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RX-8やめとけ|ロータリーエンジン知らないならやめとくべき
※トップ画像はRX-8 SPIRIT R by Wikipedia
マツダのRX-8は2003年~2013年まで販売され、そこで生産中止となり、1代限りのモデルとしてその歴史を閉じました。
2012年3月末までの世界での総販売台数は約19万台になります。
RX-8はRX-7の後継であり、マツダ独自のロータリーエンジンを積んだ4シーターのスポーツカーかつファミリーカーです。
ファミリーカーなどと言うとRX-8のファンに怒られるかもしれませんが、後席の2シーターは緊急時用の臨時シートではなくて、大人でも子供でもちゃんと乗れるしっかりした実用シートです。
しかも後席に乗り込むには最新のMX-30に採用されている観音開きのドアを開ける方式で、これを大いに面白がる子供も多かったようです。
いえ、そんな話は枝葉の部分であって、RX-8の本筋は何と言ってもロータリーエンジンに尽きます。
この記事を書いている2021年11月9日現在、RX-8が廃版になってからすでに8年が経過していて、いまRX-8が欲しいと思っても、程度のいい車両を中古車市場で探すしか方法がありません。
そこで誰もが気になる点が、
「果たして、ロータリーエンジンは大丈夫か。最後の年に販売された車両でもすでに8年経過していることになるけれど、仮に手ごろな値段で傷みの少ないRX-8が見つかったとして、本当にそれを購入してしまって問題ないのか。買った後でひどい目にあうことはないか」
というところではないでしょうか。
実際、世間には、
「RX-8?あれはやめとけ!」
という声はけっこうあります。
たとえば、トヨタMR-SはRX-8よりさらに前になる2007年に生産終了したスポーツカーですが、世間で「MR-Sはやめとけ」という声はほとんど聞きません。
MR-Sに「やめとけ」という声がないのは、エンジンが通常のレシプロエンジン(ピストンの往復運動で動力を発生させるエンジン)だからでしょう。
いっぽうのRX-8はロータリーエンジンです。
ロータリーエンジンにピストンはなく、三角おにぎりみたいなローターが繭のような形のハウジングの中で回転して動力を発生させます。
マツダ車とりわけロータリーエンジン車を専門に扱う車屋さんは全国に点在していますが、そうしたショップの情報を見ると、RX-8に載るロータリーエンジンはちゃんとしたメンテナンスを行っていれば10万キロ以上問題なく走れるが、12万キロ~13万キロに到達する前にオーバーホールが必要になるケースが多い、ということのようです。※あくまでも平均的に見た場合の話です。これより早い場合も遅い場合もあります
(要注意)この「オーバーホール」というものがどんな作業を指すかは実に範囲が広く、まさにピンキリなのですが、そもそもエンジンを車両本体から取り外し、修理し、また車両本体に戻す作業だけでも数十万円かかりますから、これに部品代や載せ替え以外の作業代が入ると100万円以上かかることは珍しくありません。
どんなエンジンも定期的なオイルやオイルエレメントの交換は必須であり、その点はレシプロもロータリーも同様なのですが、レシプロエンジンの場合なら10万キロ~15万キロで「オーバーホール」という言葉は普通出てこないと思います。
私も新車から14万キロまで走った経験がありますし、知り合いで20万キロ越えの車両など珍しくありません。もちろんレシプロエンジンの話です。
ロータリーエンジンの場合、たとえば18万キロをオーバーホールなしで走ったという話が奇跡のような話として話題になるほどです。
やはり、ロータリーエンジンに特有の事情がありそうです。※ローターとハウジングの間をシールしているアペックスシールが劣化すると圧縮低下を招くことなど
いずれにしても、それなりにお金がかかることは間違いないので、
「メンテナンス費用に充てるお金がない人はRX-8を所有するのはやめとけ」
ということは確実に言えると思います。
(※)ネットにはレシプロエンジンも10万キロ~15万キロでオーバーホールが必要だなどと書いている記事がありますが、呆れるしかないです。ファクトから大きく逸脱した話です。そういう車両もあるでしょうが、タクシーなど40万キロ超をエンジンオイルとエレメントの交換だけで走行している事例は山ほどあります。あなたのご近所さんにも20万キロ越えのトヨタや日産やホンダやマツダに乗っているお知り合いがいらっしゃるはず。その方々はオーバーホールしてますか?今思い出しましたが、私の元同僚にトヨタのスプリンターカリブ(1995年発売)のMT車をいまだに乗り続けている人がいて、確か30万キロ超だったと思います。
だから逆に燃える人がいるのは確か
