車のサーモスタットに寒冷地仕様はありますか?違いは?

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記事のポイント
  1. 現行車種では特別な寒冷地仕様のサーモスタットは使用されていない
  2. 寒冷地仕様のサーモスタットは冷却水の循環を遅らせる
  3. 寒冷地仕様のサーモスタットは車内暖房の効きを遅らせる

純正車種の「寒冷地仕様」にサーモスタットは含まれていない!

 

まず、メーカーにより、「寒冷地仕様」をオプションとして用意しているところと用意していないところがあります。

寒冷地仕様ありトヨタ、日産
寒冷地仕様なしホンダ、スバル、マツダ

ところで、トヨタや日産は寒冷地仕様を用意していますが、サーモスタットに関しては特に寒冷地用のものを使用してはいません

たとえば、トヨタのC-HRの場合、「寒冷地仕様」として標準車と異なるのは次のパーツです。これらの中にサーモスタットは含まれていません

装備説明
冷却水 (LLC)寒冷地では、エンジン内を循環している冷却水の濃度が低いと凍ってしまうことが考えられるので、冷却水が凍らないように濃度を上げております。
ウインドシールドデアイサー雪だまりや凍結によりワイパーが動かなくなることの防止を目的にフロントガラスに熱線を配したものです。
ウインドシールドワイパーワイパーモーターが寒冷地用で強力になります。
リヤフォグランプ霧・雪・雨などにより視界が悪い時に車の存在を後続車に知らせるための赤色灯です。リヤフォグランプはリヤバンパー中央下に装着されます。
PTCヒーターエンジン始動直後からエンジンが暖まるまでの間、通常のヒーターに加え、暖房を補う装置(電気式補助ヒーター)です。エンジンの冷却水温が低いときの室内暖房に貢献します。即熱性があるため、短時間で暖房がききます。
ヒーターリヤダクト後席の暖房効果に貢献するため、リヤシート足下に温風を送るためのダクトが設定されます。
スターターエンジンの始動性を向上するためスターターの容量を上げています。
ウォッシャー液レベルウォーニングウォッシャー液が残りわずかになった時、マルチインフォメーションディスプレイに警告メッセージが表示されます。
ウィンターブレード降雪時、通常のワイパーブレードではフレームに雪が付着し、凍りついてワイパーとしての機能が低下します。そこで、ブレード本体を特殊合成ゴムラバーで覆い、寒さによる固着を防ぎ、雪や雨を拭き取り、視界を保つようにします。

日産の寒冷地仕様も、ほぼ似たようなものです。

いずれにしても、日本のどのメーカーも、現行車種に関しては、サーモスタットに関しては、1種類しか用意していないようです。逆に言うと、それだけ幅広い気象条件下で作動するように高機能化しているのだと思います。

昔のクルマには寒冷地仕様のサーモスタットがあった

多摩興業 サーモスタット パジェロミニなど 開弁温度88℃の寒冷地仕様

アマゾン通販や楽天市場には、「寒冷地仕様」のサーモスタットはちょっと見当たらないようです。

ただし、根気強く調べていくと、かなり前の車種の寒冷地仕様車の純正品として、寒冷地仕様のサーモスタットがリストアップされているケースがあります。※パジェロミニなど

いずれにしても、現行車種に限って言えば、どのメーカーも、寒冷地だからと言って特別なサーモスタットを使用してはいません

寒冷地仕様のサーモスタットの特徴

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パジェロミニ(Wikipedia

現行車種用ではなく、廃版になった車種のなかには、寒冷地仕様のサーモスタットを使用している例はあります。

そうした寒冷地仕様のサーモスタットですが、その特徴を見てみましょう。

通常のサーモスタットは75度~85度くらいで冷却水の弁が開きますが、寒冷地仕様のサーモスタットは88度前後にならないと弁が開かない設定になっています。

これにより、冬の朝などには、エンジンを掛けてからかなり時間がたつまで冷却水は循環しません。その間、エンジンはどんどん熱を持っていきます。やがて88度になってからようやく弁が開き、冷却水が循環をはじめます

ただし、弁はまだ全開になっていません。少しずつ弁を開いていき、10度ほど上昇したら(つまり98度くらいになったら)弁は全開になります。冷却水がエンジンの周りを目いっぱい巡回するようになります。ここまでくれば通常のサーモスタットも寒冷地仕様のサーモスタットも同じ働きをします。

