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マツダディーゼルやめたほうがいい?はい、チョイ乗りならやめたほうがいいです!
※トップ画像はマツダCX-5 by Wikipedia
この記事を書いている2021年11月7日現在、マツダ車のラインナップを見渡すと、スポーツカーのロードスターと電動車(EV・ハイブリッド)に限定したMX-30の2車種を除き、その他すべての車種にディーゼルエンジンが用意されています。
もちろん、マツダの誇るクリーンディーゼルです。
具体的には下記のラインナップです。
- マツダ2
- マツダ3
- マツダ6
- CX-3
- CX-30
- CX-5
- CX-8
上記すべての車種でガソリンエンジンかディーゼルエンジンかを選択でき、これほどディーゼルエンジンの選択肢が多いメーカーは、日本ではマツダだけです。
ところが、不幸なことに、メーカーとユーザーの間に情報の齟齬があって、ディーゼルエンジンの性質・性格・特性を理解しないまま、クリーンディーゼルのうたい文句である「燃費がいい」「トルクが太い」「環境にやさしい」という側面のみに飛びついてディーゼル車を購入するユーザーが少なからずいらっしゃるようです。
マツダのクリーンディーゼルだけに限りませんが、ディーゼルエンジン搭載車には次の特性があります。
- 近所の買い物等でチョイ乗りする使い方は適さない
- 通勤に毎日使用する場合でも片道10キロ以内、時間にして30分以内といった使用は適さない
- 長距離を30分以上走行するような使い方がメインの場合にこそディーゼルの長所が発揮される
したがって、たとえばコンパクトなマツダ2(旧デミオ)のディーゼルを購入し、スーパーの買い物、子供の送迎といった使い方を日頃から行っていると、しばらくして、運転席のメーターパネルに「DPF再生中」とか「i-stopできません。DPF内のPM除去を優先しています」といった警告灯が点灯して、この点灯を無視してエンジンを切ったりすると、そのうちにエンジンがかからなくなったり、かかっても走行がギクシャクしてくるなど、何かと不具合が発生するようになります。
すると、こうした経験をしたユーザーさんは、SNSやブログ、あるいは友人にこう吹聴するようになるのです。
「マツダのディーゼルはやめたほうがいい」
いえ、そうではありません。
そういうことを吹聴するあなたの言動をやめたほうがいいです。
車という高い買い物をする人にしては、あまりにもリテラシーがなさすぎます。
ディーゼルエンジンの性質をほんの少しでも理解し、ご自分が近場のチョイ乗りがメインであることを考慮していれば、必ずガソリン車を選んでいたはずです。
ディーゼルの性質を知らないからそういう結果を招いたのです。
もちろん、情報リテラシーをユーザーだけに求めるのは間違いです。
マツダのディーラー担当者が、ディーゼル車を希望するこの方に、商談の際にしかるべき説明を行っていたのか、その上で購入するに至ったのか、という点も当然問題になります。
ディーゼル車の方が単価が高いから、だから詳しい説明は省略したということであれば、これはユーザーを責められないと思います。
どっちなんでしょう?
ディーゼルエンジンが「チョイ乗り」に適さない理由
現在の日本の法規制では「クリーンディーゼル」と呼ばれる排気ガス中に有害物質を含まない方式のディーゼルでないと公道を走れません。
排気ガスをクリーンにするためにどういうメカニズムが適用されているかというと、それがDPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれる装置です。
訳すと「ディーゼル微粒子捕集フィルター」といったものになります。
※マツダ・日産・三菱ふそうはDPF、トヨタ・日野はDPR、いすゞはDPDと名称は異なりますが、機能は同一です。
排気ガスをそのままマフラーから排出するのではなく、DPFを通過させることでディーゼルエンジン特有のススを貯留します。
DPF内に一定量のススが溜まったら、排気熱を利用してこれを燃焼し尽くします。
この蓄積したススを燃焼させることを「DPF再生」と呼び、メーターパネル内に表示されるのが普通です。
日頃から長距離走行を繰り返しているディーゼル車の場合は、ドライバーが特に意識しなくてもDPF再生は走行中に勝手にやってくれます。しかし、近所のチョイ乗りしかしないディーゼル車はDPFに蓄積したススを燃焼させる時間を確保できずに、警告灯が点灯・点滅したり、やがてエンジンがかからなくなってしまったりするのです。
では、チョイ乗りしかしないディーゼル車にDPFの警告灯が点灯したら、具体的にどう対処すればいいかというと、距離にして5㎞~10㎞ほどそのへんを意味もなく走行することでDPF再生(溜まったススの燃焼)が完了します。
警告灯が出てエンジンの調子も悪い場合は、ディーラーに持ち込むと、溜まったススを強制的に燃焼させる処置をしてくれます。
こういう話を聞くと、中には、