以上はRX-8に搭載されるロータリーエンジンのデメリットを強調しましたが、しかし、1度でもRX-8に乗った経験がある人の中には、RX-7の過給機の入ったエンジンフィールとは違う、NAエンジン特有の上質で微小粒子が凝縮したようなエンジンフィールが頭から離れずにいる人もいます。
こうしたRX-8の魅力に脳髄がやられていて、なおかつ、一定の経済力を持つ人の中には、RX-8を所有し続けるのに予想される1万円札の枚数を脳裏に浮かべつつ、それでも「それがどうした」とばかりに諸事情があって当時購入できなかったRX-8をエイヤッと買ってしまう人がいます。
こういう方にとっては、「ロータリーエンジン車を維持するのはいろんな意味で大変なこと」という世間の声は逆に心に火をつけるきっかけにさえなるようです。
まだ完全にロータリーエンジンがこの世から消滅するかどうかは不透明なところがありますが(水素エンジンなど)、少なくとも現状は新車で購入できる車種は途絶えていて、最新のものでも8年落ちの中古車両を購入するしかないのですが、こんな状況であるゆえに、「ロータリーエンジンのような唯一無二の文化財的価値を持つ逸品をこの自分が守らなくて誰が守るんだ」と義憤にも似た思いでRX-8を購入する人は確実にいらっしゃるでしょう。
こういう人は、
「RX-8に、ロータリーエンジンに、もしも愛がないなら、思いつきだけで購入するのはやめとけ」
と間違いなく思っていらっしゃるはずです。
愛です。
愛の問題だと思います。
本気でそう思います。
RX-8のオーナーさんの声をご紹介
以下、RX-8のオーナーさんの声をご紹介します。参考になさってください。
RX-8の前後重量配分は50:50です。ただ、同じ50:50でも、たとえばエンジンがフロントグリルのすぐ内側にある場合も、大きく運転席の側に寄せてある場合も、車両全体の重量配分は50:50です。ところが、RX-8はRX-7よりさらに運転席に近い位置にエンジンを寄せ、さらにより低い位置に搭載しています。これにより同じ50:50でもヨー慣性モーメントが相当程度異なります。
コーナーを右に左に旋回する際、曲がる方角と逆の方角に車体が留まろうとする力がより少なくなり、ひらひらとコーナーを駆け抜ける身のこなしをするのであり、これは電子制御によって内側の車輪にブレーキを掛けてより曲がりやすくするやり方ではなくて、物理法則として必然的に回頭性が高まるやり方です。
このようにRX-8は素性がいいのです。素性とは物理特性のことです。力学のことです。
タイヤのグリップに頼ったり電子制御に頼ったりしないで、そもそもの物理特性として車自体が自ら曲がりたくて曲がっていくような感覚を覚える4シーターの車は、RX-8の他にはBMWくらいしか思い当たりません。
MT車の場合、慣れないと発進時にエンストしやすいというのは本当です。ゴルフ7GTIのMTに乗った時はアクセルから足を離してアイドリング状態でも余裕で発進しましたが、そういうトルクはないです(やればできないことはないですが)。RX-8のエンジン特性は20世紀のスポーツカーそのもので、回転がすべてです。
高速で100キロ巡行をしているとき、前方の車が遅くて詰まりそうなので素早く追い越しをかけようとする際は、アクセルをバンと踏んでかなり回転を上げてからギヤを1段か2段落とし、そしてアクセルを踏み込むことで力強い加速が得られます。最近の車は同じギヤのままアクセルを踏み込めばそこからモリモリ加速していきますが、こういうところが今どきのトルクモンスターみたいな車たちと異なるところです。
正直なところ、こうしたRX-8のエンジン特性に物足りなさを感じていた時期があったのは確かですが、考え方が変わったのは日産のリーフとかノートNISMOとかその他ハイブリッド車の試乗を何台かしてからでした。
どこからでも持ち上がる瞬発力では最近の車に負けるかもしれないけれど、走っているあいだ常にエンジン音が主役となる車の良さがRX-8にはあります。しかも、その音質がハイエンドオーディオのような緻密な音です。BMWのストレート6に対抗できる唯一のエンジン音でしょう。
低速中速でトルクが細い性格ゆえに、RX-8の走りは常時高回転をキープしがちで燃費のことなど考えないようにしないとやってられないのですが、その高回転の時間が長くても、不思議とヘンな疲労感はないです。首の根っこが詰まってくるような圧迫感もなく、上質な音と触れるような振動を全身で受け止める時間は至福の時です。
昔はロータリーエンジンはモーターのように回ると言われたものですが、本物のモーターで回る車が出てくると、これはもう全然違う。ロータリーエンジンが回転上昇していくときのジェットエンジンのような響きは宇宙人に聞かせてあげたくなるような音です。系外惑星から訪れた宇宙人も驚くようなエンジニアリングの結晶です。
・・・そうやって10万キロを過ぎました。楽しい時は永遠には続きません。でもお金をかければもうしばらく続けることができるかもしれません。思案しているところです。
