却されます。
「それなら、指定整備工場より認証整備工場に車検を出したほうがいいのでは?」
と思う方もいらっしゃるでしょう。
でも、そうではないのです。
時間がかかるのです。
認証整備工場は自社に車検施設を持たないので、1台1台をいちいち陸運支局に持ち込む必要があり、車検の受付から完了して車を引き渡すまでに日数がかかってしまうのです。
その点、指定整備工場では自社に車検の設備があるので、すぐに車検の検査が完了し、いわゆる1日車検などにも対応できるのです。
指定整備工場に車検を依頼した人は、早い場合はその日のうちに車を取りに行けます。
でも、ここまで解説してきたように、車検証と車検シールの発行権限は陸運支局にしかないので、顧客にはとりあえず仮の車検シールである保安基準適合標章を貼り付けておいてもらい、本物が出来上がったら差し替える、という対応をとっているわけです。
まとめ
「車検後に車検証がない!そういえばまだもらってないけど・・・」
これがこのページのテーマです。
ここまでお話ししてきたように、指定整備工場に車検を出し、車検の仮シールである保安基準適合標章を貼り付けてある場合には、一時的に車検証が存在しないことがあるということです。
でも、保安基準適合標章は車検証と車検シールの代用となるので、15日間という期限はありますが、その間は公道を走っても何の問題もありません。
ただし、本物の車検証と本物の車検シールが出来上がったら、車検証はダッシュボードの中に保管し、車検シールは保安基準適合標章と貼り替えしてください。
この差し替え作業を怠り、期限の切れた保安基準適合標章で公道を走行すると、50万円以下の罰金が科されます(道路運送車両法第109条)。
ごくまれのケースですが、15日間を過ぎても本物の車検証と本物の車検シールが送られてこない、あるいは出来上がったという連絡が入らない、ということがあります。
そういうケースでは、こちらから連絡して事情を確認してください。
実際にこうしたケースがあった場合、15日という有効期限を過ぎても仮のシールで公道を走ることになってしまうことになり、もしも警察に呼び止められたら、本当は(手続きを忘れていたりした)ディーラー等に責任がある場合であっても、あなたは運行責任者として処罰される可能性があります。
お気を付けください。
記事のポイント
- 車検証と車検シールの発行権限: これらは国の直轄機関である各地の陸運支局にのみ発行権限があります。
- 保安基準適合標章の重要性: 車検に合格したことを証明する仮シールで、15日間有効です。この期間内は公道を走行しても法的に問題ありません。
- 指定整備工場の役割: 自社で車検検査を行い、保安基準適合証と保安基準適合標章を発行しますが、車検証と車検シールの発行はできません。
- 認証整備工場の特徴: 車検検査設備を持たず、陸運支局で検査を行います。車検証と車検シールが備わった状態で車が返却されます。
- ユーザー車検のメリット: 車検に合格したらその場で本物の車検証と車検シールを発行してもらえます。
- 保安基準適合標章の取り扱い: 本物の車検証と車検シールが届いたら、保安基準適合標章と貼り替える必要があります。期限切れの保安基準適合標章で公道を走行すると罰金が科される可能性があります。
- 遅延が発生した場合の対応: 15日間を過ぎても本物の車検証と車検シールが届かない場合は、ディーラーや整備工場に連絡して事情を確認する必要があります。
下記の記事もご覧いただけると幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。