ラジエーターリザーブタンクの位置
水冷式エンジンの車にはエンジン冷却装置が必要です。それがラジエーターと呼ばれる装置で、車の一番前、フロントバンパーのすぐ内側に付いています。
ラジエーターにはラジエーターキャップと呼ばれるフタが付いてますが、このフタのすぐ下からホースが出ています。そのホースをたどっていくと小さなタンクがあります。
これがラジエーターリザーブタンクです。
仕組み
ラジエーターリザーブタンクにはHIGHとLOWの2本の横線があり、冷却水(ロングライフクーラント・LLC)は通常この2本線のあいだにあります。
さて、エンジンが始動して、車が走り始めた場合で、通常走行しているケースではいいのですが、スポーツ走行などエンジンを高回転で回し続けたりすると、当然エンジンは熱を発しますから、エンジンの周りに張り巡らされている冷却水の温度も上昇します。
液体の温度が上昇すると、ヤカンのお湯でお分かりのように、沸騰して気泡が発生し暴れだすのが普通です。
ところが、上記で触れたラジエーターキャップはただのフタではなくて、圧力蓋でもあって、冷却システムを常に一定の圧力で封印しているので、普通なら100度程度で沸騰して暴れだす冷却水を圧力で押さえ込み、100度を超えても沸騰しないで黙々とエンジンを冷やし続けるようにしています。
しかし、無制限に圧力をかけ続けると、冷却経路の弱い部分であるホース類とかその繋ぎ目などに大きな負荷がかかり、やがて亀裂が走ったりして冷却水が漏れ出す恐れが出てきます。
そこで、116度~120度くらいにまで冷却水の温度が上昇したら、ラジエーターキャップはもう圧力で押さえ込むことを止め、冷却水を一時的に逃がします。
どこへ逃がすかというと、もちろん、ラジエーターリザーブタンクです。
前の項目で、ラジエーターキャップのすぐ下にホースがあって・・・と書きましたが、キャップのすぐ下にある理由がこれでお分かりかと思います。
そうやって一時的にラジエーターリザーブタンクに冷却水がいわば「逆流」した場合、タンクの2本ある線の上の線を超えることも当然発生しますが、これは異常ではありません。
やがてエンジンが冷えてくれば、いったんラジエーターリザーブタンクに「逆流」していた冷却水が、ラジエーター本体の方に戻っていきます。
これは、ラジエーター本体内に負圧(吸い寄せる力)が生じるからです。なぜなら、車の冷却システムは閉鎖系になっているので、冷却水の温度が上昇してラジエーター本体内で膨張している間はプラスの圧が働き、だから一部冷却水がリザーブタンクに逃げるのですが、温度が下降してくると圧力も減少してくるからです。
そうやってラジエーター本体内に負圧が生じると、ラジエーターキャップの弁が温度上昇時とは逆向きに働き、リザーブタンク内に逃がしていた冷却水を本体内に引き戻すわけです。
タンクと本体を行き来するのは正常
以上のことからわかるように、ラジエーター本体とラジエーターリザーブタンクのあいだでは、状況に応じて冷却水が行ったり来たりを繰り返しています。
だから一時的にラジエーターリザーブタンクのHIGHのラインを上回っていても、それは異常ではありません。
でも、ポコポコとかゴボゴボといった音と共に冷却水がリザーブタンクに「逆流」し、場合によっては勢い余ってリザーブタンクの外にあふれ出すこともあります。
こうなると、これは異常です。
ラジエーターリザーブタンクから吹き出す場合
ラジエーターリザーブタンクは、いわば「調整池」のようなものですが、調整の範囲を逸脱して池から水があふれ出すような事態は、あきらかに冷却システムのいずれかに異常があるからです。
そうした事態になった場合、考えられる不具合は以下のようなものです。
- ラジエーターキャップの故障:経年劣化などで不具合が発生して調整弁としての役割を果たせなくなっている。
- 冷却水(LLC・ロングライフクーラント)の入れ過ぎ:単純に冷却水を入れ過ぎている。
- 冷却水を補充または入れ替えた際に「エア抜き」が十分に行われていない:エンジン内に空気が残った状態で冷却水を入れると、残った空気がエンジンの熱で膨張して冷却水を押し出してリザーブタンクから吹き出す。
- ガスケットの吹き抜け:エンジンの継ぎ目であるガスケットが劣化して、エンジン内部にとどまっているはずの燃焼ガス(排気ガス)が冷却水の経路に吹き出し、その吹き出す圧が冷却水を逆流させてリザーブタンクをあふれさせる。
いずれにしても、エンジン冷却システムの不具合はエンジンの不調に直結するので、放置しないですみやかにディーラーや修理工場に入庫し、プロの診断を受けてください。
下記の記事も参考になさってください。
ご覧いただきありがとうございました。