かかりつけ医がいれば安心して乗れますよ
これからRX-8に乗りたい方は、お住いの近辺でマツダ車専門店あるいはロータリーエンジン専門店を探してください。
全国のあちこちにけっこうあります。
もちろんマツダディーラーでもいいです。
中古車両そのものはカーセンサーとかグーネットで探せばいいと思いますが、購入したら最寄りの専門ショップに持ち込んで今後のメンテナンスについてアドバイスを受けてください。
どのショップでも今後の方針は2通りになると思います。
- 現状のまま乗り続けて悪いところが出たらその都度修理していく
- いずれ不具合が出そうなところを予防的に交換修理して、向こう数年間大きなメンテが不要な状態で安心して乗り続ける
上記のいずれを選択するかはお財布の中身で変わってきます。
私の経験をお話しすると、2000年にゴルフ2 GTI 5MTを相模原のフォルクスワーゲン専門店で中古購入したのですが、年式は1991年式でした。つまり9年前の車でした。
ショップの人と相談した結果、私は上記②のやり方を選びました。つまり、フルレストアまでいかないけれどハーフレストアと言える程度に各パーツを新品に交換してもらったのです。
プラグ、プラグコード、ウォーターポンプ、ラジエーターリザーブタンク、ショックアブソーバー、スプリング、サスペンションのマウントブッシュ、ウインドーシールなどを新しいパーツに交換し、数年間はオイル交換やワイパーゴムの交換といった消耗品のメンテだけで済むような状態に仕上げてもらったのです。
おかげでその後はトラブルの心配なく常時元気いっぱいのカーライフを送ることが出来ました。ノントラブルでした。
マツダ車あるいはロータリーエンジンの専門店なら、RX-8で不具合が出やすいパーツなどを熟知しています。あらかじめ交換しておけば、あとは当面新車のように安心してカーライフが送れます。
なお、RX-8の中古車を購入する際は下記の部分に注意してよく現車をチェックしてください。ある意味、RX-8の弱点なので。
- ロータリーエンジンの重要パーツであるエキセントリックシャフトとつながるプーリーの部分にオイル漏れが発生しやすい
- クラッチペダルを踏み込むとギギギといった異音が発生する
- ドアノブを引くと異音が出る
- パワーステアリングに重く引っかかるような感触がある
- トランクの内部が湿っている⇒⇒上部のパネルの合わせ目に隙間ができて雨が侵入する
- パワーウインドーを上げたり下げたりした際にカチカチッという異音がする
- 助手席のエアバッグの取り付け部にクラックが入る
そして、RX-8の中古車購入で最も注意すべきはエンジンの「圧縮圧力」の確認です。ローターとハウジングの間をシールしているアペックスシールが劣化すると圧縮低下を招き、これを放置するとエンジンが壊れます。
この「圧縮圧力」を測定して正常な値であることを明示しているショップで購入するのが理想です。
まとめ
このページのテーマは「RX-8やめとけ」です。
ここまでお話ししてきたように、たとえRX-8に興味がある方でも、悪いこと言わないから「やめとけ」と言いたくなる人がいます。
それは、もう一度まとめると下記のような人です。
- ロータリーエンジンの特性を知らず、知ろうともしない人はRX-8はやめとけ
- ロータリーエンジンの音に魅力を感じない人はRX-8はやめとけ
- 今どきの低速からモリモリとトルクが発生する車がいい車だと思う人はRX-8はやめとけ
- ある程度のお金をつぎ込む用意のない人はRX-8はやめとけ
- 燃費のいい車じゃないと時代に反しているからダメだという人はRX-8はやめとけ
- ロータリーエンジンを人類の英知の1つであるという認識を持たない人はRX-8はやめとけ
- 広島カープが嫌いな人はRX-8はやめとけ
ご覧いただきありがとうございました。
【2023年6月27日追記】ロータリーエンジンが「RX−8」終了以来 11年ぶりに復活。新型「MX−30」PHEVの量産開始(速報)
モデル名 | MX-30 e-スカイアクティブ R-EV |
タイプ | プラグインハイブリッド (PHEV) |
発表日 | 2023年6月22日 |
量産開始日 | 2023年6月22日 |
量産地 | 広島県広島市, 宇品第1工場 |
特徴 | ロータリーエンジンを搭載したPHEV、EV走行距離85km、1500Wの給電機能、3つの走行モード(EVモード, ノーマルモード, チャージモード) |
ロータリーエンジン | 量産終了から11年ぶりに復活、累計生産台数199万台以上、コンパクトに高出力性能を実現 |
電気駆動ユニット | 高出力モーター、ジェネレーターとロータリーエンジンを同軸上に配置、17.8kWhのリチウムイオンバッテリー、50Lの燃料タンクと組み合わせたシリーズ式プラグインハイブリッドシステム |
環境対策 | 内装材にコルクや再生材を使用、生産工程で環境負荷の低減に取り組んでいる |