「やっぱりマツダのディーゼルはやめたほうがいいかな」
という感想を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、近所のチョイ乗りしかしない方は、やめたほうがいいです。
でも、それはマツダのディーゼルだからではなくてディーゼル車全般に言えることです。
また、ちょっと引いて社会全体を見渡してみてください。
日本の公道を走るディーゼルエンジン搭載車はいまでもたくさん存在します。
そして、そうしたディーゼル車は一様に長く乗られている車両がほとんどです。
いすゞのエルフとかトヨタのダイナといったディーゼルトラックは日本全国様々な職場で同じ車両が長い年月活躍し続けています。
それ相応の使い方をすればディーゼルエンジン車は、無限というと言い過ぎですが、「いつまで走ってるんだ」と言いたくなるほど長寿命の車たちなのです。
※ただし、長い年月乗り続けるには、途中でDPF装置の交換が必要であり、これには20万円前後かかると言われています。
まとめ
ロードスター。この車にディーゼルを積めば最高だと思います, CC0, リンク,by Wikipedia
世界を見渡すと、ガソリンの価格と軽油の価格はほぼ同じ程度の国が多いようですが、日本では軽油の方が常に安い価格に設定されています。
たとえ今後は世界全体が電動化に向かっていくとしても、即座に全車両がEVなどに切り替わるものではありません。
したがって、依然として軽油を燃料とするディーゼル車両のアドバンテージは存在し続けていて、クリーンディーゼルの技術革新によって「省燃費」「高トルク」「環境にやさしい」というディーゼルエンジンのメリットを享受できる期間はまだ当面続きます。
比較的長距離の通勤に車を使う方、週末に県境を越えてドライブに出かけるのが趣味の方、こういう皆さんにとってはクリーンディーゼル車は干天の慈雨であり、選ばない手はないと思います。
一方で、近場で短時間しか車を利用しない方々は、まさに「マツダのディーゼルはやめたほうがいい」と思います。
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【余談】ロードスターにこそディーゼルを!
余談になりますが、わたしはマツダがロードスターにディーゼルエンジンを採用しないことをとても不思議に思っています。
私の地元を走る中央高速道路のパーキングエリアやサービスエリアで休憩していると、よくロードスターに乗った高齢の単身者またはご夫婦などを見かけるのですが、ナンバーを見ると東京周辺だけでなく、東北や関西のナンバーを付けていたりします。
こういう方々は、ロードスターを峠スペシャルとかサーキット車両として使用しているのではなく、いわばGTカーのような使い方をしているのだと思います。
ロングドライブに2シーターのオープンカーであるロードスターを駆り出しているわけです。
私もホンダのビートと2代目ロードスター(NB型)に乗っていた時期があって、ビートでは山梨から高速を乗り継いで四国大橋に辿り着き、そこから香川、愛媛、高知、徳島と四国4県を巡ってから、また高速で帰路についた経験があります。
大きな車のほうがよっぽど快適ですし、荷物もたっぷり積めるのですが、2シーターのオープンカーという制約が多い車両で旅するほうが、旅の記憶は脳の記憶領域に鮮明に刻み付けられることをこの時の経験から学習しました。
ですから、CX-5やマツダ3で快適にロングドライブするよりも、ロードスターで旅するほうがずっと思い出に残るに違いないのです。
そして、そのロードスターにCX-5に載せている2.2ℓクリーンディーゼルエンジンを載せたら、これはもう夢のような車になることは確実でしょう。※スペース的に可能であればの話ですが
車重はそれなりに重めとなるでしょうが、2シーターのオープンカーです。FRです。そしてできれば6MTを載せて、野太いトルクで高速を一般道を悠々とクルージングするのですね。
モーターで走る日産リーフの高速走行は風切り音とロードノイズが優勢になります。でもオープンカーのフロントにディーゼルエンジンがあって、幌を畳んでフルオープンで走れば、ロードノイズは増えるでしょうが(風切り音は意外に少ない)、ディーゼルエンジンのボゥーというホットサウンドが優勢になってロードノイズは小さくすぼみ、内燃機関ならではの乗り味を終始一貫して堪能できるはず。
マツダ車のラインナップで最もディーゼルエンジンが似合うのは、間違いなく「2シーターオープンカー」のロードスターだと思います。
サーキット走行や峠スペシャルとして乗りたい方にはガソリンエンジン、GTカーとして乗りたい方にはディーゼルエンジン、といった棲み分けができれば理想的でしょう。
そして、ディーゼルのロードスターに乗った人が、
「マツダのディーゼルはやめたほうがいい」
などと言うはずがありません。
感激して随喜の涙を流すはずであり、それは日本だけでなく世界中にたくさんいるロードスターファンも同様でしょう。
ご覧いただきありがとうございました。