車のエンジンはスタートしてから時間が経つにつれて熱を持っていきますが、気候の厳しい地域では、その熱の持ち方がどうしても遅れがちになります。温暖な地域に比べてエンジンの暖まるタイミングが遅れるので、その分だけ冷却水が循環を始めるタイミングも遅らせる必要があるのです。

オーバークールを防止するために

過去の一部車種では、北海道などで寒冷地仕様のサーモスタットを使用していました。これは、エンジンがオーバークールになることを防止するためです。

オーバークールとはオーバーヒートの真逆の症状です。過冷却です。エンジンが冷えすぎることです。

温暖な地域では、冷却水が75度~85度くらいでサーモスタットは弁を開き始めます。弁を開けば冷却水が循環を始めますが、エンジンの温度上昇とちょうどいいバランスが取れるために、エンジンの温度が下降する心配はありません。

けれども、気候が厳しい地域では、75度~85度くらいでサーモスタットが弁を開いてしまうと、エンジンがそれ以上加熱していかずに、横ばいになるか、あるいは、下降気味になってしまいます。

冷却水が必要以上にエンジンを冷却してしまうからです。つまり、オーバークール状態です。

そこで、寒冷地仕様のサーモスタットの場合、弁を開くタイミングを後ろにずらして、だいたい88度くらいで開き始めるように設定されています。

寒冷地仕様は暖房の効きが遅れる

サーモスタットを寒冷地仕様にすると、暖房にも影響を与えます。暖房の効き始めのタイミングが遅くなります

車の暖房は、昔も今も全く同じ仕組みです。トラックも乗用車も、軽自動車も高級車も同一の方式です。

エンジンの冷却水が持つ熱を利用して車内を暖める。これが車の暖房です。

エアコンが付いている車も付いていない車も、暖房の方式は同じです。車のエアコンは、冷房は家庭用と同じ方式ですが、暖房は昔も今も冷却水の廃熱を利用しています。

だから、サーモスタットが寒冷地仕様になっていると、上記のように冷却水が循環するタイミングが遅れますから、この冷却水の熱を利用する暖房の効きも遅くなります。

走り始めてからけっこうな時間がたたないと車内が暖かくなりません

厚着をしたり、ひざ掛けを用意したり、あるいは、通販で安く売られているシートヒーターとかファンヒーターを使うなど、いろいろ工夫をしている方もいらっしゃるでしょう。

電気自動車や一部のハイブリッド車などでは、電気の力で熱を作り出し、これを車内の暖房に利用している車種もあります。こうした車の場合は走り始めからすぐに車内を暖めることができます。しかし、この方式はそれだけバッテリーに負担を掛けますから、航続距離を縮めることにもなり、オーナーにとっては悩ましいところでもあるようです。

まとめ

『車のサーモスタットに寒冷地仕様はありますか?違いは?』のテーマで解説してきました。

以下、記事のまとめです。

  1. 寒冷地仕様のサーモスタットは、特定の古い車種で使用されていたもので、現行車種では通常のサーモスタット(守備範囲が広いサーモスタット)が使用されています。
  2. 寒冷地仕様のサーモスタットは弁が開く温度が高い(88度)ため、エンジンが冷えすぎるのを防ぎます。
  3. 寒冷地仕様のサーモスタットは、オーバークールを防ぐために、エンジンが十分に温まるまで冷却水が循環しない設計になっています。
  4. 寒冷地仕様のサーモスタットは、暖房の効きが遅れるというデメリットがあり、寒冷地では車内が暖まるまでの時間が長くなります。
  5. 寒冷地仕様のサーモスタットは、冷却水がエンジンを必要以上に冷却してしまうのを防ぐため、弁を開くタイミングを後ろにズラしています。
  6. 一部の電気自動車やハイブリッド車では、電気の力で熱を作り出して暖房に利用するため、すぐに暖まりますが、バッテリーに負担がかかります。
  7. トヨタ日産などは寒冷地仕様を提供していますが、サーモスタットに関しては、特別な寒冷地用のものを使用してはいません。
  8. ウィンターブレードウインドシールドデアイサーなど、寒冷地での問題に対処するための他の装備は寒冷地仕様の車に含まれることがあります。

下記の記事も参考になさってください。

ご覧いただきありがとうございました。